証券会社の勢力図はどうなる?ネット証券の勢いは続くのか検証

2018年4-12月期の証券会社の決算がでましたが、業界トップの野村証券が1000憶円の赤字となり業界関係者に驚きが広がりました。今回は、対面型証券会社とネット証券会社の業務内容や業績を確認しながら、今後の業界展望を行っていきます。

2018年の各証券会社の決算

各証券会社が2018年4-12月期の決算を発表しました。主要証券19社のうち、17社が減益または赤字となり、リテール(個人営業)の不振が鮮明になりました。

2018年は日経平均株価が10%強の下落。個人投資家の取引が多いマザーズ市場にいたっては30%以上の下落となりました。

この市場環境ではある程度の減益は仕方ないものの、特に目立ったのが野村ホールディング(8604)で、債券取引の落ち込みなどから法人部門も低迷、減損損失を計上し、1000億円超の最終赤字となりました。

野村HDの赤字

今回の最終赤字は、リーマンショックが発生した2008年4~9月期の4,923億円以来の赤字です。法人部門(ホールセール)と個人部門(リテール)の両方で不調となりました。

今回の直接の原因は、法人部門を巡る減損損失814億円の計上です。過去に買収したリーマン・ブラザーズやインスティネット社の上乗せ価格である「のれん」を減損処理したのです。

法人部門はそれ以外にも、米中貿易摩擦やトルコなどの新興市場の混乱などで、機関投資家の取引が減少しました。

これまでは、法人部門が落ち込んでも、個人部門が収益を支えてきました。野村証券の個人営業は伝統的に強く、「証券業界のガリバー」と呼ばれていたのです。

しかし、収益を支えてきた個人部門の落ち込みも深刻です。特に2018年10~12月期の世界株安で個人マネーは動かなくなりました。野村ホールディングスの10~12月期の税引き前損益は140億円の黒字となりましたが、これは12月のソフトバンク(9434)上場の収入がほとんどとなっています。

大手証券の大和証券でも足を引っ張ったのは個人部門になりました。2018年10~12月期の株式委託手数料は前年比で33%減、投資信託の募集・売出し手数料は58%減となりました。

個人投資家の売買が収益のほとんどを占める中堅・中小証券は一段と厳しい状況になっています。軒並み50%以上の減益か赤字となりました。また、ネット証券も10~12月期は大手5社全てで減益です。

個人向けの販売が苦戦した大きな理由は、昨年10月以降の急激かつ2ヶ月以上続いた株安です。日経平均株価は2018年10月2日に24,270円の高値をつけましたが、その後は下落基調。12月下旬に19,155円まで2割以上下げました。特に、1,000円以上の下落も複数あり、大荒れの展開となったのです。

各社が注力してきた資産管理型営業にも陰りが見えています。ファンドラップでは 、SMBC 日興証券の4~12月期の販売累計額は2486億円と前年同期から約3割減りました。 QUICK 資産運用研究所の調査では、大手金融8社のファンドラップの残高は18年12月末で22兆3833億円と同年9月末に比べて約4000円億円減っています。

証券会社とは

証券会社とは、株式や債券などの有価証券の取次ぎ、自己売買、引受、募集・売出という証券業務を営む株式会社です。2007年9月施行の金融商品取引法で、証券会社は第一種金融商品取引業者になりました。

証券会社は企業の株式や債券発行による資金調達の際、株式市場の仲介役を行います。株式の取得は必ず証券会社を通じて行わなければなりません。投資家が直接取引したり、証券取引所に入ったりすることは禁止されているのです。

免許制から登録制へ

証券会社を営むには、以前は免許を受ける必要があったのですが、1998年からは登録するだけで証券業を営めるようになりました。免許制から登録制へ規制緩和されたのです。この規制緩和を受けて、銀行のように他業種から証券業に参入する会社が増えました。証券業界に新規参入しやすくなったことを反映しています。

証券会社の主な業務は以下の4つです。

1.有価証券の取次(ブローカー)

有価証券の取次とは、顧客から注文を受けて株式や債券など有価証券の売買を行うことで、ブローカー業務といいます。主に流通市場に関わる業務です。証券取引所で取引できるのは、証券業の登録をした正会員の資格を持った証券会社だけです。

一般の投資家は、証券会社に取引を取り次いでもらうことによって、株式や債券を売買することができます。ただし、株式の銘柄や値段・数量を決めるのは投資家自身です。証券会社は投資家の注文を仲介するだけで、その銘柄の値上がりや値下がりは、すべて投資家の責任となります。

2.自己売買(ディーラー)

自己売買部門とは、証券会社が自己の資金で有価証券を売買することです。ディーラー業務とも呼ばれ、主に流通市場に関わる業務です。投資対象は株式や債券の他、先物やオプションなどデリバティブも扱い、どのような市場環境でも利益を上げることを狙います。基本的にはデイトレード(1日単位で取引を決済する手法)です。近年は、AI(人工知能)やシステムトレードの発達により、証券会社の自己売買部門は苦労しているところが増えています。

