クラウドファンディングを始める前に読む5つのリスク|タイプ別デメリットにも注意

今回はクラウドファンディングのデメリットやリスク、注意ポイントについて解説していきます。

クラウドファンディングは、資金の貸し手(出資者)にとっては高いリターンが期待できる、借り手にするとインターネットで広く資金調達ができるというメリットがあります。しかし、デメリットについても事前にしっかりと確認しておくべきでしょう。特に、融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)では、過去に貸し手と借り手の間で大きなトラブルが起こっているため、リスクの高さにも注意が必要です。

当記事では、貸し手と借り手それぞれの立場からデメリットを紹介しています。また、クラウドファンディングの種類(融資型、購入型など)ごとに分類していますので、目的に沿って情報をご参照ください。

クラウドファンディングの一般的なリスク

クラウドファンディングは日本ではまだ出始めたばかりのサービスとなるため、投資用として活用する場合も、寄付や商品購入として利用する場合でもリスクに注意しなければなりません。もちろん、資金の貸し手側(出資者、支援者)のリスク、借り手側(事業者)のリスクと両方が存在するので、ここでは両者の視点にたって注意ポイントを解説していきます。

資金の貸し手側のリスク

資金の貸し手にとって、クラウドファンディングとはいわば「投資」です。これは、株式投資型クラウドファンディングだけでなく、購入型や融資型などすべてのサービスに当てはまります。

株式投資型や融資型ではリターンとして利息や配当金などが受け取れるので、投資というイメージが湧きやすいでしょう。一方、購入型のクラウドファンディングであっても、プロジェクトが頓挫してしまえば、商品やサービスなどのリターンは受け取れません。

これは株式投資やFX、投資信託など投資全般に言えることです。どんなに有望な株を買ったとしても、その後値下がりなどによって損失をはらむリスクは必ずあります。クラウドファンディングでも、資金を提供したからといって必ずリターンがもらえるわけでもなければ、最悪の場合、出資しても1銭の見返りもないということもあります。

また、クラウドファンディングのプロジェクトは原則キャンセルができないようになっています。購入型、株式投資型は一度支援・投資を行ったものは取り消せません。融資型については、募集期間内であればキャンセル可能ですが、期間が終了してしまったものは取り消し不可能となります。(サービスサイトによって異なることもあります)

こうしたことからプロジェクトを選ぶ際は入念に情報を調べ、プロジェクト進行中も事業者の動向には注意しておく必要があります。

資金の借り手側のリスク

クラウドファンディングはインターネットを利用して、世界中から広く資金調達を可能にしますが、そのネットワークの広さがデメリットになる場合もあります。

たとえば、出資者に対するリターンの発送や手続きは事業者側が行うことが多いです。クラウドファンディングでは全国各地から不特定多数の人が集まるので、こうした輸送手続きや発送料だけで膨大な作業量・コストに繋がってしまうこともあります。手続きを迅速に、正確に行うには相応の人手やシステムなども必要でしょう。

また、クラウドファンディングで募集したプロジェクトは、たとえ目的が達成されても未達であっても削除されません。そのままWeb上に情報が残ったままとなります。

仮にプロジェクトでたくさんの出資者を集めたとしても、トラブルやアクシデントによって頓挫してしまうと、その悪いイメージはネット上に残るということです。やはり失敗したプロジェクトは、理由はどうあれイメージが良くありません。事業者自体の管理能力や運営能力にはマイナスとなるので、プロジェクトは実現可能性をしっかりと考えて発案すべきでしょう。

寄付型クラウドファンディングのデメリット・注意点

寄付型クラウドファンディングとは、寄付という形で出資を行い、事業者や団体を通じて支援活動ができます。出資を行っても特別なリターンがないため「寄付型」と呼ばれます。

寄付型で出資を行えば、そのお金は「寄付控除」として税金から免除されたり、サイト運営者側からの事業者の審査や活動報告書があるため、事業者の信頼性が高く、コンビニなどで募金するよりもメリットや透明性が高いと言えます。

人気のあるプロジェクトとしては、ふるさとチョイスの「子どもたちに注射ではなく「治る未来」を届けたい。」や、NPO法人による「ミャンマー南シャン州少数民族、老巧化した中学校女子寮の建設をします!」などがあります。

