元債務整理事務所の事務職員が教える会社にバレない自己破産手続きのやり方

自己破産手続きなどの債務整理をする際には、なるべく人にバレたくないものです。

たとえば勤務先にバレてしまうようなことがあっては、お金にルーズな人であるという印象を持たれるばかりか、ケースによっては出世や、保険会社や金融機関などでは職を失いかねない事態になります。

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会社にバレてしまうという事態は極めて稀で、いくつかのポイントを押さえていれば回避できます。自己破産手続き全体の概要と共に知っておきましょう。

このページでは、会社にバレない自己破産手続きのやり方についてお伝えします。

自己破産手続きの概要

まず、自己破産手続きがどのような手続きかの概要について知っておきましょう。

自己破産手続きは、借金の返済に困ってしまったときに法律的な手段をつかって借金の返済を楽にしようとする債務整理手続きの一つの方法で、裁判所に申し立てをした上で借金に関する調整をした上で、最終的には返済義務を原則として無くしてもらう手続きのことで、破産法によって認められている手続きです。

他の任意整理・個人再生との違いとしては、返済義務がなくなるという点にあり、経済的な再生をするための一番強力な手続きであるという特徴を持っています。

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借金などの債務は、倫理的にも法律的にも当然に支払わなければならないのですが、わが国は資本主義経済をとっているため経済的に破綻する人が発生することは当然にあります。そのような場合にも何がなんでも返済をしなければならいとすると、債務者の残った財産をめぐって債権者同士で争うことになり、法律が予定している回収方法から逸脱するような暴力や脅迫といった回収方法を行ったり、債務者と一部の債権者が結託して不平等な返済をしたり、過酷な取り立てに悩んでしまった債務者が自殺や犯罪に走ってしまうような事態が想定されるので、自己破産という制度を設けています。

 

 

手続きの利用にあたっては、一人で裁判所に申し立てをして行うことができるようになっていますが、弁護士・司法書士の法律の有資格者に依頼することで、返済をストップできたり督促を引き受けてくれることになるので、自己破産の手続きを利用するほとんどの方が弁護士・司法書士に依頼することになります。

自己破産手続きは、弁護士・司法書士に法律相談をするところからはじまります。

法律相談にあたっては、弁護士・司法書士の事務所を直接訪問しても裁判所や法務局に出かけるなどして留守にしていることが予想されるので、電話やホームページから申し込みをするなどして、事前に法律相談の予約をとることになります。

指定された日時に弁護士・司法書士の事務所に訪問をして、法律相談を行います。

相談では、債務に関する事項・収支に関する事項を整理して、弁護士・司法書士が債務整理のどのような手続きが最適なのかを伝えてくれます。

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借金の返済が苦しいからといって、必ず自己破産手続きを利用できるかというとそういうわけではありません。支払い不能という状態に陥っていることが条件であり、その状態にあるかどうかは、借金の総額と収支のバランス次第になります。

この時点で依頼をしてもいいですし、他の弁護士・司法書士に相談をしてから依頼をしてもよいことになっていますので、信頼できる専門家を探します。

自己破産の依頼をすると、弁護士・司法書士に対する報酬を分轄して行い、それと並行して弁護士・司法書士は債務に関する調査をするために貸金業者等債権者とやりとりをすることになります。

弁護士・司法書士に対する報酬の分割が終わる頃になると、自己破産の申立書の作成と添付書類の収集にうつります。

もっている資産の状況や収支に関する報告を裁判所に行うことになっているので、弁護士・司法書士の指示に基づいて申告・書類収集を行います。

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弁護士・司法書士に依頼をしているのだからまかせっきりでよいのではないか?と思うかもしれませんが、銀行の通帳コピーや家計に関する報告、保険証書のコピーなど本人でしかできないことがたくさんありますので、協力をしてあげてください。面倒臭がって対応をしてくれない人が居るのですが、長期にわたる場合には弁護士・司法書士は依頼を辞任することがあります。

自己破産の申立書・添付書類が揃うと裁判所への申立を行います。

同時廃止という簡単な手続きで行うときには、裁判所が内容を審査して、一ヶ月後くらいの会議をする期日を設定してきますので、当日裁判所に出向いて確認を行います。

少額管財という正式な手続きで行うときには、裁判所は管財人という役職の人を選任しますので、その人が手続きを主導することになり、管財人の事務所で面接を行った上で、裁判所で確認する手続きを行います。

