株式投資は情報が命!決算書・決算短信の見方|成長する企業を見極めるコツ

株式投資に情報は不可欠です。しかも「正しい」情報が欠かせません。株式投資で成功している投資家は、銘柄を選ぶ際に、必ず細かい情報を調べて分析を行っています。そのため、情報収集をおろそかにすることは、投資で勝つための道を閉ざしてしまっているのと同じです。

株式投資における、もっとも重要な情報が「決算書」です。決算書とは、四半期ごとに企業から発表される業績データを表します。この決算書には過去から現在までの業績から、来期の予測まで様々な情報が詰まっているため、有望な銘柄を探す際大いに役立つでしょう。

今回の記事では決算書の見方についてお伝えしていきますので、成長する企業を見極めるコツとしてご参考にしてみてください。

株式投資に決算情報が必要な理由

株式投資を行ううえで「情報」は必要不可欠ですよね。たとえば、日経平均株価や金利動向、物価水準、雇用統計など、私たちの身の回りには様々な指標があります。そうした指標から今後の値動きを予測し、株式投資で勝利をおさめる機会を探っていくことが可能です。

その「情報」の中でも、特に重要なものが「決算情報」となります。決算情報とは、企業が四半期ごとに株主向けに提供する資料のことで、この決算資料から様々な情報を読み取ることが可能です。たとえば、該当する期間における業績のプラスマイナスや、複数の事業で好調なもの・不調なもの、現在行っているサービスや企画、将来の売上・利益見通しなど、株式投資に必要な重要な情報を参考にできます

たとえ国内や海外の景気が悪くとも、必ずしもすべての企業の業績が悪化するわけではありません。なかには不況のさなかに大きな成長を遂げる企業もあれば、好況の波にうまく乗って堅調な成長力を見せる企業もあります。

この決算情報を分析するという手法は、そうした企業(銘柄)の成長性を予測するうえにおいて欠かせません。仮に、現在の業績が不調だったとしても、投資フェーズから収益化フェーズに移行していくことで、将来大きく化ける企業もたくさん存在しているのです。決算情報を見れば、「企業が今どのような状態で、これからどうなっていくのか」ということが一目で分かります

すると銘柄を売買するタイミングが掴みやすくなり、より株式投資の成功へと近づくことができるでしょう。

企業の決算資料を分析する手順

証券取引所に上場している企業は、決算情報を株主に提示する義務があります。そのため、「企業名+決算資料」とネット検索すれば、上場企業の決算情報が必ずヒットします。ただし、企業によって決算時期が異なるため、決算資料が提示されるタイミングは必ずしも同じではありません。

また、企業によって決算書の作り方に若干の差があります。特に、投資家向けのプレゼンテーション資料に関しては、書類の作り手のデザイン力や資料作成能力によって、見やすい資料とそうでない資料とに分かれることが多いです。そうした企業ごとの違いを意識して決算資料を眺めてみるのも面白いので、一度お気に入りの企業で検索してみてください。

さて、実際に決算資料をダウンロード(PDFなど)すると、まず行き当たるのがその「見方」です。

「数字ばかり並んでいて難しそう……」

「どこをどう見ていって良いのか見当がつかない……」

こうした悩みを抱く方も多いのではないでしょうか。企業の決算資料は、主に「決算短信」と「決算書(説明会資料)」が代表的です。特に、決算短信に関しては貸借対照表や、損益計算書、キャッシュフロー計算書などの表に数字ばかり並んでいますよね。しかし、決算書の見方に慣れてくれば、スラスラと読み解くことも可能ですので、徐々に馴染んでいきましょう。

企業の決算情報を読み解く方法は、以下3つのステップを踏みます。

  1. 過去の株価と比較して割安な銘柄をピックアップ
  2. 選んだ銘柄のPER・PBR・配当利回りを決算書から読み解く
  3. 決算書を分析後、さらに銘柄数を絞り込む

