元債務整理事務職員が教える、自己破産すると今の暮らしがどうなるか

これから債務整理をしたいという方や、一度弁護士・司法書士と相談をしたら「自己破産をすることになります」と言われたため、依頼をできず今悩んでいる方は、自己破産により今のくらしがどうなってしまうのか?という事が気になっているのではないでしょうか。

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自己破産に関してはドラマやあまり参考にならない自伝のイメージが独り歩きして非常に恐ろしい制度のようなイメージが伝えられていますが、債務整理手続きの中でも債務がなくなるという強力な手段であることから、一番経済的な再生に近い手続きですので、非常に大きい効果があります。

このページでは自己破産をしたら、今の暮らしがどのように変わるかを実例を踏まえてお伝えします。

自己破産手続きの概要

まず、自己破産手続きがどのように進むか、という事についての概要を知っておいてください。

自己破産手続きは法律上は自分で裁判所に申し立てをしてできることになっていますが、弁護士や司法書士に依頼をすることによって消費者金融・銀行などの金融機関からの督促が止まるため、ほとんどのケースで弁護士・司法書士に依頼をして行います。

弁護士・司法書士に依頼をするには、まず弁護士・司法書士と面談を行うことになります。

まずは弁護士・司法書士と実際に合うための日程を事務所に電話連絡をするなどして設定し、指定された日時に弁護士・司法書士の事務所を訪問します。

弁護士・司法書士との面談では借金の内容と収支の状況を話して、自己破産以外すべての債務整理手続きのどれが一番向いているか、ということを考慮しながら相談をすることになります。

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自己破産は、借金をもう支払うことができないと判断できる場合を言い、借金の総額と収支の状況の総合判断によります。

相談をしたから、といって必ず依頼をしなければならないというわけではなく、複数の専門家に相談をしてみてもかまいません。

実際に依頼をすると、弁護士・司法書士は債権者に対して自己破産手続きの依頼を受けた旨の通知を出すことになり、その通知により消費者金融・銀行などの貸金業者は督促を中止し、弁護士・司法書士とのやりとりをすることになります。

ほとんどのケースでこのあと弁護士・司法書士に対して支払う費用の分割弁済を毎月行うことになります。

弁護士・司法書士に対する費用の支払いをすると、自己破産の申立をするための申立書の書類の作成を行うことになります。

事務所によってやり方は異なるのですが、筆者が一番多く経験したのは、いったん事務所から依頼者に書類を送付し、わかる範囲で埋めていただき、保険証書や銀行のコピーのような添付する書類とともに返送してもらい、弁護士・司法書士がその記載に従って編集をして、最後に直接対面したり郵送した上で電話で書類を確認して申立書類をつくり、不足している添付書類を集めます。

申立書類が完成し、添付書類がそろうと、裁判所への申立を行います。

同時廃止という簡単に終わる事案では、裁判所で申立書類について調査の上で、会議をする期日を設定しますので、債務者は設定された期日に裁判所に弁護士と共に向かい、裁判官との質疑応答に答えます(司法書士に依頼をした場合は一人で向かいます)。

少額管財という正式な手続きで手続きを進める場合には、裁判所から管財人と呼ばれる人(通常は開業している弁護士)が設定されますので、管財人が勤務をしている法律事務所で面接・質疑応答が行われ、そこで作った書類を管財人が裁判所に提出して裁判所に呼ばれて形ばかりの期日が行われます。

裁判所や弁護士の面前での質疑応答といっての難しい法律に関する議論をするわけではなく、借金に至った経緯や今後の生活はどのようにしていくのか、といった一般的な事項のみですので、心配するようなものではありません。

最後の会議の期日が終わってから1か月以内くらいには自己破産が認められたことの決定がわかり、そこから1ヶ月すると借金を免責され法律上も債務がなくなることになります。

以上が自己破産手続きの概要です。

自己破産手続きを相談すると今の暮らしがどうなるか

自己破産手続きの相談をすると今の生活に何か変化がうまれるのでしょうか。

結論から言うと、自己破産手続きの相談の段階では、今の生活が変化する…ということはありません

自己破産手続きによって様々な変化が生じるのは、弁護士・司法書士に正式に依頼をした後になります。

それまでは、たとえ弁護士・司法書士に自己破産をしたいという相談をしたとしても、急に何かが変わるようなことはありません。

弁護士や司法書士は「守秘義務」があるので、相談内容はもちろん相談をしたこと自体も外部に喋ることができず、そこで勤務しているパラリーガル・事務員といった人たちも同様です。

