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不動産投資の収益は、毎年かかる必要経費や税金を差し引いて手元に残った金額がいくらか、によって計算されます。
初めて不動産投資を行う人にとって、まず抑えておきたいポイントが毎年必ず支払う固定資産税です。固定資産税は不動産を所有している限り永遠に払い続ける経費でもあります。
でもこれまでに固定資産税を払ったことのない人は、一体どのような税金なのか、いくらぐらい課税されるのかイメージしにくいものです。
今回は、これから不動産投資を始める人、興味のある人を対象に、固定資産税の概要をわかりやすく解説していきます。これからの不動産投資にお役立て下さい。
不動産投資にかかる税金
不動産投資でいかに税金などの経費を抑えていくかは、最初の物件の購入時が非常に大切だと言われています。
なぜなら最初に決定した物件の購入金額は、その後途中で変更することはできないからです。最初の購入時の金額が、その後何十年に渡って不動産にかかる課税額を左右することになります。
それでは、実際に不動産投資にかかる税金の種類を確認していきましょう。
不動産購入時にかかる税金
まず最初に、不動産の購入時にかかる税金から解説いたします。購入時にかかる税金は原則として一回限り支払う税金です。
消費税
誰もがご存知の消費税が物件の購入時に発生します。
不動産会社は消費税課税事業者となり、仲介を依頼して購入する場合、あるいは住宅リフォームなど建築業者を利用した際には消費税の対象となります。
物件の購入費用やリフォーム費用だけでなく、不動産会社の仲介料も消費税の対象となります。これは業者に払う税金になります。現在は0.8%で増税後は10%の消費税がかかります。
※土地の購入には消費税はかかりません。
印紙税
売買契約書や請負工事に関する契約書、住宅ローンの契約書を作成するにあたって、かかる税金です。
契約書に記載されてある金額に応じて課税額が決まります。契約書や領収書に課税金額の印紙を貼って押印するしくみになっています。この時の印紙代金が課税金額となります。購入金額によって1万円~2万円の印紙税がかかります。
登録免許税
不動産登記にかかる税金です。物件の種類や売買方法によって、登記方法は4つあります。
表題登記、所有権保存登記、所有権移転登記、抵当権設定登記、とそれぞれ登記の際に0.3%~2.0%の税金がかかります。
不動産取得税
不動産を購入、あるいは建築、リフォームする際にかかる税金で業者に払う消費税とは別に個別で課税されるものです。
物件を取得したことに対する税金で、都道府県自治体から課税される地方税になります。取得してから60日以内に申告するもので、購入金額に対して4%が課税されます。
その他の税金
その他、不動産の取得方法によって、贈与税、相続税などが課税される場合もあります。
※こちらの記事ではアパートローンの金利の相場や注意点などがご覧いただけます。
不動産取得後にかかる税金
次に不動産取得後にかかる税金について解説致します。この税金は毎年必ずかかる税金となります。
所得税
所得税は不動産の売買や賃貸収入によって得る所得にかかる税金で、国に支払うものです。
課税の対象となるのは、家賃収入からその他税金や必要経費を差し引いた金額が課税対象となります。課税所得額が増えるごとに税率は高くなり、最低5%~45%まで7段階の税率が定められています。
※不動産の所得税に関する情報は、以下からも詳しくご覧いただけます。
住民税
住民税は所得税に付け足される税金で、所得に対して約10%が課税され、地方税として都道府件、市区町村自治体に支払います。
税率としては、市区町村に支払う部分が6%、都道府県税が4%の計10%が課税対象となります。
所得税と住民税は、不動産だけに限らず、その他の所得を合わせた所得額にて計算します。
固定資産税
固定資産税は不動産の所有に対して課される税金で地方税に分類されます。
土地と住宅(建物)とでは税率が異なり、市区町村が定める固定資産税評価額に沿って課税額が決められています。固定資産税は、固定資産課税台帳に登録されいる者が対象となり、一般の住宅の場合1.4%の税金がかかります。
都市計画税
都市計画税は、固定資産税と一緒に納付する税金で、不動産の所有者に課される税金です。
課税の基盤となる価額は固定資産税と同様に固定資産課税台帳に記載されている評価額によって算出されます。その評価額に対して、0.3%の税率がつきます。
固定資産税
以上ご紹介したように、不動産投資には様々な税金がかかっています。中でも、固定資産税は不動産を所有する限り払い続ける税金となりますので、不動産投資の初心者がまず抑えておきたい重要な税金となります。
では、固定資産税について投資の初心者にもわかりやすく解説していきます。
そもそも固定資産税とは?
