建設関連株にこれから投資すべきか?先進国では需要が低下した建設関連株の将来性

建設関連株にこれから投資すべきか

2018年6月8日の日本経済新聞で、建機国内最大手の株式会社コマツが11年ぶりの最高益を見込んでいると発表しました。2019年3月期の純利益の見込み額は前期比15%増の2260億となります。

2020年の日本オリンピックを迎える最中、建設関連株の銘柄選びに余念のない方は多いかと思います。ただ、数年に渡って大規模な建設の需要が低下してきているのも事実です。日本ではもう充分すぎるくらいにインフラの設備は整っているではないか、と思われる方もいるでしょう。

はたして、これから建設関連株に投資するメリットはあるのかと考えこんでしまうところですね。そこで今回は建設をはじめとする、建機や鋼材等をめぐる建設関連企業について詳しく調べてみたいと思います。

大手建設関連株

戦後の日本は荒廃した土地を、建て直すことから始まりました。多くの企業が再興にむけて華々しく活躍しました。

高度経済成長期を終えて、日本ではダム、橋や道路、ビルや公営施設、鉄道、空港、などの様々な建設が凄まじい勢いで、これまでに行われてきました。日本を代表する建設関連企業をいくつか挙げてみましょう。

大手ゼネコン

発電所、鉄道、空港、橋、ダム、トンネル、高層ビル、などを耐震技術を生かした大規模な各種土木・建築工事を直接請負い、工事全体を一括して取り仕切る建設業者

  • 鹿島建設(1812)
  • 清水建設(1803)
  • 大成建設(1801)
  • 大林組 (1802)

など・・・

大手建機

主に油圧ショベルやミニショベル、ブルドーザー、クレーン、鉱山機械などの建設機器

  • 小松製作所(6301)
  • 神戸製鋼所(5406)
  • 日立建機(6305)
  • 住友重機機械工業(6302)

など・・・

大手鋼材

土木、建築、鉄道などのインフラ建築に欠かせない鉄などの金属を特殊加工する

  • 新日鉄住金(5401)
  • JFE(5411)
  • 日立金属(5486)
  • 神戸製鋼所(5406)

など・・・

建設関連株のこれまでの動きは?

これらの大手企業を筆頭とする建設関連株の業績はこれまで、どのように推移してきているのでしょうか。

戦後から1990年代まで

1945年から1990年代にかけて、建設関連業は他産業を抜き出でて、日本の経済をリードしてきました。防衛施設、公共施設をはじめとする復興活動で、国内は終わることのない需要で建設業の数は足りないかのように思えるほどでした。

時折、国際情勢によって、多少の浮き沈みはありましたが、それらの期間に建設関連業界は著しい発展を遂げていきました。そして1992年には日本の建設投資額は84兆円に達し、建設業のピークを迎えました。

1990年代半ば~

1990年代以降、建設関連業の投資額は下降の道を辿ります。2010年にはピーク時の約半額である41兆円にまで下がってしまったのです。このような現象は日本だけに限らず、先進国すべての国において見られる現象です。

先進国の国々は、人々に必要であるほとんどの大規模な建設を一旦終えてしまったのです。これらのインフラ建設は巨額な費用がかかります。1度完成してしまえば、よほどの理由がないかぎりは再び需要を見出すことは難しいと言えるのでしょう。

平成29年度の国土交通省の建設投資に関する調査を参考に見てみましょう。

平成29年6月  国土交通省 総合政策局
建設経済統計調査室

出典:国土交通省  H29年度 建設投資見通し 国土交通省 

建機と鋼材

建機

このように国内での建設関連株に対する投資状況が低下していく中でも、建機や鋼材はまた少し違う流れを見せるのです。

例えば、日本経済新聞でも取り挙げられた株式会社コマツの株価は2000年過ぎると、急上昇を始めます。2005年の6月に800円前後だったコマツの株価は、翌年2006年の5月には2倍以上の2500円まで上昇するのです。

さらに2007年には、その株価は4000円にまで登り詰めます。その後、リーマンショックの影響により、一旦は1000円くらいに急下降しますが、上がったり下がったりしながら2017年以降は3000円~4000円代に落ち着くのです。

その他の建機に関しても同様のことが言えますが、特にコマツの株価の上昇には目をみはるものがあります。

出典:日本経済新聞 6月13日株価情報より

鋼材

鋼材に関しては、新日鉄住金、JFEを例に見てみたいと思います。建機と同様に2005年以降には急上昇しますが、その後の動きはかなり深刻な低迷状態に陥ってしまいます。

リーマンショック以降にも価格は下降する傾向にあり、やや上昇をみせますが、一度急上昇しているがゆえに、その低迷ぶりには辛辣なものがあります。鉄鋼業界ではここ数年、中国勢がやみくもに生産能力を増強し、製品が中国国外へあふれ出たため市況が極度に悪化したことが大きな原因だと言われています。

