離職に関する手当にはどのようなものがあるのか?ケース別に分かりやすく解説します

会社を辞めてから、次の会社へ就職が決まるまでにどのようなことをしなければならないのかをご存知ですか?

会社を退職してからの流れとしては、職業安定所にて、失業した旨の手続きを行うとともに基本手当(失業手当)の受給に関する手続きを行います。職業安定所に必要な手続きが終わりましたら、職業安定所等を利用して、次の職場を探素求職活動を行い、無事に採用が決まれば、次の新しい職場へと就職という流れが一般的な流れかと思います。

会社に勤めている人であれば、会社を退職した場合、雇用保険から基本手当(いわゆる「失業手当」)が退職した人に対して、手当として支給されます。この基本手当については、雇用されていた期間や退職した理由などによって内容が異なることがあります。今回は、離職をした場合における、雇用保険の基本手当の種類や仕組みについて説明します。

1.離職の場合に支給される手当の種類

雇用保険では、離職をした場合に支給される基本手当は、離職をしたときの状況に応じて受給できる期間や受給することが出来る日数などが全く異なってきます。会社に在籍していた期間や賃金額などを考慮したうえで、基本手当の受給できる期間や金額が異なってきます。

【離職をした場合に支給することが出来る手当】

基本的に離職をした場合にもらうことができる手当は「求職者給付」と呼ばれており、離職した時点での雇用形態がどのような状態であったかによって受給できる手当の種類が変わります。

・基本手当(いわゆる「失業手当」)

基本手当は、世間一般で言うところの「失業給付」と呼ばれるもので、会社等で勤めていた人が退職をした場合の大半は、この基本手当を受給することになります。

・技能習得手当

技能修得手当とは、ハローワークが行う求職者を対象に就職に役立つ専門的な知識や技術を習得するために行う職業訓練等を受講している受講者で、基本手当等を受給している人がを対象に支給される手当です。

技能習得手当は、「受講手当(公共職業訓練を受講した日数に応じて支給される手当)」「通所手当(いわゆる交通費の事)」の2種類の手当の事を言います。

受講手当は「日額500円」、通所手当は①公共交通機関等を利用する場合は「月額(上限)42,500円」、②自動車等を利用する場合は「月額(上限)8,010円」が支給されます。

・寄宿手当

寄宿手当とは、受給資格者(基本手当を受給する権利を有する人)がハローワークの所長が指示した公共職業訓練等を受けるために、生計維持関係にある親族等と別居して寄宿する期間について支給される手当のことです。なお、寄宿手当は公共職業訓練等の受講期間が対象となるため、受講開始前・受講終了後の期間については、寄宿手当は支給されません。なお、寄宿手当は「月額で10,700円」支給されます。

・傷病手当

傷病手当とは、ハローワークにおいて基本手当の給付に関する手続きを行った後で、求職の申し込み(仕事を探す活動、つまり、再就職のための就活のこと)後に、疾病または負傷によって継続して15日以上職業につくことが出来ない状態(つまり、次の就職先が決まったとしても、傷病や疾病が原因で休業せざるを得ない状態であるということ)であるときは、基本手当に代わって支給される手当のことです。そのため、給付額は基本手当と同額ということになります。

傷病手当は、継続して15日以上職業につくことが出来ない状態でなければ支給されず、その場合は基本手当が支給されることになります。つまり、継続して15日未満である場合は、基本手当が受給されるため、休業している期間分については基本手当の支給の計算上考慮されなくなるため、注意が必要です。

・高年齢求職者給付金

高年齢求職者給付金は、高年齢被保険者(65歳以上の人で雇用保険の適用事業に適用されている人で、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者出ない人)が失業した場合に、給付される手当です。

改正前は65歳になる以前から雇用保険の適用事業に加入している人が65歳になった場合に高年齢被保険者とされていましたが、改正により、65歳に達した後に雇用保険の適用事業に雇用されるようになった人についても高年齢被保険者とされることになりました。

高年齢求職者給付金は、算定基礎期間(基本手当等の給付額の判断基準となる期間のこと)が1年を超えるかどうかで給付日数が変わります。

  • 算定基礎期間が1年未満の場合:基本手当の30日分
  • 算定基礎期間が1年以上の場合:基本手当の50日分

・特例一時金

特例一時金とは、短期雇用特例被保険者(季節的に雇用されるもので一定の者で日雇労働被保険者を除く)が失業した場合に給付される一時金です。

【短期雇用特例被保険者とは?】(雇用保険法38条1項)

