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円高円安のしくみさえわかれば、外貨預金を活用して、国内の円預金では決して得ることのできない利益を期待することができます。ただ、常に損失を出してしまうリスクつきまとうのも事実です。
できるだけ効率よく安全に、外貨預金にのぞむためには円高円安を理解しておく必要があります。今回は円高円安についてご説明しながら、例えば今の時期であればどこの通貨がメリットが出やすいのかを考えてみたいと思います。
外貨預金を始めるタイミング
外貨預金は円預金に比べると金利の面でも大きなメリットがあります。円預金の場合は100万円預けておいても、もっとも高いと言われる金利0.2%がついたとしても2,000円くらいの利益にしかなりません。
外貨預金の場合は金利が1%ついたとすれば、101万になります。だったら、外貨預金が断然お得ではないかと、思わず外貨預金をしてしまうとそこに大きな落とし穴があります。それは為替差益です。仮に金利で利益を得たとしても為替差益で損をしてしまえば、何の意味もありません。
為替差益のことも考えて、外貨預金を始めることがとても重要なのです。為替のことがあまりわからない人のために為替についてちょっとご説明してみたいと思います。
為替のことを理解しておこう
為替とは
為替とは現金に交換することのできる証明書付きの引換え券のようなものです。もともとは、現金を輸送することが危険であることから、金融機関で現金に引き換えるための証明書を代わりに運ぶようになったことから始まりました。
とくに、海を越えて現金を運ぶことは時間もかかり、盗難などの危険性も高くなってしまいます。そこで、代わりに証券(証明書付きの引換券)を運ぶ方が早くて安全だということになり発達しました。さらに、IT技術の発達により、今はオンライン上でその証券を世界中で取引することが可能となったのです。
その現金証明書のことを為替といい、外貨の場合は外国為替と呼び、他の為替と区別をしています。近年では為替とは、外国為替のことをいう場合がほとんどです。
ただ、実際に私達が外国の通貨を購入(両替)したからといって、為替の現物をみることは、まずありません。あくまでも、金融機関内でのシステム上の処理として必要な重要書類となります。
外貨を取り扱う際には、金融機関内でその為替が必要であるため、いつの間にか外貨のことを為替と呼ぶようになったのです。つまりは外貨や外貨両替のことだなと、思っておけば十分です。
為替レート
※為替レートは、例えばドルやポンドなどの外貨を日本円に両替したらいくらになるのか定めたものです。その両替の基準となる価格は、つねに変化し続けています。
例えば、昨日1ドルが109円だったとしても明日には110円になっていることもあるわけです。
この両替の際に基準となる為替レートは、各国の政治的要因、地理的要因、経済的要因により、つねに上がったり下がったりしているのです。
為替差益
この変わり続ける為替レートによって両替する度に損をしたり、利益を得たりするのです。それが為替差益です。例えば、1ドルが100円の時に5万円分をドルに両替したら、500ドルになります。(通常はこれに手数料がかかります。)
500ドルは3か月後に、日本円だといくらに両替できるでしょうか?3か月後のドルの為替レートが105円だったとします。そこで500ドルを日本円に両替すると5万2,500円になりました。そうすると2500円の利益を得たことになります。
これが為替差益と呼ばれるものです。この為替差益と金利によって、外貨預金は高い利益を狙うことが可能になるのです。ただ、この為替レートの数字によっては、もちろん損をしてしまう場合があります。そこで円安円高の仕組みを理解しておくことが必要になります。
円高円安とは
よく新聞や、テレビのニュースで「円高・円安」という言葉を耳にするかと思います。通常使われている「円高・円安」はドルに対して、今円が高いのか安いのかという意味で使われています。ドルの価格が世界の経済状況に強い影響を与えているため、ドルを基準にしてあるのです。
どのくらいの価格だと円高なのか、円安なのかは、その時代によって若干変わってしまいますが、最近では110円前後が基準になっています。107円に価格が下がると円高、112円に価格が上がると円安ということになります。
ドルに対して円の値段が上がる→ドルを高い日本円で買う→円安
安く買って、高く売る
このように、円高円安のしくみがわかれば、どんな外貨でも安く買って(両替して)、高く売る(両替する)ことができるのです。為替差益を活かすことで利益をつくることが可能になります。
円高の時に買って、円安の時に売ることで、円を増やすことができるのです。これが外貨預金の大きなメリットになります。そして、これは外貨の取引において、忘れてはならない基本となるものです。
どんな外国の通貨があるのか
通貨の種類
日本で取引きされている外貨の中で、メジャーな通貨
- アメリカドル
- イギリスポンド
- ユーロ
- スイスフラン
- オーストラリアドル
- ニュージーランドドル
これらの通貨は、扱っている金融機関を探しやすいメジャーな外貨になります。たいていの地方銀行でも取り扱っていますので、調べてみましょう。2018年6月22日、現在の時期だとアメリカドルは日本円で110円前後です。このまま円安がすすめば利益を得ることができますが、リスクは高くなります。
110円前後の場合は円高とは言えないので、もう少し円高になるのを待った方が、より確実に利益を狙うことができます。
外貨預金のキャンペーンが充実(手数料無料など) 参考URL:三菱UFJ銀行
取り扱いの外貨が豊富で高金利(Tポイントプレゼント) 参考URL:SBISBI新生銀行
その他の通貨
- カナダドル
- シンガポールドル
- 香港ドル
- ブラジルレア
- 人民元
- 南アフリカランド
- スウェーデンクローナ
- トルコリラ
取り扱い外貨が豊富で手数料が安い 参考URL:ソニー銀行
円高傾向にある通貨
為替チャートを見て、どの通貨が円高傾向にあるのかを調べてみましょう。各金融機関でも為替レートのチャートをみることができます。世界中の通貨を調べてみたい人は「XE-通貨換算ツール」世界中の通貨の為替レートを調べることができます。
今、円高傾向にある外貨は・・・
ユーロ、オーストラリアドル、カナディアンドル、ブラジルレアル、ニュージーランドドル、人民元など・・・
人民元がさがっているのはどうして?
