公的手当の種類にどのようなものがあるか?公的保険別に分かりやすく解説

保険には、公的保険と民間保険があります。公的保険は国が運営する保険の制度のことで、民間保険は各種保険会社が運営する保険制度を言います。

公的保険には、労働に関する保険(雇用保険・労災保険)、医療に関する保険(健康保険・国民健康保険・後期高齢者医療制度・(国家・地方)公務員共済制度、介護保険)、公的年金制度(国民年金・厚生年金保険)があります。

具体的には、会社を退職した場合などのように、離職をした場合は雇用保険から手当が支給され、仕事中・通勤途中などで事故に巻き込まれて仕事ができなくなった場合などは、労災保険から手当が支給されるといった感じです。

今回は、こういった公的保険から出る手当について、制度の仕組みを解説したうえで、どのような場合に

1.公的保険の種類

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公的保険とは、国・地方自治体が運営する保険制度のことです。具体的には、雇用保険・労災保険などの労働保険や健康保険・国民健康保険・介護保険などの公的医療保険公的年金制度などのことを言います。

公的保険の役割

【労働保険】

・労災保険

会社等の事業所に雇用されている者は全員加入が義務付けられている公的保険です。主な内容は、業務上の災害や疾病、通勤途上における災害や疾病が起きた場合に、必要な手当(給付)と支払う制度です。保険料は全額事業主が負担しているため、労働者(パートなども含む)の保険料の負担はありません。

・雇用保険

一定の規模の事業所に雇用されている者は加入しなければならない公的保険です。主な内容は、離職した者の所得補償として基本給付の支給や再就職を支援するための各種手当の支給、能力開発を行う人に対する手当(給付)などのように、離職した人だけでなく、能力開発を行う労働者などに対しての幅広い給付が行われます。保険料は、事業主と労働者が折半負担となります。

【医療保険】

・健康保険

全国健康保険協会(国が運営)と健康保険組合が運営している保険制度で、会社等に雇用されている人の医療保険となります。具体的には、療養の給付(診察など)、出産に関する手当、高額療養費制度などがあります。保険料は事業主と労働者が折半負担となります。

・国民健康保険

各市町村が運営している医療保険制度です。こちらは、健康保険とは異なり、自営業者や会社に勤めていない人などが加入する医療保険制度です。具体的な内容としては、健康保険とほぼ同じです。保険料は、全額自己負担となります。

・介護保険

各市町村が運営している医療保険制度で、平成12年4月から施行された比較的新しい制度です。具体的には、高齢者が適切な介護サービスを受けられるよう、社会全体で支援する保険制度のことです。保険料は被保険者となる40歳以上の者について強制加入とされており、健康保険の保険料と共に徴収されます。

2.労働に関する公的保険の種類

労働に関する公的保険には雇用保険と労災保険があります。どちらにも共通している点としては「労働者(つまり、会社に雇われていて、経営者でない人)」が対象となっている事です。

(1)労災保険

労災保険は「労働者災害補償保険」の事で、文字通り労働者に起こる災害に対して手当(保障)を行う公的保険」で、災害が発生した状況や場所等によって「業務災害」と「通勤災害」の2つに分かれて保障を行う制度となっています。

具体的には、ケガや病気になった際の治療、業務災害・通勤災害によって休業をしている期間についての所得補償などのように、労災による所得補償や遺族への生活保障だけでなく、露労災事故による休業等から社会復帰を支援するような制度を行っています。

【労災保険における2つの災害】

①業務災害

業務災害は、業務中に起こったけがや業務中の作業が原因で病気が発症してしまった場合など、けがや病気の直接的な原因が業務中により引き起こされたものである場合の労働者災害をいいます。

そのため、業務災害は職場内で起きた災害であることが前提となりますが、職場以外のところで発生した事であっても、業務災害として認定をされるケースもあります。

また最近では、職場内における精神的なストレス等が原因となって、うつ病などを発症してしまった場合などについても、労災認定がされるケースが増えてきています。そのため、業務災害の認定基準の中に、心理的負荷が原因による精神疾患についての基準も併せて法令上に基準が定められています。

②通勤災害

通勤災害は、自宅から職場へ向かう途中、または、職場から自宅へ帰宅途中のいずれかの場合において、ケガや病気の原因となる出来事に遭遇した場合の災害をいいます。通勤災害の場合は、通勤途中であることが必要であるため、業務災害に比べると証明することが困難なケースが多いことも通勤災害の特徴といえます。

