株式投資と投資信託の違いを「リスク」「リターン」「コスト」の3つから解説

最近ではインターネットの証券口座を気軽に開設できることもあり、投資を始めやすい環境が整ってきました。投資を始めようと思って口座を開いたのは良いけど、商品がたくさんあって、どうしたら良いか分からない…といったお悩みも多いのではないでしょうか。

投資商品の選択肢も広がっており、一昔前なら投資といえば株式でしたが、近年は投資信託という耳馴染みの無い商品も。この記事では、株式投資と投資信託の違いを紹介し、どのような戦略で投資をするのがおすすめなのか、解説していきます。

「株式投資」と「投資信託」の違い

はじめに、株式投資と投資信託それぞれの特徴を対比しながら解説します。

株式投資の特徴

株式投資の特徴①株主優待や配当が貰える

株式投資を始めたい人にとって、一番楽しみなのは株主優待や配当を貰うことでしょう。株式を保有するだけで、その企業の自社製品などを貰える株主優待や、企業の利益の一部をお金で貰える配当金といったお得な特典が付いてくるのです。

ただし、上場している株式のすべてが株主優待や配当金を出しているとは限りません。株式を買う前に、必ず証券会社のホームページを見てください。自分が納得できる株主優待や配当金を出している株式を買いましょう。

投資信託の場合でも、分配金として定期的にお金を還元してくれる商品があり、株式投資における配当金と似ています。一方で、株主優待は投資信託とは違い、株式投資だけのメリットです。

株式投資の特徴②好きなタイミングで売買できる

株式投資といえば、安いときに買って高くなったら売る、というイメージが強いのではないでしょうか。このように、株式の値段の上下を上手く利用して得られる利益のことを「キャピタルゲイン」と呼びます。

株式投資は取引所が開いている時間であれば、いつでも売買することができます。日本の代表的な取引所である東京証券取引所なら9時から15時なので、この時間内なら自由に売買できる、と考えておきましょう。

1日のうちに何度も売買できるのが株式投資の特徴なので、上級者になれば、デイトレードをして1日で大きく利益を上げることもできるのです。後述しますが、投資信託の場合は株式と違い、1日で何度も売買することができないので、同じ稼ぎ方はできません。

株式投資の特徴③ある程度まとまった資金が必要

株式の価格を調べてみると、1株あたり100円から5000円といった価格のことが多く、お金が少なくても始めやすいように見えます。しかし、日本の証券取引所では、1株ずつの購入ができないのです。

最低でも100株ずつ、といった単位での購入になるので、1株100円だったとしても、100株まとめて1万円が必要です。1株5000円なら100株で50万円で、まとまった資金が必要になります。

これから投資を始める初心者の方の中には、いきなり数万円から数十万円を株式投資に回すのを怖く感じる方もいるでしょう。後述しますが、投資信託は株式と違い、このデメリットが緩和されます。投資信託の特徴もご覧になってくださいね。

投資信託の特徴

投資信託の特徴①運用のプロにお任せできる

投資信託のメリットで最も大きいのは、投資のプロに資産運用を任せられることです。「投資信託」という名前のとおりの商品なのです。

投資の本質は「今後儲かりそうな事業に投資すること」ですが、初心者がこのような事業をしている会社を探すのは大変でしょう。世界中の経済ニュースを中心に、幅広い分野の情報収集が欠かせません。

このような情報収集や銘柄の選定をプロにお任せできるのが投資信託です。手数料はかかりますが、忙しくて投資のための勉強や情報収集の時間が取れない人にはおすすめです。

ちなみに、投資信託を販売している運用会社も、主に株式へ投資を行っています。投資信託も、実質的には運用会社を介した株式投資となります。

投資信託の特徴②価格は1日に1回決まる

証券取引所が開いている時間中、価格が変動する株式とは違い、投資信託は1日に1回だけ価格が決まります。これを「基準価額」と呼びます。

また、基準価額が公表されるタイミングは、投資信託の売買の申込を締め切った後です。つまり、投資家は当日の基準価額が分からない状態で、投資信託の取引を行うのです。これを「ブラインド方式」と呼びます。

1日に何度も売買して個人投資家が大きく利益をあげられる可能性もある株式投資とは違い、投資信託は1日に1回、それも価格が分からない中での売買となります。すなわち、個人で売買する商品ではなく、ある程度の期間は運用のプロに資産運用を任せる投資方法なのです。

投資信託の特徴③少ない資金で分散投資ができる

同じリターンの場合、1種類の株式を多く保有する場合と、複数種類の株式を少量ずつ保有する場合では、どちらが低リスクなのでしょうか?

