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消費者金融や信販会社からお金を借りる際に「保証人」をたてるようなことが稀にあります。
このような場合には「債務整理」はできない、といった情報を目にすることがあります。
このページでは、債務整理と保証人の関係と、保証人がいる場合の債務整理についてお伝えします。
保証人とは
まず、保証人とは何なのかを正確に知っておきましょう。
保証人とは
保証人とは、ある債務について保証の契約をした人のことをいいます。
Aさんは、Bさんからお金の借り入れ(金銭消費貸借)をする際、Cさんを保証人にした、という事例では、Cさんは保証人として行わなければならなくなった債務の履行をしなければならない、ということになります。
債務整理との関係で言うと、奨学金の借り入れをされている方は親などの保護者が保証人になっているケースが多く見受けられるのと、商売をやってらっしゃる方が商工ローンから借り入れをする際に保証人をたてるようなケース、夫婦で住宅ローンを利用する際にどちらか一方の名義で借り入れをする際にもう他方が保証人になる、というケースが多くあります。
保証人になるには、債権者と保証人で独立して契約を結ぶ必要があり、債務者が勝手に記名捺印して保証人にするようなことはできなくなっています。
保証の種類
この保証にには2種類の種類があります。
一つは通常の保証人で、主債務者が支払いができなくなった場合にはじめて、債権者は支払いの請求ができる態様のものです。
もう一つは「連帯保証人」というもので、主債務者が支払いができなくなった場合でなくても、主債務者に代わって支払いをする義務があるものをいいます。
この違いは、通常の保証人は「まず主債務者に請求をして、主債務者が支払いをすることができないのであればこちらに請求してほしい」ということが言えるのに対して、連帯保証人は法律上は保証人に真っ先に請求をしても認められる点にあります。
保証債務の履行とその後の関係
保証人は保証債務を履行して債権者にお金を支払った後にはどのような法律関係になるのでしょうか。
先の例でいうと、CさんはAさんにかわってBさんに対して金銭債務の支払いを行います。
その結果、BさんがAさんに対して返済をしてください、という権利は消えることになります。
そして、保証債務の履行により被った損害を、主債務者に請求できることになっています(求償権という言い方をします)。
上記の例でいうと、AにかわってBに金銭消費貸借の支払いをしたCさんは、Aさんに対して求償権という根拠に基づいて請求をすることができるようになっています。
債務整理とは
次に、「債務整理」とはどのようなものかを知りましょう。
債務整理とは、借金などの債務の支払いが難しくなった場合に、様々な制度を利用して借金返済の義務を軽くしてもらったり免除してもらったりして、経済的な再生をはかることをいいます。
「債務整理」という言葉自体は、それを取り扱っている弁護士・司法書士の業務の分野の呼び方で、実際には自己破産・個人再生・任意整理の3つの手続きを中心とする、具体的な手続きを行います。
自己破産手続きは、債務・資産などの状態を裁判所に申告をして、破産法所定の手続きを経ることで、債務を原則0にしてもらう手続きのことをいいます。
個人再生手続きは、債務・資産などの状態を裁判所に申告をして、民事再生法所定の手続きを経ることで、債務を圧縮してもらい分轄して払っていく手続きをいいます。
任意整理手続きとは、債務者の代理として任意整理を受託する弁護士・司法書士が、債権者と交渉をして、債務に関する総額・利息・遅延損害金などの条件について緩和してもらうように交渉する手続きをいいます。
主には上記の3つなのですが、借金を背負った原因が相続であるような場合には相続放棄という手続き、最高裁が無効と判断した違法な利息の支払いをうけていた債権者に対して払いすぎていた利息を返してもらう過払い金請求といった手続きなどもあります。
債務整理との関係で何をすると保証人に影響するのか
では、債務整理との関係では何をすると保証人に影響することになるのでしょうか。
債務整理をすると、弁護士・司法書士は債権者に「受任通知」という内容の書面を送ります。
この通知を受けると、貸金業者はその人に請求をしないようにする、というのが金融実務のルールです。
しかし、主債務者と保証人は法律上別の人で、別契約になるので債務整理をしても保証人に請求することはルール違反になりません。
そのため債務整理をしたという通知が保証人のある債権者に届いた場合に、保証人に請求が行くという影響がでます。
それでは債務整理手続きの中でもどの手続きを利用すると、保証人をつけている債権者に受任通知がいくようになるのでしょうか。
自己破産手続き
自己破産手続きを利用すると、すべての債権者に受任通知を送ることになります。
そのため、保証人がついている場合には債権者に自己破産手続きを利用する旨の通知がいくことになるので、保証人に請求がいくことになります。
個人再生手続き
個人再生手続きも基本的にはすべての債権者に通知を送ることになります。
ただし、住宅ローン特約を利用する場合には、住宅ローンは従来どおり支払いをしながら他の債務の債務整理をすることができ、従来通り支払うのであれば保証人に請求はいきません。
ですので、住宅ローンに保証人がついている…と心配されている方は、住宅ローン特約を利用して個人再生をすれば、保証人には影響しません。
しかし、他の自動車ローンや奨学金、商工ローン・消費者金融からの借り入れに保証人がついている場合には、すべての債権者に手続きに参加してもらう必要があるため、やはり保証人に請求がいきます。
