投資信託のリスクを和らげる3つの方法とは?正確なリスク計算から分かる安全な投資法

投資においてリスク管理は必須です。投資信託においては、リスクとリターンを管理するためにポートフォリオを組むことになり、リスク管理は最も重要な要素と言っても過言ではありません。

適切なポートフォリオを組むためにもどのようなリスクがあり、どうのようにリスクを分散、管理してリターンを得るのか。この記事では、リスクの種類や解決策を提示していきますので、しっかりと把握して資産を形成していきしょう。

投資におけるリスクとリターンの関係

前提として、リスクとリターンは基本的に表裏一体の関係ということです。当然といえば当然かもしれませんが、大きくリスクを取ればそれだけリターンも増え、逆にリスクを小さくしようとすればリターンも小さくなります。

投資信託ではこのバランスが重要です。リスクとリターンのバランスを見誤ると、それだけ投資で「勝てるチャンス」を失い、「負けるピンチ」を拡大させることになってしまいます。

ここからはリスクとリターンについて詳しくお伝えしています。まず、その基本となる知識を押さえておきましょう。

投資におけるリスクの基礎知識

投資信託のリスクとは、自分の資産が増減する振れ幅のことです。値動きの幅が大きいものは「リスクが大きい」といえます。

たとえば、ある金融商品(銘柄)において利益(正確には利回り)の期待値が10%あったとしましょう。すると、その銘柄に100万円分の投資をすると1年で10万円の利益となる(100万円×10%)ため、とても魅力的な金融商品に思えますよね。

しかし、利益の期待値が10%と同時に、この銘柄は損失の期待値も10%あるそうです。利益はプラス、損失はマイナスだとすると、この銘柄はプラスマイナス20%という振れ幅を持っています。つまり、10%の利益を出す人もいれば、中には10%の損失を出す(その方が多い)人もいるということです。この「プラスマイナスの振れ幅」がリスクです。

ただリスクの大きい商品に投資するだけではギャンブルなので、リスクの大きいものと小さなものを組み合わせていくことになります。

後ほどリスクの種類と組み合わせについては解説していきますので、まずはリスクの概念だけおさえておきましょう。

投資におけるリターンの基礎知識

投資のリターンとは、投資に対する見返り、資産の増加となります。

リターンは先ほどの事例で紹介した「利益(利回り)の期待値」のことです。つまり、簡単にいえば「どれくらい儲かるのか(儲かったのか)」を表す数値を指しています。リターンが大きくなると、概してリスクも大きくなる(ハイリスクハイリターン)ので、両者のバランスが重要です。

多数ある商品を組み合わせていく(分散投資)ことで、投資家としてはなるべくリスクを小さくすることが究極の目標と言えるでしょう。

では、リスクをどう抑えていけば良いのでしょうか。それには、まずリスクに含まれる4つの要素を知っておく必要があります。次の項目で詳しくお伝えしていきしましょう。

投資信託4つのリスク

次にリスクの種類についてもっと詳細に見ていきましょう。

リスクの種類は次の4点が挙げられます。

  • 価格変動リスク
  • 為替変動リスク
  • 信用リスク
  • 金利変動リスク

この4つのリスクを理解することで、「投資で損をする可能性」を極めて小さく抑えることが可能です。以下をご覧ください。

価格変動リスク

価格変動リスクとは、株や債権、不動産、金などの商品価格が変動することです。株の売買で得られるリターンは価格変動があることで生まれるわけですが、上がると思っても下がる可能性はあり、振れ幅があるため、それがリスクとなります。

市場への影響は、国内外の経済や政治情勢が主な要因です。海外で特に影響が大きいのはアメリカ、中国、ヨーロッパの経済や政治。債権は金利変動の影響を大きく受けます。

為替変動リスク

為替変動リスクとは、円と外国の為替相場の変動により、外貨建ての資産価値が変動することです。投資先は、当然アメリカ株やヨーロッパ株、新興国株、あるいは債権などです。それらの国の通貨価値と円の価値が購入時より変動する場合には、資産を売却して円に還元する際にリスクとなります。