よく、間違えやすいこととして、出張先で発生した場合です。出張先の宿泊先から勤務地へ移動する途中に起きた災害については、通勤災害として扱われるのではなく、業務災害となるので注意が必要です。(出張は会社の指示によって発生している業務の一環と考えるため、その中で発生した災害であれば、業務災害であると考えるのが自然であると考えているため)

(2)雇用保険

雇用保険は、1947年に制定施行された「失業保険法」がその前身となったもので、制定当時は、適用業種や規模が限定されている制度でした。しかし、経済情勢が大きく変化してきたことで、雇用保険の役割が失業者への手当だけでなく、労働者の能力開発などにも着目した総合的かつ積極的な政策が行われるようになりました。

具体的には、会社を離職した場合に支給される「基本手当(いわゆる「失業手当」のこと)」を中心に、会社等を離職してしまった人の生活保障を行うものや、再就職を促すための各種手当、教育訓練を受けるための手当など、雇用されている人や就職活動を行う人まで幅広く、手当を行うことで支援を行う制度になっています。

【雇用保険が行う給付(手当)の分類】

雇用保険は給付の目的によって大きく4つの給付の枠組みに分かれます。具体的には、離職をした人が再就職をするために必要な支援を行ったり、労働者の能力開発、雇用を安定させるために必要な給付を行うものがあります。

①求職者給付

求職者給付は、雇用保険の被保険者であった者が離職をしたときに、一定の要件を満たした場合であれば、離職をしている期間について支給される手当です。

求職者給付には、受給する被保険者によって、一般の被保険者が離職した場合(基本手当など)・高年齢被保険者(65歳以上の人)が離職した場合(高年齢求職者給付金)・短期雇用特例被保険者(季節的に雇用される者で一定の要件を満たす人)が離職した場合・日雇労働被保険者(日々雇用される人など)が離職した場合(日雇労働求職者給付金)に分かれます。

②就職促進給付

就職促進給付は、就職を促進するために支給する手当のことです。具体的には、就業手当・再就職手当・常用就職支度手当金・就業促進手当の4つが支給されます。就職促進給付は、基本手当などを受給している人が、少しでも早く、再就職をすることで雇用の安定を図ることを目的としている制度です。

③教育訓練給付

教育訓練給付は一定の要件を満たしている人が、厚生労働省が指定する、雇用の安定及び就職の促進のために必要な職業に関する教育訓練を受講したときに支給される手当のことです。

教育訓練給付には、一般教育訓練給付専門実践教育訓練給付、教育訓練支援給付金(平成31年月31日まで)あり、いずれについても、現在働いている人であっても、要件を満たせ、受給することが出来る手当となっています。

④雇用継続給付

雇用継続給付は、雇用の継続が困難となる事由(高齢・出産・介護)が生じた人に対して雇用保険から手当が支給される制度です。具体的には、高年齢雇用継続給付・育児休業給付・介護休業給付がこれに該当します。

3.社会保険に関する公的手当の種類

社会保険に関する公的手当の種類には、公的医療保険(健康保険、国民健康保険、介護保険など)と公的年金制度(国民年金・厚生年金保険など)などがあります。いずれの制度とも、国・地方自治体が保険者として制度の運営を行っているのが特徴です。

(1)公的医療保険

公的医療保険は、国や地方自治体が保険者として運営を行っている医療保険制度です。具体的には、働いている人が加入している健康保険・自営業者などが加入している国民健康保険、40歳以上の人は強制加入となる介護保険があります。

①健康保険

会社などで働く人やその家族が、業務外のところでけが等をした場合において、医療給付や手当金などを支給することで、生活の安定を図ることを目的とした社会保険制度です。健康保険は、会社などで働いている人とその家族が適用対象とされています。

健康保険は、国(全国健康保険協会)と健康保険組合(主に大企業などで組織しているところが多い)のいずれかが運営を行っています。主な保険給付としては、療養の給付を中心として、自己負担額が高額になった場合に支給される高額療養費、病気やケガなどで就労不能となった場合における所得補償としての傷病手当金、出産や育児に関する費用の補助制度としての出産手当金・出産育児一時金などがあります。これらの給付については、一部を除いて、被保険者の扶養家族についても同様の給費や手当金が支給されます。

②国民健康保険

国民健康保険は、健康保険と同様に、業務外のところでけが等をした場合において、医療給付や手当金などを支給することで生活の安定を図ることを目的とした社会保険制度ですが、健康保険と大きく異なるところは、自営業者や学生といった、会社に勤めている人やその家族以外の人が加入することになるということです。国民健康保険は各市町村と国民健康保険組合が運営を行っています。

