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「投資とは未来の株価の値動きを予想するものだ」
株式投資を始めて間もない頃は、このように思ってしまいがちです。
ところが、常に勝っているトレーダーは、そのような考え方ではありません。常勝トレーダーたちは、市場が自分の得意なパターンになるのを待ち、自分のスタイルになったところで勝負をします。それがひいては、冷静な判断となり、最終的な勝率の上昇へと繋がるということです。
この記事では、自分なりの株式投資の「スタイル」を身につける重要性を紹介するとともに、7つのスタイルをピックアップし、読者の方にピッタリなスタイルをご提案致します。
株式投資ではなぜ「スタイル」が重要なのか?
株式投資では、なぜ「投資スタイル」が重要となるのでしょうか。
冒頭では、勝率の高いトレーダーほど自分が得意なパターンを理解し、得意なスタイルで投資を行っていると紹介しました。彼らは相場に翻弄されず、自分のスタイルを貫く、冷静な態度が常勝の秘訣となっています。つまり、株式投資で成功している人ほど、自分なりの「スタイル」を確立していると言えるでしょう。
これがスタイルを確立していない場合では、買った銘柄が少し値下がりし、不安になって売った後、大きく価格が上昇した、などのパターンとなります。この例では、もう少し保有していれば儲かったのに、少し値下がりしたところで売ってしまったので損失です。初心者にありがちな失敗と言えるでしょう。
このような場合は、冷静な判断ができなくなっていることが敗因です。投資スタイルを理解し、これと決めたスタイルを貫くことで、判断のブレは少なくなってくるでしょう。
次の項目からは、株式投資の7つの投資スタイルを紹介していきます。
株式投資7つの投資スタイル
株式市場には、長短合わせてさまざまなサイクルが存在しています。株価は、1日から数日でも比較的小さい値動きをしますし、数週間、数年にわたって大きな流れを作りながら変動することもあるのです。
どのようなサイクルで値動きするかは、銘柄や時期によって異なります。例えば、普段は数ヶ月単位の大きなサイクルで価格が動く穏やかな銘柄でも、決算発表の直後は1日、あるいは数時間で激しく変動する、といったことがあり得るのです。
この項目では、株式市場のサイクルを次の7パターンに分け、それぞれの投資法のメリット・デメリットを紹介します。
- 1日のデイトレード
- 3~5日の短期トレード
- 10日前後の短期トレード
- 2週間~1ヶ月強の中期トレード
- 数ヶ月~半年の中長期トレード
- 1年~数年の長期投資
- 5年以上の長期投資
①1日のデイトレード
デイトレードとは、1日の取引時間中に売買を終え、翌日に保有株式を持ち越さないトレードのことです。1日の間で取引所が開いている時間は限られており、例えば東京証券取引所なら9:00〜15:00(11:30〜12:00は閉まっています)。デイトレードの特徴は、取引所が開いている時間中に銘柄の売買を行い、市場が閉まるときには保有銘柄を売却し、トレードを1日で完結させることろです。
デイトレードのメリットは、取引時間外に悪い材料が出ても、資産に影響が無いことです。例えば、ある企業の不祥事が取引時間外に発覚したと仮定しましょう。この企業の株式は翌日に大きく値下がりする可能性があります。しかし、デイトレードでは時間中に全ての保有銘柄を手放して翌日を迎えるため、悪材料によるダメージを受けません。
デイトレードのデメリットは、売買手数料が多くかかってしまうことです。毎日、売買を繰り返すため、株式の売買の回数は他のトレードに比べて多くなり、手数料も高くなってしまう傾向があります。
②3~5日の短期トレード
3〜5日間継続する短いトレンドを利用した投資法です。主に、直近の高値や安値を更新した銘柄の上昇・下落トレンドが数日間続くことを利用します。
短期トレードのメリットは、最も資金効率が良いことです。短いトレンドが終わる前に株式を売って資金を引き上げ、次の短いトレンドでまた投資を行う、というサイクルにより、効率良く資産を増やすことができます。
短期トレードのデメリットは、保有銘柄を翌日に持ち越さなければならないため、取引時間外の悪材料による影響を免れないことです。悪材料から立ち直る好材料が数日間に出るとは限らないので、損切りするときの値下がり率を決めてリスク管理をしましょう。
