世界の会計基準とは?投資をする上で重要な会計基準の違いについて知ろう!

グローバル展開をする企業が増えるにつれ、日本の会計基準だけではなく米国基準( SEC) や国際会計基準( IFRS) で財務諸表を作る企業が増えています。会計基準を複数作るメリットやデメリットは何なのか、なぜ日本企業は海外の会計基準を導入しているのかを解説していきます。

会計基準とは

財務や収益をどう表示するかを定めたルールを会計基準といいます。資本市場にとって重要な決まりなので、意図的に違反すれば粉飾決算などで厳しく罰せられます。貸借対照表や損益計算書などの財務諸表は、決められた会計基準に従って作成されます。しかし、グローバル化が進んだ現在において、全ての企業が同一の基準で決算を行っているわけではありません。

財務諸表を利用して投資判断を行う場合は、その企業がどのような会計基準で財務諸表を作成したのかを確認することが重要です。同じ国の中でも会計基準の選択の幅があり、国際間ではさらに幅広い会計基準が存在します。

何が売上で、何が儲けで、何が損失なのかきちんとルールを決める必要があります。ルールがバラバラで勝手に決算を作っていると、会社同士はもちろん、同じ会社でも過去の決算と比較することができません。適正な投資判断ができないと、株式市場は機能しなくなってしまいます 。

現在、国際会計基準という統一基準が作成され、日本でもこのような状況を反映して従来の個別財務諸表を中心とした制度から、連結財務諸表を中心とした制度への転換が図られました。

主な会計基準には、次の三つがあります

1.日本企業が使う日本会計基準

2.米国企業が取り入れる米国 SEC 基準

3.欧州勢などが使う国際基準 IFRS

売上高から費用を引いた残りが利益という基本的な考え方はどの基準も同じで、本質的な企業価値や収益力を変えるものではありません。ですから、ある会計基準だけが特別に優れているというわけでもないのです。

しかし、見かけ上の収益には違いが出てきます。日本では馴染みのある経常利益がIFRS や米国基準にはありません。 IFRS では営業利益も開示不要です。また、日本では特別損失で処理される案件が多いのですが、米国などでは通常の事業損失となります。このような違いがあるので、それぞれの会計基準について詳しく見ていきましょう。

日本会計基準

日本会計基準は、日本独自の会計基準となります。日本の企業にとってはもっとも馴染みのある会計基準です。日本会計基準は、1949年に公表された企業会計原則をベースとしています。その後、社会の変化に合わせて、2001年から企業会計基準委員会が設定した会計基準を合わせたものが採用されています 。

正規の会計原則には、一般原則、損益計算書原則、貸借対照表原則があり、日本会計基準はこれに沿っています。財務諸表の貸借対照表や損益計算書は、貸借対照表原則及び損益計算書原則に基づいて作成することになります。

貸借対照表とは

貸借対照表とは、会社のプラスの財産である資産と、マイナスの財産である負債のバランスをまとめたデータ表のことです。つまり、会社の財政状況(資産と負債)がどのような状態にあるのかを表している計算書といえます。

英語ではバランスシートと呼ばれます。貸借対照表は、通常四半期ごとや半期ごとといった各決算期末時点で作成されます。ただし、毎月の財産状況を正確に把握しておくために、月次決算資料の一つとして貸借対照表を作成している企業もあります。

貸借対照表に含まれる項目としては、現金や預金などの金融資産の他、売掛金などを将来受け取るお金や土地や建物などの保有資産があります。負債には、買掛金や借入金、支払手形などがあります 。

損益計算書とは

損益計算書とは、その名の通り会社の損益計算を行った計算書のことです。損益計算書を読むことで、その会社の業績がどのようになっていることがわかります。収益・費用・利益の三つの要素から成り立っており、プロフィット・ロスステートメント、略して P/L とも呼ばれています。

貸借対照表は、会社のある時点の財政状態を表していて、損益計算書は会社の一定期間の業績を示しています。貸借対照表と損益計算書は、損益計算書の最後の項目でもある「当期純利益」で繋がっています 。

貸借対照表からは会社がある一定期間における、資産の集め方およびお金の使い方について読み取ることができます。また、損益計算書においては、当期純利益がポイントです。項目を見る際に過去のデータと比較することで、より正確に会社のこれまでの業績推移を把握することができます。

さらに、売上高が増加しているのか、売上総利益が伸びているのかといったことも過去のデータと照らし合わせることによって、その会社の業績を見極めることができ、株価が割高なのか割安なのかを判断することができるのです。

国際基準(IFRS)

