低所得などのため生活に困った人は、国からお金が借りられる?国の生活福祉資金貸付制度について詳しく解説!

所得が少なくて、経済的に困っている人は大勢います。いろいろな事情があって、働きたくても働けない人もいるでしょうし、働いても働いても所得が増えていかない人もいるでしょう。

現状では、所得が少ない人が銀行などからお金を借りるのは難しくなっています。消費者金融業者から借りるにも、貸金業法の総量規制のため年収の3分の1以上の借り入れはできません。

このように経済的に困った人のために、国が救済のための貸し付けを行っていることをご存じでしょうか?今回は、国の低所得者のための貸付制度である生活福祉資金貸付制度について、詳しく解説していきます。

生活福祉資金貸付制度とは?

Woman
生活福祉貸付制度という国からお金を借りることができる制度があると聞きました。どのような制度なのでしょうか?
Expert
生活福祉資金貸付制度とは、厚生労働省が管轄していて、各都道府県の都道府県社会福祉協議会が実施主体となって行われている制度です。低所得者世帯と障害者世帯と高齢者世帯に対して貸し付けを行っています。

生活福祉資金貸付制度は、経済的に苦しい人などに対する融資のため、かなり金利が低いのが特徴です。そのため、融資というよりも、支援といった方が良いかもしれません。

また、収入要件も厳しく、一定の収入のある人は、借り入れすることはできません。

生活福祉資金貸付制度の対象者

生活福祉資金貸付制度を利用できる世帯

生活福祉資金貸付制度を利用できる対象者は、以下の条件を満たした世帯になります。

低所得者世帯

市町村民税非課税程度の低所得者世帯(自治体によって基準が違います。)

障害者世帯

身体障害者手帳や療育手帳や精神障害者保健福祉手帳を持っている人が属する世帯

高齢者世帯

65歳以上である高齢者が属している世帯

低所得者世帯の基準は、市町村民税非課税程度となっていて基準が曖昧です。また、低所得者の基準が、各自治体の社会福祉協議会ごとにによって変わってくるようです。申込者が借入条件を満たしているかは、住んでいるところの社会福祉協議会の基準によって決まりますので、申し込みの前に一度問い合わせてみると良いでしょう。

生活福祉資金貸付制度を利用できない世帯

一方、生活福祉資金貸付制度が利用できないのはどのような場合なのでしょうか?生活福祉資金貸付制度を利用できない世帯は以下になります。

利用条件を満たしていない世帯

低所得者世帯、障害者世帯、高齢者世帯のいずれも満たしていない世帯は、生活福祉資金貸付制度を利用することができません。

生活保護や失業給付を利用している世帯

基本的には、生活保護などの国の支援を受けている場合は利用できません。ただし、自治体や状況によっては、借り入れできる可能性もありますので相談してみる価値はありそうです。

しかし、生活保護費からは返済することができませんので、他に何らかの収入がないと難しいかもしれません。

他の貸付制度を利用できる世帯

生活福祉資金貸付制度は生活保護一歩手前の世帯に対する貸付制度のため、他の給付や貸付などを利用できる人は利用できません。

多重債務者

生活福祉資金貸付制度は返済が必要な貸付制度のため、返済能力がある人でないと借り入れすることができません。多重債務者のように他にも返済が必要な債務がある人は、利用できない可能性が高くなります。

住居がない人

住居を確保していない人は、生活福祉資金貸付制度を利用することはできません。平成27年4月より施行された生活困窮者自立支援法に基づく制度として、住宅確保給付金という制度があります。住居が確保できていない人は住宅確保給付金を申し込んで住宅を確保してから、生活福祉資金貸付制度を申し込みしましょう。

収入がかなり少ない人

多重債務者のケースでも記載したように、生活福祉資金貸付制度は返済が必要な貸付制度です。収入によっては、返済能力がないと判断されてしまう可能性もあります。

生活福祉資金貸付制度の種類と資金使途

Man
生活福祉資金貸付制度には、どんな種類があるのでしょうか?
Expert
生活福祉資金貸付制度には、総合支援資金、福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金の4種類があり、それぞれ異なった目的のための貸付制度になります。それでは、一つ一つについて詳しく解説していきます。

