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日経平均株価が1か月で10%下落する中、秘かに注目を浴びているのが不動産投資信託のREITです。REIT全体の平均価格を表す東証REIT指数は現時点では上昇傾向にあり比較的安定した動きを見せています。
世界的に金融市場が不安定な現在、海外投資家による海外マネーの流入が目立ち、新たな資金逃避先として日本のREITが注目されているようです。
みずほ証券によると、海外マネー流入の大元は、世界REITの投資家と株式の投資家だと言われています。
政策金利が安定し、東京オリンピックを控えた日本のREITは、政治的混乱もないことから、最も安定した投資先として注目されています。
今回は、そもそもREITとは何なのかを解説して、今注目されているREITをご紹介していきます。
REITとは
2018年後半から、世界的に金融市場が不安な動きを見せる中、堅調な動きを見せているREITですが、そもそもREITとは何なのでしょうか。まずは、REITについて簡単にご説明しておきましょう。
REIT(リート)とは、投資信託に分類される投資方法で、不動産を対象としたものになります。不動産投資信託とも呼ばれているものです。
REITには、海外の不動産に投資するものと、国内の不動産に投資するものと大きく2種類に分かれます。海外の不動産に投資するREITは海外REIT、国内の不動産に投資するものはJ‐REIT(ジェイリート)と言います。
REITの特徴
REITは、複数の不動産に投資を行っている不動産関連企業に資金を託す投資方法となります。
複数の不動産に投資を行う企業は、投資法人として、一般の投資家から資金を集めています。つまりREITとは、投資法人に投資することになります。
投資法人にはいくつも種類があり、それぞれ保有する物件も異なります。どんな不動産に投資を行いたいか、投資家の目的に応じて適切な投資法人を選ぶことができます。
REITについて、もっと詳しく知りたい方はこちら
取引方法
REITは不動産投資信託として、ETFのように証券取引所を通して直接市場で売買されています。REITはそれぞれ、単位や価格が決められており、価格は売買状況によって常に動いています。
また、複数のREITを組み合わせた投資信託ファンドを購入することも可能です。その場合は、直接、投資法人に資金を提供するわけではなく、複数のREITに投資を行っているファンドに資金を託すことになります。
投資信託ファンドにてREITに投資する場合は、ほとんどの金融機関にて一般の投資信託のように5千円くらいから投資を行うことができます。
REITを直接購入する場合は、決められた単位やその時の価格に応じて、ETFや株式同様に証券会社の口座で取引する必要があります。
最近のREITの動き
先述したように、最近のREITの動きは日経平均などと比べると堅調で上昇傾向にあると言えます。では、実際に最近REITがどのように動いているのかを2019年1月24日のデータを参考に見ておきたいと思います。
※東証REIT指数
上記は、約半年間の東証REIT指数の動きになります。2018年8月以降はほぼ横ばい状態で、あまり価格の変動がありませんが、やや上昇に向かっているかなといった感じです。
2018年11月においては一気に価格が上昇し始め、12月には一旦暴落しています。
そして、2019年1月に入ってから、価格変動が激しいながらも堅調に上昇していく動きを見せています。
日経平均株価
このREITの注目度を図る上で、最近の日経平均株価との動きを比べたいと思います。
※日経平均株価
日経平均株価の動きはというと・・・
見るのも恐ろしいかと思われる程、価格は下がりきってしまっています。2018年の10月から、時折持ち直したかと思える動きを見せつつも、下落を重ねています。
現在はやっと、20,000円代に戻りましたが、何だが乏しい動きを見せていて、株式に対する大きな不安が伺えます。
日経平均株価は、もちろんアメリカの市場の影響を非常に強く受けるのですが、アメリカの株式の平均を表すダウジョーンズの動きも日経ほどではないですが、あまり好ましくない状況だと言えます。
その他投資信託との比較
投資信託には国内株式、海外株式、債券などと様々な種類がありますが、それらの中で2018年の運用成績が良いものは2種類のみです。
国内債券と国内REITのみ、運用益が上昇しており、特に国内のREITに関しては10%を超えているのです。
2018年の10月時点での海外投資家による、国内REITへの投資額は2,026憶円を記録しており、12月には150億円を超える買いが入っているとのことです。
2018年、1年間の国内REITの投資総額は3,057憶円に達しており、米中の貿易戦争や英国のEU離脱への懸念からも、安全な投資先としてJ-REITが認識され始めているのです。
今注目のREIT5選!