③10日前後の短期トレード
主に10日前後で売買するトレードを「スイングトレード」と呼びます。10日は営業日に直すと約2週間のため、株式を買ってから2週間程度で売るトレードとなります。
スイングトレードのメリットは、3〜5日の短期トレードと同様に資金効率が良いことです。少し大きなトレンドに乗るので、大きな利幅が期待できます。
また、デイトレードと異なり1日中株価をチェックする必要が無いことも、メリットの一つでしょう。会社員など、日中に他の仕事がある人にとっては、仕事に集中しながら投資ができるというメリットがあります。
スイングトレードのデメリットは、取引のタイミングに難しさがあることです。2週間の間に決算発表などの大きなイベントがある場合、値動きが激しくなり、より短期のトレンドに翻弄されてしまう可能性があります。購入する前に銘柄について調べ、大きなイベントが無いことを確認してからスイングトレードを始めましょう。
④2週間~1ヶ月強の中期トレード
決算発表など大きなイベントの後、業績への期待や不安のため、次の決算発表まで大きなトレンドができる場合があります。2週間〜1ヶ月強の中期トレードでは、このトレンドの始まりに乗る投資スタイルとなります。
好材料・悪材料が発表された後の波に乗るトレードなので、比較的安定した投資を行うことができます。決算発表直後などの相場が大きく変動する時間帯を外せば、穏やかな投資ができるでしょう。
2週間〜1ヶ月強の中期投資においても、取引タイミングに難しさがあるというデメリットがあります。企業の不祥事などの予測できない悪材料が出てしまった場合などは、短期のトレンドに翻弄されてしまう可能性があります。
⑤数ヶ月~半年の中長期トレード
企業の四半期決算発表や、中間決算発表などの影響で形成されたトレンドが、次の決算発表まで続く場合、数ヶ月〜半年のトレンドとなります。
中長期トレードのメリットは、大きなイベントの好材料に乗って利益を上げられることです。また、短期の値動きを気にしなくて良いこともメリットと言えるでしょう。中長期トレードでは、数時間、数日ごとに値動きを調べる手間が不要となります。
中長期トレードのデメリットは、資金の回転がしにくくなることです。投資に回せる資金をすべて中長期トレードに投入していた場合、他に欲しい銘柄があっても、買えない可能性が高くなります。
⑥1年~数年の長期投資
1年以上のトレンドが形成される場合、企業の成長など企業単独の理由に加え、経済全体の動向が反映されます。つまり、景気が良いときは個別の株価も上がり、景気が悪いときは個別の株価と下がるというトレンドです。
1年以上の長期投資のメリットは、企業の成長や景気の好転という実態に伴って資産が増えることです。特に、成長企業に投資をすれば、大きなリターンを期待することができます。
また、短期の値動きを気にしなくて良いこともメリットと言えるでしょう。長期投資では、数時間、数日ごとに値動きを調べる手間が不要となります。
1年以上の長期投資のデメリットは、資金の回転がしにくくなることです。投資に回せる資金をすべて長期投資に投入していた場合、他に欲しい銘柄があっても、買えない可能性が高くなります。
⑦5年以上の長期投資
上述のとおり、長期のトレンドは企業単独の理由に加えて景気の動向を取り込んでいることが多いです。5年以上の長期的スパンで見れば、景気が良いときに株価は上昇し、景気が悪いときに株価が下落するという、当たり前の傾向が掴めるでしょう。
5年以上の長期投資のメリットは、配当金や株主優待がより充実する可能性があることです。一部の企業は、長期保有の株主限定で優待をグレードアップさせています。長く保有するほど、このような特典を受けられる可能性が高まるのです。
5年以上の長期投資のデメリットは、買いのタイミングが分かりにくいことです。スイッチのオンオフとは異なり、景気の良し悪しの反転は不明瞭。そのため、景気が良くなってから時間が経ち、メディアなどで好景気であることが周知されてから投資を始める、など出遅れがちの投資法です。
あなたにピッタリの投資スタイルはどれ?
株式投資には7つのスタイルがあることを見てきました。その中で、あなたに向いている投資スタイルはどれなのでしょうか?
