目次
- どうしても借金を返せそうにない…もう自己破産しかないのかも…
- 弁護士に依頼したら費用が必要になるのでできれば自分で手続きをしたい
- 裁判所の手続きって何から始めたらいいの?
今回は、このようなお悩みをお持ちの方に自己破産手続きの進め方について解説いたします。
自己破産の手続きは、弁護士などの専門家に依頼して行うケースがほとんどですが、法律事務関係の実務経験がある方であれば自力で手続きを行う人もいます。
一方で、こうした経験が全くない人が自力で自己破産の手続きを行うのはなかなか難しいというのが実際のところですから、できれば弁護士などに依頼するようにしましょう。
(後でくわしく紹介しますが、弁護士費用は国に建て替えてもらうことも可能です)
自己破産手続きに必要になる書類と取得先
自己破産は裁判所に申し立てをして手続きを行います。
裁判所に手続きを認めてもらうためには、以下のような書類を作成して提出する必要があります。
- ①申立書
- ②陳述書
- ③住民票や戸籍謄本
- ④あなたの収入を証明する書類
- ⑤預金通帳のコピー(数年間分)
- ⑥あなたの住居に関する書類
- ⑦あなたの資産に関する書類
それぞれの必要書類について、取得先や作成方法を順番に見ていきましょう。
①申立書
申立書は、裁判所に自己破産手続きを開始することを認めてもらうための申し込み用紙のようなものです。
申立書には家計収支表などの情報を記入する必要があります。
裁判所のホームページや窓口で取得することができますが、それぞれの裁判所によって記入内容が微妙に異なることがありますから注意しておきましょう。
自己破産手続きはあなたの住所地を管轄している地方裁判所に対して申し立てをしないといけませんので、該当する裁判所から書類を受け取るようにしてください(民事部破産再生係というところが窓口です)
②陳述書
陳述書は、あなたが借金を負うことになった理由や、今後の生活方針などについて文章で説明を行う書類です。
こちらも実際に申し立てを行う地方裁判所の窓口でひな形が配布されていますから、取得するようにしましょう。
裁判所は、陳述書の内容から、あなたの借金を免責してあげるべきかどうかを判断します。
もし、陳述書の内容が不十分なものであった場合には、その他の書類をすべて適切に集めたとしても、免責が認められない可能性があるので注意しておきましょう。
③住民票や戸籍謄本
あなたの住所や世帯状況を証明するために住民票が必要です(市役所で取得できます)
なお、同居している家族がいる場合には、その人との親族関係を説明するために戸籍謄本が必要になるケースもあります。
④あなたの収入を証明する書類
上で見た①申立書にはあなたの家計状況を記載しなくてはなりませんが、その情報は事実に基づいたものでなくてはなりません。
申立書に記載した内容が事実であることを証明するためには、勤務先から受け取る源泉徴収票や、直近数か月分の給与明細を添付する必要があります。
自営業として働いている人は、過去の確定申告書の控えなどを提出するようにしましょう。
生活保護を受けている方は、生活保護受給証明書が必要です。
⑤預金通帳のコピー(数年間分)
財産の状況を説明するため、預金通帳の数年間分をコピーして提出します。
ネットバンキングなどを使っていて預金通帳がない場合には、ネット上の管理画面から取引明細をPDFなどでダウンロードして印刷しましょう。
⑥あなたの住居に関する書類
あなたがどのような家に住んでいるのかを証明する書類が必要です。
賃貸アパートやマンションに住んでいる場合には、家主に依頼して居住証明書を出してもらうか、難しい場合には賃貸借契約書を用意しましょう。
持ち家に住んでいるという場合は、法務局で不動産登記簿謄本を取得します。
⑦あなたの資産に関する書類
住居以外にも、あなたに換金できる財産がある場合には、それらの財産の内容を証明する書類を提出しなくてはなりません。