それぞれの手順については、次の項目から詳しくお伝えしています。

1.過去の株価と比較して割安な銘柄をピックアップ

決算資料を分析する目的は、ご自身の興味のある銘柄がこの先成長するかどうかを見極めるためです。そのため、まずは興味のある銘柄を選ばなければ始まりません。今回は決算資料の見方の練習と思って、パッと思いつく企業で良いので一社ピックアップしてみてください。

この記事では、株式会社ディー・エヌ・エー(以下DeNA)の決算資料をもとに基本的な見方を紹介していきます。DeNAの資料はシンプルな作りなうえ、投資家に必要な情報が分かりやすく分類されています。初めて決算資料を見る人にも参考にしやすいため、ここではサンプルとして提示しました。

ただ、本格的に株式投資を行う場合は、適当に銘柄を選ぶわけにもいきません。その企業の過去の株価と現在の株価を比較して、「割安に思える」ような銘柄を数点ピックアップしましょう。この時点では、まだその銘柄に投資すると決まったわけではありません。あくまで「投資予備軍」を作る気持ちで、複数の企業を選んでみてください。

銘柄を選ぶ場合は、ヤフーファイナンスが分かりやすいです。もしくはネット証券会社の並び替え機能も使えます。25日移動平均線乖離率が下方に大きい順にランキングし、乖離率がマイナス20%以上を基準に選んでみると良いでしょう。

2.選んだ銘柄のPER・PBR・配当利回りを決算書から読み解く

PERとは、会社の利益に対して株価の割安度をはかる指標です。また、PBRは、会社の資産に対して株価の割安度をはかります。PERは20倍以下、PBRは3倍以下(成長力のあるIT企業などは30倍以下)であれば、一般的に割安な銘柄と判断することができます。

配当利回りとは、投資した資金に対して、1年間でどれくらいの配当を受けられるかを示した指標です。株式投資では、投資した企業に利益が出ると、そこから株主に配当金が渡ります(例:配当金50円で100株保有者には5,000円/年)。配当金利回りの目安は、おおよそ2%以上とされ、この数値が高いほど利益が出たときの配当額も上昇します。

こうしたPERやPBR、配当利回りなどの情報は、ヤフーファイナンスや証券会社のデータから見ることができます。ただし、PERやPBR、配当利回りの情報は、あくまで割安感のある銘柄を探す一つの指標でしかありません。複数選択した銘柄から、さらに有望な銘柄へと絞り込んでいくためには、さらに「企業の過去3年間の業績」や「将来の見通し」といった情報を調べる必要があるのです。

3.決算書を分析後、さらに銘柄数を絞り込む

銘柄選びとPERなどの指標を確認した後は、決算資料の分析へと進んでいきます。決算資料には当期の業績のほか、過去の業績から将来の見通しまで、株式投資に役立つ情報がたくさん含まれているのです。そのため、決算書をじっくりと分析し、「価値のある投資先」を厳選していきましょう。

成長する企業を見極めるために絶対に確認しておきたい情報

株式投資において企業の成長力を見極めることは重要です。その成長力次第で投資の勝ち負けに大きく影響を与えるので、投資前には必ず決算資料に目を通しておくことをおすすめします。

その決算資料で見るべき点は以下の3点です。

  • 当期業績のハイライト(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー)
  • 来期以降の業績見通し
  • 数字以外の事業内容

当期業績のハイライトには多く分けて、「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の3つの表があります。この3点に関しては、企業の「決算短信」という資料に必ず記載されています。ハイライトを見ることで当期の売上高や営業利益、純利益のほか、過去のデータも記載されているので現在の業績を見比べることが可能です。

また、決算書の説明会資料(プレゼン用資料)には、来期以降の業績見通しが記載されていることが多くなっています。貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書では現在の業績は分かっても、将来の企業の予測を行いづらい欠点があります。そこで、説明会資料を見て業績予想を参考にしていくというわけです。

もちろん企業の成長力は数字だけに表れるわけではありません。たとえば、現在どのようなサービスや事業を行っているのかということや、キャンペーン情報、細かい商品情報、今後の取り組みなども将来予測の参考になります。そうした情報も決算書の説明会資料で紹介されています。

