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お金を稼いだら所得税や住民税、家を買ったら固定資産税、車を買ったら自動車税…。
日本国内で生活している限り、私たちは日常のさまざまな場面で税金を負担しなくてはなりません。
この記事では、「どのような場面で・どのような税金を負担しなくてはならないのか」を一覧で紹介するとともに、「税金の負担を少しでも小さくしたらいいのか?」について基本的な考え方を解説いたします。
税金の種類多すぎ!日本に住んでいて納税が必要になる場面一覧
まずは具体的な税金の種類としてどのようなものがあるのかについて、一覧で紹介しましょう。
税金の名称 | 課税される場面 |
---|---|
所得税 | 個人として得た収入(所得)に対して課税されます |
住民税 | 所得税と同様、個人として得た所得に応じて納めます |
消費税 | 買い物をしたときに課税されます(実際に納めるのは事業者です) |
固定資産税 | 土地や建物を所有している人が1年に1回納めます |
不動産取得税 | 土地や建物を購入した時に納めます |
登録免許税 | 不動産の登記をするときや会社を設立するときに納めます |
自動車税 | 普通乗用車を所有している人が1年に1回納めます |
軽自動車税 | 軽自動車を所有している人が1年に1回納めます |
自動車重量税 | 自動車を所有している人が車両の重さに応じて購入時と車検時に納めます |
法人税 | 会社として得た収入(所得)に対して課税されます |
事業税 | 事業者が都道府県に対して年に1回納める税金です |
印紙税 | 契約書や行政書類を作成した時に納めます(収入印紙を書類に貼ると納税したことになります) |
相続税 | 財産を所有していた人が亡くなった場合の遺産に対して課税されます |
贈与税 | 自分以外の人にただで財産を渡した場合に納めます |
酒税 | お酒の製造者が負担する税金です(アルコール度数が高いほど税率も高くなります) |
たばこ税 | たばこを買ったときに負担する税金です |
入湯税 | 温泉を利用したときに負担する税金です |
ゴルフ場利用税 | ゴルフ場を利用したときに負担する税金です |
関税 | 輸入品を通関に通したときに課税される税金です |
以下では、上で見た税金の種類の中でも特に重要なものについて、おおまかに分類して詳細を解説しましょう。
個人がお金を稼いだ時に負担する税金(所得税・住民税)
サラリーマンの人や、個人事業主の人がお金を稼いだら、その稼いだ金額に応じて所得税と住民税を負担しなくてはなりません。
住民税はだれもが一律の税率(10%)となっていますが、所得税は所得金額が大きい人ほど税率も高くなる仕組みとなっていることに注意しておきましょう(もっとも低い人で5%、もっとも高い人で45%)
所得税や住民税の計算方法
所得税や住民税は、「収入-必要経費」で計算する「所得」に応じて負担します。
例えば、収入が1000万円あり、必要経費が600万円という人であれば所得は400万円(1000万円-600万円)ということになります。
なお、サラリーマンの人が勤務先から受け取るお給料については「必要経費」という考え方がなじみませんので、「給与所得控除」としてこの必要経費の金額が法律で決まっています。
例えば、年収600万円のサラリーマンの人であれば、給与所得の金額は「収入金額×20%+54万円」で計算しますので、所得は426万円(600万円-600万円×20%+54万円)となります。
法人事業者が負担する税金(法人税・消費税)
会社を経営している人が負担する税金のうち、代表的なものとして法人税と消費税があります。
(ただし、消費税は個人事業主として事業を営んでいる人も、収入が一定額を超える場合は納める必要があります)
法人税の計算方法
法人税は、経営する会社が得た利益(売上高-経費)に、税金計算上の項目を加算した「所得」に対して課税されます。
資本金が1億円以下の中小企業経営者の場合、年間で得た所得のうち、800万円以下の部分については15%、800万円を超える部分については23.2%の税率となります。
例えば、年間所得が1000万円である法人であれば、800万円×15%+200万円×23.2%=120万円+46万4000円=166万4000円(実質的な税率は16.64%)の法人税を納めることになります。
消費税の計算方法
日本国内で商売を行う場合、売ったものに対して消費税が課税されます。
消費税の税率はこの記事を書いている2019年1月28日現在は8%ですが、2019年10月以降は10%に引き上げられる予定です。
ただし、2019年7月に衆参ダブル選挙となる見込みのため、今後の政治状況によっては変更される可能性がありますから注意しておきましょう。
消費税は、「預かった消費税-預けた消費税」で計算します。
やや理解がしにくい計算方法なので、以下で詳細を説明しましょう。