総合支援資金

失業などで生活に困っているいる人が社会福祉協議会やハローワークなどから支援を受けることにより、経済的な自立生活の立て直しができるようになるための貸付制度です。総合支援資金には、生活支援費、住宅入居費、一時生活再建費の3種類があります。

生活支援費

生活再建に必要な生活費用の貸付を行います。

住宅入居費

敷金や礼金などの住宅に関する賃貸契約の締結のために、必要な費用の貸付を行います。

一時生活再建費

以下の場合に貸付を行います。

  • 生活再建のための費用が日常生活費で賄うことが困難で一時的に必要な場合
  • 就職や転職を前提とした技能習得に関する経費
  • 公共料金など滞納している場合に必要な立て替え費用
  • 債務整理をするために必要な経費

福祉資金

低所得者世帯や障害者がいる世帯や高齢者がいる世帯に対して生活の安定経済的自立を図るため、福祉に関する資金の支援などを行います。福祉資金には、福祉費と緊急小口資金の2種類があります。

福祉費

以下の場合に貸付を行います。

  • 生業を営むことに必要な経費
  • 技能習得のために必要な経費や技能取得期間中の生計維持のために必要な経費
  • 住宅の増改築や補修や公営住宅の譲り受けなどに必要な経費
  • 福祉用具の購入などに必要な経費
  • 障害者用自動車の購入に必要な経費
  • 中国残留邦人に係る国民年金保険料の追納に必要な経費
  • 負傷や疾病の療養に必要な経費、または療養期間中の生計維持に必要な経費
  • 介護サービスや障害者サービスなどを受けるために必要な経費、またはその期間中の生計維持に必要な経費
  • 災害を受けたことにより臨時に必要になる経費
  • 冠婚葬祭に関して必要な経費
  • 住居の移転や給排水設備などの設置に必要な経費
  • 就職や技能習得などの支度に必要な経費
  • 日常生活をする上で一時的に必要な経費

緊急小口資金

緊急な場合や、一時的に生計の維持が難しくとなった場合に少額の費用の貸付を行います。

教育支援資金

他の生活福祉資金貸付制度と同様に生活の安定や経済的自立を図るため、進学や修学の継続を支援するための制度です。

教育支援費

低所得世帯に対し、高等学校や大学や高等専門学校に修学するために必要な経費の貸付を行います。

就学支度費

低所得世帯に属している人が、高等学校や大学や高等専門学校への入学に必要な経費の貸付を行います。

不動産担保型生活資金

土地や建物を所有し、将来にわたってその住居に住みつづけたい高齢者世帯に対し、その土地や建物を担保として生活資金の貸付を行う制度です。

不動産担保型生活資金

低所得の高齢者世帯を対象とし、所有している居住用不動産を担保として生活資金の貸付を行います。

要保護世帯向け不動産担保型生活資金

生活保護などの要保護の高齢者世帯に対し、所有している居住用不動産を担保として生活資金の貸付を行います。

いくらまで借りられる?金利は?

ここでは、生活福祉資金貸付制度の借入限度額や金利などの詳細を一つ一つ詳しく解説していきます。

以下は総合支援資金の概要です。

生活支援費

  • 貸付限度額:二人以上の場合は月20万円以内、単身の場合は月15万円以内
  • 貸付期間:原則3ヵ月間(最長12ヵ月間)
  • 据置期間:最終貸付日から6ヵ月以内
  • 償還期限:据置期間経過後10年以内
  • 貸付利子:保証人有りの場合は無利子、保証人なしの場合は年1.5%
  • 保証人:原則必要(保証人なしでも借入可能)

住宅入居費

  • 貸付限度額40万円以内
  • 据置期間貸付日から6ヵ月以内(生活支援費と併せて借り入れしている場合は、生活支援費の最終貸付日から6ヵ月以内)
  • 償還期限据置期間経過後10年以内
  • 貸付利子:保証人有りの場合は無利子、保証人なしの場合は年1.5%
  • 保証人:原則必要(保証人なしでも借入可能)

