知って驚く2重課税のガソリン税!約半分は税金が含まれているガソリン税について解説。

消費税に住民税に所得税など、国民の義務として支払うものは幾多に渡ります。さらに健康保険料や年金なども含めれば年間でかなりの額を国に納めていることになります。

しかも普段払っている税金の中には、消費税と重複して課税される2重課税の品目もいくつかあります。2重課税の代表的なものにガソリン税があります。

もしかすると、ガソリン税が課されていたことすら知らない人も結構多いかもしれません。今回、消費税10%への増税を機に、ぜひ税金のしくみについて理解しておきたいものです。

少しでも納税額は抑えていきたいと願う人が多い中、ガソリン税のように2重課税の存在を知っておくことは意義が深いといえます。確かに税金は国民の義務となりますが、いわれるままに税負担を増やしていくにも限界があります。

そこで、今回は知って驚く2重課税、ガソリン税について解説していきます。今後の私達の税制を見直すきっかけとなれば幸いです。

ガソリン税はいくら?

現代の私達の日常において、車やバイクは通勤やビジネスにおいて必要不可欠な交通手段の1つです。

今のところ、電池で走る車やバイクも出現していますが、一般的にはガソリンを燃料とする場合が多くなります。車やバイクを利用する人は、もちろんガソリンスタンドでガソリンを購入します。

そこで、ガソリンを給油して代金を払いながら、ガソリン代の中にガソリン税が含まれていることはご存知だったでしょうか?

えっ?普通に消費税が課税されるだけではないの?

と疑問に思う人も多いことでしょう。

ガソリン税とは

ではそもそもガソリン税とは一体何なのでしょうか。

ガソリン税とは、原油を原料として供給される石油精製品に課される税金のことをいいます。

  • ガソリン(レギュラー、ハイオク)
  • ディーゼル(軽油)
  • 灯油(石油)
  • 車体用オイル

など・・・

ガソリン税の種類

ガソリン税の種類はいくつかあり、

  • 揮発油税
  • 地方道路税
  • 軽油引取税
  • 石油税

などに分類されています。購入するガソリンの種類や販売形態によって、課税される税の種類が異なります。

これらを総称してガソリン税と呼んでいます。

これら石油関連の税金の合計金額は年間5兆円を超えると言われています。

1リットルあたりのガソリン税

では1リットルあたりのガソリン税はいくらなのでしょうか。

  • レギュラー・ハイオク→1リットルあたり53.8円
  • 軽油(ディーゼル)→1リットルあたり32.1円
  • 灯油(石油)→1リットルあたり2.8円

のガソリン税がかかっています。一時は、ガソリン税が廃止される案もあったようですが、やはり国の財政がかなり厳しいということで継続されているのです。

ガソリン税は2重課税?

ガソリン税はすでにガソリンの購入価格に含まれている税金で、普段、何気に給油したり灯油を購入したりするたびに支払っていることになります。

そして、ここで注視しておきたいのが、ガソリンにかかる消費税です。ガソリンを給油するごとに、実はガソリン税とさらに消費税が課税されています。

つまり、これは2重課税ではないか!

ということで、以前から論争されている税制でもあるのです。

なぜこのように2重課税になってしまうのか、ガソリンが私達消費者に販売されるまでの流れを簡単にご説明しておきます。

ガソリンが消費者に届く過程

ガソリンが一般の消費者へ届くまでには、大きく2種類の業者が介在しています。

  1. 石油元売り会社
  2. 特約店

それぞれの業者の特徴を簡単にご説明しておきます。

石油元売り会社

石油元売り会社とは、ENEOSや出光、昭和シェル、コスモ石油などの原油を輸入する会社です。

これらの石油元売り会社は、主にサウジアラビアなどの中東の原油産出国から、天然100%の原油を仕入れています。

石油元売り会社は原油を輸入した時点で国にガソリン税、石油税を国に支払います。

特約店

特約店とは、石油元売り会社と契約をしているガソリンスタンドなどの業者です。

ガソリンスタンドは、私達消費者にガソリンを供給するために石油元売り会社からガソリンを仕入れます。

そこで、仕入れの際に各特約店は揮発油税、軽油引取税を国に支払います。

一般消費

そして、最終的に一般消費者はガソリンスタンドにてガソリンを購入するわけですが、このガソリンにはそもそも、ここまでの過程でそれぞれの業者が支払ったガソリン税が含まれているのです。