しかし、寄付型クラウドファンディングもメリットばかりではありません。ここでは、資金の貸し手、借り手双方のデメリットや注意点について紹介していきます。

資金の貸し手側のデメリット

寄付型クラウドファンディングで注意したい点は、リターンです。寄付型は慈善事業の意味合いが強いこともあり、金銭的リターン、商品やサービスといった見返りは受けられません。プロジェクトによっては感謝状などを用意していることがありますが、投資として活用することは難しいでしょう。

ただし、寄付型で出資を行うと寄付控除が受けられるので、税金対策として活用することもできます。

また、寄付型クラウドファンディングはサイト運営者が事業者の事前審査を行っていると紹介しましたが、だからといって確実に安全というわけではありません。街頭での募金団体による詐欺被害などが報告される通り、企業や団体でも出資金を悪用する例があります。クラウドファンディングのサイトによっては活動報告書を確認することもできるので、事業者の動向もチェックしておくようにしましょう。

資金の借り手側のデメリット

事業者にとってのデメリットは、知名度の関係から資金が集まりにくいことです。国内のクラウドファンディングは圧倒的に融資型が多く、2017年にはプロジェクトのおよそ90%が融資型となっています。

そのため、まだまだ寄付型は知名度も低く、全体的な投資額も知れています。事業者にとってはプロジェクトでお金が集めにくいということを意味します。

寄付型は「ダイレクト支援型」と呼ばれ、たとえ目標金額に届かなくても出資金が受け取れます。仮に人気が集まらず、中途半端な出資金だけ受け取ってしまえば、後にも先にも引きにくい中途半端な状態になりがちです。寄付型を利用する場合は、プロジェクト内容だけでなく、出資者へのアプローチ方法やマーケティングについても考えておかなければなりません。

融資型クラウドファンディングのデメリット・注意点

融資型クラウドファンディングは「貸付型、ソーシャルレンディング」とも呼ばれ、銀行のように企業や事業者に資金を貸して、満期になると元本と金利分の利息が受け取れます。出資者からすると銀行にお金を預けて利息を受け取るのに似ていることから、資産運用的に利用することが多いです。

しかし、融資型の平均的な金利は5~10%で、普通預金や定期預金(0.01~0.001%)に比べてはるかに投資効率が高い特徴があります。

日本ではクラウドファンディングサービスのほとんどが融資型で、今後も市場の主軸として成長していくことが期待されています。

ただ、融資型を巡っては利息返済を巡って度々のトラブルが発生しており、開始する前にデメリットや注意ポイントを理解しておくべきでしょう。以下、貸し手、借り手とご自身の立場から必要な情報をご参照ください。

資金の貸し手側のデメリット

融資型クラウドファンディングで一番問題とされるのが、出資先の情報が分からないということです。他のクラウドファンディングでは、事業者や団体の情報は詳しく記載され、出資する際の重要な情報源となりますが、融資型では制限があり融資先の情報公開が行われていません。

また、融資型でプロジェクトを発案する事業主のほとんどが中小零細企業で、ネットや書籍などで情報を詳しく調べることも難しいのです。つまり、出資者は企業名や事業内容といった限られた内容だけで融資を行わなければなりません。

こうした事態を受け、金融庁は2018年6月に融資型の案件で詳細情報を開示する、と公表を行いました。この発表では2018年中には情報開示を可能にする手続きが進むはずでしたが、現在でも開示には至っていない状況です。

ゆくゆくは融資型クラウドファンディングでも情報開示が一般的となり、投資金額の総額も増えることが予想できますが、それにはまだ少し時間がかかるでしょう。

資金の借り手側のデメリット

プロジェクトを発案する事業者にとってもデメリットはあります。それは、日本には融資型クラウドファンディングのサービスが少ないことです。

たとえば、国内不動産案件に特化した「OwnersBook(オーナーズブック)」や「LENDEX(レンデックス)」など、一部の業種や分野に特化したサービスが多く、特に不動産分野は融資型クラウドファンディングの約40%以上を占めています。

特定の分野に偏ってしまうと、他の業者や業態のサービス事業者などはプロジェクトを出しにくい、資金が集まりにくいというデメリットに繋がります。

購入型クラウドファンディングのデメリット・注意点

購入型クラウドファンディングは、事業者が新しく開発する商品やサービスなどに出資を行い、リターンとしてその商品やサービスを利用することができます。お金を出して商品を購入するのでネットショッピングと似ていますが、基本的にプロジェクトが成功しない限りリターンは受け取れません。