そもそも固定資産税とはどんな税金なのでしょうか?
固定資産税とは、毎年1月1日の時点で所有している固定資産に対して課税される税金です。
固定資産とは
固定資産とは、大まかには長期間にわたって使用される、所有者にとって資産として計上できるものを対象とします。
固定資産には、有形固定資産と無形固定資産の2種類があります。
有形固定資産とは、
土地、建物、機械、装置、設備、車輛、器具など目に見えるもの、形のある資産を指しています。
無形固定資産とは、
偉業圏、特許権、借地権、実用新案権、商標権などの目に見えない権利を指しています。
これらの固定資産を所有する場合に固定資産税が発生することになるのです。
固定資産税の概要
固定資産税の課税対象者は毎年4回の納税義務があり、毎年4月ごろになると市町村から納税通知書が郵送されます。
不動産の所有者は、土地と建物の双方に対して固定資産税を支払わなければなりません。
固定資産税の計算方法
固定資産税は、固定資産台帳に記載されてある課税評価額を基に計算されています。より高額な不動産になればそれだけ固定資産税も多くなる仕組みとなっています。
このように固定資産税の基準となる課税評価額のことを固定資産税評価額といいます。
固定資産税評価額とは
固定資産税評価額とは、固定資産課税台帳に記載された、土地・建物の評価額のことです。この評価額は、3年に一度市町村によって基準となる資産の価額が設定されています。
物件を購入した不動産会社や役所にてその評価額は確認できるようになっています。
土地と建物に分けて計算
その固定資産税評価額は、土地に対する評価額と建物に対する評価額が別途で記載されてあります。それぞれの評価額に対して1.4%の税率で計算します。
土地の評価額
土地の面積に、利い粋の路線に面した標準宅地1平方メートルあたりの評価額「路線価」を掛け合わせて算出します。
建物(住宅)の評価額
建物の評価額は、「再建築価格方式」によって算出されます。再建築価格方式とは、もし同じ建物を同じ土地に建てたら現時点でいくらになるかが、価格の目安となります。
大まかには、建物(住宅)の購入価格の7割に税率をかけた数字にほぼ等しいとされています。正確な金額を求めるには、さらに減価償却費なども計上することになります。
区分マンションの場合は
マンションの1室など、敷地内の一部を保有する場合は、自分の専有部分の割合をかけて計算します。
仮に、敷地全体の評価額が2憶円で、保有する土地がその50分の1だとすると、評価額は2憶円の50分の1である400万円ということになります。
固定資産税の特例
このように、不動産と購入した後は固定資産税の納税義務が発生してしまうのですが、この固定資産税にはいくつかの特例が設けてあります。この特例を見逃していたばかりに、本来もっと安くなるはずの税金を必要以上に納めてしまう場合もあるのです。
そこで、固定資産税の特例について解説していきます。
住宅用地の特例
固定資産税は先述のように、年度の1月1日の時点での所有する不動産の状態によって、評価額は変わってくるのですが、特例によって課税標準額が安くなります。
原則として、住宅やアパートなどの人が居住する為の不動産(住宅用地)が対象となります。
小規模住宅用地
例えば、小規模住宅用地と分類された場合は、固定資産税の課税標準額は価格の6分の1、都市計画税は3分の1まで下げることが可能です。
小規模住宅用地の要件→住宅やアパート等の敷地で200㎡以下の場合
本来固定資産税が60万円だったとすれば、特例による納税額は10万円になり、大幅に削減することができるのです。固定資産税の特例に該当する不動産は、都市計画税でも同様に特例の対象となり、税額は3分1の20万円になります。
一般住宅用地
もう1つの特例として、一般住宅用地に分類されるものが特例の対象となります。この場合、固定資産税は課税標準額の3分の1、都市計画税は3分の2まで下げることが可能です。