任意整理手続き
任意整理手続きは、裁判所にすべての債務・資産に関する状況を報告して法律に基づく許可をもらうという自己破産や個人再生とは構造が違い、個別の債務について債権者と交渉していく手続きです。
ですので、保証人が居る債務なので、この債務については任意整理をせずに従来通り支払っていく、という特別扱いをして支払っていくことは可能です。
保証人に影響が出るときの対応策
自分の債務整理が原因で保証人に請求がいくなどして影響がでてしまうときには、どのように対応すればよいのでしょうか。
保証人が請求されなくなる裏ワザはない
まず、法律上どのような手を使っても、保証人に請求されなくなる手続きは無いという事を知っておいてください。
保証人になるということは、単に連絡がとれなくなった際の緊急連絡先になるわけではなく、支払われなかったときには請求がきてもかまわないという契約です。
そのような契約を結んだ以上は支払いに応じなければならないということになり、勝手に保証人にされて保証人にされたこと自体が無効であると確定できるような場合でない限り必ず支払わなければならないのです。
ですので、その事後処理をどのようにするかを考える必要があります。
連帯保証人が支払いに応じることができる場合
まずは、連帯保証人が支払いに応じることができる場合を検討しましょう。
どのような場合でも、債務整理をするにあたって連帯保証人との関係を維持したいような場合には、債務整理に先立って連帯保証人と話し合うことが望ましいでしょう。
そして連帯保証人に債権者と話合いをしてもらって、当該債務については月々の支払いについては従来の契約どおりで支払いをしていくように確認をとってから主債務者は債務整理をすることがほとんどです。
上述したとおり、保証人は主債務者にかわって債権者に支払いをした場合には、主債務者に対して払った分を返してくださいという請求をすることができます。
その請求についても自己破産・個人再生の対象になるので、自己破産をした場合には免除され・個人再生をした場合には再生計画に従った支払いをしていくことになります。
この時に注意が必要なのが、個人的にお世話になっているものだからといって、自己破産手続きや個人再生手続きをしている最中に支払いをするなどして特別な扱いをすることはしないようにすべきということです。
自己破産や個人再生の返済が終わった後であれば、法律上は強制執行をされなくなった債務として残っていると評価されるので、支払いをしても保証人としては受け取ることができ、贈与を受けたという評価はされないことになっています。
そのため保証人との関係修復のための金銭支払いは、手続きがすべて終わった後に行うことが一般的です。
連帯保証人が支払いに応じることができる場合
次に、連帯保証人も自身の債務の返済の必要があり、余裕がないような場合にはどのようにすべきことになるでしょうか。
この場合ですが、連帯保証人も一緒に債務整理をするのが一般的です。
たとえば、消費者金融からの借り入れに連帯保証人がついており、一部の利息の支払いについて最高裁で返還する義務がある利息であると評価される、いわゆる過払いが発生しているような場合があります。
このような場合には、主債務者は任意整理をすることで債務が著しく減ることが期待されるのですが、連帯保証人がいる場合には任意整理をすると保証人には従来の契約通りの請求がくることになります。
ですので、主債務者・連帯保証人が揃って債務整理をすることで、支払いに関する条件を揃って緩めてもらい、支払いをしていくことが一つの手法です。
ただし、任意整理をすることで保証人も信用情報機関に掲載されてしまい、新たな借入をすることができなくなってしまいます。
これにより保証人自身も商売ができなくなるなどの場合には、保証人も自己破産や個人再生を一緒にする場合も考えられます。
勝手に保証人にされていた場合に主債務者が債務整理をすると保証人はどのような方法をとることができるか
なお、保証人の側からの視点になりますが、主債務者が債務整理をする際に勝手に保証人にされていた…ということは実はよくあります。
このような場合には、保証人としてどういったことを主張できるのでしょうか。
上述しているのですが保証人は緊急連絡先のように、主債務者が勝手に指定できるようなものではなく、保証人自ら債権者と契約を結ぶ必要があります。
そしてこの保証契約は、通常の民法の規定のように口約束でも成立するものではなく、きちんと契約書など紙に残すことが必要とされています。
そのため、保証人が自分で記載したものではなければ、保証契約を履行してくれといっても、その契約は無効であるという主張をすることになります。
このように勝手に保証人にするような場合には、債権者がすでに偽造した保証契約に関する契約書を持っており保証人に請求をする場合であるので、保証人側としては偽造された契約書であって支払う義務がないことを主張することになります。
債権者はどうしても支払ってほしいような場合には裁判を起こさざるをえませんが、実際に裁判を起こしたと仮定すると、保証に関する契約書が本物なのか偽造されたものなのかが争いになり、偽造されたものであると判断された場合には請求が却下されます。
ですので、勝手に保証人にされて、保証契約書が作成されているような場合には、開きなおって「裁判で請求してください、そして請求が来た時には有印私文書偽造で告訴をします」と伝えればよいでしょう。
まとめ
このページでは、債務整理と保証人の関係についてお伝えしてきました。
保証人は基本支払いをしなければならない、という事を頭にいれつつ、うかつな行動で債務整理にも影響がある、ということを知っていただき、慎重に債務整理を行っていくことにしましょう。