相続の話し合いはいつの時期に行う?相手方が応じない場合の対策や手続き方法を解説!

財産を所有していた人が亡くなった場合、その財産は遺産として相続人が引き継ぐことになります。

相続人が1人だけである場合には大きな問題は生じませんが、2人以上の相続人がいる場合には、「誰がどれだけの割合の遺産を相続するのか」を確定する必要があります。

亡くなった人が遺言を作成している場合にはその内容に従って遺産分割を行いますが、遺言がない場合には相続人全員の話し合いによって遺産分割の方法を決めなくてはなりません。

この記事では、相続人が複数人いる場合の話し合いの進め方や、注意しておくべきポイントについて解説いたします。

近い将来に親族の相続にかかわる可能性があるという方は、ぜひ参考にしてみてください。

相続の話し合いをスタートする時期

上でも見たように、相続が発生した時に、相続人が2人以上いる場合には、「誰がどれだけの遺産を相続するのか」を法律上確定しなくてはなりません。

これは、相続人どうしの話し合い(これを「遺産分割協議」と呼びます)で行うのが原則ですが、遺産分割協議をいつのタイミングで行うべきか?は重要な問題といえます。

というのも、あまりにも早いタイミングで遺産分割協議の話を持ち出すと「葬式が終わったばかりでもうお金の話?」といったように、無用の感情的な対立が生じてしまうからです。

かといって、いつまでも相続についての話し合いを先延ばしにしていると、法律上の手続き期限が近づいてきてしまいます。

相続についての話し合い(遺産分割協議)は、慣行的に非常識とならない範囲で、できるだけ早いタイミングで行う必要があるのです。

四十九日法要のタイミングで話を持ち出す

それでは具体的にいつの時点で遺産分割協議の話を持ち出すべきか?ですが、一般的なのは、四十九日の法要が済んだタイミングでしょう。

四十九日法要では故人と近しい関係にあった親族が一堂に会する数少ない機会であり、しかも相続発生後の身辺整理にある程度のめどが立つタイミングでもあるからです。

四十九日法要のタイミングでも「まだ早い」と感じる遺族も中に入るかもしれませんが、後で見るように相続発生から3か月(約90日)で、すぐに相続放棄の期限がやってきます。

故人が残したのが資産よりも借金の方が多いというような状況の場合には、相続放棄を選択しないとその借金を遺族が引き継ぐ事態になってしまいますので注意が必要です。

遺産にかかわる期限のある手続き

遺産分割協議そのものには法律上の期限はありません。

しかし、以下で見るように「遺産分割協議が完了していないと適切に進められない手続き」がいくつかあり、それらには法律上の期限があるということに注意しておく必要があります。

そのため、遺産分割協議はできるだけ早いタイミングで完了しておくのが適切といえるでしょう。

相続に関連する手続きで、期限がある手続きとしては以下のようなものがあります。

手続きの内容期限
遺言書の検認相続が発生したらすぐに行います
相続放棄の期限相続の発生を知ってから3か月以内に行ないます
準確定申告相続発生後4か月以内に行います
相続税の申告期限相続発生後10か月以内に行います
遺留分の減殺請求相続の発生を知ってから1年以内または相続発生から10年以内
葬儀費用の請求相続発生から2年以内
生命保険金の請求相続発生から3年以内

相続人の中には、こうした手続きには期限があること自体、理解していない人がいるかもしれません。

これらの中には相続人が共同で行わないといけないものもありますから、遺産分割協議の中でお互いに期限についての認識を共有しながら進めていく遺産分割協議で話し合うべき内容のが適切です。

遺産分割協議で話し合うべき内容

遺産分割協議では、「誰が」「どれだけの割合」で遺産を相続をするのかを確定し、最終的に相続人全員が遺産分割協議書に記名押印する必要があります。

相続人のうち誰か一人でも遺産分割協議書にサインしていない人がいると、その遺産分割協議書は有効なものと認めてもらうことができません。

遺産分割協議書は、故人の銀行預金の引き出しや、不動産名義の書換え(相続登記)を行う際に必ず必要になりますから、注意が必要です。

話し合いを始める前に調べておくべきこと

上でも見たように、遺産分割協議では「誰が」「どれだけの割合」の遺産を相続するのかを決めますから、その前提として次のようなことは確定しておく必要があります。

  • ①誰が相続人となるのか
  • ②遺産の総額

順番に解説しましょう。

①誰が相続人となるのか

これは遺産分割協議に参加する人が誰なのか?を確定することを意味します。

具体的には亡くなった人の戸籍謄本(出生~死亡までのすべての記録が載っている)や、改製原戸籍等を取得し、親族の中から相続人になる資格のある人(法定相続人といいます)をしぼりこむ必要があります。

