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債務整理とは?
債務整理とは、国が認めた借金解決のための法的な手続きです。
債務、つまり借金を整理することで、国民が借金の悪循環から抜け出し、新しい生活に踏み出しやすくなるようにつくられました。日本には、債務整理で解決できない借金問題はありません。現在も、毎年10万人以上が債務整理によって借金問題を解決していると言われています。
さて、そんな債務整理ですが、一口に債務整理といっても方法はひとつではありません。
任意整理・自己破産・個人再生・特定調停という手続きがあり、借金をしている人の借金額や期間、経済状況などによって、ひとりひとりに合う手続きは異なります。また、闇金にお金を借りてしまい、法外な金利の請求や取り立てに困っている人も利用できます。
任意整理
任意整理とは、裁判所などの公的機関を通さずに、借金を減額してもらうよう交渉する手続きのことで、債権者との話し合いにより毎月の返済額や返済方法を調整し、無理のなく完済するための債務整理です。
自己破産よりも利用しやすく、比較的に制限も少ないため、債務整理の手続きの中では一番利用されることが多いです。貸金業者に直接交渉し、利息や毎月の支払金額を減額してもらうことで、自己破産せずに借金を減額することができます。
大幅に借金額が減額されるわけではないのですが、手続き開始後は利息がカットされるため、これ以上借金が増えることがありません。任意整理は、下記のような人たちがよく利用します。
- 住宅ローンを返済しながら借金整理をしたい人
- 特定の貸金業者や相手を除いて借金整理したい人
- 利息などは厳しいが、極力借金は自分の力で完済したい人
- 債務整理は専門家に任せた人がよくオススメされておこなう
- 貸金業者と長期間取引している人
任意整理後は、元本をだいたい3~5年かけて返済していきます。
任意整理のメリット
- 普段の生活に大きな影響が出ない
- 裁判所などを介さずに交渉をするため金銭的負担と時間程負担が軽い
- 将来分の利息が減額または解消される
- 自己破産のような職業制限や資格制限がない
- 家や車を残せる
- 債務整理の対象の借金が選べる
任意整理のデメリット
- 約5年くらいは新規の借り入れやクレジットカードの利用ができない
- 借金が完全に免除されるわけではない
- 貸金業者や消費者金融と話し合いが成立しない場合もある
自己破産
自己破産は、破産申立書を裁判所に提出し、免責許可をもらうことで、多重債務に陥ってしまった人が借金の無い状態で新しい生活の第一歩を踏み出せるよう国が作った救済制度です。
自己破産は債務整理の中でも最終手段に位置する手続きで、借金が免除される分、裁判所での手続きも厳格に行われますし、なによりメリットだけでなく、多くの制限も伴う手続きとなっています。自己破産は、借金をゼロにできる代わりにさまざまな制限が課せられます。ただし、自己破産をしたからと会社をクビになったり、生活ができなくなったりはしませんのでご安心ください。
自己破産は以下のような状態の人たちが利用します。
- 借金を返しては借りてを繰り返す悪循環の陥っている人
- 他の債務整理手続きでは解決を望めない人
- 交通事故の負傷などで無職になってしまい返済の目途が立っていない人
- 不動産などの高価な財産を所有していない人
自己破産のメリット
- 免責が受けられれば借金が帳消しになる
- 誰でも申立てができる。通るかは審査次第
- 一定の財産を残すことができる
自己破産のデメリット
- 就業できる職業に規制がかかるようになる
- 免除されない借金もある。例えば、公共料金など
- 官報に掲載される
- 5~10年程度は新規の借り入れやクレジットカードの利用ができない
- 保証人に請求が行き、迷惑がかかる
個人民事再生
個人民事再生とは、裁判所に申し立てを行ない、借金の額を減らしてもらい、生活を立て直すことができるようにする手続きです。原則、借金総額の20%(借金総額の限度は5000万円)か、100万円の額が大きいほうを、3年間で返済する計画を立てます。この3年間の返済が滞りなく行なわれれば、残りの借金は全額免除されます。
また、自営業の人は少し異なり、裁判所に認められることで借金を最大90%まで減額し、残った借金を3~5年で返済していくという流れになります。減額を認めてもらうには、完済までの返済金額や期間をまとめた再生計画案の内容を認可してもらう必要があります。
個人民事再生は、自己破産に比べ職業による制限がなく、マイホームやマイカーを維持しながら借金の減額ができます。
裁判所が申し立てた人の収入や借金の額、借金を背負った理由を考慮し、本人と面談した上で借金をゼロにするか判断します。個人民事再生は以下のような人たちがよく利用します。
- 任意整理での完済は厳しいが自己破産するほどの借金はない人
- 自己破産では免責決定が出なかった人
- 住宅ローンを返済しながら借金整理がしたい人