国際会計基準(IFRS)は、ロンドンを拠点とする国際会計基準審議会が設定する会計基準のことです。「世界共通の会計基準」作りを目指して始まりました。

2005年にはEU内の上場企業に適用義務化され、現在は110以上の国と地域で採用されていて、今後も広がっていくだろうといわれています。主要先進国の中では、日本と米国だけが導入されていないので、動向が注目されています。

IFRSの特徴は次の3つです。

原則主義

原則主義とは、解釈指針の他には詳細な規定や数値基準がほとんど示されていない会計基準のことです。その分、自由度が高くなります。ただし、解釈の根拠を外部に明確に示す必要があるので、大量の注記がなされます。これに対して、日本の基準は細則主義で、会計基準や実務指針などが細かく設定されています。

原則主義では、原理・原則のみを会計基準にしておくという考え方です。判断する場合に、原理・原則を明確にして、例外をなるべく作らないという基準で作られています。

一方、日本基準や米国基準は、実務対応報告や適応指針などのガイダンスにより、数値基準や例外規則など、会計基準を補足する詳細なルールがあります。これを細則主義やルールベースといいます。

IFRSでは、詳細な運用ルールが決められているわけではないので、企業は原理・原則を踏まえたうえで、実務上、どのように適用していくかを判断しなければなりません。その際、取引の実態や企業の状態を正確に表すために最適な会計処理を考える必要があります。

法的形式にとらわれずに、取引の実質を見極めて判断する必要があります。このことを「実質重視主義」といいます。

企業は、決定した会計処理について合理的な説明をできるようにしておかなければなりません。明確に根拠を説明する「説明責任」があるからです。

企業の対応をまとめると以下のようになります。

実質優先主義に基づく体制づくり

IFRSの原理・原則を踏まえた上で、取引の実質を見極めた会計処理の選択した項目を、合理的に決定するための社内体制とルール作りが必要になります。

説明責任

株主など ステークホルダーに対し、自社が採用する会計方針をどのような根拠と理由で適用したのかを合理的に説明しないといけません。

資産・負債アプローチ

IFRSは、資産・負債の評価とその差額としての純資産を重視しています。会計期間の期首から期末までに増加した部分を利益として認識します。また、減少した部分は損失として認識します。

このような利益算出方法を「資産・負債アプローチ」といいます。そして認識された利益は「包括利益」と呼ばれています。日本の伝統的な企業会計は、資産・負債アプローチとは別の収益費用アプローチをとってきました。

収益費用アプローチでは、収益を一会計期間における企業活動の成果と定義し、費用が収益をえるための犠牲と考え、それらの差額として利益を算出する考えです。

収益費用アプローチでは、一会計期間の業績を重視するため、現在の株主の視点になって経営者やコーポレートガバナンス(企業統治)に役立つ情報を提供することができます。

しかし、既存の株主だけでなく、将来株主になる可能性のある投資家に対しても有用な情報を提供することが財務報告の目的となってきています。このため、収益費用アプローチによる過去の利益情報だけでなく、将来の企業業績や資産・負債状況が重要視されてきています。

このため、IFRSでは投資家への情報提供を重視する資産負債アプローチを前提に会計基準が作成されているのです。

公正価値アプローチ

IFRSでは、将来の経済的利益の提供能力の算定という考え方から、公正価値による評価が重視されます。公正価値とは、市場価格よりも広く、それを包括する概念です。

IFRSでは、「取引の知識がある自発的な当事者間で、独立の第三者間取引条件により資産が交換され、または負債が決済される価額」と定義されています。

公正価値情報が重視されるようになった背景には、デリバティブ(金融派生商品)を利用した取引の拡大があります。

日本の会計基準では、公正価値は、「公正な評価額」で時価と同じ意味とされています。時価は「市場価格に基づく価額」と「合理的に算定された価額」という2つに分類することができます。

市場価格に基づく価額とは、金融商品を市場で売買した金額です。これには、実際に取引した価格だけでなく、気配値(売り気配や買い気配)も含まれます。時価は、活発に取引が成立している場合は取引価格が優先されます。

しかし、取引が少ないデリバティブのように市場価格が得られない場合は、企業の経営者の見積もりによって時価を算定します。これには、類似の金融集品の価格を参考にします。

公正価値は、現在の市場における自発的な取引を想定しているので、資産や負債の現在価値を表すと考えられていて、その適用範囲は広がる傾向にあります。一方、2008年に起こった金融危機では、金融商品の公正価値評価によって投資家の損失確定売りが先行したために、市場の混乱が広まったとの見方もあります。