被保険者であって、季節的に雇用されるもののうち次の各号のいずれにも該当しない者(日雇労働被保険者を除く。以下「短期雇用特例被保険者」という)が失業した場合には、特例一時金を支給する。

①4か月以内の期間を定めて雇用される者

②1週間の所定労働時間が20時間以上であって厚生労働大臣の定める時間数(30時間)未満である者

条文の内容について言い換えてみると、「4カ月を超えて1年未満の雇用期間で雇用されている」、かつ、「雇用保険の被保険者のうち、1週間の労働時間が20時間~29時間の範囲内であること」のいずれの要件も満たした者で、季節的に雇用されている者が対象となります。そのため、これらの要件に該当しなければ、雇用保険の適用除外となるため、退職しても何の所得保障を受けることができなくなるということです。(労働時間が週20時間以上となる雇用契約を結んでいる場合、離職をした日までの2年間の間で、通算して12カ月以上の雇用保険加入の実績があれば、一般被保険者として基本手当の受給ができます)

<季節的に雇用される者とは?>

雇用契約期間が1年未満で、かつ、仕事の内容が季節の影響を強く受けるもので、特定の季節のみ雇用される人を指します。

<短期雇用特例被保険者になるか否かの具体例>

・12月から2月までの3ヶ月間に、週25時間労働、スキー場のスタッフとして雇用される者 ⇒ 適用除外(「4か月以内の期間を定めて雇用される者」に該当するため)

・11月から3月までの5ヶ月間に、週40時間労働、水産加工の業務を行う会社に雇用される者 ⇒ 短期雇用特例被保険者に該当(適用除外となる2つの要件のいずれにも該当しない為)

特例一時金の支給日数は、原則として「基本手当の日額×30日分」ですが、当分の間については「基本手当の日額×40日分」となります。

なお、公共職業訓練等を受講している場合については、特例一時金に支給はされない代わりに「基本手当、技能習得手当及び寄宿手当」が支給されるようになります。(公共職業訓練等を受け終わるまでの期間に限られます。)

・日雇労働者給付金

日雇労働者給付金とは、日雇労働被保険者が失業をした場合に支給される一時金です。

【日雇労働者とは?】(雇用保険法42条)

日雇労働者とは、次の①又は②のいずれかに該当する労働者(前2か月の各月において18日以上同一の事業主の適用事業に雇用された者及び同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用された者(日雇労働被保険者の資格継続の認可を受けたものを除く)を除く)をいう。

①日々雇用されている者

②30日以内の期間を定めて雇用される者

そもそも、日雇労働者という言葉になじみが薄い人が多いと思われます。日雇労働者とは、基本的にその日ごとに雇用契約を結び雇用されている労働者の事で、簡単にいえば、その日に仕事があれば、その仕事をするところと契約を結び賃金をもらう形態を続けている人ということです。そのため、その日に仕事がないと分かった時点で失業しているものとなり、雇用保険の基本給付(日雇労働求職者給付金)の受給をする為の要件を満たすことになります。

日雇労働者求職者給付金の支給方法は、普通給付と特例給付の2種類があります。

【普通給付】

失業の認定については、原則として、その者の選択するハローワークにおいて、日々その日について行われ、その日分が支給されます。

【特別給付】

失業の認定は、管轄公共職業安定所において、支給の申出をした日から起算して4週間に1回ずつ行い、24日分を限度に(各週の最初の不就労日計4日分が除かれる)、支給されます。

日雇労働者給付金の額は、納付した印紙保険料の内容によって第1級(7,500円/日)~第3級(4,100円/日)となっています。これは、普通給付であっても、特例給付であっても同じ金額(1日当たりの金額)となっています。

2.自己都合による理由の離職の場合

会社を退職する理由の大半が、この「自己都合」による理由の退職だといわれています。自己都合による退職の理由には様々ありますが、いずれの場合においても共通している点としては自分から会社に退職する意思を伝えているということです。

【自己都合による離職の場合の基本手当】

自己都合の理由による退職の場合は、会社の倒産や解雇された場合などのように、特定の理由による離職以外のものであればすべて該当します。そのため、基本手当を受給するまでの期間についても、特別な理由で退職した人と比べると支給開始までの期間に制限をかけられるなどの制約をうけます。

(具体的な制約とは?)