このように、その他金融商品が不安な動きを見せる中、東京オリンピックなどで世界中から期待が高まっているJ‐REITですが、どのようなREITがとくに注目を集めているのでしょうか。
今回は以下の5つのポイントからREITを紹介していきます。
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- 価格騰落率
- 分配金利回り
- 資産規模
- NOI(収益)利回り
- 年額分配金
それぞれのREITの価格や分配金、注目ポイントなども合わせて解説いたします。2019年1月24日時点でのデータを参照にしています。
価格騰落率/いちごオフィス
注目ポイント
価格騰落率が最も高いREITは「いちごオフィス」です。1年間でいちごオフィスの価格は19.95%値上がりしています。
概要
8975 いちごオフィスリート投資法人
いちご株式会社をスポンサーとするオフィス特化型J-REITです。2011年にFCレジデンシャル投資法人と旧いちご不動産法人が合併して設立されました。2015年から不動産総合型からオフィス特化型に変更しています。
詳細
購入単価: 99,800円
価格騰落率:19.95%
分配金利回り: 4.29%
資産規模: 2,030憶円
NOI利回り: 5.50%
年額分配金: 29,995円
※チャート
いちごオフィスリートの情報はこちらから
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物件情報
東京都23区内のオフィス物件が全体の約70%を占め、特に主要5区の物件が50%近くになります。
保有物件は全部で85件、2018年度に取得した物件には
- いちご乃木坂ビル(東京都港区)
- MIFビル(東京都千代田区)
などがあり、都会的で斬新なデザインの10階建て前後のオフィスビルがメインになります。東京都のオフィス街の物件が圧倒的に多いのが特徴です。
分配金利回り/インヴィンシブル
注目ポイント
年間の分配金利回り率が最も高いREITが「インヴィンシブル」です。分配金利回りは7.00%で、当期の分配金は1,582円でした。
概要
8963 インヴィンシブル投資法人
外資系運用会社フォートレス・インベストメント・グループ、情報大手ソフトバンク・グループをスポンサーとするJ-REITです。ホテルが約7割、住居が2.5割、残りがオフィスや商業施設になります。
詳細
購入単価:46,550円
価格騰落率: -10.82%
分配金利回り: 7.00%
資産規模: 4,483憶円
NOI(収益)利回り: 5.81%
年額分配金: 21,411円
※チャート
インヴィンシブル投資法人の公式サイトはこちらから
物件情報
物件比率が70%を超える国内のホテル数は2018年12月時点で54件あります。地域別では、東京23区が47.2%、東京周辺が15.2%、地方主要都市部の物件が37.6%です。
東京都5区内のホテル物件には、
- ホテルマイステイズ五反田(東京都品川区)
- ホテル/フレックステイイン飯田橋(東京都・新宿区)
など、ビジネスホテルとデザイナーズマンションの中間にあるような民泊型ホテルのような物件を多数保有しているのが興味深いですね。
客室数も100室くらいから50室くらいの中型ホテルが多くなります。
資産規模/日本ビルファンド
注目ポイント
資産規模で国内ナンバーワンのREITは「日本ビルファンド」で、総資産額は1兆1,051億円となります。資産規模が国内で初めて1兆円を超えた、上場歴も長い最古銘柄として注目されています。
概要
8951 日本ビルファンド投資法人
三井不動産をスポンサーとするオフィス特化型のJ-REITです。長期固定金利比率のターゲットを90%以上に置く、堅実な財務戦略で信頼が高く、日本銀行が投資口の6%以上を保有しています。
詳細
購入単価:691,000円
価格騰落率: 17.52%
分配金利回り: 2.89%
資産規模: 1兆1,051憶円
NOI(収益)利回り: 4.45%
年額分配金:4,000円
※チャート
日本ビルファンド投資法人の公式サイトはこちらをクリック
物件情報
日本ビルファンド投資法人の収益物件はほぼ100%がオフィスビルになるのが大きな特徴です。保有物件は72件で、その80%が東京23区を占めています。そのうちで50%が都心部5区になります。
その他、東京周辺が7.7%、地方都市部が11%と約90%を東京エリアを占めていることがわかります。