もっとも、親族であればだれでも法定相続人になるというわけではありません。

法律上、相続人となることができるのは故人の配偶者と、血縁関係者の2種類に分かれます。

  • 故人の配偶者
  • 血縁関係者

前者については、ここでいう「配偶者」とは役所に婚姻届けを出している、「法律上の配偶者」をいうことに注意が必要です。

いわゆる内縁の妻、内縁の夫は法律上の配偶者とは認められません。

後者の「血縁関係者」とは、亡くなった人と血のつながっている子供や親のことを言いますが、血縁関係者の中で相続人となれるかどうかは次のような「相続人の順位」によって決まります。

  • 第1順位:直系卑属(子供や孫)
  • 第2順位:直系尊属(父母や祖父母)
  • 第3順位:兄弟姉妹

上の順位の人がいる場合、下の順位の人は相続人となることができません。

例えば、亡くなった人の親族として子供と父親(子供から見て祖父)がいる場合には、子供は相続人となりますが、父親は相続人となりません。

同様に、亡くなった人に父親と弟がいたという場合、父親は相続人となりますが、弟は相続にとなりません。

遺産分割協議を開始するための準備として、上で見た戸籍情報をもとに、だれが相続人となるのかを確定し、その人に遺産分割協議に参加してもらうようにしましょう。

②遺産の総額

次に、遺産の総額についてです。

遺産分割協議とは「遺産の総額をどうやって分け合うか」を話し合う場ですから、いうまでもなく「そもそも遺産はトータルでどれだけあるのか?」が分かっていないと話し合いを始めることができません。

ここでいう遺産の総額には、現預金や不動産といった「プラスの遺産」だけでなく、亡くなった人が負っていた借金や債務といった「マイナスの遺産」も含める必要があります。

※ただし、マイナスの遺産については「誰がどれだけの割合を負担するか」までは遺産分割協議で定めるのは適切でないという判断を示した裁判例があります。

相続人どうしで借金の負担割合を決めておくことは可能ですが、外部の債権者に対しては「相続人全員で連帯して債務を負う」という扱いになります。

プラスの遺産、マイナスの遺産それぞれについて調査が完了したら、遺産のすべての詳細を知るした「財産目録」を作成します。

具体的な話し合いの進め方

相続人となる人と、遺産の総額が確定したら、その情報に基づいて遺産分割協議を始めます。

遺産分割協議では、「法律上のルールではどういう決まりになっているのか」をもとに話し合いを進めていきますが、遺族としてどのような形を理想と考えるのかを主張しあうことも大切です。

後で見るように遺産分割についての法律のルールは極めて抽象的でアバウトなものですから、具体的に誰がどの財産を引き継ぐか?については相続人同士の話し合いが極めて重要な役割を持つからです。

なお、遺産分割協議を始める段階で、そもそも相続人となることを放棄する人がいる場合には名乗り出てもらいましょう

相続放棄は個人の単独の意志で行うことが可能ですが、相続放棄の期限は、上でも見たように相続発生を知ってから3か月です。

もしこの期限までに相続放棄の手続き(家庭裁判所での申述という形で行います)を行わない場合には、遺産相続を承認したものとみなされます。

法律のルールは極めてアバウトに決まっている

遺産分割協議においては、法律のルールに従って財産を分け合うのが原則となりますが、法律のルールというのは「配偶者に3分の2・親に3分の1」とか、「同順位の者どうしは等しい割合で分ける」とかいったように、極めてアバウトな内容になっています。

遺産として残されているのが現預金だけであるようなケースでは法律のルールに従って遺産を分け合うことも可能でしょう。

しかし、実際には土地や建物といった不動産や、価値のある宝石など、単純に分け合うことが難しいことも珍しくありません。

このような場合に、「法律上はこのようなルールになっているけれど、実際問題としてその通りに分けるのは難しいから、話し合いで誰がどの遺産を引き継ぐか決めましょう」と決めるのが遺産分割協議の目的ということになります。

具体的な遺産分割の例

例えば、遺産として100万円の価値がある宝石と、200万円の現預金があり、亡くなった人の長女と次女が相続人だったとしましょう。

この場合、遺産の総額は300万円ですから、法律上は「姉妹で150万円ずつ分けなさい」というルールになっています。

しかし、宝石は2つに割って分け合うわけにはいきませんから、「宝石は長女が相続する代わりに、現金は次女が相続する」といったように話し合いで定めることが考えられます。

また、宝石を売却して現金にしてしまい、その現金を2人で分け合うといった方法も考えられるでしょう。

このように、遺産分割協議では実際問題として単純には分けられない遺産を、細かい分け方まで話し合いで決めておき、後日トラブルにならないように遺産分割協議書にまとめておくことが求められます。

遺産分割協議はやり直しができる?