消費税率が10%だったとすると、例えば100円の缶ジュースを販売する事業者は、100円×10%=10円の消費税をプラスして、110円の値段をつける必要があります。
(この消費税は消費者が負担するものなので、事業者としては10円の消費税を「預かっている」状態になります)
一方で、この事業者が売り物である缶ジュースを60円で仕入れたとすると、この60円に対しても10%の消費税がかかりますので、仕入れ額は66円となります。
(この消費税6円は仕入れ業者に「預けている」形になります)
缶ジュースを1本売るために、10円の消費税を預かり、6円の消費税を預けていますから、この事業者が実際に税務署に納める消費税は10円-6円=4円ということになりますね。
もし年間で1万本の缶ジュースを販売したとすると、1本あたり4円×1万本=4万円の消費税を税務署に納めることになります。
誰かに財産を渡したときに負担する税金(贈与税・相続税)
財産を所有している人が、自分以外の人(親族を含みます)に対して財産を渡した場合に課税されるのが贈与税や相続税です。
贈与税はその人が生きているうちに財産を渡した場合に課税され、相続税はその人が亡くなった後に財産を渡した場合に課税されます。
それぞれの基本的な計算方法について理解しておきましょう。
贈与税の計算方法
贈与税は以下の計算方法によって計算します(財産を受け取った人が計算して税務署に申告し、納めます)
贈与税の金額=(1年間で贈与を受けた金額-110万円)×贈与税率-控除額
※この110万円のことを「基礎控除」と呼びます。
※親が一人暮らしをしている学生の子供などに対して贈る「仕送り」は、常識的な金額である限りは贈与税が課税されません。
贈与税の税率や控除額は、受け取った財産の金額が大きくなるほど大きくなる仕組みになっていますので注意しておきましょう。
例えば、年間で500万円の財産を贈与した場合には、贈与税率は15%・控除額は10万円となりますので、贈与税額は48万5000円((500万円-110万円)×15%-10万円)となります。
一方で、基礎控除を差し引きした後の贈与額が3000万円を超える場合、贈与税率は55%・控除額は400万円にもなります。
例えば、年間で3200万円の財産の贈与を受けたとすると、課税される贈与税は1299万5000円((3200万円-110万円)×55%-400万円)となります。
相続税の計算方法
相続税は財産を所有していた人の相続人となる人(通常は親族)が負担する税金です。
相続税の計算は、以下の計算方法で求めます。
- (遺産の金額-基礎控除)×相続税率-控除額
- 基礎控除=3000万円+600万円×法定相続人の数
例えば、「1億円の遺産を亡くなった人の子供1人が相続する」という場合、以下のようにして相続税を計算します。
(1億円-(3000万円+600万円×1人))×相続税率30%-控除額700万円=1220万円
相続税率や控除額は相続財産の金額によって異なりますので注意しておきましょう(遺産の金額が大きければ大きいほど税率や控除額は大きくなります:相続税の最大税率は55%です)
なお、相続人となる人が2人以上いる場合は、その人たちが実際に相続した財産の割合に応じて、相続税を負担するのが原則となります。
例えば「遺産の3分の2を相続した人は相続税も3分の2負担する」、「3分の1を相続した人は相続税の負担も3分の1」といった具合です。
節税対策の基本的な考え方
「少しでも負担する税金の金額を小さくするにはどうしたらよいか?」を考える節税対策においては、次の3点が基本的なポイントとなります。
- ①利用できる控除の内容を知る
- ②できるだけ収入や所得は分散する
- ③法律のルールを破るほうがむしろリスクが大きいことを知る
それぞれの項目についてくわしく解説していきます。
①利用できる控除の内容を知る
税金の負担を少しでも小さくするためには、法律上利用できる控除制度について知識を得ておくことが大切です。
控除制度とは、ごく簡単にいえば「税金を納める人それぞれの個人的な事情によって、税金の負担を小さくすることを考慮してもらえる制度」のことです。
例えば、所得税の計算では「扶養控除」という控除制度がありますが、これは生活の面倒を見ている家族がいる人が適用してもらえる控除です。
まったく同じ収入の人であっても、一人暮らしの人と、養っている家族がいる人とでは、税金の負担の重さはまったく異なりますよね。
こうした事情を考慮して、後者(家族がいる人)の場合は税金を安くしてもらえる仕組みになっているわけです。
こうした控除制度は、それぞれの税金の計算において適用してもらうことが可能です(所得税には所得税の控除制度、相続税には相続税の控除制度がある、といった具合です)
②できるだけ収入や所得は分散する
日本の法律では、基本的に収入や財産が多い人ほど、たくさんの税金を負担する仕組みになっています。