一時生活再建費

  • 貸付限度額:60万円以内
  • 据置期間:貸付日から6ヵ月以内(生活支援費と併せて借り入れしている場合は、生活支援費の最終貸付日から6ヵ月以内)
  • 償還期限:据置期間経過後10年以内
  • 貸付利子:保証人有りの場合は無利子、保証人なしの場合は年1.5%
  • 保証人:原則必要(保証人なしでも借入可能)

以下は福祉資金の概要です。

福祉費

  • 貸付限度額580万円以内
  • 据置期間貸付日から6ヵ月以内(分割による交付の場合は、最終貸付日から6ヵ月以内)
  • 償還期限据置期間経過後20年以内
  • 貸付利子保証人有りの場合は無利子、保証人なしの場合は年1.5%
  • 保証人原則必要(保証人なしでも借入可能)

緊急小口資金

  • 貸付限度額:10万円以内
  • 据置期間:貸付日から2ヵ月以内
  • 償還期限:据置期間経過後12ヵ月以内
  • 貸付利子:無利子
  • 保証人:不要

以下は教育支援資金の概要です。

教育支援費

  • 貸付限度額高校は月3.5万円以内、高専は月6万円以内、短大は月6万円以内、大学は月6.5万円以内、それぞれ必要と認める場
  • 合は上限額の1.5倍まで貸付が可能
  • 据置期間卒業後6ヵ月以内
  • 償還期限据置期間経過後20年以内
  • 貸付利子無利子
  • 保証人不要(世帯内の連帯借受人が必要)

就学支度費

  • 貸付限度額:50万円以内
  • 据置期間:卒業後6ヵ月以内
  • 償還期限:据置期間経過後20年以内
  • 貸付利子:無利子
  • 保証人:不要(世帯内の連帯借受人が必要)

以下は不動産担保型生活資金の概要です。

不動産担保型生活資金

  • 貸付限度額土地の評価額の70%程度で月30万円以内
  • 貸付期間借受人の死亡時までの期間、または貸付元利金が限度額に達するまでの期間
  • 据置期間契約終了後3ヵ月以内
  • 償還期限据置期間終了時
  • 貸付利子年3%または長期プライムレートのいずれか低い利率
  • 保証人要(推定相続人の中から選任)

要保護世帯向け不動産担保型生活資金

  • 貸付限度額:土地、建物の評価額の70%程度(集合住宅の場合は50%程度)、生活扶助額の1.5倍以内
  • 貸付期間:借受人の死亡時までの期間、または貸付元利金が限度額に達するまでの期間
  • 据置期間:契約終了後3ヵ月以内
  • 償還期限:据置期間終了時
  • 貸付利子:年3%または長期プライムレートのいずれか低い利率
  • 保証人:不要

生活福祉資金貸付制度の申請方法

生活福祉資金貸付制度の申請方法は、資金種類によって変わってきます。また、生活福祉資金貸付制度を申請するには、場合によっては生活困窮者自立支援法と連携しながら行う必要があります。

生活困窮者自立支援法

生活困窮者自立支援法とは、平成27年4月から施行された法律で、福祉事務所が設置された自治体が主体となって生活困窮者への包括的な相談支援就労支援を行っていく法律です。具体的には専門の支援員が、生活困窮者一人ひとりの困窮状況に合わせた支援プランを作成して、他の専門機関と連携することで解決に向けた支援を行っていきます。