国民健康保険の保険給付の内容については、基本的には健康保険で行われる保険給付や手当金などと同じようなものとされており、その対象が会社等に勤めている人以外の人(健康保険や各種共済制度の加入者以外の人)が対象となっている点が大きく異なります。

③介護保険

介護保険は、介護を必要とする人のためにその介護費用を給付する医療保険制度です。介護保険は40歳から介護保険への加入が義務付けられているもので、65歳以降になると、介護保険による介護サービスを受けることが出来るようになります。(40歳から64歳までの者であっても、一定の要件を満たしている人については、介護保険のサービスの適用を受けることが出来ます。)介護保険は、各市町村が運営主体となっており、それぞれの自治体によって受けられる介護サービスに違いはありますが、基本的なところについては共通しています。

(2)公的年金

公的年金とは、国民年金(1階部分)と厚生年金保険(2階部分)を総称した制度です。国民年金は、公的年金制度の基本的な部分を構成する年金制度で、20歳になると強制的に加入することになるもので、老後を迎えてからの生活をするために必要な収入源となる大切な年金制度です。厚生年金保険は、会社に勤めている人や公務員などが加入対象となっており、国民年金の基礎年金に上乗せする形で、払ってきた保険料や加入していた期間などに応じて年金を支払う形となります。

①国民年金

国民年金は、公的年金の1階部分とも言われる年金です。基本的に日本国内に住んでいる20歳以上のひとであれば、全員強制的に加入することになる年金制度です。国民年金では、「老齢・障害・死亡」について、必要に応じて年金給付を行います。

②厚生年金保険

厚生年金保険は、公的年金の2階部分とも言われる年金です。厚生年金保険は、会社等に勤めている人が加入している年金制度で、国民年金の保険料は払う必要がありません。具体的な給付については、国民年金とほぼ同じように「老齢・障害・死亡」を中心にそれに付随する手当金や年金などの支給を行っています。

(3)その他の公的手当

その他の公的手当としては、児童手当や児童福祉手当などがあげられます。これらは、公的医療保険や公的年金と同様に社会保障の一つとして支給されるもので、生計を助けることが目的となっている手当金などです。

①児童手当

児童手当は、市町村から支給される公的手当です。具体的には、満15歳に達した日以後最初の3月31日までにある子どもがいる世帯について、1人当たり11,000円~15,000円が支給されます。つまり、要件を満たしている子供の数が2人であれば、この年齢によりますが、20,000円~30,000円が毎月受け取ることが出来るということです。なお、児童手当は、2月・6月・10月にそれぞれ前月までの分(2月であれば、10月から1月までの4か月分)がまとめて支給される形となっています。

なお、児童手当には世帯ごと・子供の人数などによって所得制限が設けられており、一定額以上の所得を得ている世帯については、子供の年齢が要件を満たしていたとしても、児童手当は支給されません。

②児童扶養手当

児童扶養手当は、父母が離婚した児童や父母のいずれかが死亡した児童、又は、父母のいずれかが障害状態にある場合の児童の養育を行う人に対して手当を支給する制度です。児童扶養手当は、原則として、児童手当とは併給出来ませんが、ひとり親の場合は、児童手当と児童扶養手当を併給することが出来ます。

児童扶養手当は、4月(12月から3月まで)・8月(4月から7月まで)・12月(8月から11月まで)の年3回支給されていましたが、平成31年11月より奇数月の年6回に支給回数が改正されます。また、支給額につきましても、平成28年8月より第2子以降の加算額について改正により増額されるなど、児童福祉手当の手当の内容がより手厚くなってきています。

具体的な金額は、所得状況などにもよりますが、第1子については9,980円~42,290円、第2子は5,000円~9,990円、第3子以降は3,000円~5,990円が支給されます。

4.まとめ

公的保険は、国が行う保険制度であります。そのため、労働者に対する保障制度(労災保険や雇用保険など)、公的医療保険制度(健康保険、国民健康保険、介護保険など)、区的年金制度(国民年金・厚生年金保険など)、その他の公的保障制度(児童手当、児童扶養手当など)のように、保護する対象によって、保障される内容もそれぞれ変化してきますが、基本的には、すべての人が最低限度の生活を営むことが出来るようにするための制度とも言えます。

公的保険制度をしっかりと活用することで、必要に応じた給付や手当などを受け取ることが出来るということをしっかりと理解しておくことで、いざとなったときにどのような保障制度を活用すればよいかを把握することができ、本来であればもらうことが出来るものをもらいそびれるといったことが少なくなってくるものと考えています。

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