しかし、今まで世の中に出回っていない珍しい商品やサービスを誰よりも早く利用できたり、事業者にとっては新製品開発のマーケティングとして活かすこともできるでしょう。

中にはユニークなリターンも用意されています。たとえば、「この世界の片隅に」という映画作品の開発プロジェクトでは、出資者に対してエンドロールに名前をクレジットする権利や、制作支援メンバーとして会員登録を行う、コミュニティメンバーの登録などを提供し、支援総額は3,000万円以上を集め成功しています。

ただ、購入型クラウドファンディングにもデメリットや注意点が存在しますので、以下で詳しく解説していきます。

資金の貸し手側のデメリット

出資者にとっての一番のデメリットは、希望通りにリターンが受け取れないリスクがあることです。購入型は「All-or-Nothing方式」と「All-in方式」の2種類に分かれます。

「All-or-Nothing方式」は目標金額に達してからプロジェクトがスタートされますが、仮に目標金額に満たない場合は、プロジェクトもスタートせずリターンも返ってきません。

一方、目標金額達成・未達成に限らずプロジェクトが実施される「All-in方式」でも、何らかのトラブルやアクシデントによって開発がストップしてしまうこともあります。

こうしたリスクを回避する手段としては、事前にプロジェクト内容をしっかりと確認しておくことや、人気が高く、なおかつ自分の求めているリターンを提供するプロジェクトに応募することです。

資金の借り手側のデメリット

商品やサービスを開発する側にとっては、プロジェクトのキャンセル不可が重くのしかかります。たとえ期待した通りに出資者が集まらなかったとしても、途中でプロジェクトを辞めることはできません。

もし権利の問題や重大なトラブルが発生した場合に限り、プロジェクトを途中で辞めることもできますが、出資者の評価や心象は悪くなってしまいます。また、すでに支援者がいた場合は全員に返金する必要があり、キャンセル手数料も必要です。

出資者にとっても同じことが言えますが、事業者にとってもプロジェクト発案前に入念な準備をしておく必要があります。

株式投資型クラウドファンディングのデメリット・注意点

株式投資型クラウドファンディングでは、出資を行った人に対して、その企業の株式が発行されます。リターンとしては、後ほどその株式を売却して得る利益や、株式保有によって発生する配当金などです。

現在は証券会社を通じて株式投資が行えるので、わざわざクラウドファンディングを利用する必要はないように感じます。しかし、株式投資型クラウドファンディングには未上場の企業が多く集まり、中には将来性が有望なベンチャー企業を見つけることもできます。

また、ベンチャー企業に投資することで株の売却益を出した際、「エンジェル税制」の対象となり税金が優遇されます。

このようにメリットの多い株式投資型ですが、もちろんデメリットについても事前に確認しておかなければなりません。以下をご参考にしてみてください。

資金の貸し手側のデメリット

クラウドファンディングでは出資者の年間投資額に上限があり、投資家は1社に対して最大50万円までしか出資できません。株式投資やFXなどと比べると出資額が低くなりがちなので、投資としてのインパクトにかけることもあります。

また、株式投資型に集まるプロジェクトの多くはベンチャー企業や新興企業が中心となっていますが、そうした企業の株は上場しない限り取引することができません。つまり、リターンとして株を受け取っても、売却益を出すまでに時間がかかるということです。(IPOやM&A後となる)

株式投資型のクラウドファンディングサービスに「エメラダ・エクイティ」がありますが、投資から10年経過後IPOやM&Aがなかった場合、エメラダ型新株予約権という仕組みで新株予約権が無くなってしまいます。

有望なベンチャー企業などは業績が拡大すれば大きなリターンが期待できますが、一方でリスクも大きいことに気をつけましょう。

資金の借り手側のデメリット

資金調達を行いたい企業は年間1億円未満という条件が決められています。1億円を超えてしまうと有価証券届出書が必要になるなど、金額に制限があることに注意しましょう。

また、プロジェクトが盛況で多くの出資者(株主)が集まると、それだけで株主名簿管理や決算情報の開示などの諸手続きが発生します。株主が増えることは資金面で大いにメリットがありますが、手間の問題なども考慮しておく必要があります。

クラウドファンディングのデメリットまとめ

今回はクラウドファンディングのデメリット・リスク・注意点などをお伝えしてきました。

クラウドファンディングには、大きく分けて「寄付型」、「購入型」、「融資型」、「株式投資型」の4種類があり、それぞれ特徴やメリット、デメリットも異なります。今回は特にデメリット面を中心に、それぞれタイプ別に紹介してきました。

また、資金の貸し手側、借り手側と立場の違いからデメリットにも差が生まれるので、当記事で紹介した情報をしっかりとご確認ください。

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