誰に相談すれば良い?「相続の相談」をスムーズに進めるコツ

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親が高齢になってきたり、身内や知り合いの中で相続で大変な思いをしたような話を聞くようになると、相続についてだれかに相談したいな…という事も考えます。

 

Woman
いつか話はしなければと思っているのですが、話題が話題だけに相談はしづらいですよね。

 

 

Expert
たしかに、日常的な話題にするようなものではありませんが、逆にきっかけがあった時にはしっかり向き合いやすくなるものです。話をするきっかけや、どんな風に話を進めていくのがよいのかを把握しておけば、しっかりした対策が取れるようになりますよ。

このページでは相続の相談の進め方についてお伝えします。

 

相続の相談はなかなかしづらい

「相続の相談はなかなかしづらい」

何故われわれはそのように思ってしまうのでしょうか、その原因をしっかり把握してみましょう。

人が亡くなったことが前提の話ははばかられる

当然のことなのですが、相続の話をするのは人が亡くなることを前提とした話になります。

ほとんどの人はそのような話は「縁起でもない」という感覚を持っている事がほとんどといえるでしょう。

「今日はどこの調子が悪いんだ」「じゃ、死んだら相続が大変になるから…」というような会話はやはりし辛いのが普通です。

お金の事を考えているのか?と思われるのが嫌だ

相続では、誰がどのような財産をもらうことにするのか?という事が話し合われます。

被相続人の生前に人の財産についてアレコレ話しあうことは、お金に汚い人間だと思われてしまうのではないか?という感覚を持っている方もいます。

相続の相談を考えるべきシチュエーション


日常から相続について話合いを始める機会を持つのは難しいのですが、相続を考えたほうが良い、と思えるシチュエーションは必ずあります。

代表的なシチュエーションには次のようなものが挙げられます。

親族や近しい人が亡くなった

親族や近しい人が亡くなってお通夜や葬儀に参加するような機会は、相続について考える良いきかっけになります。

亡くなった直後から相続の話をするようなことはありませんが、四十九日法要をする時期になってくると、遺族の方がいろいろな手続きをしている事があると思います。

Expert
遺族の方が手続きが大変だったという事を自分から伝えるようなことはないと思いますが、「亡くなってから手続きとか苦労とかしたんじゃないですか?」と話題を振ってみると、自分達で手続きをしているような場合には、戸籍を集める苦労をしたとか、手続きを専門家に頼んだ場合には、お金がかかった…教えてくれるかもしれません。

苦労をした当事者が居れば、周りの人に苦労をしないようにアレコレ伝えてくれることで、話合いのきっかけを持てるようになるかもしれません。

大きな病気をした

大きな病気や怪我をして入院をするような事があった場合に、相続の話合いをすることもよくあります。

Expert
特に遺言に関する事に関わる職業をしていると、自分に死期が迫った方から亡くなる前遺言を作成しておきたい、という相談をよく受けます。筆者も士業のサポートおよび遺言書作成のための証人として、老人ホームやご自宅、入院中の病院に赴いて遺言書の作成をしました。

筆者がお手伝いした案件では、遺言書を作成すれば相続自体は解決するようなものでした。

しかし、不動産を複数所有しており、どのように分けるかをしっかり解決できないような場合には、そのまま被相続人が亡くなり相続が開始してしまうと、争いになってしまう事もあるでしょう。

大きな病気や怪我をした場合には、本人も万が一の事が頭の中に浮かんでいます

当事者が「揉めずに仲良くしていきたいので、今後の事をきちんと決めさせてください」と話しをすることで、きっかけを作ることができます。

終活について興味を持った

相続の事を単発で話をするのは難しくても、葬儀や墓石といったものに関する相談会などは全国至るところでやっていますし、参加するような事も多いかもしれません。

そのような終活イベントに興味を持っているような場合には、「決めることは葬儀だけじゃなくて、相続の事も決めておかないと」というような話の切り出し方ができるタイミングでもあります。

相続の何を話しあっておくべきか

相続において何を話し合っておくべきでしょうか。

 

Expert
資産構成・家族構成などによって相続発生しておくべきポイントは様々なので一概に言いにくい部分もあるのですが、いくつかよく後日争いになるポイントを知っておくとよいでしょう。

