実はこんなに多い2重課税がつくもの。2重課税の仕組みについて解説します。

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消費税が10%に増税に伴って、普段払っている税金について改めて見直してみる人は多いのではないでしょうか。

日々の支出を節約する方法は色々ありますが、中でも払いすぎている税金がないかをチェックしておくことは欠かせません

税金の仕組みをしっかり理解しておけば、思いがけないところで2重課税で支払っているものを見つけることも可能です。実は税金の仕組み上、結果的に2重課税で徴収されてしまうものはいくつかあり、定期的に議論の的となっています。

それらの2重課税の中にも、申告次第で調整できるものと、税制上どうにもならないものとあるようです。

今回は2重課税にはどんなものがあるのか2重課税の仕組みについて解説致します。これからの節税対策に、ぜひお役立て下さい。

そもそも2重課税とは

それでは、最初にそもそも2重課税とはどういうことなのかを解説していきます。

そもそも2重課税とは、基本的に1人の納税者の、ある1つの項目に対して重複して課税されてしまうことをいいます。

もともと2重課税の定義自体がある意味不明確であるため、税法上の解釈によって、これは2重課税といえる、これは2重課税ではないなどと意見も様々です。

なぜなら、実際に納税するのは誰なのか、その税金を払ったのは誰なのか直接税や間接税など納税方法が異なるため、2重課税に対する区分がいまいち曖昧であることが現状です。

そこで、直接税と間接税の違いを見ておきましょう。

直接税

直接税とは、納税者と納税義務者が同一となる税金のことをいいます。税金を実際に支払った人によって、直接国や自治体へ納められる税金です。

直接税の代表的なものは、

  • 所得税
  • 住民税
  • 法人税
  • 自動車税
  • 相続税

などがあります。

間接税

一方、間接税とは納税義務者と実際に税金を負担するものが異なる税金です。消費者などが、何かを購入した際にお店や法人に対して税金を払いますが、実際に国や自治体に税金を納めるのはお店や法人となります。

ですから、実際に税金を払っているのは消費者でも、お店や法人から支払われた税金として処理されています。

間接税の代表的なものには、

  • 消費税
  • 酒税
  • たばこ税
  • ガソリン税
  • ゴルフ場利用税
  • 入湯税
  • 宿泊税(地域による)

などがあるのです。

2重課税の何が議論されているのか

というように、これらの直接税や間接税が複雑にからみ合ってしまい、1つの品目(収入や財産)に対して2回に渡って課税されてしまう結果となるケースが意外とたくさんあるのです。

必ずしも、全面的に2重課税となってしまうものすべてを否定すべきではありませんが、ただ、結果的に重複して税金を払ってしまう事実があることが、度々メディアでも取り上げられています。

消費税も増税を繰り返していることもあり、今後、私達が改めて考えていく税制の課題だといえるのです。

4つの2重課税

2重課税は、大まかに4つの種類に分類されており、現時点では申告することによって調整できるもの、できないものが存在しています。

では、この2重課税の4つのタイプを解説しておきましょう。

課税項目の違いによる2重課税

課税項目が何になるのかによって、2か所にまたがって課税されてしまうケースがあります。

その代表的なものが所得課税ベースにかかる2重課税で所得税を支払っているのに、さらに課税対象となる所得にその他の税金が課されてしまう場合です。課税項目が異なることで、生じてしまう2重課税の場合は、状況によっては減税・免税の対象となるものならないものがあるとされています。

納税者の違いによる2重課税

もう1つ、重複の原因となっているのが納税者の違いによる2重課税です。

すでに課税込みの商品やサービスに対して、消費税が上乗せされてしまうケースです。課税込みの商品やサービスの場合は、国の税法では今のところ2重課税とされないとの見方が強くなりますが、議論の余地はかなり大きいとする法律家は少なくありません。

国境によって生じる2重課税

近年では、海外進出によって他国に支店を構えるなど海外で所得を得る企業も増えています。また、以前から企業や個人事業主によって多くのものが海外から仕入れられています。

この場合、課税を行う国が異なるため、1人の納税者が購入した商品や所得に対して2か国から課税されてしまう場合が多発しているようです。

これは、申告することによって減税・免税が可能であると法的に認められています。

配当や利子所得にかかる2重課税

そして、最後に金融商品の配当や利子所得にかかってしまう2重課税です。

定期預金、株式、債券、FXの取引などにおいて投資家は配当や利子によって所得を得ることができます。これらの所得は課税対象となっていますが、各投資家の納税方法によっては2重課税となる場合があることが指摘されています。

松井証券の代表取締役、松井道夫氏も「配当金」に対して法人税と個人の税金が重複される場合があり、これはおかしいと強く主張しています。

配当や利子所得に対して、税制上は特別措置があるにはあるのですが、2重課税を阻止する対策になっていないとのことです。

どんなものが2重課税?