一般的には円高になると価値が減少し、円安になると価値が増大。トヨタなどの輸出額が大きい企業のニュースで、為替が円高になったためのマイナス影響で利益が減少といったニュースを目にした方も多いと思います。為替レートは、国内経済、海外経済、金利政策など、様々な要因で変動することを抑えておきましょう。

信用リスク

信用リスクとは、債権などで、発行団体が財政難や経営不振、不祥事といった理由で債務不履行が起こる可能性のことです。債務不履行があると最悪、投資資金が償還されないという事態も起こりえます。

一般的に新興国は経済が先進国に大きく左右される場合が多く、リスクが高いと言われています。近頃のニュースはで中国において債務不履行が起こっていると取り上げられていますよね。その分、概ねリターンは大きくなりますが、投資先が安全かどうかをよく調べる必要があります。

金利変動リスク

金利変動リスクとは、金利の変動によって資産価値が変わる可能性のことです。影響が大きいのは主に債権となります。購入時点で債権の金利は決まっていますが、満期前に売買する場合にはその時点の金利で収益が増減するために強い影響を受けるのです。

通常は市場金利が上がれば、低い金利の債権を売り、高い債権を債権購入者が求めるため、債権価格は下がります。

金利政策は中央銀行によって行われる金利水準の変更ですが、市場金利も連動して変動するためその国の金利政策は非常に重要です。日本、あるいは海外でも「ゼロ金利政策」が話題になりました。

金利政策は多くの国では毎月議事録を公表し、「年何回金利を上げる予定か」などを確認することができるので、興味があればFRB(連邦準備制度理事会)やECB(欧州中央銀行)などの議事録を確認してみるといいでしょう。他国との金利差は為替水準にも影響があります。

標準偏差で正確なリスクを算出

一口にリスクと言っても、どれぐらいのリスクがあるのか分かりにくい、という方が多いのではないでしょうか。

投資信託のパフォーマンスは「どれだけ利益が出たか」ということが重要です。しかし、仮に高い利益を上げたとしても、もしかしたらそれがプラスマイナス(リスク・リターン)の振れ幅が大きい、「危険な賭け」だった可能性もあります。標準偏差を知ることは、そんな「危険な賭け」を回避し、リスクをきちんと数値で確認することが可能です。

標準偏差とは?

標準偏差とは、統計学を用いることで、バラツキを客観的に測る手法のことです。金融商品のリスクを計るために用いることもありますし、投資信託の価格変動のリスクを調べて、どの投資信託に運用してもらうかを検討する場合にも使います。

投資信託では、特定の年数を設定して騰落率の平均値を求め、年ごとにリターンからの平均値との差を求めます。これがリターンとの振れ幅を示す標準偏差です。数値が大きいほどリスクが大きく、小さければリスクも小さいことになります。

標準偏差の見方

「標準偏差とは」で記載したように、標準偏差が小さいほどリスクも小さくなります。同じリターン、例えば10%だとして、標準偏差が15%と20%では15%の方が優秀と言えます。

例を上げてみましょう。

100万円運用して、リターン10%で標準偏差が15%の投資信託があるとします。この場合、いちばん起こりそう(最頻値)な結果は 107万円。また、結果が 101万5千円以上になる可能性は70%。50%の確率で107万円以上になります。ただし、26.3%の確率で元本を減らしてしまいます。

もう一つ例を上げます。

同じく100万円の運用で、リターンが15%で標準偏差が25%の投資信託の場合。いちばん起こりそう(最頻値)な結果は107万3千円 。また、運用結果が100万4千円以上になる可能性は70%、50%の確率で112万4千円以上になります。ただし、29.4%の確率で元本を減らしてしまいます。

上記に上げた例のように、元本を減らさず着実に利益を積み上げたいのであれば、標準偏差の小さな投資信託を選ぶと良いでしょう。

投資信託の標準偏差はどこで確認すれば良い?