実は、複数種類の株式を少量ずつ保有する場合の方が、価格変動しにくく低リスクであることが数学的に証明されています。

このような投資法を「分散投資」と呼びます。投資信託では、多くの顧客の資産をまとめて多数の銘柄に投資するため、分散投資が基本です。

その上、投資信託は少ない資金でも始めることができます。インターネット証券会社なら、100円といった単位から投資をすることができるのです。

前述のとおり、株式投資では1つの銘柄を買うのに数十万円もの資金が必要になりますが、投資信託は違います。数百円という資金から始めることができ、しかも分散投資ができる商品なのです。

株式投資と投信信託の違い|簡単なまとめ

株式投資と投資信託の違いについて、ここまでの内容をまとめましょう。

【株式投資の3つの特徴】

  • 株主優待や配当が貰える
  • 好きなタイミングで売買できる
  • ある程度まとまった資金が必要

【投資信託の3つの特徴】

  • 運用のプロにお任せできる
  • 価格は1日に1回決まる
  • 少ない資金で分散投資ができる

株式投資は自分に合った企業の株式を買えば、株主優待といったメリットを受けられます。また、時間に余裕がある方ならデイトレードでも大きな利益を狙えるかもしれません。

一方、投資信託は資金が少なくても始められますし、何よりプロに資産運用を任せられるのが強み。投資の初心者で、株式の銘柄選びに時間をかけられない人には特におすすめです。

株式投資・投資信託|儲かるのはどちら?

株式投資も投資信託も儲け方は同じで、次の2通りです。

  1. 価格の値上がりを利用した、安く買って高く売る利益(キャピタルゲイン)
  2. 株式や投資信託を保有しているともらえる配当金・分配金(インカムゲイン)

また、キャピタルゲインとインカムゲインを合わせたリターンを「トータルリターン」と呼びます。

これらの平均的なリターンについて、株式投資の場合と投資信託の場合に分けて解説していきましょう。あくまでも過去の統計に基づくので、将来にわたって同じリターンを得られる確証はありませんが、多くの投資家が参考にしている情報です。

株式投資の平均的なリターン

株式投資の場合、1年で6~8%前後の利益をあげることができる、と言われています。しかし、この数字にはからくりがあるのです。

株式投資には初心者からベテランまで様々な人が参入しています。ベテラン勢が1年で資産を2倍にするなど大きく勝っているため、平均リターンを底上げしているのです。

一握りの上級者を除くと、年率リターンは6〜8%には届きません。投資初心者の方は、株式投資で4〜5%前後の利益を目標にすると良いと考えられます。

投資信託の平均的なリターン

投資信託によってリターンは様々ですが、1年で4〜8%と見ておきましょう。

最も一般的である、日経平均株価連動など日本の株式に投資する投資信託なら、年率リターンは6%前後です。債券が含まれる場合は、もう少しリターンが少なくなります。米国など外国の株式が含まれる場合は、逆にリターンが高くなります。

株式投資と投資信託はどちらの方が高リターン?

平均的なリターンの数字を比較すれば、株式投資でも投資信託でも、概ね6%前後と同程度のリターンを見込めることが分かります。しかし、株式投資は一部の上級者によって平均的なリターンが引き上げられています。

つまり、投資初心者の立場なら、株式投資よりも投資信託の方がリターンが高い傾向がある、と言えるでしょう。

株式投資・投資信託|リスクが高いのは?

リスクとは、投資資産の価格変動によるブレの大きさのことです。リスクか高い投資をすると、日々の価格変動が大きくなってしまいます。

この項目では、リスクとリターンの関係を解説した後、株式投資と投資信託のリスクを比較していきます。リスクの計算法を解説してから、それぞれのリスクを比べてみましょう。

リスクとリターンの関係

日常生活でも頻繁に使われる「ハイリスク・ハイリターン」。危険を冒して大きな利益を取りに行くという意味を持ちます。投資の世界でも同じで、期待リターンが高い投資先ほどリスクも高く、反対に期待リターンが低い投資先ほどリスクが低いのです。

これから投資を始める方は、株式投資でも投資信託でも、自分が必要以上にリスクを取っていないか、気をつけるようにしましょう。例えば、5%のリターンを得るために5〜10%のリスクなら許容できますが、50%のリスクともなれば、冒険しすぎかもしれません。

投資におけるリスクの計算法

株式投資・投資信託いずれにおいても、リスクの計算法は同様です。例えば、2018年1月1日〜12月31日までの1年間のリスクを求める場合、次の3ステップで計算します。

1年間のリターン(年率リターン)を求める

年率リターン=12月31日の価格/1月1日の価格-1

1年間のリスク(年率リスク)の2乗値を求める

年率リスクの2乗=(1月1日の価格-年率リターン)+(1月2日の価格-年率リターン)+……+(12月31日の価格-年率リターン)