遺産分割協議の内容は、いったん確定すると後からやり直すことは原則としてできません。

ただし、次のようなケースでは遺産分割協議のやり直しが認められます。

  • ①遺言書が後から見つかったような場合
  • ②遺産が後から出てきた場合
  • ③相続人全員が合意して遺産分割協議のやり直しを行う場合

①については、日本の法律では遺言は法律のルールに優先するという扱いになっていますので、後から遺言が出てきた場合には、遺言の内容にしたがって遺産分割をやり直すことになります。

②については、財産目録に記載されていない遺産が後から出てきた場合には、その所有者を決めなくてはならないので、遺産分割協議はやり直しとなります。

なお、相続人のうちの1人が意図的に財産を隠したような場合も同様です。

③のように、当事者間(つまり相続人全員)で同意があればすでに作成した遺産分割協議書の内容を強制する意味はありませんから、やり直しを行うことが可能です。

当事者同士での話し合いがうまくいかない場合

もっとも、当事者同士では利害が直接的に対立してしまいますから、話し合いの折り合いがつかなくなってしまうこともあるでしょう。

遺産相続の前は仲の良かった親族同士が、遺産分割協議をきっかけとしていがみ合うようになる…というのはまったく珍しいケースではないのです。

そうしている間にも遺産相続に関する手続きの期限は近づいてきますから、何らかの形で解決を図らねばなりません(そうなるとあせって強引に話し合いを進めてしまって相続人の一部に不満が残る…といった結果になりがちです)

このような場合は、外部の専門家(弁護士)に間に入ってもらい、お互いの主張を出し合うのも一つの手段です。

感情的な結びつきのある親族同士では口に出して言いにくいことであっても、他人である弁護士を介して伝えれば冷静に話し合えるということがありますので、検討してみると良いでしょう。

なお、当事者間の話し合いでどうしても折り合いがつかない場合には、最終的には調停や裁判によって解決を図ることになります。

相続の話し合いに応じてくれない人がいる場合は?

遺産分割協議は、相続人となる資格のある人全員が参加して行う必要があります。

一方で、遠方に住んでいたり、疎遠になっていたりして遺産分割協議に参加してくれない相続人がいる…というケースもあるでしょう。

相続人の一部がどうしても遺産分割協議に参加してくれないという場合には、家庭裁判所に対して遺産分割調停や遺産分割審判といった手続きを申し立てることが可能です。

また、そもそも相続人の一部が失踪しており、連絡先すら不明ということもあるでしょう。

そのような場合には、家庭裁判所に「不在者財産管理人」を選出してもらうことで遺産分割協議を進めることも可能です。

相続税の納税手続き

上のような手続きを経て、誰がどれだけの割合の遺産を相続するのかが確定したら、その内容に基づいて相続税の申告と納税を行う必要があります。

相続税は遺産の金額が一定額以上である場合(目安は3600万円)に負担しないといけない税金で、相続人が2人以上いる場合には「実際に遺産を相続した割合に応じて相続税を負担する」のが原則となります。

例えば、遺産のうち3分の2を相続した人は相続税も3分の2だけ負担する、3分の1だけ遺産を相続したら相続税の負担も3分の1、といった具合です。

相続税の計算は遺産分割協議の完了が前提

相続税の申告においては、個別の事情に基づいて各種の控除が使えることがあります(配偶者控除や小規模宅地等の特例といったものがあります:これらは相続税の負担を大幅に小さくする効果があります)

ただし、これらを利用するためには遺産分割協議が完了していることが条件となっている点に注意が必要です。

相続税の申告期限は相続の発生から10か月ですので、遺産分割協議はできるだけ早いタイミングで完了しておくことが適切といえます。

相続税の計算については遺産相続を専門とする税理士がアドバイスしてくれますから、相談することを検討してみてください。

まとめ

今回は、遺産相続についての話し合い(遺産分割協議)を開始するタイミングとしていつが適切なのか?について、具体的なケースを想定して解説したしました。

一般的には遺族が集まる四十九日法要のタイミングが適切といえますが、遺族の間でスムーズに話し合いが持てるのであれば、これより早いタイミングで遺産分割協議を始めても問題ありません。

遺産の金額が大きい場合や、不動産や事業承継にからむ株式などが遺産として含まれている場合には、遺産分割の話し合いにも長い時間がかかる可能性がありますから、少しでも早いタイミングで遺産分割協議を完了できるのが理想的です。

ただし、遺産分割協議については、仲の良い親族同士であったとしても、感情的な対立が生じてしまうことが珍しくありません。

そうした事態を避けるためにも、遺産分割に関する実務に精通した専門家(法律手続きについては弁護士、相続税申告については税理士)に相談することを検討してみてください。

感情的な結びつきのある者同士ではなかなか言い出しにくい内容であっても、他人である専門家に間に入ってもらうことで言いたいことが言えるというケースもあります。

吉田ライター
吉田ライター
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