ですから、1リットル○○円、と店頭で表示されている価格は、ガソリン本体の価格のみではないのです。

ガソリン本体の価格に、ガソリン税が付加された価格がガソリンの単価として認識されていることになります。

端的にいえば、原油の輸入の段階でかかる税金がめぐりめぐって消費者のところまでたどり着く、という流れになります。

知って驚くガソリン代のしくみ

それでは、知って驚く人も実に多い、ガソリン代のしくみを解説していきます。

ガソリン代と税金の例

例えば、レギュラーガソリンを購入した際にかかる税金を計算してみましょう。

レギュラーガソリンの場合

ガソリンは時期によって価格に変動がありますので、例として1リットル140円で計算していきます。

1リットル140円

140円のうち→ガソリン税は53.8円
そしてプラス石油税の2.8円がかかっています。

本来、ガソリン本体の単価は、85.1円です。

しかし、実際に消費税の対象となる価格は、ガソリン税込みの金額140円となります。そうすると単価140円に対する消費税8%だとして、11.2円が加算されます。

最終的に支払う金額は 1リットル151.2円です。

ガソリン代151.2円に含まれる税金

この151.2円にいくらの税金が含まれているでしょうか。

ガソリン税53.8円+石油税2.8円+消費税11.2円=67.8円!

つまり、140円の買い物をした際に、最終的にはトータルで67.8円の税金を支払うことになるのです。これは約半分は税金として払っていることになります!

これは、本当に「驚く!」に値する事実だといえるでしょう。

軽油の消費税は安くなる

ガソリンの種類はいくつかありますが、ディーゼル車などが利用する軽油に関しては消費税は少なくなります。

なぜなら軽油の場合は、消費税の対象となるのが1リットル140円に対して、ガソリン本体の価格だけとなるからです。

軽油1リットル140円の税金

軽油1リットル120円にかかるガソリン税は、

軽油引取税32.1円
ここでかかる税金32.1円は消費税の対象外とされています。

石油税2.8円+ガソリン本体価格85.1円=87.9円

この87.9円が消費税の対象となり、消費税7円が加算されることになります。

最終的に支払う金額は127円となるのです。

この場合は、若干税金の比率は少なくなりますが、120円の買い物に対して、41.9円の税金を支払っているというこです。約3分の1が税金です。

なぜ軽油の消費税が安くなるのかというと

通常のガソリン代にかかるガソリン税と石油税は、石油元売り会社が国に払っている税金であり、最初からガソリンを卸す時点で生産コストに含まれる金額とみなされています。

ですから、ガソリンを販売する際にも免税とならないとされています。

反面、軽油引取税はガソリンスタンドが納める税金となります。そのため、この税金に消費税をつけることはできないとされていますが、現在でも議論されている税制となります。

