為替レートの決定理論について知ろう!

為替レートのファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)には様々なものがありますが、主なものとして次の3つがあります。

①内外金利差

②貿易収支

③購買力平価

今回は、この3つの説明と、為替レートにどのような影響を及ぼすのかを解説していきます。

内外金利差とは

為替取引における金利とは、「政策金利」のことを指します。政策金利とは、中央銀行(米国では FRB、日本では日銀などその国の金融機関の中で最も意思決定権を持つトップの銀行)が、都市銀行などにお金を貸し付ける際の貸付金利のことです。

中央銀行は金利をコントロールすることにより、国内にある銀行を通じてお金の流れを調節しています。そして、自国の経済促進や景気を調整するという大きな役割を持っているのです。政策金利に対して、市場金利という言葉があります。市中金利とも呼ばれ、金融市場において金融機関同士がお金の貸し借りをする時に適用される金利のことです。それでは、景気・物価と市場金利の関係を見てみましょう

景気と市場金利の関係

一般に景気が良くなると企業などの資金需要が高まるので市場金利が上昇し、景気が悪化すると資金需要が減少するので、市場金利は下落します。

また、金利は物価とも連動しています。物価が上がる(インフレ)になると市場金利は上がり、物価が下がる(デフレ)になると市場金利も下がる傾向にあります。

インフレとは、物価がどんどん上昇してお金の価値が低下していくことです。金利とはお金の価値を表すものですから、インフレになってお金の価値が下がった場合は、金利を上げることでお金の価値も上がります。

これに対しデフレとは、物価がどんどん下落していき、お金の価値が上昇していく状態のことを指します。デフレが続くと企業業績も悪化し、不景気になっていくので金利は下がっていきます。

このように市場金利も景気や物価に対して連動していきますが、中央銀行はお金と物の価値バランスを保つために、政策金利を調節するのです。景気が悪くなると賃金が下がり商品も減りますから、消費や事業の設備投資を活発化させるために、政策金利を低くしてお金を借りやすくします。

一方、景気が良くなると賃金が増えて消費も活発になりますが、今度は物価が高くなるインフレを招いてしまうので、金利を高くしてお金を借りにくくしてお金が流れすぎないように調節するのです。

為替取引 (FX 取引)においては、政策金利が上がるとスワップ金利も一緒に上がるので、高金利通貨に買いが集まります。反対に、政策金利が下がるとスワップ金利も下がるので、景気悪化を懸念して売りが起こりやすくなります。政策金利はお金の流れを調整するための重要な指標なので、 FX 為替取引においてもとても重要です。

スワップ金利とは

FX取引では、スワップ金利があります。スワップ金利はスワップポイントとも呼ばれ、通貨間の金利差調整分のことです。

一般的に金利の低い通貨を売って金利の高い通貨を買えば、2通貨間の金利差からスワップポイントをもらうことができます。日本は低金利政策が続いているので、高金利通貨を買うことでスワップポイントをもらうことができます。

例えば、アメリカの政策金利が2%で、日本の政策金利が0.1%だとすると、その差額の1.9パーセントを日割りでスワップポイントとしてもらうことができるのです。

スワップポイントはFX 会社によって異なりますが、午前6時~7時前後が多いようです。また、レバレッジをかけた場合はそのぶんスワップポイントも増えます。レバレッジ2倍でスワップポイントを50円もらっていた場合は、レバレッジを4倍にすると100円のスワップポイントがもらえるという計算になります。

金利差

一般的にお金は金利が低い方から高い方へ流れる傾向にあります。そのため、例えば日米の金利を考えた場合、日本は低金利政策を継続しているので、米国が金利を引き上げると日本から米国にお金が流れ円安(円が売られ)、ドル高(ドルが買われる)傾向があります。逆に、米国が金利を引き下げると、円高ドル安の流れになります。

 金融政策

政策金利は各国の金融政策で決められます。日米欧の金融政策を確認しましょう。

FOMC(米国)

金融政策での中で一番注目が高いのは、アメリカの FOMC(連邦公開市場委員会)です。米国の中央銀行であるFRB(米連邦準備制度理事会)が定期的に開く会合で 、FRB の幹部の他、12人の地区連邦準備銀行総裁のうち5人が輪番で選ばれ、金融政策やFF金利(フェデラルファンドレート)を決定します。

開催は約6週間ごとに年8回、2日間にわたって開催されます。2日目には政策金利が発表されて 、FRB 議長の会見や声明文が発表されます。そして、会合の3週間後には議論の内容が記された議事要旨が公表されます。

政策金利を実際に引き上げたり、今後の見通しなどを決定したりするので、非常に注目度が高い会合です。為替市場ではドルの需要が40%。通貨ペアではドルとの組み合わせが90%を超えています。やはり為替市場においても、米国(ドル)の動きが最も注目されるのです 。