実際の争いを知って、決めておいたり対策しておいたほうがよいポイントを知っておきましょう。

複数の相続人が居る場合に不動産がメインの相続財産である

たとえば、父・母・同居する子A・同居していない子Bが居るとしましょう。

父の資産構成としては、東京都内に築40年の一戸建ての住宅があり、住宅ローンは完済しており、子Aはそのままこの住宅で両親と同居して妻をこの家に迎えているとします。

この場合に父が死亡して相続が発生すると、なんとなく我々の感覚としては同居する子Aが母とそのまま暮らしていく形で継いでいく、というイメージはつきますね。

しかし実際には、民法に従った法定相続分を計算すれば、母が1/2・子がそれぞれ1/4づつの法定相続分があることになります。

仮にBに相続させないとして、母・子Aの2人に相続させるような遺言書を記載したとしても、子Bには遺留分が発生するため1/8の権利自体は残ります。

もし父の資産として預金があまり無いような場合に、相続発生して子Bが自分の法定相続分や遺留分を譲らないような場合には、遺産の分配がうまくいかなくなってしまい、最悪のケースでは不動産を売却しなければならないという事態も発生しかねません。

また、仮に現金・預金があるような場合、東京都内に不動産があることを考えると、相続税の基礎控除額である4,800万円以上の資産があるという状態になるため、相続税対策を考えなければならないといえるでしょう。

以上のことを考えると、不動産をどうするか、不動産をもらえない相続の当事者にどのように説明をするか、説明ができないような場合にはどのように対策を練るか、対策として現金が必要な場合にはどうやって用意をしておくか、といった事項は話し合っておく必要があるでしょう。

子の居ない夫婦

ある夫婦AさんとBさんの間には子がおらず、Aさんの両親が健在であるような場合や、Aさんの両親がすでに亡くなっていてもAさんに兄弟姉妹がいるような場合を考えてください。

このような場合にAさんが亡くなった場合には、

  • Aさんの両親が健在である場合には、Bさんと両親が共同相続
  • Aさんの両親が亡くなっていて兄弟姉妹が相続人であるような場合には、Bさんと兄弟姉妹が共同相続

という状態になります。

Expert
前者のような相続が発生するような場合には、相続したBさんの年齢や両親がAさんからの扶養を期待していたかどうかによって、遺産分割の利害関係が大きく変わってきます。また後者のような事例になると、兄弟の奥さんとの関係はそこまで密接でないことから、請求できる権利があるのであれば、しっかり取りたいという考えになってしまったような場合には、残された奥さんが最悪の場合には住宅から追い出されるという事態に陥ることだってあります。

この場合には、Bさんの老後や住宅の保護を考えるとAさんとしてはできればBさんに遺産を全部渡す旨の遺言書を書いておき、両親から遺留分請求がされた場合のための金銭解決手段のための準備なども考えておくべきような場合になります。

 

子が居ない場合には当事者双方が死後に苦労しないように遺言書を作成しておくということを話し合っておく必要があるのです。

遺産相続する財産が多い

かなりの資産家であるような場合には、資産をどのように相続するかはかなり戦略的に考えていくべき問題です。

Expert
相続税はまともに払うと上限55%になります。つまり何らの対策もしなければ半分以上税金で失うような事態になりかねません。生前贈与や資産の活用などを通じて納税額を圧縮することはしっかり考えるべきことになります。

現在どのような資産を持っていて、どのような相続人が居て、どのような相続をしたいかということを頭の中に入れて、相続に関する様々な制度を上手に使いこなす必要があります。

様々な生前贈与・生命保険の活用・不動産投資など、単発で効果のある制度は様々紹介されていますが、相続税だけでなく贈与税などトータルで支払う金額がどのようになるのかを試算しながら様々な対策を講じつつ、相続に関わる当事者に不公平がないようにしていく必要があります。

よくあるのですが、両親が非常に高齢になってしまって判断能力がそんなに無く、子同士があまり仲良くない場合には、子のだれかに専門家がついて無理な遺言書の作成をしようとして別の子が止めに入るといった事を繰り返し、両親が困ってしまって相続の事などもう考えない!となるようなこともあります。

そのため、遺産をどのように分割していくのか、相続税やその他税金などをどのようにして支払っていくか、といった計画をなるべく早め早めに相談しておく必要があるといえるでしょう。

 

相続の相談相手


相続の悩みがあるような場合に、外部の専門的な意見を求めたい場合にはどのような人に相談するのが良いでしょうか。

弁護士

だれがどのような財産を相続する権利があるのか、という問題なので法律問題といえば弁護士に相談するというのが最初に思い浮かぶことだと思います。

 

Expert
基本的な相続の問題に関するものであれば、一般的な弁護士であればそれなりの知識は保有しています。法律問題で争いが発生する可能性があったり、争いを防止したい、という趣旨であれば弁護士に相談をして、遺言書作成などの方法を教えてもらうのが良いでしょう。