生活困窮者自立支援法の支援内容

居住確保支援

居住確保支援は住居の確保が必要な人への支援で、必要な費用のうち4分の3が国費から出資されています。

住居確保給付金の支給

再就職をするために住居の確保が必要な人に対し、就職活動が継続して行えるように有期で住居確保給付金(家賃費用)を支給していく支援です。

就労支援

就労支援には以下の種類があり、それぞれに特徴があります。就労支援の費用のうち、3分の2が国費から出資されています。

就労準備支援事業

就労をするのに準備が必要な人向けの支援で、一般就労ができるために日常生活自立や社会自立や就労自立をするための訓練が行われます。

認定就労訓練事業

すぐに一般就労をすることが困難で、柔軟的な働き方が必要な人に、支援と共に就労の場の育成を行います。この事業は社会福祉法人などの自主事業に対し、都道府県が認定する制度です。

生活保護受給者等就労自立促進事業

一般就労への準備がある程度整っている人を対象に、自治体とハローワークが一体的になって、一般就労への支援を行います。

緊急的な支援

緊急的な支援は緊急的に衣食住が必要な人への支援で、必要な費用のうち3分の2が国費から出資されています。

一時生活支援事業

緊急的な衣食住が必要な人に対して、行う支援です。以下の2種類の支援があります。

  • 衣食住など、日常生活に最低限必要な支援を提供します。
  • シェルターなどを利用している人や、居住することが困難な人に対して、一定期間の訪問したり見守りすることによる生活支援を行います。

家計再建支援

家計再建支援は家計に関する支援で、かかる費用のうち2分の1または3分の1が国費から出資されています。

家計改善支援事業

家計から生活再建を図る人に対して、利用者が家計の状況を把握して、家計の改善の意欲を高めるための支援を行います。また、貸付のあっせんなども行います。

子ども支援

子ども支援は生活困窮世帯の子どもに対する支援で、必要な費用のうち2分の1が国費から出資されています。

子どもの学習・生活支援事業

貧困の連鎖を防ぐために、生活保護世帯などの生活困窮世帯の子どもに学習支援を行います。また、生活困窮世帯の子どもや保護者の生活習慣や育成環境の改善と、教育や就労に関する支援を行います。

福祉費、教育支援資金、不動産担保型生活資金の申請の流れ

  • 申込者が市区町村社会福祉協議会に相談し、申し込みを行います。(相談は市区町村社会福祉協議会にて行うだけでなく、地域の民生委員などに相談しつなぎ役になってもらうこともできます。)

  • 市区町村社会福祉協議会は申込者が提出した申請書類を確認し、問題がなければ都道府県社会福祉協議会に申請書類を送付します。

  • 都道府県社会福祉協議会は、申込者が提出した申請書類をもとに貸付の審査や決定を行います。

  • 都道府県社会福祉協議会が、申込者に貸付決定通知書または不承認通知書を送付します。

  • 貸付決定の場合は、申込者が都道府県社会福祉協議会に借用書を提出します。

  • 貸付金が交付されます。

総合支援資金の申請の流れ

  • 生活困窮者自立支援制度における自立相談支援事業を利用することが貸付の条件になります。

  • 自立相談支援機関にて、個人の状況に合わせた自立のための支援プランの検討を行い、総合支援資金の利用が考えられる場合に必要書類を添付し申請を行います。

  • 市区町村社会福祉協議会は申込者が提出した申請書類を確認し、問題がなければ都道府県社会福祉協議会に申請書類を送付します。

  • 都道府県社会福祉協議会は、申込者が提出した申請書類をもとに貸付の審査や決定を行います。

  • 都道府県社会福祉協議会が、申込者に貸付決定通知書または不承認通知書を送付します。

  • 貸付決定の場合は、申込者が都道府県社会福祉協議会に借用書を提出します。

  • 貸付金が交付されます。

まとめ

  • 国が経済的に困った人のために、生活福祉資金貸付制度という貸し付けを行っています。
  • 生活福祉資金貸付制度を利用できるのは、低所得者世帯、障碍者世帯、高齢者世帯だけです。
  • 生活福祉資金貸付制度には、総合支援資金、福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金の4つの種類があります。

国からお金をかりる制度として生活福祉資金貸付制度がありますが、低所得者世帯など一部の人しか利用することはできません。また、借り入れするためには返済能力が問われますので、なかなか難しい制度でもあります。

 

 

 

 

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