FXの売買高が低迷|今後の為替取引はどうなる?

FX(外国為替証拠金)の取引が低迷しています。2018年の取引金額は約4,000兆円と3年連続で前年を下回りました。円相場の値動きが小幅にとどまり、価額の変動が大きい仮想通貨に取引が流れたためと見られています。投資家の裾野も思うように広がらず、 FX 業界は冬の時代の到来に危機感を持っています。

FX取引とは

日本のFX取引は、1998年にスタートした比較的新しい金融商品です。それまでの伝統的な株式や債券などに比べてより自由な取引となっています。例えば、買いだけでなく売りからも取引ができる、平日に24時間取引できるなどが特徴で、インターネットやスマートフォンの普及に伴い、会社員や主婦を中心に個人の身近なトレードツールとして広がってきました。

FX 取引を手掛ける個人投資家は「ミセスワタナベ」呼ばれ、世界中に知られるようになりました。ただし市場が成熟するにつれて投資家の裾野拡大が業界の議題になりつつあります。 FX の国内口座数は約760万ありますが、取引実績がある稼働口座は76万。口座数は増えているものの、稼働率で言えば1割程度しかありません。

FXのメリット

それでは、より具体的にFXのメリットを確認していきましょう。

24時間取引が可能

代表的な金融商品である株式の場合は、取引時間が平日の9時から15時と決まっていますが、 FX は平日24時間いつでもお取引することができます。 FX は世界中で取引が行われていて、どこかで必ず外国為替市場が開いているからです。ただし、取引時間によって値動きが変わってきます。複数の市場がかぶっている時間は市場参加者が増え、値動きもあります。

主な市場は、東京、ロンドン、ニューヨークとなります。

  • アジア時間(東京):8時~15時
  • 欧州時間(ロンドン):15時~21時
  • 米国時間(ニューヨーク):21時~翌6時

外国為替市場で最も取引が多いのは欧州です。続いて米国、そしてアジア市場となります。

少額から取引ができる

FX は少ない資金で始めることができます。例えば1ドル=100円の場合、1万ドルを買うには本来100万円が必要な計算になります。しかし、 FX ではレバレッジをかけることができるため、取引額と同じ資金を用意する必要はありません。必要な証拠金を入れれば資金の何倍ものポジションを持つことができるのです。これを「レバレッジ取引」といいます。

レバレッジとは、証拠金を担保に預けた資金の何倍もの取引ができることです。それは、 FX が売りと買いの差額だけをやり取りする「差金決済」だからです。差金決済とは、現物を必要とせず売りと買いの差額だけで取引をすることです。損失が証拠金額の一定割合に達した時にポジションが強制決済される「ロスカット」という仕組みがあり、少額の資金でのトレードが可能になっています。

FX のレバレッジは25倍となっています。例えば、1ドル=100円の時に1万ドルのポジションを持つと100万円の取引金額となりますが、レバレッジ25倍なら

100万円 ÷ 25= 4万円

の証拠金で取引ができるということです。

ただし、取引できるからといって最低限の証拠金でポジションを持つのは危険です。思惑と少しでも反対に相場が動くと、必要な証拠金の額が足りなくなり、取引を強制的に終了させられることになるからです。

取引コストはスプレッド

基本的に FX 取引では手数料はかかりません。ただし、 FX の取引画面では買値と売値の二通りのレートが表示されます。買値は売値より高く設定されているので、買った瞬間に売ったとしても、投資家は損が出ることになります。この買値と売値の差を「スプレッド」といいます。例えば、ドル円のレートが以下のように表示されていたとします。

(売)110.681 (買)110.684

この場合は110.684円でドル円を買うことができ、110.681円でドル円を売ることができるということです。この差額がスプレッドです。通常、ドル円は0.3~1銭程度のスプレッドとなりますが、FX会社によって異なります。

2018年のFX市場

それでは、昨年のFX市場を振り返ってみましょう。

膠着相場が続くドル円相場

金融先物取引業協会によると、2018年の10と FX の取引金額は4,003兆円と2017年に比べて約7%減少しました。前年の実績を下回るのは3年連続で、過去最高となった2015年の5,570兆円と比べて3割近く減少しています。

取引が減少した最も大きな原因は、ドル円相場だと見られています。 FX の売買の過半数を占めるドル円の取引ですが、2018年の円相場は高値と安値の差が値幅10円程度と歴史的な狭さとなりました。この値動きでは為替差益を狙うのは難しく、積極的に売買を増やすことはできなかったのです。

FXの取引には為替差益を狙う「キャピタルゲイン」と、スワップ金利を狙う「インカムゲイン」の2種類があります。1日ぶんのスワップ金利の額は微々たるものですが1年2年と長期運用をした場合大きな収益となります。