この項目では、次の3つのパターンに分けて、向いているスタイルを紹介します。
- 株式投資の初心者
- ビジネスマンの副業
- 本格的なトレーダーを目指す人
株式投資の初心者におすすめのスタイル
初心者には3〜5日程度の短期トレードからスイングトレードをおすすめします。投資のことを学びながら、試行錯誤するのに丁度よいスパンだからです。
初心者にもデイトレードをおすすめされることがあるかもしれません。しかし、1分1秒を争う状況で、適切な判断を下すのは非常に難しいです。まして、デイトレードでライバルとなるのは、トレードで生計を立てている上級トレーダーとなることが多いです。他のトレーダーの動きについていけず、翻弄されて気づいた頃には損をしていた…といった事態になる可能性が否めません。
初心者には、勉強したことを数日間かけて市場で試せるトレードがおすすめです。反省点を生かして挑戦しながら上達することで、勝率をアップさせられるでしょう。
ビジネスマンの副業投資におすすめのスタイル
ビジネスマンが副業で投資に取り組むなら、中期から長期的なトレードがおすすめです。一方、デイトレードなど短期のトレードはあまりおすすめできません。
忙しいビジネスマンの場合、日中の取引所が開いている時間帯に相場をチェックするのが難しいでしょう。そのため、1日〜数日間の短期のトレンドを掴み、銘柄の売買を行うのは困難と考えられます。
投資のことを全く考えずに過ごしたい人は、数年間にわたって銘柄を放置する長期トレードがおすすめです。株式を保有し続けることで配当金や株主優待も自動的に手に入るので、忙しい人がはじめるにはもってこいの投資スタイルです。
日中に少しでも相場を気にして売買することができるなら、スイングトレードがおすすめです。値上がり益をコツコツと積み上げ、資金を増やしていきましょう。
本格的なトレーダーを目指す人におすすめのスタイル
本格的なトレーダーであればすべての投資法に触れた方が良いのですが、中でもデイトレードを始めとする短期のトレードをおすすめします。
デイトレーダーには、株価の動きだけでなくチャートや出来高などの情報を数秒以内に理解し、適切に行動する能力が必要です。このような能力は他の投資法ではあまり重視されないので、本格的なトレーダーを目指すなら挑戦したい投資スタイルです。
デイトレードが上手くなると、平均的な会社員の月給を1日で稼ぐこともできるほど。リターンが大きいということは大きなリスクを取っているのですが、トレードは経験で上達するものでもあるので、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
投資スタイルを貫くことの重要性
自分に合った投資スタイルを選んだら、その投資スタイルをしばらくは貫いてみてください。すぐに結果が出るとは限らないので、スタイルをコロコロ変えて投資をしていては、何が原因で勝ったか負けたか分析できなくなってしまいます。
この項目では、投資スタイルを変えてしまったために起こった失敗例から学んでいきましょう。
投資スタイルを変えた失敗例
例えば、長期で保有すると決めて買った銘柄が、翌日に少し値下がりしていて、怖くなって売ってしまった、といった例は枚挙に暇がありません。長期トレードの場合、そもそも日々の値動きはあまり気にしない投資法なのにも関わらず、短期的な目線でトレードしてしまっています。
その逆もしかりで、デイトレードのつもりだったけど、値上がりしたので翌日に持ち越して利益を伸ばそうとして失敗した、という例もあります。翌日の値動きが予想できないから当日に保有銘柄を手放してリスクを抑えるデイトレードの良さが、発揮されなくなってしまいます。
投資スタイルを貫こう
上記の失敗例は、いずれも投資スタイルを貫かなかったことに原因があります。心理的な要因のため、投資スタイルから外れた行動を取ってしまいました。
もちろん、予想外の悪材料が出た場合などに、損切りをすることは大切です。しかし、安易に戦略を変えるのは得策ではないことを知っておきましょう。
前述のとおり、常勝トレーダーは投資スタイルを決めてトレードをしています。裏を返せば、投資スタイルがブレていては、勝てるトレードができない、ということ。まずは、これと決めた投資スタイルを貫くことを意識しましょう。
投資スタイルを決めた後は「銘柄」を選ぼう!
株式投資の7つのスタイルを紹介しましたが、銘柄の特徴によってどのスタイルが合っているかは異なります。短期で激しく変動する銘柄や、長期的に安定した推移をする銘柄など、さまざまな種類があるのです。当然、銘柄の特性によって適切な投資スタイルは変わってきます。
7つのスタイルを理解し、自分に合ったスタイルを見つけられたら、次は銘柄の選び方を身につけましょう。株式投資の銘柄を選ぶ方法は、「お金のミカタ「お金BANK」」内でも紹介していますので、ぜひそちらの記事もご参考ください。
目的別株式投資スタイルまとめ
一口に「株式投資」と言っても、さまざまなスタイルの投資法があることを紹介してきました。市場には短期から長期までいくつかのサイクルがあり、このサイクルを理解してトレードすることが、株式投資で成功するための第一歩と言えるでしょう。
具体的に、株式投資スタイルは以下の7つに分類できます。
- 1日のデイトレード
- 3~5日の短期トレード
- 10日前後の短期トレード
- 2週間~1ヶ月強の中期トレード
- 数ヶ月~半年の中長期トレード
- 1年~数年の長期投資
- 5年以上の長期投資
7種類も投資スタイルがあると、どれが自分に適した株式投資なのか分からず、困ってしまう人も多いでしょう。この記事では、株式投資の初心者、ビジネスマンの副業、本格的なトレーダーを目指す人のそれぞれにおすすめの株式投資スタイルを紹介しました。
相場に翻弄されず冷静な判断をするためにも、投資スタイルを貫くことは重要です。自分に合ったスタイルで、投資の経験を積んでみてください。
株式投資スタイルを絞ったら、次は銘柄選びです。自分のスタイルに合った銘柄を選ぶ選球眼を身につけましょう。