株式投資の情報分析(1)決算書(説明会資料)の見方

株式投資の情報分析のために決算書を見ていきましょう。まずは説明会資料と呼ばれる、投資家向けのプレゼン資料です。ここでは、情報が簡潔で分かりやすいDeNAの決算資料を見ていきます。

説明会資料は以下のように、画像や表などを並べて、一目で業績が分かるように工夫されています。

(出典:株式会社ディー・エヌ・エー、2019年3月期第3四半期 決算説明会資料

(出典:株式会社ディー・エヌ・エー、2019年3月期第3四半期 決算説明会資料

この説明会資料の中でも、企業の今期の業績などが分かります。ただし、今期の業績を分析するには決算短信の方が使いやすいため、ここでは「今後の見通し」と「細かいサービス内容など」を確認していきましょう。この2点に関しては決算短信の資料よりも、こちらの説明会資料の方が分かりやすいです。

将来の業績見通し

(出典:株式会社ディー・エヌ・エー、2019年3月期第3四半期 決算説明会資料

業績見通しとは、現在までの売上高や営業利益をもとに、その企業が独自に出した将来予測の数字です。たとえば、上記のDeNAの決算データは2019年第3四半期となりますので、1年を4回に分け、その内の3回目の決算報告を表します。上の画像で「通期業績予想」と記載されているのは、つまり「今期1年間トータルの予想はこれ」というように予測しているわけです。

DeNAの場合は、もともと予定したいた売上収益や営業利益から、若干の下方修正がなされています。その理由に関しては資料の上部に、DeNAトラベル譲渡の影響や事業譲渡などによって、予想を下回る業績になるだろうと説明しています。

もちろん業績通りの結果になるかどうかは分からないため、あくまでも参考情報として考えるのが良いでしょう。また、企業が予想する業績見通しが正しいのかどうか、それを判断するために細かいサービス内容や商品情報、今後の取り組みなどの情報を参考にしていきます。

サービス内容や商品情報、今後の取り組みなど

(出典:株式会社ディー・エヌ・エー、2019年3月期第3四半期 決算説明会資料

説明会資料には、当期に行っていたサービスや販売していた商品などの情報が、画像付きで分かりやすく確認できます。また、当期だけでなく、今後の取り組みや成長戦略などを記載する企業も多いです。たとえば、将来の業績見通しで翌年に大幅な増収を予定している会社が、今後取り組むサービスや商品開発において魅力的なものを作っていなければ、その企業の見通しが甘いということが分かります。

説明会資料の今後の取り組みを参考に、「私もこのサービスをぜひとも使ってみたい」というような内容が記載されていれば、その企業に投資する価値があると言えるでしょう。投資家も消費者の一人であるため、今後の取り組みに疑問を感じるような内容があれば、その企業へ投資すべきではありません。

株式投資の情報分析(2)決算短信の見方

決算短信とは、四半期ごとの業績を表や文章などで簡潔に表した情報のことです。先ほどの説明会資料とは異なり、決算短信にはある程度定められたフォーマットがあります。決算短信の見方に慣れると、他の企業の情報を調べるときもほとんど見方に差がないため、一目で業績を判断することも可能です。

決算短信に記載されている情報は主に以下の3つです。

  • 貸借対照表:企業の「資産」「資本」「負債」が一目で分かる表
  • 損益計算書:1年間の「利益」や「損失」が一目で分かる表
  • キャッシュフロー計算書:企業の「現金の流れ」が一目で分かる表

この中でも特に「損益計算書」が重要です。損益計算書には「売上」のほか、「原材料費」や「人件費」、「営業利益」、「純利益」など、企業の業績を表す数字がたくさん並んでいます。そのため、まずは損益計算書から分析していくと、その企業の「稼ぐ力」が分かりやすいです。

では、ここからは上記3つの表で、注意して見るべきポイントをお伝えしていきましょう。

損益計算書:連結経営成績

(出典:株式会社ディー・エヌ・エー、2019年3月期 第3四半期決算短信〔IFRS〕(連結)

