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株式投資で最も楽しみなのは、定期的に貰える配当金ではないでしょうか? 株式を売買して儲けを出すのは大変ですが、配当金なら株式を持っているだけで安定的に利益を得られるので、配当金を狙う投資法はベテランにも人気です。
しかし、「配当金狙いの投資はお得」というイメージだけが先行してしまい、配当金を貰えるタイミングやその金額、受け取り方について初心者が学べる機会は少なくなっています。この記事では、そのような基本的な知識に加え、配当金を基準に銘柄を選ぶ投資のコツなど、配当金にまつわる知識を解説します。
株式投資の「配当金」とは?仕組みを解説
そもそも配当金とは、企業が得た利益の一部を出資者とも呼べる株主に還元するお金のことです。株式を買ってくれた人へのささやかなキャッシュバックのようなもの、と捉えておくと良いでしょう。
まず初めに押さえておきたいのは、すべての企業が配当を出しているわけではない、ということです。配当金の分配は企業の義務ではないため、出していない企業もあるのです。配当金を狙った株式投資をしたい方は、株式を買う前に証券会社のホームページで企業の情報を調べ、その銘柄で配当の分配が予定されているか確認しましょう。
次に、配当金の基礎知識について理解を深めます。実際に配当金を貰えるタイミングなどを理解しておかないと、せっかく株式を買ったのに、配当を貰えるのが1年も先! といった残念な事態も起こり得るのです。次の項目から、以下の3つのポイントについて学んでいきましょう。
- 配当金が貰えるタイミング
- 配当金の金額
- 配当金の受け取り方
配当金は「いつ」もらえるの?
配当金を貰うには「権利確定日」という日に株式を保有している必要があります。「権利確定日」とは、その銘柄を保有している株主としての権利を得られることが確定する日のことです。
権利確定日に株式を持っていない場合、他の日に保有していても配当金や株主優待を得ることができません。また、権利確定日に株式を保有するためには、権利確定日を含む4営業日前までに株式を購入する必要があります。この日を「権利付最終日」といいます。
権利確定日は株式によって異なるので、証券会社のホームページで株式の情報を調べて確認してください。最も一般的なのが、3月と9月の月末と年に2回あるパターンです。配当金は、この権利確定日を迎えた後に貰うことができます。
権利確定日の後、何日で配当金を貰えるかも企業によって異なります。一般的には、権利確定日の2~3か月後に配当金が貰えることが多いです。少々じれったいかもしれませんが、配当金は気長に待ちましょう。
配当金は「いくら」もらえるの?
配当金の金額は、株式によって異なります。また、一口に株式と言っても株価もそれぞれ、配当金もそれぞれなので、金額の比較はしようがありません。
例えば、A社とB社の株価が共に1000円で、A社の配当金が50円、B社の配当金が10円だったと仮定しましょう。この場合、株価が同じなので、配当金の高いA社の方が高配当と分かります。
では、A社の株価が4000円で、その他の条件は上記と同じだった場合はどうでしょうか? A社とB社、どちらの方が高配当かすぐに分かりますか?
両社は株価も配当金も異なるので、比較できなくなってしまったのではないでしょうか。そこで、「配当利回り」という概念が登場します。配当が高いか低いかは、株価に対して配当金が何%であるかを見て考えるのが一般的で、この指標を「配当利回り」と呼ぶのです。
配当利回りは次式で計算できます。
- 配当利回り(%)=1株あたりの配当金÷株価
それでは、この算式を用いてA社とB社の配当利回りを計算してみましょう。A社は株価が4000円で配当金が50円なので、配当利回りは1.25%です。B社は株価が1000円で配当金が10円なので、配当利回りは1%となります。A社の方がB社よりも配当利回りが高く、高配当なことが分かります。
ちなみに、東証一部上場企業の配当利回りの平均は1~2%程度で推移しています。2%を上回る配当利回りの株式であれば、平均よりも高配当な銘柄と呼べるでしょう。
配当金は「どうやって」もらえるの?