かつては豪ドルや米ドルなどの金利が5%を超えていた時は、スワップ狙いの買いというのは非常に人気がありましたが、現在はトルコリラなど新興国通貨がメインとなっています。先進国通貨に比べ新興国通貨は値動きが荒い傾向があるので、スワップ金利が高くても為替差損のリスクが大きくなります。

トルコショック

昨年は先進国の通貨が動かなかったのに対して、新興国通貨は非常に値動きが荒い展開となりました。特に2018年の8月に起こったトルコショックは、トルコリラが米ドルに対して1日で20%も急落。大きな損失を被る投資家が多数出ました。

一般に新興国の多くはリーマンショック以降世界的な金融緩和で膨張した対外債務を抱えており、通貨安が進むと輸入物価の高騰や外貨建て債務の返済負担が増大する危険に晒されていました。そういった中で起こったトルコ経済の混乱は、他の新興国通貨にも波及し、アルゼンチンペソやブラジルレアル、南アフリカランドなど多くの通貨に影響を与えたのです。

このトルコショックは通貨安だけにとどまらず、株式市場にも影響を与え、世界のマーケットを大きく揺るがしたのです。

このように先進国通貨は膠着状態が続いて値動きがなく、スワップ狙いで長期保有をしていたトルコリラなど新興国通貨が大きく下落したことにより、昨年は大きな損失を被った FX 投資家が多かったのです。

新しいサービスの登場

新しいライバルの登場も大きく、特に仮想通貨の代表であるビットコインが2017年10月に  1ビットコイン2万ドル近くまで上昇し過去最高値を更新。2018年には下落基調となり、12月には一時3,000ドル台と8割ほどを下げました。

価格の急落で損失を抱えた投資家も多かったものの、1日の価格が1~2割ぐらい動くことも多く、買いだけではなく売りにも慣れた多くの FX 投資家は、値動きの大きさに着目して取引を仮想通貨に移したと見られています。

またフィンテックを利用した新しいサービスが若者を中心に広がっています。スマートフォンを使って手軽に株式を売買できたり 、AI (人工知能)を利用したロボアドバイザーが資産運用を自動で行ってくれたりするなど、新しい金融サービスが次々に誕生しています。

こういった流れの中で、資産の特徴ではなくサービスの内容で投資先を選ぶようになっているのです。

今後のFX市場

今後のFX市場を動かす要因を見ていきましょう。

米中貿易摩擦

2018年から米中貿易摩擦が起こりました。これはアメリカ合衆国(米国)と中華人民共和国(中国)の二国間における貿易問題のことです。米国、中国共に追加関税を実施し始めたことにより対立が顕在化しました。

ただし、これは1990年から経済的に急成長を続け、 GDP で日本を抜いて世界第2位になった中国と、20世紀初頭から約100年にわたって世界の覇権を握ってきた米国の競争の一角だと見られています。

米中貿易摩擦の為替の影響はどのようなものがあるでしょうか。このまま貿易戦争が続くことで世界的な影響をもたらす可能性も考えられます。お互いに関税をかけあれば、世界経済が失速します。

そのような経済危機に陥った場合は、為替市場は安全資産と言われている日本が買われる傾向があり、円高になる可能性があります。

ただし、米中貿易摩擦ではアメリカかが有利だと考えられています。それは、アメリカ側の輸入は中国の輸出に頼る必要がないからです。もちろん中国製品は低価格なので中国からの輸入が止まれば多少なりともコストは増えますが、中国以外からの輸入でも大丈夫ですし、食料自給率や原油生産量などを考えると米国は特に輸出が必要な国ではありません。

事実、米国は貿易赤字が続いている国です。逆に中国側は多額の貿易黒字が出ていたアメリカが貿易をやめてしまうと大幅な黒字減となります。経済成長が鈍化傾向にある中国としては国内景気の需要が望めず、米国との輸出が経済発展には必要なのです。ですからこれ以上の関係悪化は避けたいはずです。

米国側に有利な条件で決着した場合は、ドル高となり円安ドル高が進むことになります。

英国の欧州連合 (EU)離脱をめぐる混乱

イギリスのヨーロッパ連合からの離脱を表す「ブレグジット」も注目されています。2016年6月に EU 残留の是非を巡って行われた国民投票の結果、離脱が過半数を超え、当時のメイ首相が EU に対して正式に離脱を通告しました。イギリスと EU との離脱交渉を経て2019年3月にイギリスは EU から離脱する見込みとなっています。

離脱時期は2019年3月末に迫っているものの、離脱状況をめぐりイギリスと EU との交渉は難航しています。影響を懸念した企業が国内の拠点や工場を移転する動きも出ています 。

イギリス国内でも混乱が続いており、政府与党内からは、合意なき離脱の阻止を目指す動きが活発になっています。保守党内では離脱延期の議員提案を議会で可決する動きが広がってきており、メイ首相は合意なき離脱を選択肢から外しておらず、政府・与党内の足並みの乱れが鮮明になっています。