例えば、下取り価値のある自動車などは車検証のコピーや買取り業者に査定してもらった査定書、勤務先の会社に退職金支払いのルールがある場合には、退職金見込み額証明書を発行してもらう必要があります。
その他、積立型生命保険に加入している場合には保険証券や解約返戻金の金額がわかるものなどを提出しなくてはなりません。
弁護士に依頼すれば書類作成はすべて代行してもらえる
自力で自己破産手続きを行う場合には、上で見た必要書類をすべて自分で作成する必要があります。
特に、陳述書の内容はとても大切で、返せない金額を負うに至ってしまったことについて反省しているということや、今後の生活見通しなどについて裁判官にアピールする内容になっていなくてはなりません。
最悪の場合は、せっかく時間をかけて手続きの申し立てをしても、書類の不備を理由に申し立てが却下されてしまうこともありますから、注意が必要です。
一方で、弁護士に依頼した場合には、あなた自身でやる作業は最低限で済みます。
住民票や戸籍謄本といった書類の取得を市役所などで行い、弁護士にそれらの書類を渡しさえすれば、面倒な手続きはすべて代行してもらうことが可能です。
日中は仕事をしているという方や、安心して手続きを進めていきたい方は、無理せず弁護士などの専門家に自己破産手続きの代行を依頼するようにしましょう。
自己破産手続きの大まかな流れ(同時廃止の場合)
自己破産手続きには、大きく分けて「同時廃止」と「管財事件」という2つの種類があります。
同時廃止というのは、ごく簡単にいえば「自己破産の手続き開始時点で、あなたに財産がない状態」である場合に選択される手続きです。
ほとんどのケースでこちら(同時廃止)で手続きを進めていくことになりますから、以下では同時廃止の手続きの大まかな流れについてみておきましょう。
同時廃止による自己破産手続きは、以下のような流れで進んでいきます。
- ①申立て書類の準備
- ②即日面接
- ③破産手続き開始の決定
- ④免責審尋
- ⑤免責許可決定
- ⑥借金の免責が確定する
以下、順番に内容を説明していきます。
①申立て書類を準備して裁判所に提出
上で説明した自己破産の必要書類を順番に準備していきます。
どこでどの書類を取得するのかを事前に整理しておいて、無駄のないように取得しに行きましょう(例えば、住民票を取得する市役所と登記簿謄本を取得する法務局などは隣接していることが多いです)
申し立て書類がそろったら、あなたの住所地を管轄している地方裁判所に対して申し立てを行いましょう。
②即日面接
裁判所への自己破産手続き開始の申し立てを行うと、その場で裁判官と面接を行うことになります(即日面接といいます)
申し立て書類に不備がないかどうかや、書類の具体的な内容について質問されますので、回答しましょう。
③破産手続き開始の決定
即日面接に問題がなければ、即日面接を行った日の同日に「破産手続き開始決定」が出されます。
次回に裁判所に来る日程を指定されますので、スケジュールを調整しましょう。
④免責審尋
指定された日時に、再度裁判所に足を運んで裁判官と面接します(免責審尋という手続きです)
申立書や陳述書に記載した財産や生活の状況について具体的に質問されますので、事実に基づいて回答しましょう。
⑤免責許可決定
免責審尋の結果、問題がなければおよそ1週間後に免責許可決定が出ます。
免責許可決定が出た時点でほぼ借金の免除は確定していますが、まれに債権者から異議が出されることがあり、その際にはさらに手続きに時間がかかることがあります。
⑥借金の免責が確定する
免責許可決定が出てから1か月が経過したら、法律上、免責許可決定が確定します。
この時点であなたの借金はすべて免除されたことになります。
自己破産の手続きを自分でやる人が知っておくべきこと
自己破産手続きは自分で行うことも決して不可能ではありませんが、上でも見たように、裁判所への手続き申立てではかなりシビアな内容を求められます。
裁判所の手続きや、債権者との交渉は経験のない人にはとても難しいことを理解しておきましょう。
これから自分で自己破産の手続きを行なうことを検討している方は、次のようなことを理解しておいてください。