不動産の特徴としては、
- セレスティング芝三井ビルディング(東京都・港区)
- NBFプラチナタワー(東京都港区)
など超大型、超高層ビルの保有が多いことで、主要テナントも三井不動産、SONY、三菱重工などの大手が対象となります。
NOI利回り/大江戸温泉リート
注目ポイント
NOI利回りとは、Net Operation Income の略で不動産の賃料収益から不動産の運営費用をこうじょした純営業収益率のことをいいます。
この純営業収益率が最も高いのREITが「大江戸温泉リート」です。
概要
3472 大江戸温泉リート投資法人
大江戸温泉物語グループを主要スポンサーとするREITで、温泉や温浴施設を投資対象としています。現在の資産規模は約367憶円ですが、温泉宿泊施設の再生事業に強みがあり、2019年度に700憶円、2023年度には1,000憶円を目標に躍進中です。
詳細
購入単価:83,300円
価格騰落率: -5.23%
分配金利回り: 5.71%
資産規模: 367憶円
NOI(収益)利回り:7.32%
年額分配金:23,800円
※チャート
大江戸温泉リート投資法人の温泉情報はこちらから
物件情報
物件の100%や温泉施設、旅館・ホテルとなります。地域は中部・近畿地方が約36%、関東地区は約20%にとどまっています。
その他の地域が約44%となり、中型規模の地方の特色を生かしたホテル・旅館が多くなります。
まだ、上場してから3年未満であり物件数が少なく、これからの展開次第といったところではあります。
現在保有中の物件には、
- 大江戸温泉物語 (兵庫県・豊岡市)
- 大江戸温泉物語 (静岡県・熱海市)
などがあり、修学旅行などの団体客を思わせるような雰囲気の建物が多いようです。
年額分配金/星野リゾート
注目ポイント
年額分配金が最も高いREITは、「星野リゾート」になります。年間で51,678円の分配金が支給されています。ホテル特化型のJ-REITで、堅実な財務戦略がが評価されており、資産規模は上場時のほぼ10倍に拡大しているのも注目されています。
概要
3287 星野リゾート・リート投資法人
ホテルの開発・運営の星のリゾートをスポンサーとするREITで、2013年の7月に上場以来、コンスタントに増資と物件取得を実現しています。
観光産業の中核となるべくホテル・旅館の開発に力を入れており、古典モダンな個性的な宿泊施設が多いのが特徴です。
詳細
購入単価:535,000円
価格騰落率:-8.55%
分配金利回り:4.83%
資産規模:1,471憶円
NOI(収益)利回り:6.72%
年額分配金:51,678円
※チャート
星野リゾート・リートの詳細はこちらから
物件情報
星野リゾート・リートで保有する物件は100%ホテル・旅館になります。
物件数は全部で56件、中部近畿地方が44%、その他地方が42%となり、関東エリアや都心部の物件はごくわずかです。
星野リゾート・リートの運営方針としては、ブランド性の高い小型の高級旅館やホテルにて非日常的な異国空間が味わえることをモットーしており、外国人受けしそうな物件が多くなります。
- 旅館/ 界 川治 (栃木県・日光市)
- 星野や軽井沢(長野県北佐久郡軽井沢)
など非常に個性的で魅力のある宿泊施設の提供をしています。同時に、チサンイン、コンフォート、ANAホテルなどの大手物件も手掛けています。
※オリンピックに関連するJリートについての記事はこちら
まとめ
今回は日経平均をはじめ、その他の金融商品が不安な動きを見せる中、堅調に上昇の気配を見せている、不動産投資信託・REITについて解説致しました。
海外から投資資金が流入している理由としては、世界的な株安から多くの海外株式投資家がJ-REITに逃げ込んでいることが1つ。そして、もう1つの理由は、もともとREITに資金をつぎ込んでいた海外投資家たちが東京オリンピックに着眼している点です。
そして、J-REITが海外の人にとって魅力に映る理由としては、やはり日本が政治的に非常に安定している点です。すでに日本に住んでいる私達にとっては、この状態が当たり前ではありますが、今のように不安定な経済情勢においては、安全地帯に移るのかもしれないですね。
いよいよ2019年に突入しました。やがてオリンピックが現実として身近に感じられてくるようになります。そうなると、さらに国内の不動産に対する期待も高まってくることが予想されます。
まだまだ、上昇の余地はあると思えるREITにて、今後の投資計画を立ててみてはいかがでしょうか。