減価償却費で中古住宅が節税対策に!不動産投資に役立つ減価償却費とは?

不動産投資を行うにあたっては、収益物件にかかる税率によって最終的に手元に残るお金に差が出てきます。なぜなら、不動産にかかる税金は、経費の中でも占める割合が大きいからです。

そんな中、不動産投資の節税対策として減価償却費を活用する人は多いようです。減価償却費とは、実際に支出があるわけでなくとも経費として計上することが可能となります。

原則として、減価償却費はその物件の耐用年数によって償却できる期間が定められているので、新築のRC構造の建物などの方が一見メリットがあるように思えてしまうものです。ところが、場合によっては古い中古住宅の方がむしろ効果的な節税対策が実現できることもあるのです。

そこで、今回は不動産投資に役立つ、中古住宅の減価償却費について解説していきます。

不動産投資の3大経費

減価償却費は、不動産投資においては欠かすことのできない節税対策の1つですが、なぜ減価償却を行うことで節税できるのでしょうか。まずは、不動産投資にかかる経費について解説していきます。

3大経費

不動産投資の最終的な収益は、運用にかかる経費を差し引いた金額となりますが、この経費は大きく3つの種類に分類することができます。いわゆる不動産投資の3大経費とも呼ばれているものです。

  1. 固定資産税
  2. 借入金利
  3. 減価償却費

以上3つの経費が大きければ大きいほど、会計上の収益額をコントロールすることが可能となります。

中でも、減価償却費が注目される理由としては、実際にその金額を支払ったわけではないのに支出として計上できる点で、その他の経費と大きく異なります。

ということは、この減価償却費が大きければ大きいほど、収益を低い金額に抑えていくことが可能になります。いわば架空の支出を捻出できるのと同じ意味になるのです。収益額を低く算出できれば、その分支払う税金も少なくなります。

減価償却費の仕組み

では、あらためて減価償却費の仕組みについて解説しておきます。

不動産、自動車、住宅設備など、それぞれ取得するモノは年月とともに劣化していくものが多くなります。時間が経てばそれだけモノの価値は減少していきます。そして、それぞれのモノの耐用年数に応じて取得経費を分散していける、それが減価償却費の仕組みになります。

そして、それぞれ取得する資産には国が定めた耐用年数というものがあります。その耐用年数の期間を減価償却していくことで、毎年、減価償却費を経費として計上することができるのです。

減価償却の仕組みについて詳しく知りたい方は、以下のサイトを参考にして下さい。

不動産物件の耐用年数

不動産物件に関しては、その建物の構造によって耐用年数が定められています。

  • 鉄筋コンクリート(RC)47年
  • 重量鉄骨  34年
  • 木造 22年

そして、さらに耐用年数に応じて適用となる減価償却率も定められています。

基本的に耐用年数の長いものほど、長期間に渡って減価償却費を計上していけるので、木造22年間に比べればRCの47年間の方がお得に見えてしまうでしょう。

しかし、物件の購入費用や借入期間、そしてローン返済にかかる金利等を考慮すれば、RCよりも木造物件の方が結局は有利である場合が多いのです。

要は購入費用、借入期間、金利、減価償却費などのトータル的なバランスを考慮していく必要があります。

中古物件の減価償却費

中古物件の耐用年数は、その他の物件に比べると耐用年数が短くなり、とくに木造の場合は減価償却を短期間で行わなければならなくなります。短期間で減価償却するほど、年間の経費は大きくなり、その分実際のキャッシュフローを増やすことにつながります。

では、中古物件の減価償却について解説していきます。

中古物件の耐用年数

耐用年数によって、減価償却費が計上されますが、物件が中古の場合は使用可能期間を見積もることによって耐用年数を定めています。これを税法では中古住宅の見積り法といいます。

耐用年数の見積り法

しかし、中古物件の場合は新築物件のように、建物の構造別に単純に年数を定めることが難しいのが現状です。中古物件の場合はあと何年使えるかを判断することが難しくなります。また、不動産だけに限らず、耐用年数を超えても使用可能なものはたくさんあります。そこで、一般的にとられている見積り方法として「簡便法」という計算方法が適用されています。

この「簡便法」は、

  • 法定耐用年数を経過したもの
  • 法定耐用年数の一部を経過したもの

というように、中古物件を2つのケースに分けています。この2つのケースについて詳しくご説明していきましょう。

簡便法

耐用年数を経過した物件

すでに、収益物件を購入した時点で耐用年数を経過している場合には、法定耐用年数の20%に相当する年数で計上することができます。

築50年の一棟RCマンション→耐用年数47年

47年×20%=8.4年→8年(端数は切り捨てになります)