日銀金融政策決定会合(日本)

日本の金融政策は、日銀の金融政策決定会合で決定されます。年に8回開催され、決定会合後には日銀総裁の記者会見が行われます。アベノミクス初期にはマーケットの注目も高かったものの、近年は現状維持が多く影響力は低下しています。四半期ごとに公表される経済物価の展望レポートでは、金融政策に対する考え方が示されています。

ECB理事会(欧州)

ユーロ圏の金融政策は、ユーロ圏全体の中央銀行である ECB(欧州中央銀行)で決定されます。6週間に1度のペースで政策理事会が開催され、ECB のトップである総裁や副総裁のほか、ユーロを導入する19カ国の中央銀行総裁が輪番で構成員となっています。

理事会終了後に総裁による会見が開かれる他、その日のうちに議事要旨も公表されます。リーマンショック後は、米国や日本と同じように金融緩和政策を行ってきたECBですが、最近は金融引き締めに転じる姿勢を見せており、市場の注目度は高まっています。

 貿易収支が為替に与える影響

貿易が行われるとお金のやり取りが発生するので、貿易収支と為替相場には相関があります。それでは、貿易収支が為替相場にどのような影響があるのかを見ていきましょう。

例えば、対米貿易収支 を考えてみましょう。米国への輸出が増えると米国から受け取るドルが増え、日本ではそのドルを売って円を買うので、円高ドル安傾向になります。

このように貿易収支とは貿易を行った結果の収支を示しています。 一般に、通関統計と呼ばれる貿易統計は、日本の輸出入について関税を通過したベースで国別、消費別に記録したもので、国際収支統計の貿易収支の基礎的資料になっています。

日本における国地域別の動向を見てみると、対米対アジア(中国を除く)は一貫して黒字を計上する一方、対中東では赤字が続いています。中国については1993年までは均衡した状態にあったものの、その後2001年にかけて日本側の赤字が拡大し、以降も輸入超過の状態が定着しています。

最大の貿易相手国として中国の存在感が増しており、輸入では2002年以降米国を抜いて最大の相手国となっています。輸出では2009年中国向けが米国向けを上回りましたが、2010年終わり頃から再び逆転しています。日本の貿易収支は、東日本大震災後の原発停止に伴う火力発電燃料の輸入増加を背景に、2011年以降赤字が続いています。

貿易収支の収支とは、収入から支出を差し引いたものです。収入の方が大きければ黒字。支出の方が大きければ赤字です。貿易黒字になると通貨は高くなり、貿易赤字になると通貨は安くなる傾向にあります。

貿易収支を為替の取引に活かすためには、過去の貿易収支と比べることが重要です。アメリカの場合は輸出額より輸入額の方が大きいので、貿易収支は常に赤字です。そのため、貿易赤字が拡大しているのか、それとも縮小しているのかという金額の方に注目が集まります。

トランプ大統領になってからは、特に貿易相手国に対して赤字が続いている国には圧力をかけ、米中貿易戦争などの摩擦が起きています。貿易赤字が拡大してればドル安要因になりますし、同じ貿易赤字でも金額は縮小されていればドル高要因になりやすい傾向があります。

貿易収支は長期的な値動きを決定づけます。ドル円相場は第二次世界対戦後に1ドル=360円の固定相場制でしたが、1973年に為替相場制と移行しました。その後、大きなトレンドとして円高傾向にありますが、その主たる要因は日本の莫大な貿易黒字であり、米国の貿易赤字であるといわれています。

投機のポジションは一定期間後には必ず決済しなければいけません。買った通貨は売らなくてはいけませんし、売った通貨は買い戻す必要があります。一方で、貿易による売買は一方的です。日米韓で貿易黒字が続けば資金は日本に流れ込み続けます。長期の方向を決定するのは貿易収支といっていいでしょう。

ただし、為替相場は金利や需給など様々な要因で動くので、短期的には上下に振れます。中長期での見方として、貿易収支を役立てるようにしましょう。

例えば、経常収支と為替相場の関係を考えてみましょう。経常収支とは、貿易収支にサービス収支、所得収支、経常移転収支を加えたものです。中でも為替マネーに係る取引は、貿易収支より圧倒的に大きく、所得収支に分類されます。為替マーケットの短期的な動きに大きな動きを与えるのは貿易収支よりも金融マネーフローを中心とした所得収支に絡んだ動きといえるでしょう 。

購買力平価が為替に与える影響

購買力平価は、貿易相手国の物価と比較して為替レートを計算する方法です。長期的な為替の見方を表していて、物価が上昇するとその国の通貨は安くなります。ドル円レートの計算式は次のようになります。