株式投資の配当金の受け取り方法は、主に次の4種類です。後述するように、「株式数比例配分方式」と「登録配当金受領口座方式」が一般的で簡単なので、投資初心者の方はこの2つのいずれかを選ぶのがおすすめです。
- 株式数比例配分方式
- 登録配当金受領口座方式
- 配当金受領証方式
- 個別銘柄指定方式
従来は「配当金受領証方式」や「個別銘柄指定方式」が一般的でしたが、2009年1月の
株券電子化の施行に伴い、「登録配当金受領口座方式」や「株式数比例配分方式」が新設されました。それぞれの受取方法について、詳しく見ていきましょう。
①株式数比例配分方式
保有している株数に応じて、証券会社の口座に入金される方法です。同じ銘柄を複数の証券会社で保有していると、それぞれの証券会社の口座での保有数に応じて、証券の口座に配当金が入金されます。
最も一般的な配当金の受取方法で簡便なため、初心者にもおすすめなのが株式数比例配分方式です。特別な事情が無ければ、この方式を選んでおくのが良いでしょう。
②登録配当金受領口座方式
保有している銘柄の配当金を、投資家が指定した「銀行口座」で受け取る方法です。①株式数比例配分方式では証券口座に配当金が入金されますが、銀行口座で受け取りたい場合は、②登録配当金受領口座方式を選択すると良いでしょう。
③配当金受領証方式
郵便局などの窓口で配当金を受け取る方式です。自宅に郵送される「郵便振替支払通知書」または「配当金領収書」を持って窓口に出向くことで、受け取りの手続きをすることができます。
④個別銘柄指定方式
銘柄ごとに「配当金払込指定書」を提出することで配当金を受け取る口座を指定しておき、その口座に配当金を入金して貰う方式です。
配当金を基準に銘柄を選ぶ|株式投資のコツ
配当利回りの高い株式は投資家にも人気なため、景気が悪化して株価が全体的に下がっているときでも、比較的売られにくいという傾向があります。売られにくいということは、その銘柄の株価が下がりにくいということ。配当利回りの高い株式への投資は、相対的に安全な投資法でもあると言えるのです。
次の項目では、東証一部上場企業の中から、高配当利回りの株式と連続増配中の株式について、トップ10の銘柄を掲載しました。配当利回りなどのデータも掲載しているので、銘柄選びの参考にしてみてください。
高配当利回りのトップ10銘柄
順位 | 名称 | 株価(円) | 1株あたりの配当金(円) | 配当利回り |
1 | 松井証券 | 1003 | 84 | 8.37% |
2 | スズデン | 1473 | 120 | 8.15% |
3 | 日産自動車 | 944.1 | 57 | 6.04% |
4 | 岩井コスモホールディングス | 1244 | 75 | 6.03% |
5 | アサヒホールディングス | 2084 | 120 | 5.76% |
6 | JT | 2697.5 | 154 | 5.71% |
7 | 長谷工コーポレーション | 1411 | 80 | 5.67% |
8 | イーグランド | 682 | 38 | 5.57% |
9 | あおぞら銀行 | 2770 | 154 | 5.56% |
10 | FPG | 960 | 53 | 5.52% |
※上記の株価、1株あたりの配当金は2019年4月5日現在のデータです。
松井証券、アサヒホールディングス、JTといった有名企業もランクインしています。10位のFPGでも5%を超える配当利回りとなっているので、高配当銘柄を狙うなら、これらの企業への投資を検討しても良いかもしれません。
ただし、後述するように、配当利回りだけで銘柄を選ぶのはおすすめできません。詳しくは「高配当株を狙うときのアドバイス・注意点」の項目をご覧ください。
連続増配中のトップ10銘柄
順位 | 名称 | 株価(円) | 1株あたりの配当金(円) | 配当利回り | 増配年数(年) |
1 | 花王 | 8,514 | 130 | 1.53% | 28 |
2 | SPK | 2,424 | 67 | 2.76% | 20 |
2 | USS | 2,110 | 49 | 2.33% | 20 |
4 | 三菱UFJリース | 581 | 19 | 3.27% | 19 |
4 | 明光ネットワークジャパン | 987 | 30 | 3.04% | 19 |
4 | 小林製薬 | 9,130 | 68 | 0.74% | 19 |
7 | リコーリース | 3,420 | 80 | 2.34% | 18 |
8 | しまむら | 9,160 | 200 | 2.18% | 17 |
8 | トランコム | 6,690 | 88 | 1.32% | 17 |
10 | KDDI | 2,406 | 100 | 4.16% | 16 |
※上記の株価、1株あたりの配当金は2019年4月5日現在のデータです。
※※増配年数の10位タイは他多数ありますが、最も配当利回りの高い銘柄を掲載しました。
増配年数が長い企業は、長期にわたって安定的に事業を成長させてきた企業と言えます。また、株主への利益還元にも積極的ということが分かるので、投資家にも人気の銘柄となりやすいです。
東証一部上場企業では、花王の増配年数が頭ひとつ抜けています。実際、花王は高配当銘柄を狙う投資家にも人気の銘柄です。
配当利回りも高く、増配年数も長い銘柄として挙げられるのはKDDIでしょう。増配年数が16年、配当利回りは4.16%と、高配当銘柄狙いの投資に向いている銘柄と言えそうです。
高配当株を狙うときのアドバイス・注意点
高配当な銘柄を狙って株式を探していると、その配当利回りにだけ目が行ってしまい、銘柄選びに失敗してしまうことも。また、高配当株であってもノーリスクで儲けることはできません。高配当株に投資する前に、抑えておきたい3つのポイントについて見ておきましょう。