以上が自己破産手続きの概要です。

自己破産手続きが会社にバレるケース

では、この自己破産手続きにおいて、どのような事をすると、会社にバレてしまうのかをいくつかのケースに分けて、その対策を紹介します。

会社に借入をしている

まず、一番多いのが、会社から金銭の借り入れをしている場合です。

自己破産手続きは、債権者すべてに手続きに参加してもらう必要のある手続きなので、会社から借り入れをしているような場合には会社も債権者ということになるので、破産手続きに参加してもらう必要があります。

自己破産手続きにおいては、特定の債権者のみにだけ返済するようなこと(専門用語では偏波弁済(へんぱべんさい)と呼んでいます)は、債権者を平等に扱うという法律の手前上できないことになっています。

会社から借り入れをしている場合には、給与から天引きされることにしているケースが多いのですが、給与から天引きされる形でも法律上は返済をしていることになり、偏波弁済を行っていることになります。

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黙っていればわからないんじゃないですか?と思うかもしれませんが、給与所得がある人は給与明細の提出を求められることがほとんどで、給与明細に返済されているものがあるような場合には必ず裁判所や管財人のチェックが入ります。もしこのような事実が判明した場合には、裁判所や管財人が会社に偏波弁済にあたるので返金するように求めることになっています。

会社から借り入れをしている場合には、弁護士・司法書士が会社に対して債務整理をするので給与天引きをやめるように求めることになります。

そのため、会社の郵送物を処理する総務や、その書類の手続きを処理する立場にある人事や法務・経理の方にはわかってしまうことになり、それが原因で上司・社長といった方に知られることになります。

公務員の場合には、共済から借り入れをしていることになるのですが、この場合も事実上は知られることになると考えておいてよいでしょう。

会社から借り入れをしているような場合に、会社にバレないように自己破産手続きを利用することはできないので、会社だけを外して債務整理ができる任意整理の利用を検討することになります。

同様に会社が連帯保証人になっているような債務があれば、会社に請求がいくことになります。

退職金証明書の提出を求められた

自己破産手続きにおいては、資産の状況について申告する必要があります。

その資産状況の申告として退職金の額を申告しなければなりません。

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退職金は法律的には、給与の後払い的な性格をもっているとされているため、現実に退職をしていなくても資産として評価されることになっているのです。

退職金が無い勤務先の場合には、雇用契約書に退職金の支払いはない旨の記載があるので問題ないのですが、記載がない場合や、退職金がある場合には、場合によっては会社から発行される「退職金証明書」を取得してくるように指示をする裁判所があります。

このような場合には会社に退職金証明書を出してもらう必要があり、退職しないにもかかわらずなぜそのような書類が必要なのかという事を説明する必要があります。

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過去私が担当した案件では、「資産運用を考えており、ファイナンシャルプランナーに相談するのに使う」という形でうまくやりすごしてもらって解決していましたが、中には納得いく理由がない限り発行しないという会社があるという話も聞いたことがあり、やむなく自己破産手続き利用をすることを伝えたようです。経験のない弁護士・司法書士が担当する場合には、絶対に依頼者に取得させることもあるようですが、退職金規定から計算した上で会社に問い合わせができない理由を上申書という書面を利用して裁判所・管財人にきちんと説明することで回避できるはずです。

退職金の制度があるような場合には、自己破産手続きに強い弁護士・司法書士に依頼をしてこのような不利益がないように手続き処理をしてもらうようにしましょう。

ヤミ金融を利用してしまった

自己破産手続き等の債務整理をする場合に必ず発生するのが、信用情報への事故情報の登録(いわゆるブラックリスト)です。

これにより新たな借入・クレジットカードを作るなどの行為ができなくなります。

自己破産手続きを利用する方は、もともと多額の借金をして生活をしていたので、生活のサイクルに借金をすることが自然に組み込まれています。

そのため、急に借入ができなくなったことにより、入院・冠婚葬祭などまとまったお金が必要となる急なライフイベントが発生すると、対応ができなくなる可能性があります。

このような窮状につけこんでくるのが、ヤミ金融といわれる違法金融業者です。

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これは本来あってはならない事なのですが、信用情報に載ってしまった人の情報や、自己破産申立をしたことによって官報に掲載された情報は、これらの違法金融業者にとっては格好の材料でなので、裏で取引されている事実はあります。

債務整理を利用した直後から、携帯・スマートフォンなどのショートメッセージやダイレクトメールなどを利用して、「ブラックでもOK」というような触れ込みで融資をするような業者からのアプローチが増えます。