それでは、私達の身の周りには、どのような2重課税があるのか具体的に見ていきたいと思います。

合わせて、重複した課税分を減税・免税とできる場合に、どのような方法があるのかも解説していきます。

所得税と法人税

会社が稼いだお金には法人税がかけられ、個人の収入には所得税がかけられています。

ここで、所得税と法人税の2重課税となる配当金ついて解説していきます。

配当金の2重課税

通常、上場株式会社が株主に支払う配当金とは、その企業が法人税を納めた後に残った利益から分配されています。ということは、この分配は企業の売り上げとしてもともと課税対象となっているのです。

法人税を支払った後、投資家は分配金を受け取ります。個人であれ法人であれ、分配金を受け取った投資家は、その分配された金額を所得(利益)として計上しなければなりません。

つまり分配金自体は、

  • 企業のところで→法人税
  • 投資家のところで→所得税

として、2か所に渡って課税されていることになるのです。

対策として考えられることは・・・
  • 個人の受け取り配当金から、法人税相当額を所得控除する方法
  • 法人が配当金を支払う時点で、あらかじめ損金扱いとして算入する方法

などが挙げられていますが、そもそも納税者が異なるため根本的な解決には至らないとされています。そこで分配金を非課税にする案も持ち上がっています。

特定同族会社の留保課税

法人税が繰り返し何年にも渡って課税対象となっていると議論されているもので「内部留保」という科目があります。

内部留保とは実際に会計上に出てくる科目ではありませんが、利益余剰金や利益準備金などの会社の利益を貯めた金額のことをいい、会社の純資産額の一部として金額が反映されていくものです。

この内部留保は、毎月、毎年の利益が積み重なったものであります。つまり、すでに課税対象となった過去の売り上げ利益がため込まれたものです。

ところが、特定の同族会社における、この内部留保=現金の保有として毎年課税されてしまいます。そこで、一旦課税したものを再度、再々度に渡って課税していくことになりますので、これは多重課税ではないか、と議論されています。

対策として考えられているのは・・・
  • 従業員への給与額を増やす
  • 設備投資をする
  • 株主に配当を出す

などが対策として講じられていますが、同族会社が多い企業の脱税を防ぐ役割もあり賛否両論と様々な意見が聞かれています。よく議員の立候補演説では、この内部留保課税を一般企業にも幅広く適用していくことが主張されています。

相続税と所得税

申告することで、解決できる場合が多いとされているのが、相続税と所得税の2重課税です。

相続税とは、不動産や保険、預金、その他金融商品などの資産を相続した際に生じる税金のことをいいます。さらに相続した際の資産に対して所得税が2重で課される場合があり、その資産が何なのかによって減税・免税の対象となる場合があります。

これまでは、相続した資産からキャピタルゲイン(利益)が生じる場合には、その利益は所得となり、それぞれ相続税と所得税と課税されたとしても2重課税ではないとされてきました。

ところが、このような税制に対して不服の声も多く、これまでに何度か訴訟問題が起こされてきました。その結果、一定の項目に対しては相続税と所得税を同時に課税することはできない旨が新たに提示されています。

裁判所の判定にも地域によって格差があるのが現状ですが、概ねのところで相続税と所得税が同時に課税されない対象は以下のような内容となります。

2重に課税されない対象

年金形式で受け取る生命保険に対しては、まず相続時に相続税が課税されます。そこで、毎年受け取る年金形式で支払われた保険金に所得税が課税された場合は、違法の2重課税にあたるとされています。

ただ、国税庁では、それぞれ資産を引き継ぐ際の状況が様々であるため、その場面ごとに分析・判断していく必要があるとの見解です。相続税と所得税が同時に発生する場合には、専門家に相談するように注意して下さい。

※保険と活用して相続税・所得税を節税する方法はこちらから。

固定資産税と償却資産税

さらに、相続時だけにかぎらず、不動産投資や住宅購入などによって発生しがちな2重課税として、固定資産税と償却資産税があります。

固定資産税とは、土地や住宅・商業施設などの建物、自動車や設備機器などの資産にかかる税金をいいます。さらに、償却資産税とは、もともとそのような名称の税科目はないのですが、償却できる金額に対して使われている言葉になります。

減価償却できるものは、基本的にその資産価値は年数とともに減少していくとされています。ところが、これを自らで減価償却して計上していかない限りは、本来償却できる部分の資産の税金までも2重で支払ってしまうことになります。

対策として・・・

2重課税を避ける対策として必要なのは、固定資産税の対象となるもの、減価償却の対象となるものを正確に把握しておく必要があります。固定資産税や減価償却の申告は、毎年1月に行われますので申告漏れや間違えがないか、しっかり確認することが大切です。

自動車や機械設備等は、固定資産税や減価償却の対象として見逃しがちな項目になるので、特に注意するようにして下さい。

※減価償却に関する記事は以下からご覧いただけます。

※土地や建物の固定資産税に関する記事はこちらを参考にして下さい。

消費税と物品税

物品税とは別名ぜいたく税とも呼ばれていたもので、ぜいたく品として購入されるものに以前課されていた税金です。消費税の制定によって現在では廃止されている税金になりますが、ガソリン税、たばこ税などと名前を変えて現在も残っている税制です。