相続は弁護士の専門領域の中で言うと、個人法務という領域に属する法律分野になります。

 

一般的な相続であれば弁護士であれば対応できる事も多いと思いますが、複雑な相続や、相続財産が多額にあるため相続税が発生しそうな場合には、相続対策についてのテクニカルな対応特に司法試験や司法修習所では教えてもらえない相続税などの知識にも精通している必要があります。

自分の相続がかなり専門性が必要な場合には、弁護士の中でも相続に強い分野の弁護士であるかをきちんと前もって調べて相談しにいく必要があります。

 

Expert
最近では、弁護士も自分な得意分野をホームページできちんと表現しています。市区町村や法テラスの無料相談を使いたい気持ちはわかりますが、きちんとした相続に関する専門性が高い弁護士を選びたい場合には、ホームページで調べていくことをお勧めします。

税理士

 

相続に関してモメる要素はない場合でも、相続財産が高額になる場合には相続税がかかる可能性があります。

相続対策というと、相続でスムーズに資産を移動できるか、という問題に対して法律的なひっかかりがないかということと、なるべく納税額を減らしていくことを考えるべきで、相続税が発生するような場合には税理士に相談するほうがいい場合もあります。

税理士は試験科目で何を選んでいるか、その後の実務でどのような顧客の税務を担当しているかによって得意分野が明確に分かれており、相続税などは「資産税」という分野に属する税務について研鑽を積んでいる税理士に相談すべきです。

 

Expert
相続に関しては相続税専門の税理士、および税理士を中心とするグループが増えましたので、資産総額が多いような場合には、このような専門集団に相談することが望ましいといえます。

司法書士

 

相続においては、相続や生前贈与をする資産に不動産が含まれる場合には、所有権の移転登記という作業が必要になってきます。

不動産の移転登記については司法書士が専門家ですので、相続に関する移転登記の相談とともに、相続に関する相談をすることも可能です。

司法書士にもある程度の専門領域があるのですが、不動産に関する移転登記であれば司法書士であれば問題なく対応することができますので、相続財産が不動産を中心としながらあまり複雑なものでなければ司法書士に相談することも検討しましょう。

行政書士

行政書士は、基本的には法務局・裁判所以外の役所に提出する書面の作成代行をする専門家ですが、行政書士法には権利や事実関係に関する書面作成に関する業務も規定されており、遺言書の作成や遺産分割協議書の作成を通じて相続を専門とする行政書士がいます。

行政書士は作成する書類の専門領域が細かく分かれるものになり、相続に関しては試験でも直接問われたり、その後の手続きで相続を勉強する機会が少ないので、依頼をする場合には相続を専門としている行政書士に依頼をするようにしましょう。

保険会社

保険会社も相続の相談に乗っていることがあります。

これは、相続対策に保険を有効活用することができることがあるため、自社の商品の案内ができることから、相続の相談に乗ってくれることがあります。

こういった相続の相談に乗る人の中のほとんどがファイナンシャルプランナーの資格を有しており、相続に関する知識も有しているので、相続税対策で保険を利用するような場合には保険会社に相談することも可能です。

不動産会社

不動産会社も相続の相談に乗っていることがあります。

これは、相続にあたってマンション運営をすることで、土地の評価額を下げる相続税対策を取る事ができることから、マンション運営を勧める一貫として相続に関する相談をしていることがあります。

また、相続税の納税資金対策だったり、一部の相続権利を主張することができる人のために現金を作るなどして、不動産を売却することも相続対策としてはしておかなければならないことがあります。

こういった相続を起点に不動産を動かすことがあるため、相続財産に不動産が多数含まれるような場合には、不動産会社に相談することも可能です。

銀行

銀行も相続の相談に乗っていることがあります。

銀行預金の相続といったこともありますし、信託銀行になると「遺言信託」といった商品があるため、遺産整理業務なども銀行でやっていることがあります。

その他

葬儀社が相続に関してもなんとなく話を聞いて、懇意にしている士業を紹介したりすることはよくあります。

ちょっとした相談であればいろんなところで話を聞いてくれるところはありますが、弁護士・税理士のように守秘義務といったものがありませんので、注意をするようにしましょう。

まとめ

このページでは相続に関する相談を、どういったタイミングで、どのような内容を、だれに話せばよいか、ということについてお伝えしてきました。

家族の話題としては話辛いトピックではあるのですが、きちんと話し合っておくことは重要なので、良いタイミングに、何を話し合うかを決めて、専門家の意見をもらいながら上手に手続きをすすめていくようにしましょう。

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