借金の問題はほかにも、法テラス・弁護士会・司法書士会・市区町村の相談会といったところでも相談をすることができますが、こういったものも同様に外部に漏れることはまずありません。

 

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最近「破産者マップ」といって破産をした人をweb上で見つけられるサービスを展開する業者が話題になってtwitterで炎上して、サービスは閉鎖されました。これは官報という国の新聞にもとづくデータを収集して行っていたのですが、官報の掲載は裁判所に申し立てをした後のことになるので、この時点では関係ありません。

逆に言うと、生活が楽になるような事もおきませんので、支払いに窮している状況が続いているのであれば、それが大きく楽になるわけでもないという事は知っておくべきです。

 

自己破産手続きを依頼すると今の暮らしがどうなるかどうなるか


自己破産手続きを依頼すると、破産申立の準備に入るため、生活にも様々な変化が発生します。

借金の返済をストップすることができる

まずは借金の返済をストップすることができます

特に法律に根拠のある規定ではないのですが、自己破産手続きを利用するには債権がいくらなのかを破産手続きの申立のために確定しなければなりません。

返済をすると元本が減ってしまうため、正確が債権額がわからなくなるばかりか、破産手続きをすることを知っていて特定の業者に返済をした「偏頗弁済」という破産手続きを利用するのに禁止される行為に該当することになりかねません。

そのため、借金の返済をストップすることになります(逆に支払ってはいけないと把握しておくべきかもしれません)。

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この後収入が増えた、調査の結果債務額が減ったなどで、返済ができると判断して任意整理に変更した場合でも、返済をしなかったことにもとづく遅延損害金を払う必要もないような実務になっています。

直接の督促を原則としてされなくなる

 

返済をしなければ銀行や消費者金融という貸金業者は督促をしてくることになります。

しかし弁護士・司法書士に自己破産を依頼とすると直接の督促をせずに、弁護士・司法書士と返済について話をすることになります。

これは金融庁のガイドラインで弁護士・司法書士が介入した後は本人への直接の督促をしないという運用にしているためです。

ただ、

  • 弁護士・司法書士が介入した直後で、郵送で貸金業者に送る書面がまだ貸金業者に届けられ、貸金業者が事務処理をしていない。
  • 弁護士・司法書士に依頼をしても、依頼者が分割費用を払っていないため手続きが進められず長期間放置状態となってしまっている。
  • 長期間放置していることにより貸金業者が裁判を起こした場合には、裁判所からの書面は本人に直接送られる。

という点に注意が必要です。

一点目については、電話での督促がきた場合には、弁護士・司法書士に依頼したことを伝えれば、その貸金業者は処理をしてくれることが通常ですので心配はいりません。

新たな借入ができない

以上2点は良い方向に生活が変わることについてお伝えしましたが、そればかりではありません。

自己破産をはじめとする債務整理をすると、その情報は貸金業者から信用情報機関というところに送られることになっており、これにより銀行・消費者金融から新たな借入ができなくなります

信販会社のカードについては、物理的には次の更新をするときに利用できなくなることが多いのですが、利用した場合には法律上は新たな借入ということになりますので、自己破産手続きに支障をきたすことになるので注意しましょう。

自動車ローンや住宅ローンも当然のように借入ですので利用できなくなります。

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あまりにもカツカツの状態で債務整理をはじめて手元に一銭もないような状態になると、次の給料日まで生活ができない、ということになります。そのため人によってはこの期間にヤミ金融から借り入れをするなどして自己破産手続きが利用できなくなるおそれがある事態に陥ってしまう人もいます。いつ債務整理をはじめるかは、弁護士・司法書士と相談しながら計画的に行いましょう。どうしても借り入れが必要になった場合には、生活福祉貸し付けという市区町村の制度を利用することも検討します。

抵当権や連帯保証人がいるような場合には実行される

 

自己破産手続きの利用をするとすべての債権者に対する支払いをとめ、その旨が通知されます。

住宅ローン債権者や不動産担保ローン貸付をしている債権者は不動産を抵当権にとっており、通常契約書や約款において、債務整理を行うような場合には不動産を競売することができることになっているのが一般的です。