アメリカと中国の貿易戦争
ことの始まりは、アメリカの大統領ドナルド・トランプ氏が2018年1月に、大衆に向かって叫びかけた日からはじまりました。トランプ氏のいうことには、アメリカは中国との貿易で1年間に500兆ドルの損失をつくっているとのことです。その上、ブランド偽造やアイデア泥棒でさらに300兆ドルの損失を受けているそうです。
そして、こんなことをこれ以上続けさせることはできない!と叫んだのです。同意して共感した人たちは多くいましたが、それでもアメリカ国民は、また、いつものはったりのパフォーマンスが始まった、とあまり本気にはしていませんでした。
どころが、この時に限ってはトランプ氏はその行為を自らの職権を最大限に活かしながら、本格的に実行し始めたのです。それ以来、今日に至るまで「関税」という駒を使って双方の激しい戦いが続いているのです。
鉄鋼とアルミニウムへの攻撃
もともとアメリカと中国の貿易関税の改善案は、以前からアメリカでは討論されていたことでしたが、正確には具体的な計画はまだ立てられていない状態でした。そこで、最初にトランプ氏の攻撃を受けたのは中国のアルミニウムと鉄鋼業でした。
堅く決意したトランプ氏は鉄鋼とアルミニウムの輸入の際に25%の関税を設けると表明したのです。その他に航空機や情報テクノロジー関連など幅広い商品に対しても同時にその関税を適用すると言ったのです。
すると、そのお返しに中国はアメリカ航空機ボーイングをはじめ、スクラップアルミニウム、ワインや果物などをアメリカから輸入する際に多額の関税をつける、と言ってきました。そこで憤ったトランプ氏は、さらに1300種に渡る商品について100兆円の関税を付け足す計画を始めることにしたのです。
中国の大手テクノロジー企業への報復
次に大きなトランプ氏から大きな攻撃を受けたのは、中国の大手テクノロジー企業である「ZTE」でした。「ZTE」は通信機器やソフトウエアなどを製造している企業で、その「ZTE」に必要なさまざまな部品を向こう7年間アメリカから購入することを禁止すると表明したのです。
その理由としては、「ZTE」が北朝鮮やイランに対して非合法な販売を行ったというものでした。それに対して中国は179%の関税をアメリカのソルガムという砂糖の原料に付けることにしたのです。
止まらない関税戦争
5月以降、アメリカも中国もお互いに過剰になりすぎていたことを反省するかのような、穏やかな交渉状態に入りました。双方が納得のいく妥協案が繰り広げられ。しばらくは貿易戦争の戦火は鎮まった状態が続きました。
しかし5月末になると、またこの貿易戦争に火が付き始めます。それ以来、アメリカが新しい関税のプランを表明すると、中国も負けじと関税の項目を増しながらお互いに、脅かし合ってきたのです。特に6月に入ってからはその様相は、世界市場を大きく揺るがすほどの不安を人々に与え続けているのです。
安くなった人民元で外貨預金をすべきかどうか
1カ月間のチャート
このような過程で、人民元はとくに対ドルに対して値段が5か月ぶりの安値をつけてしまったのです。日本円に対しても、下がり続けていてるので外貨預金をする際に、人民元にしようかどうか迷ってしまいます。上記のレートは約1か月間で価格をみたもので、1か月という枠で考えれば今が最も安い値段になっています。
人民元が一番高いのは、6月14日の17.288円です。そして、現在6月22日には16.844円です。やはりアメリカとの関税問題の進展具合により上がったり、下がったりが激しいようです。
このような状態の時には、短期間での利益獲得も可能にはなりますが、その分、短期間でもっと下がってしまう可能性も高くなってしまいます。もし、来週にアメリカと中国の貿易摩擦が悪化すれば、もっと人民元は安くなるでしょう。反対にアメリカとの関係が緩和されれば17円代に向けてまた値段は上がっていくでしょう。
5年のチャート
では、長期で考えた場合にはどうでしょうか?上記のチャートは人民元の5年間の動きになります。2015年の6月には、人民元は20.247円まで上がっています。長い目で見ると17円前後で人民元が購入(両替)できるとすればもしかしたら、安い買い物だったということもできるかもしれません。