一般住宅用地の要件→住宅やアパートなどの敷地で200㎡いを超える部分
新築住宅
新築住宅の場合は、課税床面積の120㎡までの部分については3年間・5年間にわたって固定資産税が2分1になります。
3階建て以上(対価構造住宅)→新築後5年間
一般の住宅→新築後3年間
※固定資産税の特例に関しては、こちらからもご確認頂けます。
中小企業・個人事業主の特例
他にも、中小企業や個人事業主として不動産を所有する場合には、以下の要件にて固定資産税の特例が適用されます。
- 市町村計画に基づき中小企業が実施する設備投資
- 労働生産性が年平均3%以上向上できる設備投資
- 事業の収益向上に直接つながる設備投資
以上のいずれかに該当する設備投資を行った場合、3年間で2分の1以下の税額が削減対象となります。
※事業者として不動産購入を検討中の人は、以下の特例の資料を参考にして下さい。
固定資産税、都市計画税の特例の詳細は、各地域の自治体によって詳細が若干異なる場合もあるので、それぞれの地域にて確認しておくことが大切です。「固定資産税 特例 〇〇市」で検索してみると、必要な情報を探すことができます。
固定資産税と減価償却
また、不動産投資においては、収益物件の購入価格を一括ではなく減価償却法によって費用を計上していくことができます。基本的に減価償却とは、不動産の購入費用を分割して計算していく方法をいいます。
では、減価償却とはどのようなものなのかを解説していきます。
減価償却の対象は
減価償却は、土地や建物だけでなく固定資産として分類できるもののうち、年月とともに価値が減少していくものが対象となります。
例えば、
- 建物(住宅)→年数とともに劣化していく→価値が減少していく
- 機械設備→年数とともに劣化していく→価値が減少していく
- パソコンなどの電化製品→年数とともに劣化していく→価値が減少していく
他にも、特定の車や家具、給湯器やエアコンなど様々なものが対象となります。
耐用年数に応じて減価償却できる
減価償却の対象となるものには、すべて法的に耐用年数というものが定められています。
不動産、住宅やアパートを購入した際には、土地は目に見える形で劣化していくものではないので減価償却からは除外されます。減価償却するのは、住宅やアパートなどの建物の部分の費用です。
耐用年数に応じて費用を数年に渡って分散させていくことができます。そうすることで、トータルの固定資産税評価額を少額に抑えていくことができるのです。つまり、不動産という資産を経費へと変換させていくことができるのです。
建物の耐用年数は、国税庁の耐用年数表を参照にすることができます。
国税庁 耐用年数表
https://www.keisan.nta.go.jp/survey/publish/34255/faq/34311/faq_34353.php
減価償却の計算方法
固定資産を減価償却していく方法は、一般的には定額法を用いて計算します。
定額法
定額法とは、それぞれの建物に定められた耐用年数、減価償却率を用いて計算する方法です。
取得価額×定額法の減価償却率=減価償却費→経費にできる
定額法の減価償却率は国税庁の償却率表を参照にして計算します。
国税庁・減価償却率表
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/070412/pdf/3.pdf
減価償却のメリット・デメリット
減価償却をするメリットは、
- 分割して、数年に渡って経費を計上することができる。
- 経費に計上できることで、課税対象となる収益額を減らすことができる。
- 不動産を売却した際に会計上の利益とできる場合がある
などが考えられます。
一方で、減価償却をするデメリットとは、