 1年間のリスク(年率リスク)の2乗値を求める

年率リスク=√年率リスクの2乗

リスクはこうして求められますが、自力で計算しなくても、証券会社のホームページに掲載されていることが多いです。リスクに見合ったリターンを見込めるかどうか、ホームページで調べてから株式投資や投資信託を始めましょう。

株式投資の平均的なリスク

日経平均株価の平均的な年率リスクは、10〜20%程度です。様々な株式をまとめてこの程度のリスクに落ち着く、という意味ですので、個別の株式ならより高リスクと考えられるでしょう。

株式の平均的なリターンは6〜8%です。つまり、投資資産の10〜20%程度は価格変動する可能性があるものの、耐えて保有していれば6〜8%の利益を手に入れられるかもしれない、ということです。

投資信託の平均的なリスク

最も一般的である、日経平均株価に連動する投資信託の場合、上記と同様に平均的なリスクは10〜20%程度です。

日本の国債ははリスクが1%程度と低いので、リスクを下げる目的で組み入れられている投資信託もあります。米国など外国のかふしきはリスクが高いので、このような銘柄が入る投資信託はリスクが高くなります。

投資信託でも、リスクの計算法は同じです。自分で計算しなくても、証券会社のホームページに載っているので、調べてみましょう。

株式投資・投資信託はどちらのリスクが高い?

リスクは銘柄によって異なるため、株式投資と投資信託のどちらのリスクが高いと断言することはできません。投資において重要なのは次の2点なので、証券会社のホームページで調べてから投資しましょう。

①年率何%のリターンが欲しいのか、目標を定める
②目標のリターンを手に入れるために、許容できるリスクに合った銘柄を選ぶ

株式投資・投資信託|コストが安いのは?

コストとは、売買にかかる手数料や、投資信託の運用会社に支払う銘柄維持費などのことです。この項目では、株式投資と投資信託それぞれのコストについて解説します。

株式投資のコストはどれくらい?

株式投資に必要なコストは、売買に必要な取引手数料です。売買が成立することを「約定」といい、取引手数料は1回の約定金額の何%と設定されている場合や、1日の約定代金の合計に応じて定額制になっている場合もあり、証券会社によって異なります。

いずれの場合でも、ネット証券なら約定代金の概ね1%程度が手数料として差し引かれます。また、最近では、約定代金が1日10万円以下の場合、手数料が無料のネット証券が増えてきています。

投資信託のコストはどれくらい?

投資信託は、「購入時手数料」「信託報酬」「信託財産留保額」という3つのコストがかかります。

購入時手数料とは、投資信託の購入時に支払う手数料のこと。手数料率は購入価格は0〜3%のことが多いです。最近では購入時手数料が無料の商品も多くあります。

信託報酬とは、プロに資産運用を任せる投資信託ならではのコストで、運用にかかる費用を負担する手数料です。年率にして基準価額の0.01〜3%程度が一般的。

信託財産留保額とは、投資信託を解約するときにかかる費用のこと。基準価額の0〜0.5%程度のことが多いです。

おすすめの資産運用方法

ここまで、株式投資と投資信託の違いについて見てきました。これらの違いを踏まえ、おすすめの運用方法を紹介します。

株式投資か投資信託のどちらか一方を選ぶ場合

自分で期待できる銘柄を調べる時間の余裕があり、資金も潤沢なら、株式投資がおすすめです。1日に何度も売買できるので、銘柄選定の能力を磨けば、安く買って高く売るデイトレードで儲けることも可能です。

一方、投資にかけられる時間が無い人や、資金が少ない人には投資信託がおすすめです。株式投資よりも手数料はかかりますが、プロに任せられることや、100円といった少額から始められる魅力があります。

株式投資と投資信託を組み合わせる場合

理想的には、株式投資か投資信託のどちらかだけではなく、両方組み合わせた方が良いでしょう。双方のメリットを取り入れることができます。

おすすめは、日経平均株価に連動する投資信託をメインに、配当金の高い株式を購入することです。運用のプロに任せる投資信託をメインにすることで大きく損する可能性を減らします。投資信託だけでは手数料が割高になってしまうので、高配当な個別の株式を購入し、リターンを高めます。

株式投資と投資信託の違いまとめ

株式投資と投資信託の違いは、次のようにまとめられます。

  • リスクとリターンは両者ともに同程度
  • 株式投資は上級者ならデイトレードで大きく稼ぐことも可能
  • 投資信託は運用のプロに任せるので、手数料はかかるものの、手堅く利益が得られる

株式投資と投資信託のどちらが適しているかは、目指すリターンや手持ちの資金の量などによって異なります。両者の違いを踏まえ、バランスの良い投資ができるよう、心がけましょう。

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