ガソリン税に対する政府の見解

そもそもガソリン代の約半分が税金となる事実に対して、もちろん議論する声は以前からありました。

しかし、実際には国は負債を抱えており、それに少子高齢化という現実が人々を納得させてきました。

ところが、今回の消費税10%の増税にあたり、再びこのガソリン税、2重課税に対する疑問が最近メディアでも取り沙汰されるようになってきたのです。

また、増税か、一体税金だけでいくらぐらい普段払っているのだろう・・・

というように増税が、普段見過ごしがちな税制について考える機会を与えているのです。

なぜ2重課税をするのか

それでは、このガソリン税と消費税の2重課税について、政府はどのような見解を持っているのでしょうか。

実はガソリン税に対する疑問は、ガソリン代の値上げや消費税増税が発表される度に論争の的となっています。

税法の専門家などによって、「ガソリン税は2重税だ!」「いや、ぎりぎり2重税にはならない!」と判断は大きく異なるようです。

約半分が税金となるガソリン代に対する政府の見解が気になるところですね。政府はどのようにこのガソリン税を解釈しているのでしょうか。

税も生産コスト

結論からいうと、政府の見解では、ガソリン税は生産コストとして見なされるということです。

一般のガソリン税は、先述のようにすでに他国から原油を輸入した時点で、企業が国に納税しています。

石油元売り会社はこの税金の金額を、ガソリンの販売価格に含めます。従って、ガソリン税はあくまでも商品を生産するための必要経費になるいうことです。

うやむやな判断基準

そこで、そもそも商品としてのガソリン単価にはガソリン本体の価格とガソリン税が分離できないものとして判断されています。

つまり、確かに2重課税になっているが、理論的には2重課税ではない、という何だか納得すべきか反論すべきか、うやむやな判断基準です。

しかし、どう解釈したところで、実際にガソリン代のレシートにはしっかりとガソリン税はガソリン本体の価格とは別で記載されてあります。

おそらく今後、私達が改めて考えていかねばならない税制の1つだと言えるでしょう。

ガソリン税の歴史

では、ここでガソリン税の歴史を大まかに振りかえっておきたいと思います。

明治41年 石油消費税が制定

始めて石油への課税が始まったのは、明治41年のことです。戦後の燃料調達、経営上の要求に応えるために制定されましたが、大衆からの反対が強く対象12年にいったん廃止されました。

昭和初期に再びガソリン税が立案される

しばらくガソリン税は廃止されていましたが、昭和初期に入ってから、急激に自動車が一般家庭に普及し始めたことがガソリン税を再制定するきっかけとなります。

車の燃料に対して課税することによって、全国の道路設備にかかる費用が徴収できるとの理由で、議会に立案されましたが、しばらくはまだ実施はされませんでした。

昭和12年 揮発油税が創設

そして、昭和12年に国の燃料国策として「揮発油税」が車の燃料に課税されるようになりました。しかし、昭和18年に石油専売法が制定され、またこの税制は廃止されてしまいます。

昭和24年 ガソリン税の原型が制定

昭和24年に、その他の高税率となる税制を廃止する代わりに、新たに再び揮発油税が導入されることになります。その後、国内では自動車産業の発展が著しく進み、道路整備・道路事情への対策が急務となり、「この揮発油税」が現在のガソリン税の原型として現在に引き継がれているのです。

国税庁による、「揮発油税の沿革に関する考察」が以下からご覧頂けます。関心のある方は参考にしてみて下さい。

2008年以降はガソリン税の一部撤廃が議論

このようにガソリン税は時代のニーズに合わせて、制定と撤廃を繰り返し、内容を変えながら現在に至るのです。現在、ガソリン税を構成する税率には2種類のガソリン税があります。

ガソリン税 本則税率28.70円
ガソリン税 暫定税率25.1円

ガソリン税はこの2つの税率を合わせて53.80円と設定されています。もともとは本則税率の分しか課税されていなかったのですが、原油価格の上昇によって暫定税率が原油価格に応じて付加されるようになったのです。