個人民事再生のメリット
- 借金を大幅に減額できる
- マイホームや車を維持できる
- 将来分の利息が免除される
- 自己破産のような職業制限などがない
個人民事再生のデメリット
- 利用できる条件が明確なので利用条件を満たしていない人は利用することができない
- 任意整理より手間と時間と費用がかかる
- 保証人に請求が行くので迷惑がかかる
- 官報に掲載される
- 5~10年程度は新規の借り入れやクレジットカードの利用ができない
特定調停
特定調停とは、裁判所に仲裁してもらい貸金業者と金利の引き直しや返済額の減額を交渉することによって、3~5年程度ですべての借金の支払いを終わらせる和解計画を立てる手続きです。
特定調停の場合は、裁判所にいる調停委員が自分の代わりに交渉してくれるので金融業者やカード会社との交渉はしたくないという方にはぴったりの方法です。特定調停は、任意整理と同じような効果があるのに、費用を大幅に節約できるのでおすすめの手続きです。
特定調停は自分で裁判所に足を運び、資料を集める必要はありますが、裁判所にいる調停委員が丁寧に教えてくれ、交渉もしてくれるので、「債務整理をしようかな」と思ったら、まず裁判所に行って特定調停がやりたいと相談するのが良いでしょう。特定調停は下記にような人に特におすすめです。
・専門家へ支払う費用を節約したい人
・専門家に債務整理を断られた人
特定調停のメリット
- 裁判所を仲裁役として行うので貸金業者が応じてくれる可能性が高まる
- だいたい2~3カ月で手続きが終わるので時間があまりかからない
- 裁判所の調停委員に相談しながら進めていくので、個人でも失敗せずに手続きできる
- 特定の貸金業社を省いた手続きが可能
特定調停のデメリット
- 住宅ローンは減額することができない
- 過払い請求と同時にはできない
- 信用情報に特定調停をしたという事故情報が5年間残る
- 返済計画通りに3~5年で必ず返済しないと借金が免除されない
- 調停成立後に支払いができなくなると給与等の差し押さえをされる可能性がある
- 手続き中の遅延損害金が借金に加算される
過払金請求
過払い金返還請求とは、利息制限法の上限を超えて貸付を行っていた貸金業者に対して、不当に払い続けていた利息の返還を求める行為のことをいいます。近年は、大手のクレジットカード会社でも過払い金が発生しています過払い金も裁判所を通す必要がないため、弁護士への費用が過払金請求の費用となります。
過払い金返還請求をする際には、気を付けなければならないことがいくつかあります。それらをよく把握した上で、失敗を回避できるようにしましょう。
過払い金返還請求は、借入をしていた全ての債権者にできるとは限りません。借入をしていた時期があっても過払い金が発生していないケースもあります。では、過払い金が発生しないケースとはどういうものがあるのでしょうか。
2006年12月に出資法の上限金利が利息制限法と同じ水準に引き下げられたことにより、多くの貸金業者は2007年中に金利の改定を行いました。それによって、金利の改定以降の借入は過払い金が発生している可能性はかなり低くなっています。さらに、金利の改定前の時期に借金をしていても、利息制限法で定められた金利の範囲内で借り入れをしていた場合には、過払い金は発生しません。
また、最高裁が過払い金の返還請求を認めてから、過払い金請求の依頼者が急激に増加しました。そのため、過払い金の支払に追われて倒産してしまった貸金業者も結構あります。合併等により会社の名前が変更になっている場合もあるため、まずは借入をしていた貸金業者が現在も存在しているかを確認しましょう。
そして、過払い金返還請求の権利には消滅時効が存在し、債務の完済から10年経つと行使することができなくなってしまいます。時効が迫っている場合には焦らず、弁護士などに依頼して迅速に手続を進めることが大切です。
「ある人が他の人に対して一定の行為を請求する権利」のことを債権といいますが、過払い金返還請求権もこれにあたります。そのため、過払い金があるのにもかかわらず返還請求をせずにいると、10年で請求できる権利が失われることになるのです。
過払い金返還請求の時効については、起算日を過払いが発生した日にするか債務を完済した日にするかで判断が分かれていましたが、2009年に最高裁が、取引が終了した時点から進行するものと解するのが相当であると判決を下しました。これにより、過払い金返還請求の時効は、原則として取引の終了から10年と定められています。
過払金請求のメリット
- 信用情報機関のブラックリストに載らない
- 周囲に過払い金請求をしている事が露見しにくい
- 裁判所を通さないので時間的、金銭的負担が少ない
- 任意整理を行っている場合は、借金を減額できる
過払金請求のデメリット
- そもそも貸金業者との話し合いに対応してもらえない可能性もある
- 二度とその貸金業者からはお金を借りられないと思ったほうがいいでしょう
債務整理を行うと、家族や恋人、職場の人にバレてしまうのではないか!?