- 配当は減額される可能性もある
- 株価が下がった場合も配当利回りが上がる
- 権利付最終日に向けて株価が上がりやすい
①配当は減額される可能性もある
前回よりも配当を増やすことを「増配」と言いますが、逆に前回よりも減らすことを「減配」と言います。企業が上手く利益を上げられず、株主への還元に回すお金が十分でない場合、減配されることがあるのです。
連続で増配してきた成長企業や高配当な優良企業であっても、将来的に経営に苦しむことは起こり得えます。現在の利回りが高かったとしても、永遠に高配当利回りであるとはいえないことは理解しておきましょう。
②株価が下がった場合も配当利回りが上がる
配当利回りの計算式を思い出すと、分子が1株あたりの配当金、分母が株価でした。つまり配当利回りが上がる要因は2種類あり、1つは配当金の増加、もう1つは株価の減少です。
例えば、企業の不祥事などの悪いニュースが報道され、株価が著しく下がった場合を想像してみてください。すぐに配当金が変更されることはほとんどないので、配当金は変わらず、株価が大きく下落した状態になります。このような先行き不安な企業の株式を買いたいと思う人は少ないと思われますが、配当利回りは急上昇しているのです。
銘柄選びの際は配当利回りだけで選ばないよう、注意が必要です。株価の推移も確認し、株価の下落による見せかけの高配当でないことを確認しましょう。
③権利付最終日に向けて株価が上がりやすい
前述のとおり、権利確定日に株式を持っている人には配当金が分配されます。権利付最終日に株式を買えば、長期で保有している人と同様に配当を貰うことができるのです。
つまり、権利付最終日に近づくにつれて、株式を買いたい人が増え、売りたい人が減ります。需給のバランスが偏るので、株価が高くなるのです。
しかし、権利付最終日の翌日には需給のバランスが元に戻るので、株価が元に戻ってしまうことが多いです。高配当の銘柄は特にこのようなアップダウンが顕著な傾向があることを理解しておきましょう。
高配当銘柄を狙うなら、権利付最終日の直前など株価が高くなっている時期に購入するのはあまりおすすめできません。権利付最終日が近づいて株価が高騰する前に購入しておきましょう。
配当金の税金の仕組み
株式を持っているだけで定期的にお金が貰えるので、配当金は最高にお得な仕組みです。しかし、配当金にも税金がかかるので、配当金の全額が自分のものになるわけではありません。この項目では、配当金にかかる税率と、確定申告について解説していきます。
配当金にかかる税率
上場している株式の配当金の場合、税率は合計で20.315%です。内訳は、所得税および復興特別所得税が15.315%、住民税が5%となっています(2019年4月現在)。
非上場の株式の配当金の場合、税率は合計で20.42%です。内訳は、所得税および復興特別所得税が20.42%、住民税はありません(2019年4月現在)。
上場・非上場株式のいずれでも、上記の税率で源泉徴収されます。基本的に、自ら税金を納付する必要は無いので、初心者にとっても易しい仕組みとなっています。
配当金にかかる税金の確定申告
配当金にかかる税金は源泉徴収なので手間がかかりません。基本的には確定申告も不要ですが、必要な場合もあるので、あわせて理解しておきましょう。
まず、上場している株式の配当金の場合、確定申告をしないで済ませる「申告不要」を選択することができます。一般的にも申告不要を選択している人の方が多いので、初心者の方も特別な事情が無ければ申告不要を選択するのが良いでしょう。(確定申告する場合は、申告分離課税または総合課税を選択しなければなりませんが、ここでは割愛します)
非上場株式の配当金の場合、所得税と住民税を分けて考えなければなりません。所得税は少額の配当であれば申告不要を選択することが可能です。しかし、上述のとおり住民税は源泉徴収が行われないので、少額の配当であっても総合課税の対象となります。
株式投資の配当金は銀行預金の利息よりお得!
配当金と同じように、銀行預金によっても利息として定期的にお金を貰うことができます。しかし、銀行預金は軒並み低金利が定着しています。
「ゼロ金利」とも呼ばれているとおり、メガバンクの普通預金は年率0.001%、定期預金でも0.010%程度。メガバンクよりも金利が高いことで知られるネットバンクも、普通預金は高くても0.10%程度、定期預金でも0.10~0.30%と、1%を下回っています。
対して、東証一部上場銘柄の平均配当利回りは、上述のとおり1~2%です。平均の配当利回りですら、銀行預金の利息を上回っており、株式投資の方が銀行預金より儲かりやすいことが分かります。さらに、銘柄によっては上述したように5%超えの配当利回りの株式も。
ネットバンクの定期預金に100万円を預けた場合、金利が0.30%だったとしても、利息で貰えるのは3000円です(税引き前)。しかし、配当利回りが5%の高配当銘柄を100万円分買っていれば、貰える配当は5万円(税引き前)! 銀行預金と株式投資では、ここまで大きな差があるのです。
株式投資の配当金まとめ
株式投資の最も大きな楽しみのひとつである、配当金に関する知識を解説してきました。まずは配当金を貰えるタイミングやその金額、受け取り方法について理解した上で、投資を始めるのが良いでしょう。
また、東証一部上場銘柄のうち配当利回りが高い銘柄トップ10、増配年数が長い銘柄トップ10も紹介してきました。これらの実績と合わせ、減配のリスクや株価下落による配当利回りの上昇、権利付最終日に向けた株価の上昇など、投資の初心者には見えにくいポイントにも注意してください。
配当金には税金がかかりますが、それでも銀行預金による利息よりも大きな収入を期待することができます。高配当銘柄を狙った投資で、おこづかいを増やしていきましょう。