モーニングスター株式会社にて、WEBサイト上で公開しています。モーニングスターでは、投資信託先を探すための様々なデータが記載されています。

そのうちの一つに標準偏差があります。アナリストの視点で解説もありますので、標準偏差以外にも目を通して比較をしやすくなっています。

投資信託のリスクを和らげる3つの方法

長らく説明をしてきましたが、すべてはリスクを低減させるためにも知っておくべきことです。以下では実際にどのような商品投資をしてリスクを分散させるかについての解説になります。

「分散投資」でリスクを分散

分散投資とは、投資先を分けてリスクを低減する手法です。一つの投資先に集中すると、もしその投資先がダメになってしまった時にすべてがダメになるため、幾つもの投資先を持っておくことは非常に重要です。

分散投資にも様々な分散のさせかたがあります。国内の株式市場でも、違う業種で分散させる、もう少し大きなくくりで、株と債権の組み合わせは一般的ですね。

債権のリターンは少ないですが、その分安定します。また景気が悪化すると株が下がり、債券市場に人気が集まるため、債券価格が上がるなど強い相関関係があるのです。なぜ相関関係があるかというと、債券価格が決まる要素として、市場金利と信用リスクがあるからです。市場金利が上がった場合、債券価格は下落します。「金利変動リスク」で少し触れましたが、過去の債権の価値が相対的に下落するためです。

逆に市場金利が下がった場合。市場金利の下落は、逆に債券価格が上昇します。金利の下落は過去に発行された債権の価値を相対的に上げるからです。

ではなぜ金利が上がると株価が上がるのか、というと以下の理由になります。

株のリターン低下とリスク回避での債権への逃避

通常株と比べると債権はリターンが小さいのですが、株のリターンが小さくなり、景気悪化などでリスクが大きくなると、株を運用する旨味が小さくなります。その場合に安全な投資先として債権に集中するのです。

そして債権が買われると、債券価格が上昇するというサイクルが生まれます。リスク選好先には、金やプラチナといった商品も代表的なものです。

景気の変化により政策金利や資金需要の変化

もう一つは、景気による中央銀行の政策になります。通常は景気が良くなると金利が上がりますが、これは政策上、景気の加熱を予防するため政策金利を上げるためで、景気が良くなると企業の設備投資が活発になり、資金需要が増えるのです。

当然ながら、景気が良くなれば株価も上がります。すると、今度は逆の動き、債権から株に資金が移動することになる、という理屈ですね。

地域の分散

国内とアメリカ、あるいは先進国と新興国、といった具合に投資地域を分けて分散。安定しているのは先進国の市場ですが、新興国は成長率が高いため、特に世界経済が明るいと人気が高まります。ただし、不安定な市場でもあるため、先進国とバランスを取る必要があるでしょう。

「為替ヘッジ」でリスクを抑制

円以外にドル、ユーロなど、外貨建てでリスクを分散させます。円が上がればドルが下がるなど通貨の強さは日々変わるため、複数の通貨を持つことで通貨の強弱に対応できるようになりますね。

時間の分散

安く買って高く売ることが投資の理想ですが、そうそう完璧なタイミングで取引できるものではありません。相場の格言に「頭と尻尾はくれてやれ」という言葉があります。

ある程度動き出してから買い、天井に届く前に売れ、ということです。平均して胴を取れればいいので、購入タイミングを複数に分けることで、購入価格を抑えます。よく使われる手法が、毎月定額で購入していくドルコスト平均法になります。

ドルコスト平均法

先程説明した手法をもう少し詳しく見ていきましょう。

ドルコスト平均法とは価格が常に変動する商品を一定金額ずつ購入し、平均購入コストを下げる手法です。基本的には価格が低い時に多く購入し、高い時に少なく購入するようになります。

商品は常に変動するため、長期的に見て上昇していても、短期的に下がることはよくあります。そういった場合に、一定額ずつ購入することで短期的な下げにも対応し、安く購入することができます。