3.引受(アンダーライター)

引受業務とは、企業が株式や債券を発行する場合に、発行会社に代わって有価証券を引き受ける業務のことです。アンダーライター業務といい、発行市場に係る業務です。証券会社は新株式や債券をいったん買い取り、投資家に販売します。引き受けた後に全部売ることができなければ、証券会社が引き受けなければなりません。

4.募集・売出し(ディストリビューター)

募集・売出し業務とは、新規公開に係る有価証券の募集・売出しの取扱いを行う業務のことです。主に発行市場に関わる業務です。募集・売出し業務では、証券会社は発行会社からの委託を受けて販売するだけです。引受業務と違って、売れ残っても引き取りを行う必要がないため、証券会社にとってリスクはありません。

募集とは、新しく株式や債券を発行する時に使う言葉です。発行会社に代わって有価証券を引き取った業者(アンダーライター)の下請けとなって募集を行います。

それに対して売り出しは、新株発行を伴わず、大株主が既に保有している有価証券を売却する時に使う用語です。

四つの業務を全て行なっている証券会社を「総合証券」といいます。野村證券、大和証券、 SMBC日興証券などの大手証券会社のことを指します。

1.2が流通市場で、投資家同士が有価証券を売買する際の取次ぎを行ったり、自己資金で実際に取引を行ったりしています。

3.4が発行市場で、有価証券を発行する国や自治体企業の資金調達のアドバイス等有価証券の発行を行います 。

対面型証券会社の特徴

対面型証券会社は、野村証券や大和証券などの大手証券や、地域に密着した地場の証券会社、地銀のグループ会社としての証券会社などがあります。全国に多くの支店を持ち、対面販売を中心に営業するのが特徴です。

投資家は、証券外務員資格を持った営業マンを通じて取引を行います。店舗で開かれる投資セミナーに参加したり、営業活動に訪れた営業マンからの提供を受けたりする中で、株や債券・投資信託などの商品を選択し、売買委託手数料や口座管理料を支払います。

現在ネット証券では大幅に手数料が割引されていますが、対面証券では昔ながらの手数料となっています。手数料が多くかかる分、証券会社の営業マンにこまめに相談できるというのが大きなメリットです。自分で投資判断をするのは難しいと考える投資家にとっては、対面証券会社がいいでしょう。

証券大手2社を見ていきましょう。

野村ホールディングス(8604)

証券国内最大手です。海外部門は欧米で体制を再構築の一方、アジアにも力を入れています。国内はコンサルタント重視の営業に転換をはかっていますが、道半ばの状態です。

野村證券は相続などの個人投資家の悩みを聞きながら、株式や投資信託の預かり資産を積み上げる営業を強化してきました。しかし、その息の長い取り組みでは、短期的には十分な利益を稼ぐことはできず、個人営業の収益性は低下しています。

現在の株価は400円台で予想 PER13.35倍 、PBR は0.54倍となっています。指標面では割高感がないものの、今後の収益環境を考えるとなかなか買いが入ってこない状態です。今後は追加のリストラを迫られる可能性もあり、早急な収益の改善策が求められています。

大和証券グループ本社(8601)

国内2位の大和証券を核に資産運用、ネット銀行等を運営しています。海外はアジアを中心に提携を拡大しています。前期はリテールやホールセールがさえなかったものの、後半復調。しかし、営業減益幅は拡大しています。また、10~12月期の株価下落を受け、最終損益もマイナスとなっています。2020年3月期相場回復を前提にリテール等が上向くことを期待していますが、現在の相場環境は厳しい状態です。

現在の株価は550円前後。PER は10.78倍、PBR は0.71倍と指標面から割高はありません。しかし、野村ホールディングス同様、現在の相場環境ではなかなか買いが入りづらい状況です。ただ、配当性向を5割以上の方針にしており、予想配当利回りが5.01%と高いという点は魅力です。証券株は成長株というよりも、配当重視のインカムになりつつあります。ただし相場環境によって株価が乱高下するので、安定的な収益は見込みづらいというのが現状です。

ネット証券の特徴

ネット証券とは、インターネットを通じて株式の取引を行う証券会社です。ネット証券のうち 、SBI 証券、岡三オンライン証券、カブドットコム証券、 GMO クリック証券、松井証券、マネックス証券、楽天証券の7社を主要ネット証券と呼びます。

主なネット証券を見ていきましょう。

SBIホールディングス(8473)

国内外のベンチャー企業投資、ネット証券、保険、銀行などの総合金融業を目指しています。株式委託手数料は横ばいですが、トレーディングなどの金融収益が大健闘。連続最高益を更新しています。