この中古物件の耐用年数は簡便法によって8年となります。

耐用年数の一部を経過した物件

購入時に、耐用年数の一部を経過している中古物件の場合、まず経過した年数を耐用年数から差し引きます。次に経過年数の20%に相当する年数を残りの年数に足したものが耐用年数として適用されます。

築10年のRCマンション→耐用年数47年

47年-10年=37年

10年×20%=2年

37年+2年=39年

以上が中古物件の耐用年数の判定方法になります。

節税効果の比較

5,000万円を収益物件の購入費用として、新築・中古・構造上による節税効果の比較をしてみましょう。

新築の減価償却費

木造(耐用年数22年)→5,000万円÷22年=227万円
軽量鉄骨(27年)→5,000万円÷27年=185万円
RC(47年)→5,000万円÷47年=106万円

中古の減価償却費

木造(耐用年数見積り14年)→5,000万円÷14年=357万円
軽量鉄骨(見積り10年)→5,000万円÷10年=500万円
RC(見積り30年)→5,000万円÷30年=160万円

というように、年間に会計上で経費として計上できる金額は新築に比べると、中古物件の方がはるかに高い金額となるのです。

ただ、中古の場合は耐用年数によって借入期間も短くなりますので、毎年の返済にかかる費用も考慮する必要がありますが、同時に購入価格は新築に比べれば数段安くなるというメリットがあります。

土地と建物の価格

では、次に土地と建物がどのように減価償却に関係していくのかを解説致します。

減価償却とは、ご説明したように、年月とともに劣化していくモノに対してのみ適用できる税法となります。従って、土地と建物を購入した場合の土地代には減価償却が使えないことになります。

節税対策となるのは建物だけです。

ということは、購入金額のうち建物代の割合が高い方が節税効果が高くなることになります。

そこで、土地と建物の割合を決めるにあたっては売買契約書の内容が非常に重要となってきます。

売買契約書

土地と建物が記載がある

売買契約書に土地、建物の記載がある場合はその金額が土地と建物の金額になります。

例)

土地5,000万円、建物5,000万円→建物5,000万円が減価償却の対象となります。

建物5,000万円×(耐用年数39年)償却率0.026%=130万円

土地と建物の記載がない

売買契約書に土地と建物の記載がなく、総額で1億円と記載されてある場合は、土地と建物の金額を合理的に算出する必要があります。

算出方法はいくつかありますが、代表的な方法として固定資産税評価額を使う方法があります。

1憶円で購入した物件の固定資産税評価額が、土地建物7千万円だったとします。

内訳)

土地4割→2,800万円

建物6割→4,200万円

土地建物1憶円×60%=建物の金額6,000万円→減価償却できる金額

6,000万円×(耐用年数39年)0.026%=156万円→減価償却費

となります。

さらに、効果的に節税したい場合には、消費税率を加算して計算することで、建物割合を大きくすることができます。今後、消費税が増税されれることによって、建物割合もそれだけ大きくすることができます。

節税は購入前から計画的に

このように、中古物件の場合は売買契約書次第で、建物の金額が変わり減価償却できる金額にも差が出てくるのです。従って、中古物件は節税効果も高いのですが、物件を購入する以前に建物の金額自体を売り主と交渉しておくことが大切です。

不動産投資における節税は、購入前から、極端に言えば物件を見ていく段階から計画的に進めていく必要があるのです。

減価償却費の活用方法

さらに、減価償却を上手に活用する方法として、中古住宅の中でも古い木造アパートが近年では注目されています。木造アパートの耐用年数は22年です。この耐用年数を超えた木造アパートが節税には最も効果があると言われています。

なぜ、耐用年数を超えた木造アパートで、減価償却による節税効果が高くなるのでしょうか。

中古の木造アパートの利点

日本の気候に合っている

まずは、木造住宅の利点について考えてみましょう。国内では住宅の半分以上は木造住宅が占めており、その中でも、軽くて強度があり取り扱いも容易である木造アパートが大半を占めています。

木造アパートの利点として、湿気の多い日本の気候では木造が湿気を吸収してくれる点にあります。コンクリートや鉄骨ではそれが不可能です。木造の場合は通気がよくなることから、材質も長持ちします。また、その他の構造と比較した場合にカビ・ダニの発生を防ぐ役割も果たしているのです。

耐用年数は、戸建てもアパートも22年となっており、RC47年に比べると半分以下に短くなります。しかし、ここで注視しておくべきことは、木造アパートのほとんどが実際には22年で寿命が終わるわけではありません。

木造住宅は、適切なメンテナンスを行えば、100年以上経っても住居として十分な機能を果たすことが可能です。とくに耐用年数を超えた木造アパートは比較的、安価で購入することができる上に、運用年数はRCなどに比べると長くなる可能性が高いのです。