デメリットとしては、当然一番安い状況でまとめて購入するよりは利益が減少することと、一方的に動く相場では不利に働くということです。

「オルタナティブ投資」でリスクコントロール

オルタナティブ投資とは、株式や債権といった一般的な投資先以外の投資対象や手法です。投資対象としては、農産物や鉱物、不動産商品、未公開株やオプション先物、ヘッジファンドなどで、一般投資家が直接投資できない商品が特徴となります。

市場が低迷していても収益を上げる可能性が広がり、株式や債券、不動産の値動きと相関関係が低く、うまく組み合わせることでリスクコントロールができるでしょう。

オルタナティブ投資の種類

比較的馴染み深いものとして、不動産投資があります。戸建住宅やマンション、アパート、高層ビルなども現物不動産投資です。オルタナティブ投資は様々な機関、例えば大学などでも行っていますが、その中でも未公開株と並んで多く投資されているのが不動産投資になります。

不動産投資の魅力とは、相対的に利益が大きく、しかも安定的なリターンが得られること。収益は毎月の賃貸収入なので、安定して定期収入が得られます。

株式の配当は年1回などですが、企業の業績に依存します。不動産収入は毎月入居者が入れば収入があります。

また、日々変動する株価などよりも価値は緩やかに変動します。

そして、インフレヘッジの効果があります。長期的な資産運用をする場合、インフレ対応というのは重要になります。日本はデフレが長く続いていますが、今後インフレになっていった時に、資産の収益率がインフレ率より低い場合、保有する資産は相対的に減少します。

例えば100円で買えていたものが、110円出さなければ買えなくなるということです。この場合は実質的に100円の価値が下がっていると言えます。

今、日本は日銀がインフレターゲットを2%に決めているように、どうにかしてインフレをすすめようとしています。このインフレターゲット2%のうちに家賃が含まれています。インフレがすすめば、家賃収入も増えていく、ということです。

デメリットは投資に資金がかかることと、流動性が低いことになります。REITなどは耳にしたことがあるかもしれませんが、オルタナティブ投資です。

ヘッジファンドも投資先になります。ヘッジファンドとは、アメリカのファンドが起源と言われ、様々な手法を駆使し、市場が上がっても下がっても投資家の資金を運用して高い収益を挙げるファンドで、ハイリスク・ハイリターンの運用をする場合が多いです。

一般的な投資信託には運用方法に制限があり、相場が一つの方向に進む場合に利益が出る仕組みのものがほとんどですが、ヘッジファンドは自由な運用が可能なため、市場の状況に関係なく利益を追求できます。

以前は富裕層向けの、限られた投資家のみがヘッジファンドに投資出来ましたが、今では投資信託など様々な方法でヘッジファンドに投資出るようになりました。

コモディティは金属や燃料、食料など。一般投資家でも投資対象にする商品で、金属、特に金は景気の影響が大きく響きます。「リーマンショック後」は金の価格が上昇し続けました。
原油価格はガソリンの価格に反映されるので、身近な商品と言えるでしょう。こちらも景気、特に近年は中国の景気による影響が大きいです。原油はOPECが産出量を決めています。

他にもインフラ資産など。道路や鉄道、上下水道、発電所などですね。こちらは景気の影響を受けにくい商品と言えます。

投資信託のリスクまとめ

投資信託のリスクを一通り説明してきました。今回説明したように、投資信託には様々なリスクがあり、それぞれを把握してリスクを分散させる事が重要です。そして、どれだけリスクを取るか、利益の目標設定が必要となるでしょう。

その上で、1年間でどれだけリターンを求めるのか。決めたリターンに対して標準偏差の低い投資先を見つけましょう。

正しい知識を持ち投資をすれば、刻々と資産が増えていくのは何より楽しいことです。今の時代は預金を預けるだけでは増えません。

将来に向けて貯蓄ができるように、よい投資信託を見つけましょう。

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