また奨学金や商工ローン、一部の街金といわれる小さな貸金業者から借り入れをするような場合など、連帯保証人がついている場合には連帯保証人に対して返済が始まります。

ヤミ金融からのDM等に注意

信用情報機関に債務整理をしたことが記載されているなどの方については上記のようにあらたな借入ができないため、ヤミ金融等の違法金融業者のターゲットになります。

本来はあってはならない事なのですが、そういった情報ほど名簿屋と言われる人も買い取りたいもので、人によってはスマートフォンのショートメッセージや郵送物で「ブラックでもOK」といったものが届けられるようになります。

自己破産手続きにおいてヤミ金融を利用するようなことが裁判所に露見すると、本来は同時廃止という簡単な手続きですんだものが少額管財という正式な手続きに変更になってしまうことや、利用の状況がひどいと自己破産手続きが認められなくなる可能性もありますので、注意をすることになります。

申立が終わると今の暮らしがどうなるかどうなるか

自己破産の申立が終わると、今の暮らしに代わることがあるのでしょうか。

特定の資格につけない

自己破産の申立をした後には破産手続き開始決定という決定が裁判所からされます。

この決定がされると、申立人は「破産者」という法律上の地位に置かれることになります。

その結果、特定の資格で仕事をしている人はその仕事に就けなという影響があります。

特定の資格というのは、人から財産を預かる事になる国家資格に基づく仕事で、身近な例ですと警備員(建物の警備を任せられることになる)や、宅建業(人の不動産を預かる)といった資格に従事している人です。

国家資格の中には医師や看護師・薬剤師など公衆衛生に関する観点からも資格制度を敷いていますが、それに関しては制限をされていません。

この制限は、破産手続きが終わった後の「復権」という状態になるまで続くことになります。

管財人や裁判所からの調査には必ず協力する必要がある

申立をした後は、同時廃止という簡単な手続きで進んでいる場合には裁判所が、少額管財という正式な手続きで進んでいる場合には裁判所から選任された管財人という人が手続きを指揮します。

申立をした書面について質問があったり、よくあるのは反省文の提出を求めるなど、申立をした人に対して手続きにおいて協力を求めてくることがよくあります。

申立をする前であれば、少々の期間であれば弁護士・司法書士が待ってくれることはあるのですが、正式な自己破産手続きが進行している状況では、期限を切って提出を求められているものについては、遅れると手続き自体に影響することが考えられます。

このような協力を求められた場合には必ず応じるようにしましょう。

引き続きヤミ金融には注意すべき

自己破産の申立手続きをすると官報という国の新聞に掲載されてしまいます。

そのため債務整理・自己破産をして新たな借入ができない状態であることがより知られている状態といえます。

このあたりから、いわゆるヤミ金融(違法金融業者)からのアプローチが増えてくることがよくあります。

自己破産手続き自体に影響することも考えられますし、何より借入をすると弁護士や司法書士などに依頼をしないと、支払いを終了させてもらえず延々と支払い続けることになってしまいます。

こういった業者の利用はしないように注意しましょう。

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冠婚葬祭や失業などで一時的に必要最小のための借り入れについては、生活福祉貸付という市区町村の制度があります。弁護士・司法書士に相談をした上で、住んでいる市区町村社会福祉協議会に相談をするようにしましょう。

 

 

その後の暮らしががどうなるか

無事自己破産手続きが終了した後の生活はどのようになるのでしょうか。

新たな借入ができる可能性があるのは基本的には7年後

破産手続きの利用による信用情報機関への事故情報の登録は破産手続きが終わってから7年後に消えます。

この状態をもって「新たな借入ができるようになる」という表現をしていることが良く見られますが、これについては注意をしておいてください。

住宅ローンや車のローン、消費者金融の貸付などは、様々な事項を総合考慮して貸し付けを行っています。

信用情報に事故情報がある場合には総合考慮において大きく減点をされる仕組みになっているだけにすぎず、事故情報がないからといって100%借入ができるという訳ではありません。

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事故情報が消えたあとの信用情報は「何もない状態」です。普通に生活をしていればクレジットカードを持っている記録などが残っているため、見る人がいれば債務整理をした経験があることがわかってしまう事があります。そのため、住宅ローンを組みたいような場合には、頭金をしっかり貯めておくなど、現在は問題がないことをアピールできるようにしておくべきといえるでしょう。

まとめ

 

このページでは、自己破産手続きを利用する場合の生活の変化について、どのように変わるのか、ということを中心にお伝えしてきました。

大きな変化としては、支払いをしなくてよくなるタイミングから、ヤミ金融から借り入れに注意をすることと、弁護士・司法書士に協力すべきというところです。

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