出張・海外赴任中の歯科治療や出産に日本の保険は使える?駐在保険の基礎知識

海外へ出張、赴任を予定している人にとって、万が一の場合にかかる医療費はどうなるのかと不安に思う人も多いでしょう。国内で日常的に使っている公的な健康保険は、もちろん一切使うことはできません。

海外旅行保険で充分だと思う人も中にはいるでしょう。しかし、仕事で渡航する場合には駐在保険に加入しておく方が安心です。駐在保険では仕事の際に生じがちな損害を補償することができます。

特に長期で海外赴任の予定がある人は、それぞの状況に応じて適切な駐在保険を選ぶことが大切です。

今回は、駐在保険の基礎知識、歯科治療や出産に使える駐在保険にどのような種類があるのかをご紹介していきます。ぜひ、渡航前に保険を選ぶ際の参考にして下さい。

海外出張・赴任で使える保険とは?

 

海外へ渡航する際に加入する海外旅行保険のことは知っていても、案外、海外出張や海外赴任の際に心強い駐在保険の存在を知っている人は少ないかもしれません。

駐在保険

駐在保険とは、仕事で海外へ滞在する際に起こり得る損害を補償することができる保険で、海外旅行保険だけではカバーしきれない補償を付け足すことができます。

基本的な補償は海外旅行保険と同じような内容となります。保険会社によって、駐在保険として加入できるものや、海外旅行保険に特約を追加するものなどがあります。

海外旅行保険との大きな違いは、

  • 3か月以上の長期滞在に対応できる
  • 賃貸した住居の設備・家具への損害が補償できる
  • 本人以外の家族にも適用できる
  • その他必要な駐在保険の特約を選べる

といった内容になります。

海外で使える保険の種類

海外で使える保険は大まかに3種類があります。

海外旅行保険
基本的に3カ月以内の補償。
旅行中の病気やケガにかかる医療費、他人の所有物を壊した際の損害賠償などが補償されます。同時に自分の所有物を紛失・破損した場合の損害にも対応できます。

クレジットカードに付帯している海外旅行保険について・・・

留学保険
短期~2年間の契約。
留学中の病気やケガにかかる医療費や他人への損害を補償すると同時に、賃貸した住居における損害も補償することができます。その他、留学中に必要と思われる補償を特約で選ぶことができます。

駐在保険
短期~2年間の契約。
海外出張・赴任の際の医療費や他人への損害賠償を補償すると同時に、賃貸住居の設備や家具への損害補償、さらに家族への賠償補償をつけることが可能です。
その他、状況に応じた特約を選ぶことができます。

以上3つの保険が海外で使うことができる保険です。駐在保険は基本的に駐在する本人しか加入することができませんが、留学保険や長期海外旅行保険を併用することで足りない補償を補うことができます。

留学保険と駐在保険はほとんど同じ内容となりますが、家族への補償は駐在保険でしかつけることができません。

海外駐在保険の基本補償

海外駐在保険の基本補償は、一般的な海外旅行保険が基盤になっています。では、駐在保険の基本補償を見ておきましょう。

駐在保険の基本的な補償

保険会社によって、多少の差はありますが駐在保険の基本的な補償は、

  • 傷害死亡補償
  • 傷害後遺障害補償
  • 疫病補償
  • 医療費補償
  • 疫病補償
  • 損害賠償責任補償
  • 携行品損害補償

などが大まかな内容となります。

これらの内容はお伝えしたように、海外旅行保険でもつけれる補償です。海外旅行保険は、最近ではクレジットカードに付帯されてありますので、海外旅行が目的であればわざわざ加入する必要のない人も多いでしょう。

しかし、海外旅行保険の場合、ほとんどの保険が3か月間が上限となっている点を注意する必要があります。駐在保険であれば、基本的に1年~長いものは2年間の契約が可能です。

駐在保険であれば、出張や赴任の期間に応じた契約期間を選ぶことができます。

さらに、上記の海外旅行保険の基本的な補償に、仕事で滞在する上で必要と思われる特約を追加することができます。では、駐在保険の特約の内容をご紹介致します。

駐在保険の特約

駐在保険は上記の基本補償が基盤となり、それぞれの状況に応じた特約補償を選ぶことが可能です。どのような特約があるのでしょうか。

駐在保険で付けれる特約は、

治療・入院費用
出張・赴任中にケガや病気による治療費・入院費の補償を海外旅行保険の期間が終わってから延長することができます。あるいは、もともと契約期間の長いものを追加で加入しておくことができます。

救援費用
救援費用は、滞在中に事故や病気などで現地から家族が駆け付ける場合にかかる費用を支給するものです。

緊急一時帰国費用
家族に万が一のことがあった際に、本人が日本へ帰国する際の費用を支給します。保険プランの中には緊急時でなくとも一時帰国費用が支給されるものもあります。