その反面、2016年の7月には15.067円まで下がっています。ということは、まだまだ人民元が下がったとしても不思議ではないわけです。アメリカとの貿易戦争の過程をしばらく様子を見る方が、賢明だと言えるでしょう。
その結果次第では、今のうちに人民元で外貨預金をしておくことは、かなり効果の高い投資と言えるかもしれません。人民元の価値は今後上昇していく可能性を秘めていると言えます。
中国は魅力のある市場
なぜ、人民元が今後上昇していく可能性が高いのでしょうか?中国は巨大な大陸を持つ開発途上国です。そして、その巨大な大陸は巨大な数の人口を有しています。ほとんどの先進国に比べ、まだまだ開発の余地があり、その巨大な大陸からは巨大な需要と経済の進展が今後は見込まれています。
世界中の国にとって、利益をあげるためにその巨大な大陸と人口を誇る中国は、必要不可欠な存在です。いわば中国という市場なしに利益を得ることは不可能とも言われ、特に先進国にとって中国はどこの国にもまして魅力的な市場となっています。
同時に中国は、巨大な大陸ゆえ資源も豊富で、人口が多いゆえ物を製造できる量が違います。また、先進国のように高齢化問題とも無縁です。
世界で1番輸出額の多い国は中国なのです。ということは、あらゆる国の人々の生活は中国からの輸出なしには成り立たないとも言えるのです。
タイミングを見て、人民元で外貨預金をしておくのは捨てがたい選択肢の1つだと言えるでしょう。
円高傾向にある外貨
その他にも、通常よりも安く購入できる外貨はいくつかあるので、これからの外貨預金の参考にして頂ければと思います。
ユーロ
ユーロの価格が下がっている原因としては、2018年5月にユーロがアメリカドルに対して、6カ月来の安値をつけてしまったことがきっかけだと言われています。ヨーロッパで進んでいる物価上昇と経済成長の鈍化やアメリカと中国の貿易戦争の影響がヨーロッパへも波及しているとも見ることができるようです。
現在のユーロの為替レートは128円前後で、1年間を通して考えると今は安値圏にあります。ドルやポンド同様に比較的、安定した通貨なので今のうちに買っておくのもいいかもしれません。
ブラジルレアル
ブラジルレアルは今、もっとも値下がりしている外貨です。2018年に入ってからは急降下を続けています。5年という期間から見ても今は最安値状態にあります。ブラジルの財政赤字は年々、深刻化を増していて国内の金融政策上に問題があると見られています。
同時にこの急激な値下がりは、ブラジルが中国の最も重要な取引相手の1つであることも大きな原因のようです。かなりお買い得ではありますが、国内の金融政策に問題があるのであれば、貿易戦争が落ち着いたとしれも、価格が上昇しない可能性もあります。
その他の外貨
ニュージーランドドルも長期でみても、短期でみても今はかなり安い値段で購入することができます。オーストラリアドルも似たように値下がりしているのは、主な輸出品である鉄鉱石が貿易戦争から受けるダメージが影響しているようです。
カナダドルも貿易戦争から波及した、自動車関連や航空機関連の関税から日本同様に脅かされていると見ることができます。その他の通貨ほど安くなっているわけではありませんが、安全性は高い通貨です。
まとめ
これらの外貨に対して円高が進んでいる理由としては、アメリカと中国の貿易戦争が大きく関与しているようです。貿易戦争がひと段落し、関税に対する不安が解消されてしまえば、他の国の通貨が力を取り戻し始めることが予想されます。
ただ、つねに最悪の事態も考えておかねばなりません。仮に貿易戦争が悪化してしまった場合には株式をはじめとする多くの市場は低迷してしまいかねません。
ただ、アメリカも中国もそれは十分に承知しているでしょうから、貿易戦争は改善されていく見込みはあると見ることもできるでしょう。しかしながら、先のことは誰にもわからないのです。
この時期に外貨預金をするとすれば、安全性を重視すればユーロ、将来性を重視すれば人民元、為替差益の可能性を重視すればブラジルレアルと、何を重視するかで選ぶ外貨も変わってくるでしょう。
いずれにしても、しばらくは様子を見る必要がありそうですが、大売出しの外貨を見過ごしてしまうのは惜しい気がしないでもないと思ってしまうところですね。