- 減価償却によって節税することが可能だが、会計に手間がかかる。
- 税制法の改定が頻繁にあるので、その都度改正に合わせる必要がある。
- 複雑な処理が必要な場合も多く、素人には非常に困難な作業となる。
などを挙げることができます。
※減価償却にて中古住宅で節税対策をする方法について、こちらでご覧頂けます。
固定資産税の節税方法
それでは最後に、上手に固定資産税を節税していく方法をご紹介しておきます。
固定資産評価額を下げる
固定資産税は、今回ご説明したように固定資産税課税標準額が基準となって計算されます。従って、この固定資産評価額が下がれば、固定資産税もそれに比例して下げていくことができます。
でも、固定資産評価額は自分が作成するものではないため、どうやって下げる方法があるのでしょうか。
固定資産評価額を下げる方法として2つの方法があります。
- 土地を分筆する
- 土地を分割する
それぞれの方法を解説していきます。
土地を分筆する
土地の分筆とは、
登記簿上1つの土地を登記簿上2つ、3つに分けることをいいます。
土地の形状は間口の広さ、奥行き、接している道路などによってそれぞれ評価が変わりますが、1つの不動産として登記されている場合は必要以上に評価が高くなる場合があります。
これらの土地を、「角地」「普通の土地」「住宅用地」などと分けることで固定資産の総額を減らすことが可能です。
土地を分割する
土地の分割とは、土地の分筆にも似ているのですが、
土地を分割して、登記する人を複数名にする方法をいいます。
相続税の節税方法としてもよく活用されるのですが、固定資産税の節税としても活用できる方法になります。
例えば、
- 登記上のみ兄弟や身内で不動産を分割して保有する。
- 登記上のみ別の法人名で不動産を分割して保有する。
など、評価の高いアパートと評価の低い古い建物とを分けることで固定資産の総額を減らすことにつながります。
非課税の土地を申請する
また、道路に使える、不特定多数の人が利用する道がある、公道へ通じる道があるなど、私有地としてだけではなく公益性の高い土地は非課税の対象とすることができます。
ただ、このような土地は自治体によって判断が異なり、さらに自らが申請しないと非課税となりません。、まずは自治体に非課税にできるかどうかを相談する必要があります。
住宅軽減措置を活用する
減税や減免の対象となる住宅を建築、または改修することで固定資産税を節税することが可能です。このように減税・減免の対象とできる仕組みを住宅軽減措置といいます。
住宅軽減措置の要件は以下のようになります。
- 認定長期優良住宅に該当する新築住宅である
- 耐震化のための建て替えを行った住宅
- 耐震化のための改修を行った住宅
- バリアフリー改修を行った住宅
- 省エネ改修を行った住宅
など・・・
これらの軽減措置の要件も各自治体によって内容が若干異なるため、各地域の役所にて情報を確認する必要があります。
※不動産投資の始め方、注意点などはこちらの記事をご覧ください。
※不動産投資物件の利回りの相場、高利回りの落とし穴についてこちらからご覧頂けます。
まとめ
今回は、不動産投資を始める前に、ぜひ抑えておきたい固定資産税について解説致しました。
まずは大まかに不動産投資にはどんな税金がかかるのか、そして、毎年必ずかかる固定資産税とはどのような税金なのか確認できました。さらに、より効果の高い節税対策を実現するために必要な、減価償却についても触れておきました。
そして、最後に固定資産税が減税できる方法をいくつかを紹介いたしました。自治体によって、これらの要件は内容が若干異なるため、まずはそれぞれの地域にてどのような節税方法が可能なのかを確認しておくことが大切です。
固定資産税の概要、減価償却、そして減税の対象が明確になれば、不動産投資にて物件を選ぶ際の目安にすることができるのです。