2008年以降は、消費税を増税するのであれば、せめてこの暫定税率の分だけでもガソリン税を撤廃できないかといった声が聞かれています。

自動車関連の税金

なぜ、ガソリン税を見直していくことが必要かというと、すでに自動車関連では消費税だけに限らず多額の税金がかかっているからです。

この機会に自動車を購入・保有する際にかかる税金について確認しておきましょう。

自動車の購入にかかる税金

自動車を購入した時にかかる税金は、

  • 自動車取得税
  • 自動車や部品などを購入する時の消費税

の2種類があります。

自動車の保有にかかる税金

自動車の保有にかかる税金として、

  • 自動車重量税
  • 自動車税
  • 軽自動車税

などがあります。これらの税金にプラス、燃料補給する度にガソリン税がかかるわけで、車1台を利用し続けるだけでも相当な税額を払っていることになります。

他にもまだある2重課税

今回ご説明したガソリン税の他にも、2重課税とみなされる税制はまだ他にもたくさんあるのです。

気づかずにいたけれど、普段の何気ない暮らしの中で2重に課税されているものにはどんなものがあるのでしょうか。

今後、税制を見直す余地があると思われる2重課税を、最後にいくつかご紹介しておきたいと思います。

酒税、たばこ税

酒税はアルコール度数1%以上の飲料に課税される税金で、酒税法によって大きく4種類の酒類に分類して税率が定められています。お酒を購入する時には、この酒税にプラス消費税が課税されます。

たばこ税は、国内のたばこ、外国のたばこに課税される税金です。たばこ税の税率は基本的に約65%と非常に高いのが特徴で、消費税と合わせたらかなりの税額を払っていることになります。

所得税と法人税

例えば、企業や個人が投資などの金融商品によって配当金をもらった場合、この配当金には所得税と法人税の両方が課税される場合があります。

基本的に法人として受け取る配当は、法人税課税済の利益から支払われることになります。そこで、再び配当を受領する個人株主に所得税を課した場合に、法人税と所得税の2重課税が生じてしまうのです。

相続税と所得税

相続税と所得税もよく議論されている2重課税の1つです。

例えば、生命保険金を年払いで受け取る際に相続税と所得税が2重で課税されてあるということで訴訟となったケースがいくつかあり、今後の課題となっています。

固定資産税と償却資産税

また、固定資産税と償却資産税が混同されてしまい、2重で課税されてしまうケースも時々あるようです。

通称として、減価償却していく償却資産と、固定資産として申告する資産の区分を明確にしておかないと2重で課税されるので注意する必要があります。

ゴルフ場利用料

このゴルフ場利用料にかかる税金も、ガソリン税のように実態を知らない人が多いのですが、ゴルフ場を利用する度に課税される税金になります。

と同時に消費税と2重で支払っていることになり、2重課税の1つとなります。

2重課税になる商品やサービスもある

その他にも、商品やサービスによっては、技術使用料や特許料に課される税金、法人税、固定資産税、その他間接税などが微妙に絡むものもあって、結果的に2重課税となる場合もあり得ます。

また、海外から商品を仕入れる場合や、海外で得た所得に関して、外国と日本の両方から課税されてしまう場合も多々あります。このようなケースに備えて、現時点では約90か国(地域)と租税条約を締結しており、企業や個人が2重課税の申し立てができるよう対応しているとのことです。

※人生で払うことになる、多数の税金の種類について、こちらの記事でご覧いただけます。

※保険を活用して、相続税や所得税を節税する方法についてもこちらからご覧になれます。

まとめ

気づかずにいたけれど、意外と2重で税金を払う場面は思った以上に多いのかもしれないですね。

確かに税金を払うのは国民の義務であり、特に今のように少子高齢化が深刻となる日本において、あらゆる場面で支払う税金は必要不可欠であります。

でも、もしかしたら、このような税制自体が人々のモチベーションを低下させ、少子化を加速させる原因の1つとなっているのかもしれません。

これからは、ただ何となく言われるままに税金を払うのではなく、何のための税金なのか、何に使われているのかをしっかりと考えていくようにしたいものです。

個人的に税金などの支出を抑えていくことは、もちろん大切なことです。しかし、それ以上に一歩踏み込んで税金の意義を問いかけていくことが、今後の日本を形成していくための大きな動力となり得るのです

 

 

 

 

 

 

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