申し立て書類に不備があると手続きが進まないことも
まず、裁判所はあなたが作成した陳述書や申立書の内容が、事実に基づくものであるかどうかを公的な書類によって証明するように求めてきます。
具体的には、陳述書に書いた年収や財産の状況が、勤務先の発行する源泉徴収票や、住んでいるマンションやアパートの大家さんが発行する居住証明書と合致しているかどうかをチェックしてきます。
また、陳述書にはあなたが借金を負うに至った当時の状況について、くわしく具体的に書くことが求められることも知っておいてください。
人によってはこうした作業には大変な苦痛がともなうこともあるでしょう(借金をした当時の苦しい状況を思い出しながら細かく書いていく必要があります)
このようにして作成した申し立て書類であっても、もし不備があれば作り直しを求められる可能性があるのです。
弁護士に依頼した場合にはこうしためんどうな作業はすべて代行してもらうことが可能です。
裁判所がどういうところを見ながらチェックしているのか?を押さえて作成をしてくれますから、免責をスムーズに得ることにつながるでしょう。
弁護士費用は国に立替払いしてもらえる
「そうはいっても、実際問題としてお金が手元になくて困っているのだから、弁護士の費用なんて払えない…」とお悩みの方もいらっしゃるでしょう。
そのような方は、国の運営機関である「法テラス」に相談することも検討してみてください。
法テラスとは、裁判手続きを行いたいけれど、弁護士などを雇うお金が無くて困っている方を支援してくれる組織です。
具体的には、自己破産手続きを依頼するために必要な弁護士費用(30~40万円程度が相場です)を法テラスがいったん立替払いをしてもらうことができます。
立替てもらったお金は、その後分割払いで法テラスに対して返済していくことになります。
今手元にお金がない…という方も、弁護士に依頼して自己破産手続きを行うことは可能ですから、ぜひ検討してみてください。
自己破産手続きが認められないこともある?免責不許可事由に注意!
自己破産手続きを裁判所に認めてもらい、免責決定を出してもらうことができればあなたの借金はすべて免除されます(つまり0円にしてもらえます)
ただし、借金を作ってしまった原因や、債権者とのやり取りの仕方によっては、自己破産手続きによる免責が認めてもらえないケースがあるので注意が必要です。
具体的には、次のような事情がある場合には自己破産による免責が認められない可能性があります(こうした事情のことを「免責不許可事由」と呼びます)
- ①ギャンブルや浪費
- ②財産隠し
- ③換金行為
- ④偏波弁済
- ⑤債権者をだまして借入をしたような場合(詐欺的な借り入れ)
それぞれの免責不許可事由について、順番に見ていきましょう。
①ギャンブルや浪費
ギャンブルや浪費が原因で借金を作ってしまったという場合、免責不許可事由に該当してしまう可能性があります。
具体的には、競馬やパチンコといったギャンブルで使うお金をカードローンでたくさん借りたとか、ショッピングのためにクレジットカードのリボ払いを繰り返し利用してしまったというケースが該当するでしょう。
また、株式投資やFX投資に借りたお金をつぎ込み、結果として損をして借金だけが残ってしまった…というケースも免責不許可事由に該当する可能性があります。
(なお、これらに該当してしまうケースでも、後で見るように「裁量免責」によって借金が免除されることがあります)
②財産隠し
自己破産による免責を受けるためには、あなたが所有している価値ある財産は、すべてお金に換えて債権者に分配しなくてはなりません。
具体的には、下取りや買取りによって20万円以上の現金に換えることができる財産は、売却して債権者に引き渡す必要があるのです。
代表的なケースではマイホームや自動車などが該当しますが、自営業の方などは事業用の資産もこうした財産とみなされる可能性があります。