債務整理するとなると、どうしても気になってしまうのが周りへの影響ですね。家族や会社・友人・恋人に知られてしまわないだろうか、と誰もが不安に感じることですよね。
結果から言えば、債務整理は周りに知られずに進めることが可能な手続きです。しかし、自ら手続きを行うとなれば、貸金業者との連絡、裁判所とのやり取りなど、思わぬところから周りに知られてしまう危険が付きまといます。
どうしても周りに知られたくない場合は、まず専門家に依頼しましょう。専門家であれば、貸金業者との連絡や交渉、和解に至るまですべて代理で行ってもらうことができますし、裁判所とのやり取りも専門家を介して行われるため、自身のもとに連絡が来る心配はありません。専門家とのやり取りは自分の携帯電話のみにしてもらい、書面のやり取りが必要な場合は、郵送ではなく手渡しといったように、事前に専門家に伝えておけば最大限協力してもらうことができます。
また、専門家には依頼者との間に守秘義務が発生するため、たとえ家族から問い合わせがあっても他言される心配はありません。自身が口を滑らせない限りは、周りに知られる危険を回避できるのです
ただ、自己破産や個人再生といった裁判所を介する手続きの場合、官報に自身の名前や住所が記載されてしまいます。とはいえ、官報を購読している一般の方はまずいませんし、最近では信用情報機関も官報はチェックしないと公言している機関もあるほど。それと、個人再生の場合は、生計を共にする同居人(妻や夫)の給料明細が必要になるので、内緒にできない可能性が高いかもしれません。
なお、債務整理する方はお金に困っているケースがほとんどです。よって、債務整理を専門に取り扱っている事務所では、こうした依頼者側の事情を考慮し、分割払いや後払いに応じてくれる事務所も多く存在しています。
また、初回の法律相談料は無料、債務整理の相談も無料、初期費用0円で着手可、といったように、お金に余裕がない人のために特別な料金体系を用意している事務所もあります。また、手続きの中で過払い金が判明すれば、すべての費用を過払い金から賄える場合もあります。
つまり、過払い金次第では、持ち出し0円ですべての借金を整理できてしまうパターンもあるということです。
専門家は債務整理を利用する方の事情をわかってくれています。費用の心配をする前にまずは無料相談から始めてみましょう。
債務整理にかかる費用をできる限り減らすには?
債務整理にかかる費用のうち、裁判所への費用を抑えることは不可能ですが、弁護士費用を抑えることは可能になります。弁護士にかかる費用を抑えるためのポイントとしては以下の2つが挙げられます。
- 司法書士に依頼する
- 法テラスの民事法律扶助制度を利用する
どちらも費用面でのメリットはありますが、同時にデメリットもあるので、詳しく解説していきます。
司法書士とは裁判所などに提出をする書類を作成する法律家を指します。したがって、法律の相談や債権者への交渉など債務整理の手続き全般を行うことはできません。しかし、認定司法書士になると、債務整理に関わる法律相談、交渉、訴訟ができるようになります。
基本的には、司法書士に債務整理を依頼すると、着手金や成功報酬の一方が不要になるなど通常の弁護士事務所の相場よりもやや低い傾向があります。しかし、弁護士と司法書士とでは債務整理の手続きの中で「できること」が異なりますので、注意が必要です。
弁護士と司法書士の違いは、司法書士には取り扱える金額に上限があることです。認定司法書士の場合、貸金業者1社につき140万円を超える借金額は取り扱うことができません。一方で弁護士には上限がありません。
また、司法書士は書類作成のサポートまでしかできません。そのため、裁判所での対応など複雑な手続きをほぼ依頼者自身自分で行う必要があります。しかし、弁護士であれば、依頼者の代理人となるため、すべての手続きを行うことができます。
また自己破産の場合、通常、裁判所に支払う費用が約50万円程度かかるのに対して、弁護士に依頼すれば約20万円で済むケースもあります。費用で考えても弁護士に依頼した方が、低額になるケースもあるのです。
もう一つの方法は、法テラスを利用することです。法テラスとは、法律的支援を目的にした国の機関で、正式名称は、日本司法支援センターといいます。日本全国、47都道府県に支所があり、弁護士や司法書士による無料相談が受けられます。
また、法テラスを利用すると、自己破産などの弁護士・司法書士費用が用意出来ない場合に、いったん法テラスに立替払いをしてもらって、弁護士・司法書士費用を分割払いすることができます。さらにその場合にかかる費用もとても安くなります。この制度のことを、民事法律扶助制度と言います。
しかし民事法律扶助制度は、民事扶助制度ですので、一定以下の資力でないと利用できないという制限があります。一定以下の資力というのは、単身者の場合、月給が約18万円以下であり、資産が180万円以下であること、などがあります。しかし家族の人数、住んでる場所などによって基準は変わるので、この限りではありません。
法テラスのメッリトはやはり、弁護士・司法書士費用を立て替えてくれるということです。しかしながら、多くの弁護士・司法書士事務所では支払いが可能な範囲での分割払いに応じてくれる事がほとんどです。
また、法テラスの利用はこちら側から弁護士や司法書士を選べなかったり、待ちが発生してしまうなどのデメリットもあります。お互いのメリット、デメリットを考慮して自分に合った方法を取ることをおすすめします。