中核の SBI 証券は、国内のネット証券ナンバーワンの口座開設数440万口座を誇っています。国内株式の個人売買代金シェアもダントツで一番です。ネット証券の特徴としては、やはり売買手数料でしょう。

例えば、 SBI 証券のアクティブプランなら、1日の約定代金が10万円までの手数料は無料です。また、1注文あたりの手数料も10万円で90円、100万円で487円となっています。対面型の証券会社ですと、手数料は1%程度かかるので、100万円だと1万円近くになります。この圧倒的な手数料の安さが、ネット証券の魅力となっています。

楽天証券

楽天のグループ証券会社です。 口座数は200万口座。楽天ポイントを株式取引の手数料で貯めたり、ポイントで投資信託を購入したりすることができます。また、手数料の安さも魅力です。いちにち定額コースなら1日の取引金額10万円まで無料。通常の手数料も10万円90円、100万円で487円と、SBI証券と同水準になっています。

多くのメリットがある楽天証券ですが、投資家に選ばれる最大の理由は、取引ツールである「マーケットスピード」です。主な特徴は次の3つです。

1.豊富な情報量

マーケットスピードでは、ロイターや株式新聞などのニュースがリアルタイムで配信されほか、四季報や日経テレコン21など多くの情報を無料で見ることができます。

特に、日経テレコン21は、日本最大級の会員制データサービスです。日経新聞や日経産業新聞など新聞各紙も無料で閲覧することができます。

2.チャートや注文機能が充実

株価チャートは20種類以上あり、カスタマイズして使うことができます。さらに、板情報やランキングなど自分の好きなレイアウトに設定できます。

3.無料で使える

マーケットスピードは3ヶ月2,500円ですが、利用者のほとんどが無料で利用しています。それは、以下のような無料条件があるからです。

1.口座開設後3ヶ月は無料

2.過去3ヶ月に取引実績がある場合

3.資産残高30万円以上

4.信用口座やFX口座を開設

このように、他社と比べて無料で使える条件が多いのもマーケットスピードの魅力です。

松井証券の魅力

松井証券は100年近い歴史を誇る証券会社で、ネット証券大手です。松井証券の魅力を確認していきましょう。

10万円以下の手数料が無料

松井証券でも、1日の約定代金が10万円以下の手数料が無料です。30万円まででも300円と格安の手数料で株式の取引を行うことができます。

特に初心者~中級者までは30万円未満の取引が多いので、手数料の安さは魅力です。

手数料がかからない投資信託が多い

投資信託の購入には0~3%の販売手数料がかかります。特に、人気の毎月分配型やAI(人工知能)やフィンテックなどのテーマ型投信では3%程度かかるのが通常です。

松井証券の投資信託はノーロード(手数料がかからない)が中心です。保有中のコストである信託報酬も安いインデックスファンドがメインになっています。

低コストのファンドが中心なので、初心者にも始めやすくなっています。

投信工房(ロボアドバイザー)

松井証券では、独自にロボアドバイザーを提供しています。投資信託の種類は豊富なので、「何を買えばいいのかわからない」という方におすすめです。100円から積立投資が可能で。毎月・毎週・毎日など自由に設定することができます。

また、徹底的にコストにこだわり、投信工房の年率は0.392%と、他社のロボアドよりも安くなっています。

ただし、松井証券では外国株や債券などは扱っていません。証券会社によって商品ラインナップは異なるので、複数のネット証券で口座を開設しておいた方がいいでしょう。

まとめ

今回は証券会社の業務内容から、対面証券、ネット証券それぞれの特徴を見てきました。

対面証券は、営業マンからアドバイスを受けることができるので、自分で商品を選ぶのが難しい方には強い味方になってくれるでしょう。ただし、営業マンは投資のプロというよりは販売のプロです。アドバイスを受けるのはいいですが、おすすめの金融商品には気をつける必要があります。

一方、ネット証券は手数料の安さが魅力です。金融商品も豊富にそろっています。自分で投資対象を見つけることができる投資家にとっては、とても魅力的でしょう。

ただ、最近はロボアドやつみたてNISAなど初心者でも始めやすい金融商品が増えています。自分では投資対象を決められなという方でも、厳選された投資信託の中から商品を選べたり、ロボアドを使えばすべておまかせで資産運用を行ったりすることができます。

フィンテックやITの発達により、ネット証券の利便性はますます増しています。今後も対面証券に代わり、ネット証券が勢いを増すでしょう。

今回、野村証券の2018年4-12月期決算が大幅赤字となったことで、「ガリバー」と呼ばれた地位が揺らいでいます。ネット証券最大手のSBI証券が野村証券を抜く日も近いかもしれません。

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一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト、デリバティブディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴は20年以上。現在は、日経225先物を中心に現物株・FX・CFDなど幅広い商品に投資しています。保有資格:証券外務員1種

ブログ:先物オプション奮闘日誌 http://yanta.cocolog-nifty.com/

ツイッター:https://twitter.com/yanta2011

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