2016年のブレグジットの時は、ポンド円が160円台から130円台半ばまで急落し、ドル円も106円から98円割れとなりました。このボラティリティ(値動き)の高さはポンド円では史上最大の値幅、ドル円は過去5番目となるほどの歴史的な相場でした。今回は前回のような混乱は起こらないと見られていますが、仕掛け的な取引で大きく動く可能性もあるので注意が必要です。

消費税増税

2019年10月に予定されている消費税増税。過去の経験則では円安に進むとの見方があります。政府が初めて3%の消費税を導入したのは1989年の4月。直前3月末の1ドル130円55銭から1年後の90年3月末まで153円31銭と17%円安に振れました。

97年4月の5%への消費税引き上げでは直前3月末の122円76銭から1年後には128円99銭に5%の円安。8%に引き上げた2014年4月の場合は1年間で18%が進みました。

為替のレートの決定理論に購買力平価というのがあります。購買力平価では、物価が上がればモノを買うのに多くのお金が必要となるため、物価上昇率の高い国の通貨の価値は下がるというものです。

消費税増税は物価の上昇をもたらします。税率が8%から10%に引き上げられると、消費者は108円で買えていたものが110円支払わなければいけません。日銀が利下げで世の中に出回るお金の量を増やし、物価を引き上げるのと同じような効果があるのです。

もちろん為替のレートは購買力平価だけで成り立っているわけではないので、消費税増税が必ずしも円安を招くわけではありません。あくまでも過去3回の経験則となっています。ただし、これまでも消費税増税によって消費が落ち込み景気が悪化したということも円安に繋がりました。

政府は今後消費者へのポイント還元などで増税対策を進めています。また今回の増税に関しては、過去2回延期された経緯があります。2019年は4月に統一地方選挙、7月に参院選が行われます。この選挙結果によって、本当に予定通り10月に増税するかという不透明感が残ります。

フラッシュ・クラッシュ

2019年は FX 投資家にとって波乱の幕開けになりました。1月3日早朝に起きた「フラッシュ・クラッシュ」。円相場がわずか数分で4円ほど急騰し、 正月休み中だった日本の個人投資家は思わぬ損失を被りました。

昨年わずか10円しか値幅がなかったドル円相場が、1日でその4割も動いたのです。金融先物取引業協会によると、一連の急騰劇で発生した未収金は約9億円に達しているということです。2015年1月に起きたスイスフランショック(約33億円)ほどではありませんが、損失を抱えた投資家から FX 会社が資金を回収しきれない事態となりました。

フラッシュ・クラッシュとは、株価や為替が瞬時に大きく下落することです。NYダウが2010年5月に数分間で1,000ドル(約9パーセント)下落したことから、こう呼ばれるようになりました。

フラッシュ・クラッシュは、日本の連休中の月曜早朝に起こりやすいといわれています。日本市場が休みなので市場の流動性が極端に低くなり、また日本のブローカーのロスカットが行われるかどうかの判断基準が、米国市場が閉まる概ね午前7時(米国夏時間では午前6時)頃といわれているからです。こうした流動性が落ちている時間帯に投機筋が狙って売りを仕掛けてくるのです。

日本は世界でも有数の祝祭日大国です。しかも祝日を月曜に移す政策により、3連休以上が多くなっています。特に今年は5月に10連休を控えています。このような連休中に仕掛け的な取引が出てきてもおかしくありません。また、米国雇用統計や FOMC など重要なイベントが行われます。近年ではフラッシュ・クラッシュの頻度が高まっているので注意が必要です。

まとめ

今回は FX の取引が減っている要因と、今後市場が動きそうなイベントを確認しました。ドル円相場など主要市場の値動きは減少しているものの、興国通貨は大きく動きました。

短期的な取引で利益を狙えるような主要通貨は動かず、金利差のスワップ狙いの通貨は大きく下落したので、どちらも利益を上げづらい相場環境でした。

しかし、米国と中国の貿易摩擦問題やイギリスの欧州連合離脱をめぐる混乱、そして世界経済の減速懸念など、円相場を動かす市場の波乱要因は少なくありません。また、国内でも消費税増税が為替相場にも影響を与えます。

日本の FX 取引は減少傾向にあるとはいえ、約4,000兆円と世界屈指の規模を誇っています。ビットコインなど仮想通貨は大きく下落し、 2018年末からはボラティリティが低くなっています。何かをきっかけに大きく動き出すようなことがあれば取引を回復できるか可能性は高いのではないかと考えています。

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一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト、デリバティブディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴は20年以上。現在は、日経225先物を中心に現物株・FX・CFDなど幅広い商品に投資しています。保有資格:証券外務員1種

ブログ:先物オプション奮闘日誌 http://yanta.cocolog-nifty.com/

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