そもそも消費税が登場したことによって、2重課税となる恐れがあるために物品税は廃止されたのですが、現在も消費税と2重で課税されているものはたくさんあります。

これら物品税の名残となるいくつかの税金は、間接税と呼ばれており、実際に税金を支払う人と納税する人が異なるため、一般的な認識が低いのが特徴です。

いくつか代表的なものを挙げていきます。

ガソリン税

ガソリン税は、車やバイクの燃料として給油するレギュラーガソリン、ハイオクガソリン、軽油、灯油など様々な石油製品に課されている税金となります。

それらのガソリン税に加えて消費税が課税されており、これは2重課税ではないのか、と現在議論されています。車やバイクの燃料は現代ではぜいたく品ではなく、生活必需品・必要経費だといえます。

また、すでに車関連では多数の税金がかかることで、改正が求められている税の1つです。

ガソリンの種類によって、税率は異なりますが、ガソリンの約3分の1から半額近くは税金が占めています。

※ガソリン税に関する記事は以下から詳しくご覧頂けます。

たばこ税

たばこを購入する際にも、消費税以外の税金がたばこの金額には含まれています。

たばこに含まれている税金には、

  • 国たばこ税
  • 地方たばこ税
  • たばこ特別税
  • 消費税

の4種類があり、一般のたばこでは税負担率は約6割となりガソリン以上に税負担率は高くなります。

※しかし、たばこに関しては健康を害する恐れが高いぜいたく品です。従って、税率を高くすることで喫煙習慣を見直す人が多くなることが期待されています。一概に否定はできない税制でもあります。

酒税

酒税とは、アルコール度数1%以上の飲料に課される税金で、江戸時代から続いている税制でもあります。

一般的には、ビールの税率が最も高く、それ以外はアルコール分が高くなるほど税率は高く設定されてあります。お酒1キログラムに対する税率が酒税法によって定められています。

酒税の例をいくつか挙げると、

  • ビール 633ml→小売り価格355円(酒税46.6円込み)+消費税
  • 発砲酒25%未満 350ml→小売り価格164円(酒税36.1円)+消費税
  • リキュール 350ml→小売り価格143円(酒税27.0円)+消費税
  • 果実酒 720ml→小売り価格615円(酒税16.8円)+消費税
  • ウイスキー 700ml→小売り価格2030円(酒税150.37円)+消費税

といった内容になります。

※酒税もたばこ同様に、健康を害する恐れのあるぜいたく品だといえます。従って、2重課税であったとしても強く反論できないないのが正直なところでしょう。

海外法人税と源泉所得税

海外の税制と重複して国内でも課税されてしまい、2重課税となってしまうもので、最も多いのがソフトウェアやアプリケーションの販売です。これらの商品は、国内からでも簡単に海外へ販売することができます。

あるいは、海外の現地法人が国内に向けて販売する場合にも同様のことがいえます。

ここで重複する税金とは、

  • ソフトウェア、プログラムなどの著作物の譲渡にかかる源泉所得税
  • 企業の売り上げに課される法人税

これが、もし2か国にまたがった場合にはそれぞれの国で課税されてしまう可能性があります。

他にも、現地法人にて所得を得た場合に、日本と他国の2か国から所得税や法人税が課税されてしまう場合があります。

対策として・・・

対策としては、対象となる国が日本と租税条約を締結している場合には、租税条約の条項により税率の軽減または免税にできる場合があります。

該当する見込みがあると思われる場合には、納税者自身が国税庁に申告する必要があります。該当するかどうか判断に悩む場合は専門家に相談してみましょう。

※以下は、財務省が公開している租税条約に関する資料です。対象となる国や地域、対象となる税金の種類などが確認して頂けます。

その他2重課税

その他にも2重課税となっているものには、

  • ゴルフ場利用税と消費税
  • 入湯税と消費税
  • 公営ギャンブルと国庫納付金
  • 自動車関連の様々な税金

などもあります。

他にも今後、地域によっては市が徴収する「宿泊税」と県が徴収する「宿泊税」とで、2重課税となる可能性が注目されています。宿泊や旅行の際にかかるその他消費税との兼ね合いも気になるところです。

まだ、これから普及が進むと予想されている宿泊税に関する記事は以下からご覧頂けます。今後の参考にして下さい。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は、意外とたくさんある2重課税について解説していきました。

2重課税の中には、

  • 現在申告することで減税・免税の対象とできるもの
  • 2重課税となるかどうか解釈が微妙なもの
  • 今後2重課税として改正の必要があると見込まれるもの
  • ぜいたく税として、徴収されても仕方がないもの

などと、その税金の種類によって対応が異なることがわかりました。

税金は国民の義務であり、必ず納める必要がありますが、支払いすぎているものがないか、減税できるものがないか、しっかりと見直していくことで、納税額を少額に抑えていくことは可能となります。

特に、ぜいたく税の比重が多い人は、それらの消費量を抑えることで節税につながります。

また、相続税と所得税の項目でも述べたように、仮に2重課税として税法上に認めてもらえない場合でも、不服があると問いかける人が増えることで税制の改正につながる場合もあります。

今回の消費税10%を機会に、皆さんも普段支払っている税金の内容を、一度しっかりと正確に認識しておくことをおすすめ致します。

 

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