もし、こうした財産があるのに裁判所にこれらを報告しなかった場合には、「財産隠し」とみなされて免責不許可事由に該当する可能性があります。
③換金行為
換金行為とは、具体的にいえばいわゆる「クレジットカードのショッピング枠現金化」が該当します。
これはショッピング枠の利用残高が残っているクレジットカードを使い、商品を購入した後に業者に対して商品を売却し、代金として現金を受け取るという行為をいいます。
こうした行為は債権者に迷惑をかける行為とみなされますので、免責不許可事由に該当します(クレジットカード会社の利用規約でも禁止されています)
④偏波弁済
自己破産による免責を受けた場合、あなたが所有している財産は、すべての債権者に対して「平等に」分配しないといけません。
例えば、手続き開始直前の時点で、あなたに200万円の資産があり、債権者としてAとBがいたとしましょう。
このお金を「どうせ手続きをしたらなくなってしまうから」ということで債権者Aに対して全額渡したとします。
そうすると、本来であれば自己破産手続きによって平等に分配を受けることのできたはずの債権者Bは損をしてしまうでしょう(この場合であれば200万円を2人の債権者で分けあうので、100万円)
自己破産手続きでは、債権者を平等に扱うことがとても重要視されますので、上のような行為は偏波弁済として免責不許可事由に該当する可能性があります。
⑤債権者をだまして借入をしたような場合(詐欺的な借り入れ)
消費者金融や銀行などのカードローンを利用するときには、必ず収入を証明する書類の提出が求められ、勤務先への在籍確認などが行われます。
もし、こうした借入手続きの際にうそをついてお金を借りたような場合には、「詐欺的な借り入れ」として免責不許可事由に該当してしまいます。
また、借入後に1回も返済を行っていないなど、約束した期限までに借金全額を返済する意志がまったく見られないような場合にも、詐欺的な借り入れとみなされる可能性がありますから、注意しておきましょう。
免責不許可事由に該当しても免責されることはある
上で見たような免責不許可事由に該当してしまう場合にも、裁判所への申し立ての仕方しだいでは、特別に免責を認めてもらえるケースがあります。
裁判官には非常に広い権限が認められていますから、「法律上は免責できないルールになっているけれど、この人は反省しているようだし生活も立て直せそうだから、今回は特別に免責する」といったような形をとってもらうことが可能なのです。
(こうしたケースを裁判官による裁量免責といいます)
裁量免責を認めてもらうには手続きの進め方や作成書類の内容が大切
ただし、裁量免責を認めてもらうためには、陳述書の内容や生活状況の報告の仕方がとても大切になります。
自己破産による免責は、返せない金額の借金を負ってしまった人の生活立て直しを支援するための制度ですから、裁判所に「借金をいったん免除してもらえれば、今後は同じ失敗をすることなく生活をしていける」と判断してもらう必要があるからです。
ここでも弁護士などの専門家に手続きを依頼するか、自分で手続きを行うかによって差が出てしまう可能性がありますから、免責不許可事由に該当してしまう可能性がある方は注意してください。
まとめ
今回は、自己破産の手続きを自分で行うことを検討している方向けに、手続きの大まかな流れや注意点について解説いたしました。
本文でも見ましたが、自己破産の手続きは経験のない方にとって非常に難しく感じる部分が多いです。
作成した書類に不備があるとせっかくかけた時間が無駄になることもありますし、その間にも債権者からの督促が止むことはありません。
弁護士や司法書士といった専門家に依頼して手続きを行えば、専門家に正式に依頼した時点で債権者からの借金督促はストップしてもらえますし、ほとんどの手続きを代行してもらうことが可能です。
こちらも本文で見たように、費用については国(法テラス)による立替払いも可能です。
「今は手元にお金が無くて困っている…」という方であっても、弁護士に依頼して自己破産手続きを行うことは可能ですから、ぜひ検討してみてください。