生活用動産補償
仕事で海外に滞在する場合には、ホテル以外の施設を利用するシーンも多くなります。現地でアパートや戸建を借りる場合に、住居内の設備や家財を補償してくれるのが生活用動産補償です。

家族総合賠償責任
家族総合賠償責任は家族で長期滞在する場合には欠かせない補償の1つです。本人だけでなく、家族の一員が借りている住居の設備や家具を壊した時、他人に損害を与えたりした場合の賠償を補償するものです。

航空機遅延費用
渡航・帰国の際の航空機や、現地での航空機の利用の際に、遅延よって生じる宿泊代や食事代などの費用をほしょすることができます。

航空機寄託手荷物遅延費用
空港で預けた手荷物が届かない、遅延するなどのトラブルの際に生じる急な出費を補償してくれるものです。

以上が駐在保険にて追加できる特約となりますが、保険会社によって基本補償や特約がセットになっていたり、つけれるものつけれないものがあったりと、細かい補償内容は異なってしまいます。

自動車保険や、家族も加入できる自動車保険が条件付きで付帯できる場合もありますので、車に乗る予定がある人は確認しておくようにしましょう。

家族それぞれが、駐在保険の家族補償と併用してその他留学保険や海外旅行保険などで足りない補償を補う方法もあります。

それぞれの状況に合わせて、適切な駐在保険を選ぶことが大切です。

歯科治療や出産にも使える?

ここまで、概ねのところで駐在保険の補償内容を解説致しました。そこで、駐在保険を選ぶにあたって、歯科治療や出産に駐在保険が使えるのかどうか気になる人もいるでしょう。

歯痛がひどい時には痛み止めをのんでも全く効果がなく、食事も困難な状態になります。渡航前にしっかりと歯の治療をしておくことは当然ですが、突然何ともなかった歯に支障が出ることもあり得ます。

駐在保険では、歯科治療に対する補償をつけることは可能ですが、加入する保険会社や保険プランによります。

出産に関しては、原則として病気ではなく予測できる事態であるため駐在保険の対象とはなりませんが、日本の国民健康保険、会社が提供する支給金、現地で加入する保険などを適用することが可能です。

それぞれの事情に合わせて、歯科治療や出産の可能性があるかどうかを事前に判断してから、駐在保険を選ぶようにしましょう。

歯科治療

緊急歯科治療費用、歯科治療費用などの特約をつけて現地での歯科治療にかかる費用を負担してもらうことが可能です。

ただし、それぞれの保険プランによって、

  • 利用できる期間が定められているもの
  • 支給金の上限が定められているもの
  • 支給額の比率が定められているもの

など内容が異なりますので注意して下さい。基本的に予防・衛生・審美的な用途でかかる歯科治療費は保険の対象とはなりません。

歯科治療補償が付けれる保険会社

【AIG損害保険】

【三井住友海上】

出産費用

出産にかかる費用は原則として、あらかじめ予測できる内容であるため保険金の対象にはなりません。なぜなら、原則としてすでに事故でケガをした人が、ケガをしてから保険に入ることができないのと同じ理由になります。

最初から医療費がかかることがわかっている人だけが保険に加入するようになれば、保険会社は破産してしまいます。普段、保険金の必要のない人が多数いるからこそ保険のシステムが成り立っているのです。

出産の予定、あるいは出産の可能性がある人は、

  • 日本国内に在籍している限りは、国民健康保険を海外から利用することが可能です。
  • 会社が提供する家族手当や出産手当があれば、それを利用することができます。
  • または、現地にて出産手当が出る保険会社に加入する(駐在でもOKのものがある)

※市町村の役所で手続きする方法

海外療養費、出産育児一時金を申請することができます。申請期限は2年間です。

各地域の自治体にもよりますが、現地から代理人依頼して手続きができる場合もあります。もしくは、帰国した際に2年以内のものであれば申請することが可能です。

ただ、妊娠中でも条件付きで駐在保険が利用できる場合もあります。

ですので、妊娠の可能性がある人は出産に保険金が出るかどうかではなく、妊娠期間中の医療費が補償してもらえるかどうかがポイントになるでしょう。

妊娠中に加入できる駐在保険

【AIG損害保険】※妊娠22週目以内

【ジェイアイ保険/たびほ】※妊娠初期症状

どんな保険会社がある?