日本最古の木造建築である「法隆寺」は築1,300年以上経っており、良質な木造住宅の代表でもあります。

短期で多額の節税

そして、減価償却の活用方法として木造アパートが適している理由として、短期で多額の節税が実施できる点にあります。

不動産投資において収益を得ることは最も重要な事ですが、収益が高くなりすぎると、当然その分の税金が発生してしまいます。そんな時に、中古アパートの取得によって、多額の減価償却を行うことができます。

また、給与所得や、その他の収入が増えすぎてしまった時にも総所得を相殺する方法として、かなり高い効果が期待できます。

耐用年数22年を超えたものがとくにおすすめな理由は、

22年×20%(簡便法)=4年 

減価償却できる年数はたったの4年です。建物にかかる費用が高ければ高いほど、減価償却費も大きくなるということです。

建物の割合が高い

もちろん、上述した内容は木造の戸建て住宅にも当てはまるのですが、ここで何故木造アパートがおすすめなのかというと、建物の割合が高くなる傾向にあるからです。

古い木造戸建てに多いのが、土地が広く建物の面積が狭くなるケースです。その場合、土地建物の購入費用として、建物にかかる費用が小さくなってしまう傾向にあります。

しかし、木造アパートの多くがそうであるように、土地を占める建物の割合が大きくなり、建物の購入費の方が高くなりやすいのです。

運用方法の選択肢が広い

また、中古の木造アパートを長期に渡って保有していくとした場合、その選択肢も非常に幅広く考えていくことができます

まず、木造アパートであれば、電気・ガス・水回りなどのリフォームの費用や手間を抑えることが可能です。大がかりなリフォームをするとしても、鉄骨やRCほど費用をかけずに最新の賃貸アパートへと変貌させることが可能です。

また、よほど古くてボロボロの建物であれば、解体するのも容易で安価だということです。一旦、解体して新しいアパートを建て直す方法も選べます。

さらに、木造アパートの税制面で有利な点は、法律上は耐用年数も過ぎていて木造であるため、固定資産税は安くなることです。同じ面積の建物だとしてもRCの場合は木造の5割増しの税金がかかります。長期で保有していくことも容易なのです。

減価償却費を活用するリスク

 

Woman
ここまでは、減価償却費を中古住宅、とくに木造アパートにて活用するのはメリットばかりのように見えるけど、実際にリスクはあるの?
Expert
もちろん、減価償却費を活用して節税することばかりにこだわりすぎると失敗するリスクはあります。

減価償却を中古住宅に活用するリスク

中古住宅による減価償却の活用方法として、耐用年数が短いものほど、多額の節税ができることを説明しました。

しかし、ここに落とし穴があって、耐用年数が残り少ないものや耐用年数が過ぎた物件への融資が難しいということです。融資を受けるためには、不動産物件の価値によって左右されてしまいます。もし、不動産以外に収入のあてがない場合には、非常に厳しい状況となるでしょう。

さらに、古い木造の建物は、火事や地震などの災害に弱い、白アリの被害を受けやすいといったリスクがあります。

売却時のリスク

Woman
もし、売却する場合にはリスクはあるの?
Expert

売却時に、過去に行った減価償却がネガティブな効果を出す場合があります。売却時のリスクについて解説しておきましょう。

節税対策としては、減価償却の金額は高ければ高いほど効果が高いことを説明しましたが、売却時にはそれがマイナスとなってしまう場合があります。

減価償却の金額は実際には支出として支払う金額ではないのですが、実は、不動産の購入価格からそれは間接的に差し引かれていることになるのです。

売却する際には、

不動産の売却価格-(不動産の購入価格-減価償却費の総額)=讓渡所得

が算出されることになります。つまりは、減価償却の額が大きいほど、讓渡所得が大きくなってしまうわけです。不動産を売却するには、高く売れるに越したことはありませんが、高く売れればそれだけ所得税が膨れ上がってしまうことになるのです。

せっかく減価償却で節税したのに、結局は高い税金を支払う羽目になってしまいます。

まとめ

今回は、中古住宅の減価償却費による節税対策を解説致しました。

耐用年数を過ぎた、中古住宅、木造住宅を活用することで有効に減価償却を利用できることがわかりました。さらに、木造アパートは最も効率のいい節税となる点もご紹介しました。

しかし、減価償却費を活用するにはメリットだけでなく、場合によってはリスクが高いことを理解しておく必要があります。将来、その物件を保有し続けるのか、売却するつもりなのかによって、減価償却費が裏目に出てしまうこともあるのです。

毎年の減価償却費が単純に高ければ良いというわけではなく、

  • 現在や将来の所得見込み額
  • 節税可能なもの
  • その他の金融資産
  • その他の不動産投資

など全体的な収支のバランスを考えて計画を立てることが大切だと言えます。

購入前の時点で、減価償却費を計算して、最終的なその物件の出口戦略をいくつか決めておくことが、節税を成功させるポイントとなるでしょう。

 

 

 

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