基本手当は、ハローワークに出頭(離職したことの証明を受けるための手続きを行うこと)したあとに、待期期間(7日)を経過したのちに一定期間を経過すると、ハローワークにおいて失業の認定を受けます。その後、基本手当が支給開始となるのですが、自己都合による離職の場合は、待期期間経過後にさらに給付制限期間として最長で3ヶ月経過してからでなければ、基本手当の受給のための失業の認定の手続きを行うことが出来ません。

また、給付日数についても、年齢問わず、雇用保険に加入していた期間に応じて受給日数が決まっています。

3.特別な理由による離職の場合

特別な理由による離職の場合は、自己都合による離職の場合と比べると優遇されている部分が多くあります。これは、特別な理由による離職の場合は、離職するまでに十分な準備期間を設けることが出来ない場合が多く、経済的な補償をできる限り早く行うことが望ましいと考えられているためです。

特別な理由により離職した場合の基本手当の受給資格者は特定受給資格者又は特定理由離職者と呼ばれ、離職の理由が正当な理由であると認められる理由によって離職した者が、その離職理由の内容によって、特定受給資格者又は特定理由離職者に分かれます。

【特定受給資格者とは?】(雇用保険法23条2項)

特定受給資格者とは、次の①又は②のいずれかに該当する受給資格者をいう。

①離職が、その者を雇用していた事業主の事業について発生した倒産(破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は特別清算開始の申し立てその他厚生労働省令で定める事由に該当する事態をいう)又は当該事業主の適用事業の縮小もしくは廃止に伴うものである者として厚生労働省令で定めるもの

解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由によるものを除く)その他の厚生労働省令で定める理由により離職した者

特定受給資格者は、離職の理由が「会社の倒産」、「会社の事業規模の縮小もしくは廃止」、「解雇」といった、会社の都合により、離職することがやむを得ない様な理由による離職をした者が該当します。

【特定理由離職者とは?】(雇用保険法13条3項)

特定理由離職者とは、離職した者のうち、第23条第2項各号のいずれかに該当する者(特定受給資格者)以外の者であって、期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、棟外労働契約の更新がない事(その者が当該更新をしたにもかかわらず、当該更新についての合意が成立するに至らなかった場合に限る)その他やむを得ない理由により離職した者として厚生労働省令で定める者をいう。

特定理由離職者は、特定受給離職者となる要件のいずれかを満たす離職者以外の者で、「期間の定めがある労働契約が満了し、その者が引き続いて契約を更新することを希望したにもかかわらず、更新されないまま退職することになった場合」、又は、給付制限(基本手当の支給を開始するまでの期間を先延ばしにする期間)の対象とはならない「正当な理由のある自己都合」による離職をした場合とされています。

【正当な理由のある自己都合とは?】(行政手引52203)

①体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触角の減退等により離職した者

②妊娠、出産、育児等により離職し、法20条1項の受給期間延長の措置を受けた者

③父もしくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父もしくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合又は譲司本人の看護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家族の事情が急変したことにより離職した場合

④配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した場合

⑤次の理由により、通勤不可能または困難になったことにより離職した

ア 結婚に伴う住所変更

イ 育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用又は親族等への保育の依頼

ウ 事業所の通勤困難な地への移転

エ 自己の意思に反しての住所又は居所の移転を余儀なくされたこと

オ 鉄道、軌道、バスその他運輸機関の廃止又は運行時間の変更等

カ 事業主の命による転勤又は出向に伴う別居の回避

キ 配偶者の事業主の命による転勤もしくは出向又は配偶者の再就職に伴う別居の回避

⑥その他、企業設備による人員整理等で希望退職者の募集に応じて離職した者 等

 

正当な理由のある自己都合とは、上記のいずれかのように、身体的な状態の変化や家族の環境の変化、会社への通勤環境の変化等のように、従来の状態が維持することが困難な状態になり、やむを得ず離職をしなければならないような状況で離職した場合が該当します。

特定受給資格者・特定理由離職者のいずれかに該当する離職者の場合、自己都合による退職による離職者と比べると、「給付制限期間(待機期間(7日)経過後3ヶ月間)がない」ため、ハローワークに出頭して、必要な手続きを行って待機期間を経過すれば、基本手当の支給を受けることができます。

また、受給日数についても、年齢や雇用保険に加入していた期間の長さで違いはありますが、「90日から最長で330日」まで基本手当を受給することが出来る点で、自己都合による離職者とは大きく違います。

4.まとめ

会社を離職してから雇用保険の基本手当等を受給するまでには、退職理由や雇用保険の加入期間、雇用形態など様々な要因によって、もらうことができる雇用保険の手当がことなり、また、もらう時期などにも差が生じます。

そのため、会社を退職することを考えている場合であれば、自分が退職をした場合はどの退職パターン(自己都合による退職七日、正当な理由のある自己都合による退職なのか?など)によって、退職してからの収入状況なども大きく変わるリスクがあることを認識したうえで、退職の準備を進めていくことが重要となります。

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