 

では実際にどのような保険会社があるかを見ておきましょう。

海外旅行保険を始めとする、海外出張・赴任向けの駐在保険は以下の保険会社から様々なプランを相談することができます。

これらの保険会社から条件に合うものを探すことができます。追加できるオプションや、無料で利用できるサービスなどがそれぞれ異なります。

全部の保険会社に共通しているのは、365日、日本語サポートのサービスが使える点です。

海外駐在保険を選ぶ際の注意点

Man
始めて海外に行くんだけど、1か月近く仕事で滞在するから海外旅行保険だけでは不安だなと思って・・・。海外駐在保険を選ぶ際の注意点を教えて。
Expert
始めての海外だと不安ですよね。
海外駐在保険で、しっかり補償をつけておけば安心です。保険を選ぶ時のポイントをまずはご紹介しましょう。

保険を選ぶ時のポイントは、

  • 単身か家族か
  • 期間はどれくらいか
  • 渡航先の国は
  • キャッシュレス診療を希望するか
  • 現地で車を運転するか
  • 歯科治療補償を希望するか
  • 出産の可能性(妊娠の可能性)
  • クレジットカードの海外旅行保険の詳細

以上の内容を最初に明確にしておきましょう。その内容によって選ぶ保険の種類も変わってきます。

では、ポイントを絞る上での注意点を解説していきますので、参考にして下さい。

単身か家族か

海外駐在保険でも、家族補償がない場合があります。また、家族に付けれる補償内容にも差があります。

単身での滞在か、家族での滞在かによってまず選ぶ保険が変わってきます。単身の場合は選択肢が広くなりますが、家族の場合は最初に内容を確認するようにしましょう。

※ただ、家族補償がついていても、すべてをカバーできるわけではありません。その他海外旅行保険や留学保険と併用していくといいでしょう。

期間はどれくらいか

次に注意したいのが滞在期間です。

数日の出張や1週間程度の出張であれば、海外旅行保険でも十分にカバーできる可能性もあります。また、保険会社によって契約できる期間が最長3か月~最長2年など差があります。

延長の可能性がある場合は、現地から手続きできるもの、国内の代理人に手続きを頼むものに分かれますので確認するようにしましょう。

渡航先の国

それぞれ保険会社によって、提携先の多い地域が異なります。提携先でなくとも保険を利用することはできますが、実費で払ってからの請求になります。

アジア圏、アメリカ、ヨーロッパ、中近東など渡航先で利用しやすい保険会社を選べば安心です。

キャッシュレス診療を希望するか

キャッシュレス診療とは、提携先の病院にて実費を支払う必要のない保険請求方法のことを言います。キャッシュレス診療の利用が可能かどうか、どのような病院で可能なのか事前に調べておくことができます。

保険金の請求方法も同時に確認しておけば、いざという時に慌てずに済みます。

現地で車を運転するか

海外駐在の場合は、現地で車を運転する人も多くなるでしょう。そこで、注意しておきたいのが、自動車保険の特約がつけれるかどうかです。

さらに自動車保険の特約の内容、家族が運転する場合や搭乗者補償なども確認しておくことが大切です。

歯科治療補償を希望するか

国内でもそうですが、海外で歯科治療を行うと費用が高くついてしまいます。しかし、歯科治療補償がつけれない保険会社の方が多くなります。

また、歯科治療補償の特約がある場合でも、渡航後30日未満までだったり、契約後60日以降だったりと期間が制限されてあります。歯医者さんによく行く人は歯科治療補償は必須です。

出産の可能性

現在妊娠中、あるいはカップルやご夫婦、ご家族で滞在する場合は、妊娠や出産の可能性も考慮しておくことが大切です。

妊娠中の体調不良などの相談や診療が可能かどうか確認しておいて下さい。また、現地で出産予定の人は渡航前に必ず役所にて相談しておくようにして下さい。

クレジットカード海外旅行の詳細

 

現在利用中のクレジットカードに海外旅行保険が付帯されてる人も多いと思います。まずはその保険が自動的に利用できる自動付帯なのか、条件付きで利用できる利用付帯なのか確認しておきましょう。

そして問題なく利用できるようであれば、保険会社に出張や駐在の場合に特約の追加ができるかどうか相談してみて下さい。それぞれの滞在状況によっては、その方が経済的です。

何を優先するか

そして、最後に海外駐在保険を選ぶ際のコツをご紹介します。

すべての条件を満たす保険が見つかったとしても、保険プランによっては高額になってしまう場合もあります。できるだけ、費用を抑えて条件に合った補償内容を選んでいきたいものです。

上記でご紹介したポイントや注意点を考慮した上で、何を優先したいか優先順位をつけておくと選び安くなります。

優先順位の付け方は、

  • 絶対につけておきたい補償やサービス(必須)
  • 優先したい項目1~5

と最初に決めておくと選ぶ保険もおのずと決まっていきます。

まとめ

最近では、海外へ渡航するのは特別なことではなくなってきました。旅行だけでなく、仕事や学校で海外へ行く人も増えているようです。

保険会社も、近年の海外渡航への需要に応えられるように様々な保険プランを用意しています。基本的な補償はどこの保険会社も正直いってあまり変わりません。

ただ、契約方法、期間、特約、無料で利用できるサービスなどがそれぞれ異なり、同じような保険プランでも補償金の上限や保険料も違ってきます。

何ごともないのが一番ですが、やはり万が一に備えておくことで安心して海外生活を満喫していくことができます。それぞれの状況に合った最適な保険プランで、ビジネスライフを充実させていきましょう。

 

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