それでは、IFRS導入のメリットを見ていきましょう。

IFRSのメリット

業績の適切な反映

業績のものさしが一つになったので、子会社の業績がより正確に把握することができます。また、のれんや収益認識など日本の会計基準よりも自社の実態を適切に表現できる場合があります。

経営管理がしやすくなる

海外に進出している企業の場合、すべての子会社がIFRSを採用していると、会社間の指標が同じになるので管理が容易になり、経営管理しやすくなります。

海外投資家へ説明しやすい

海外投資家の売買比率は6割を超えています。海外投資家に対して日本の会計基準とIFRSの差を説明する必要がありましたが、それに費やす時間が必要なくなります。

海外での資金調達がしやすくなる

海外において資金調達する場合、財務諸表をそのまま使うことができるので、資金調達の選択肢が拡大します。

このように、グローバル展開している企業にとって、IFRS採用は大きなメリットがあります。

IFRSのデメリット

IFRS適用のデメリットについても確認していきましょう。

コストの増加

IFRSを適用するための外部アドバイザー費用、追加の監査費用、システム対応など、IFRS導入に際して多額の費用が必要になります。

事務処理の負担増加

会社法上では、日本基準での開示が求められているので、日本の会計基準用とIFRS用の2種類を用意する必要があります。また、注記事項が多くなるので開示コストの負担が増します。

適用が困難

会計基準が難解であることや、頻繁に改正されるため、適用するのが困難です。また、採用している企業が限られているため、情報が少ないというデメリットもあります。

米国(SEC)基準

米国会計基準は、アメリカで採用されている会計基準です。米国財務会計基準審議会(FASB)が発行する財務会計基準書(SFAS)、FASB解釈指針 (FIN)などから構成されています。アメリカに上場している日本企業は、米国会計基準に基づいて財務諸表を作成する必要があります 。

実は、米国に上場している会社は、日本の連結財務諸表を米国会計基準で作成してもいいという特例があります。これは、 IFRSのように日本の会計基準と2種類作る必要がなく、米国会計基準に加えて日本基準で連結財務諸表を作成する負担を軽減するために設けられた特例です。

この特例を受けるためには、米国基準で作成した連結財務諸表とその注記を和訳して有報に掲載する必要があります。新しいこの特例は連結財務諸表のみを対象にしていて、単体の財務諸表は日本基準で作成しなければなりません。

米国上場というのは、具体的には ADR( 米国預託証券)をニューヨーク証券取引所やナスダック市場に上陸することを言います。 ADR とは、米国以外の国で設立された企業が発行した株式を裏付けとした有価証券のことです。

しかし、米国上場を維持するためには、米国会計基準での連結財務諸表作成だけではなく、日本より厳しいといわれる会計監査と内部統制監査を受ける必要があり、そのための労力とコストがかかります。

そして、賄賂を禁止する法律である海外腐敗行為防止法により、巨額の課徴金が課される恐れがあるので、コンプライアンス対策に多額のコストがかかるのです。

一時は40社以上に上場していた日本の企業ですが、2018年には11社に減っています。米国上場を廃止しても米国会計基準を採用する企業は、次々と国際会計基準( IFRS) への移行を表明しています。例えば、 NTTや NTTドコモ、三菱電機は2010年19年3月期から国際会計基準に移行することを発表しています。また、日立製作所やパナソニックも昔は米国上場していましたが、すでに国際会計基準に移行済みです。

米国上場を廃止した企業は、米国会計基準から国際会計基準に移行する会社が増えてきています。国内の金融行政を監督する金融庁は、過去に米国上昇していた会社で米国会計基準を採用する会社に対して、個別に国際会計基準に移行するように進めているという話もあります。

近いうちに米国会計基準を採用する会社は米国に上昇している企業だけになる可能性が高いでしょう。そうしたことから、今後はより国際会計基準 (IFRS) が広まりを見せてくると見られています 。

まとめ

日本の会計基準以外に、IFRSや米国基準を導入するには手間がかかります。しかし、海外投資家から見た場合、米国基準や IFRS 採用している日本企業は、海外企業の同業種と比較しやすいという利点があります。

収益力が同じでも 、IFRS を使うと海外の投資家が運用対象に選んでくれる可能性が高まります。グローバルに事業展開をしようと考えていたり、海外で資金調達をしようとしたりしようとしている企業は、米国基準や IFRS に乗り換える傾向があるのです。

koo
koo
1,057 views

一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト、デリバティブディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴は20年以上。現在は、日経225先物を中心に現物株・FX・CFDなど幅広い商品に投資しています。保有資格:証券外務員1種

ブログ:先物オプション奮闘日誌 http://yanta.cocolog-nifty.com/

ツイッター:https://twitter.com/yanta2011

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。