借入をする際には、職場に関する情報は必ず聞かれることになりますので、もし返済をしなかったりすると職場に必ず嫌がらせをします。

嫌がらせの内容は、職場に電話で借金の返済を求めるだけではなく、職場にピザやお寿司の宅配を大量に頼んだりするようなものもあります。

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では、きちんと支払ってしまえばよいのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、「きちんと支払える」=「この人からはまだまだ取れる」という事ですので、ヤミ金融がほおっておくことはありません。返済期日ギリギリになって連絡が取れなくなり、返済期日をすぎて「遅延したので延滞料金がかかります」というような方法で処理をするまでずっと金銭を請求してくることになるのがヤミ金融の怖いところです。

弁護士・司法書士にヤミ金融業者の処理を依頼しても、相手は金融機関ではなく犯罪者集団なので、必ず職場に迷惑がかからない、ということも言い切れません。

ヤミ金融は絶対に利用しないようにしましょう。

給料の差し押さえ

自己破産手続きを依頼して、申立をするまでに時間がかかってしまうような場合、貸金業は民事裁判をしてくることがあります。

弁護士・司法書士がこれに対応してくれることにはなっているのですが、返済義務について争っても勝てるわけではないので、時間稼ぎしかできません。

そのため裁判が確定して強制執行を受けることがあります。

「自己破産手続きを利用する場面で強制執行をするような財産はない」と思うかもしれませんが、給料は全額ではないものの差し押さえの対象になります。

差し押さえの手続きにより、執行裁判所から会社に給与を差し押さえたので、裁判所に対して入金をするように通知をする書面が会社に届くことになっており、この通知を受けとると会社は自己破産手続きを利用していることが分かってしまいます。

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一部のいわゆる「街金」といわれる零細業者や、自己破産手続きを依頼してから弁護士・司法書士に依頼をした後で報酬の支払いが遅れる、連絡がとれなくなるなどして、申立手続きが遅延している場合などに裁判を起こされることになります。

自己破産手続きの利用をしている場合には、破産申立手続きをすると債権者も裁判を行えないようになりますので、早期に申し立て手続きを行ってしまうことにより回避することが可能です。

官報で公表されることは心配しなくてよい

なお、自己破産手続きは、申立をした後に、官報に掲載されることになっています。

官報は国が発行しているもので、法律の公布や株式会社の決算の情報など、法律で公にするようにされているものを掲載するものです。

公になっているものですが、一般の人が手にする機会はまずありませんし、会社が何かの業務の中で取得してチェックをしていることはありません。

ですので、官報に掲載されたからといって会社にバレるという恐れはないので、心配する必要はありません

自己破産手続きが会社にバレるとどうなる?

 

自己破産手続きを利用したことが会社にバレるとどうなるのかを、採用にどう影響するのかと在職中の方がどのようになるのかに分けて考えましょう。

採用

採用にあたって自己破産手続きの利用をしていることバレるとどうなるのでしょうか。

前述したとおり自己破産手続きは申立をした後に官報への掲載をされることになります。

金融や保険など、他人のお金を預かることが予想される業種では、こういったデータベースを採用しているという情報があり、会社にバレていると採用されないという可能性は高いです。

しかし、それ以外での職種では自己破産手続きをしている事で雇用をできないという法律上の規定はありません。

ただし、バレてしまうと金銭面でだらしがない人であるという認定がされてしまい、採用されないという事はあるでしょう。

ただ、まず面接をする人が自己破産手続きの利用をしたことがあることを知っているということはないので、心配する必要なないといえます。

在職中の方

上記のような会社にバレるようなことがあった場合にどうなるのでしょうか。

基本的には自己破産手続きをしても極めて個人的なことになり、労務の提供自体は従来から行えているのであれば、法律的に解雇できるという条項はありません。

ただし、役職につけたり、会社のお金を預けるような地位につけなくなるなどの事実上の処分の可能性は否定できません。

まとめ

このページでは、自己破産手続きが会社にバレるケースと、その対処法についてお伝えしてきました。

基本的には自己破産手続きは会社にバレるようなことはありませんが、上記のように特殊な事態に陥ると会社にバレることはあります。

法律上の影響はほぼないとはいえ、事実上信用を落とすような行為になるので、なるべく不利益を受けないために、債務整理に強い弁護士・司法書士に依頼をするようにしましょう。

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