  • 購買力平価=基準時点のレート ×(日本の物価指数 ÷ 米国の物価指数)

ここで問題になるのは、基準時点をどう決めるかということと、物価指数に何を使うかということです。基準時点は、日米ともに経常収支が均衡していた1973年を使うことが多くなります。ただし、基準時点をずらすと、5円~10円の差はでてしまいます。

物価指数のほうがもっと影響が大きくなります。例えば、消費者物価指数(CPI) と輸出物価を使ってドル円レートの購買力平価を計算した場合、2倍近くの差が生じてしまう計算になります。これだけ大きな差が出てくると実務上は使えなくなってしまいますが、中長期的なトレンドを把握するということであれば、購買力平価の意味はあります。

レートの幅はあるものの、長期トレンドは消費者物価指数、輸出物価のいずれも円高ドル安を示しており、変動相場制移行後のドル円相場のトレンドと同じです。

物価指数の基準点からの変化率で計算される購買力平価は相対的であるのに対して、実際の価格を比較して算出する絶対的な購買力平価もあります。例えば、世界各国で販売されているマクドナルドのハンバーガーから採取されるビックマック指数も絶対的な購買力平価であり、イギリスのエコノミスト誌が毎年1月と7月に公表しています。

その他にスターバックスのカフェラテや Apple の iPad ・iPhone などから購買力平価が計算されることもありますが、いずれもその国全体の物価を代表するものではないため、注意する必要があります。

ビッグマックの例で考えてみましょう。

ビッグマック一つが米国で1ドル、日本で100円ならば、100円 ÷ 1ドル = 100円となり、1ドル100円が妥当とみなされます。インフレ(物価が上昇)により日本でコーラが150円に値上がりし、アメリカで1ドルのままなら、1ドル=150円となり、円安傾向になると判断するのです。

フローアプローチ

為替レートは経常収支・資本収支・公的介入の3つの取引によって生じる為替のフロー(資金需要)の需給によって決定されるというのが、フローアプローチです。変動相場制に移行した際に学者から提起された理論で、為替レートが変化することによって、経常収支の不均衡是正は達成されるというものでした。

ただし、この理論の背景には資本収支は二国間の金利差で自動的に決まるという前提があり、投資家が持っている為替相場の予想変化率(為替リスクのプレミアム)については軽視していました。

アセットアプローチ

変動相場制では、フローアプローチはあまり有効ではありませんでした。為替レートによる経常収支の調整作用が働かず、国際的な不均衡が大きな問題となりました。そこで登場した考え方がアセットアプローチです。アセットアプローチには次の二つの考え方があります。

①マネタリーアプローチ

マネタリーアプローチとは、二つの通貨で表示された資産の交換比率が為替レートであり、為替市場におけるストックの均衡するレートで決まるという理論です。この理論は、資本移動が自由であり、二つの債券が完全に代替的であると仮定しています 。

各通貨の資産の予想収益率はある通貨の金利・為替相場の予想変化率を加味したものになります。つまり、2通貨間の名目金利差に等しくなり、二国間の期待インフレ率の反映であるので、この理論は購買力平価と同じになります。

②ポートフォリオ・バランス・アプローチ

マネタリーアプローチで前提としている各通貨建資産間の代替性が不完全であるといったことが疑問視され、しかも短期的な相場変動ではインフレ率格差から大幅に乖離したこともあり、これらの理論を否定して登場したのがポートフォリオバランスアプローチです。

例えば、円建て債と外貨建て債は先物カバーなしでは不完全な代替資産とみなします。通貨市場のみでなく債券市場に注目し、経常収支は国際的な貸借関係を変化させるのです。また、財政赤字などによる債券需給の変化も為替レートに影響すると仮定しています。

ただ、様々なバリエーションがあり、確固たる定説が存在していないのが現状です。

まとめ

今回は為替レートのファンダメンタルズで重視される項目を見てきました

①内外金利差

②貿易収支

③購買力平価

の3つについて解説しました。ただし為替は世界各国の出来事を反映するので、ファンダメンタルズにも様々な項目があります。これらの三つが代表的な指数ではありますが、短期的にはで需給で上下に動きます。

ファンダメンタルを見る時に大事なことは、長期的な視線を持つことです。長期的に円高なのか、もしくはドル高なのか、そういったことを意識しながら短期的な値動きにも注意する必要があります。長期的な見方はファンダメンタル、短期的な見方はテクニカル分析で行うのが一般的です。

今回の記事がFX取引に役立つことがあれば幸いです。

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一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト、デリバティブディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴は20年以上。現在は、日経225先物を中心に現物株・FX・CFDなど幅広い商品に投資しています。保有資格:証券外務員1種

ブログ:先物オプション奮闘日誌 http://yanta.cocolog-nifty.com/

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