決算短信には、一番上のページに必ず「連結経営成績」という項目があります。「連結成績」とは、その企業が行っている事業すべてを合わせた業績のことです。たとえば、大企業などになると保険部門、金融部門、アセットマネジメント部門など、それぞれの事業が細かく分散されていることが多いです。こうした各部門ごとに業績を表すことを「セグメント業績」といい、それとは反対に全事業を合わせた業績を「連結成績」といいます。

つまり、その企業全体の稼ぐ力を表しています。

ここで最も大切なポイントが「売上高」と「営業利益」となります。企業によって書き方が異なる場合もあり、「売上高」を「売上収益」としたり、「営業利益」を「営業収益」とすることもありますが、計算の仕方は変わりません。

この表を見ると、二段に分かれて記載されています。下段にあるのは昨年の同時期(前年同期といいます)の業績を表しており、上部は今期の業績です。つまり上段と下段を見比べることで、売上高や営業利益がどれくらい上昇(下落)したのかが分かります。

また、伸び率に関しては「%」で表示されます。たとえば、DeNAの場合だと、売上高は前年同期比10.8%、営業利益は同67.3%落ち込んでいることが分かるでしょう。それだけ業績が芳しくないということです。

反対に、前期よりも売上が上昇した(増収)、さらに営業利益も上昇した(増益)場合、その企業の株価も上がりやすい傾向にあります。また、この期間は投資フェーズで、新しい事業を育てるために多額の借金をした場合など、業績が落ち込みやすいです。そのため、資料を少し下にスクロールすると「経営成績の概況」という欄を確認しましょう。ここでは、「なぜ業績が悪化(好転)したのか」という情報が詳しく記載されています。

貸借対照表:連結財政状態

(出典:株式会社ディー・エヌ・エー、2019年3月期 第3四半期決算短信〔IFRS〕(連結)

財政とはその企業の経済状態、つまり「資産」や「負債」の状況を表す情報です。資料の上部にある「連結財政状態」という欄には、資産合計や資本合計など重要な情報が分かりやすく記載されています。

ここで見るべき指標は「自己資本比率」です。この自己資本比率が高い場合、銀行融資など返済義務のない自己資本の割合が高いということで、40%以上であれば倒産のリスクが低い企業と言えるでしょう。自己資本比率は、「総資本÷総資産」で求められます。上記DeNAのように、自己資本比率が書いていない場合は、資料のページを進めていけば詳しい貸借対照表が表示されます。

自己資本比率が高すぎても良いというわけでもなく、その場合は資金を有効活用していないと投資家に見なされ、株価に悪影響を及ぼすこともあります。おおよそ70%ほどが理想的と言えるでしょう。ただし、自己資本比率が10%を下回る場合、資金繰りが滞っている可能性が高いので注意してください。

キャッシュフロー計算書

(出典:株式会社ディー・エヌ・エー、2019年3月期 第3四半期決算短信〔IFRS〕(連結)

企業によっては資料の一番上に、「連結キャッシュフローの概況」という形で簡潔に表が記載されています。今回のDeNAにはありませんでしたので、その場合は資料下の方にある「キャッシュフロー計算書」を見てください。

キャッシュフローとは、本業における現金の流れ(増減)を数値で表したものです。健全な経営が行われている企業であれば、基本的にキャッシュフローの数値はプラスになります。仮にマイナスに振れている場合は、お金が入ってくる流れが滞っている可能性が高く、本業の活動がうまくいっていないことも考えられるでしょう。

株式投資の決算情報まとめ

決算短信や説明会資料の見方を紹介してきましたが、慣れてくるまでなかなか難しい数字も多いかと思います。気になった企業の情報について、その都度決算資料を見るようにしていきましょう。すると、今まで難しいと感じていた表の数字も、すぐに理解できるようになります。

ただ、あくまで企業の決算情報は、株式投資の銘柄選びにおける一つの分析手法にしか過ぎません。決算情報以外にも、株価チャートや四季報、証券アナリストの予測などの情報を組み合わせて、将来性の高い企業を見つけてください。

コメントを残す