そのため、収入は可能な限り「複数人に分散すること」が税金の負担を小さくすることにつながります。
例えば、法人の代表者として活動している人が、経営する法人から生活費として給与を受け取った場合には所得税を負担する必要があります。
この場合、奥さんも共同の代表者として生活費を折半で受け取るようにすれば、個人として負担する所得税の負担は小さくできるでしょう。
また、相続税は「財産を所有している人が、死亡した時点で所有していた財産の価額」に応じて課税されます。
そのため、相続税の負担を少しでも小さくしたいのであれば、その人の生前において家族に財産を贈与しておくなどの相続税対策を検討するのが適切です。
(もちろん、大きな金額の贈与を行った場合には贈与税が課税されてしまいますので、そうした負担を考慮したうえで贈与額を定める必要があります)
法律の範囲内で税金の負担を小さくすることを節税対策と呼びますが、節税対策については税理士に相談するとアドバイスを受けられますので、検討してみると良いでしょう。
③法律のルールを破るほうがむしろリスクが大きいことを知る
税金の計算に関するルールは、すべて法律で定められています。
こうしたルールを破ってしまうと、後で見るように延滞税や加算税といった重いペナルティが課せられてしまいます。
税金の計算が正しく行われているかをチェックする国の役所を税務署といいますが、税務署の職員は税金計算のプロである上、税金のチェックについては警察並みの捜査権が与えられています。
そのため、脱税行為は非常に巧妙な手口で行ったとしても基本的にはばれてしまうものと覚悟しておく必要があります。
最近では個人レベルの副業収入であっても税務調査が入るケースも珍しくなくなっていますので、注意しておきましょう。
税金を納めなかったらどうなる?
ここまでは「どのような場面で税金を納める義務が生じるのか」について解説いたしました。
以下では「もし、納めないといけない税金を納めなかったら、どうなってしまうのか?」について理解しておきましょう。
結論から言うと、もし納める義務がある税金を期限までに納めなかった場合、次のような不利益を被る可能性があります。
- ①延滞税の負担
- ②加算税の負担
- ③非常に悪質な場合には刑罰を受ける可能性も
それぞれの項目について順番に見ていきましょう。
①延滞税の負担
納めるべき税金を期限までに納めなかった場合、延滞税という税金を追加で負担する義務が発生します。
延滞税はごく簡単にいえば借金をしたときの利息と同じようなもので、日割り計算で税額が以下のように計算されます(なお、延滞税率は毎年変更されますので下記では平成30年の税率で計算します)
- 本来の期限日~2カ月まで:延滞税率2.6%
- 本来の期限日~2か月以降:延滞税率8.9%
例えば、本来納める税額が10万円で、期限が過ぎてから10か月後に支払ったという場合、延滞税の金額は以下のように計算します(1か月間は単純化のため30日とします)(10万円×2.6%×60日÷365日)+(10万円+8.9%×240日÷365日)=6200円(百円未満は切り捨て)
②加算税の負担
本来納めるべき税金を納めないまま放置していたような場合、最悪の場合は税務署によって税務調査が行われる可能性があります。
税務調査の結果、納めていない税金が明らかになったようなケースでは、「加算税」というペナルティが課せられてしまう場合がありますので、注意が必要です。
加算税には不納付加算税・無申告加算税・重加算税などの種類がありますが、もっとも重いケースで「本来納めるべき税額×40%」もの加算税が課されるケースもあります。
③非常に悪質な場合には刑罰を受ける可能性も
法律上、本来納めるべき税金を納めない行為のことを脱税と呼びますが、脱税した金額が非常に大きく、手口も悪質であるような場合には、刑事罰を課せられるケースがあります。
なお、実際に脱税で刑罰が科せられるのは、ニュースなどで報じられるようなレベルの脱税事件です。
一般個人が行った税金逃れで刑事罰が科せられるのは極めて珍しいケースといえるでしょう。
通常はかなり悪質な事案であったとしても、ペナルティとしては加算税や延滞税が課せられるにとどまるのが一般的です(これらは刑事罰に対して行政罰と呼ばれます。簡単にいえば「前科がつく」のが刑事罰で、そうでないのが行政罰です)
まとめ
今回は、私たちが生活をしていく上で負担しなくてはならない税金について解説いたしました。
日本国内に居住して生活をしていく以上、日本の法律で定められた税金を納めることは最低限のルールといえます。
一方で、法律の範囲内であれば、適切に節税対策を行うことによって税金の負担額を小さくすることが可能です。
こうした節税対策は、収入や資産の金額が大きくなれば大きくなるほど、大きな効果を発揮してくれますから、近い将来に大きなライフイベントがひかえているという方は、利用できる節税対策がないかチェックしておくようにしましょう。