一時は、需要をはるかに上回る供給により、大半のメーカーが赤字に陥る異常事態となりました。ここ数年は他企業の買収、合併、再編などを決意しながら、鋼材企業は今後の生存をかけてさまざまな戦略を練っている最中だと言えるでしょう。

IT関連株と建設関連株

21世紀に入ってから、先進国全般に渡って、建設関連株の需要が低下するのと入れ替わりに急成長を始めたのがハイテク関連株です。

pcの普及拡大とともに、これまでになかった新しい分野が人々に新しい生活スタイルを、提示し始めました。インターネット、モバイル通信、データ処理、ソフトウェアなどの業種です。

PCの出現とともに生まれた、ハイテクノロジーの出現は私達の生活を大きく変えていきました。人々はより便利な物を求めて、生まれたばかりのハイテクノロジーの産物を追いかけ、買い求めるようになりました。電化製品に囲まれた便利な生活、化学繊維品をあたりまえに身にまとい、PCで調べものや買い物をして、電子レンジでわずか数分で食事を作れることが新しい生活のモデルとなっていったのです。

2000年代に入ってから、IT関連株は確実にその株価を上昇させていきました。2014年から2015年にかけて、IT関連サービスの市場は2年連続で3%を超える成長を見せ、2016年以降は緩やかな動きをしながらも、やはり将来の有望な成長株としての地位を築きました。

IT技術の進化によって、いつでも、どこでも簡単にあらゆる物が手に入る流通システムが発展し、海運、空運、各種倉庫には多大な量の荷物が取り扱われるようになりました。コマツが大きく進展した理由には、その流通のニーズにそった商品があったからだとも考えられます。

コマツのフォークリフト

出典:株式会社小松製作所 コーポレートサイト(商品・サービス)より

現在、私達はにハイテクノロジーを駆使して、いつでも遠く離れた場所に数秒でメールを届けることができたり、クリック1つで食料を届けてもらったりすることができます。それは、ひとえに建設関連業が長い年月をかけて、安心して暮らせる基盤つくったからこそできることなのです。そのような企業に対して私達は感謝の気持ちを忘れないでいたいものです。

しかしながら、現状としては、すでに鉄道も、ダムも高層ビルも、空港も完備されてしまった国において、これまで、日本の経済をリードしてきた建設関連企業は国内ではある種の黎明期を迎えるに至ったのです。

そして、IT関連の需要が高まるとともに、電信設備工事は必要不可欠なものになり、IT関連に特化した建設の需要が増加しました。新しい分野である通信技術に特化した建設業が出現し始めることになったのです。

需要と供給のバランス

国内では、これまでのような大規模なインフラ設備の需要がなくなってしまったわけですが、それでも建設関連企業はそれぞれに、自らの発展の道を見つけることになるのです。建設業の鹿島建設の株価をみてみたいと思います。

建設業は国内での需要が低下し、人口減で国内市場がしぼむと予想される中、危機感を強めた建設関連企業では新しい方向性を考えることによって鹿島建設のように、2015年以降には安定した上昇傾向にある企業もあります。

その背景には、様々な理由が考えられます。

2020年オリンピックに対する期待

国立競技場の建設、空港、鉄道などの大型インフラの見直しが始まり、その需要に対する期待から株価は上昇し始めています。

  • 大林組(東京オリンピック水泳競技場の建設予定で注目されている)
  • 鹿島建設(新国立競技場周辺の工事に携わっている)
  • 大成建設(新国立競技場の建設を請け負っている)

海外への進出

先進国以外の国では、まだまだ大規模なインフラ施設が整っていない国がたくさんあります。

  • 大林組(インドネシア/タンジュンプリオク高速道路)
  • 大成建設(ノイバイ国際空港第2旅客ターミナル)
  • 清水建設(シンガポールメイプルツリータウン)

新エネルギー設備の需要

原子力発電所や火力発電所の代わりに、太陽光発電、風力発電など新エネルギーのインフラ建設の需要が高まりました。

出典:鹿島建設 コーポレートサイト

  • 鹿島建設(風力発電、太陽光発電、バイオガスの運営)
  • 大林組(2か所目の木質バイオマス事業の参入決定)

トランプ政権によるインフラ計画に対する期待

トランプ政権は主に建設関連業の労働者たちの獲得数により、大統領としての地位を手にいれました。メキシコとアメリカの国境に壁をつくる計画が実践されたことで、多くの建設関連業の株が上昇しました。とくに鋼材の1つ銅の価格は数十年ぶりの高値をつけました。

古くなった設備のリニューアル

ちょうど今、国内のインフラ建設のピーク時から30年が過ぎようとしています。1990年代に以前に建設されたものはすでに劣化が進み、改修の時期になるということで、オリンピックの需要も相まっての期待が高まっています。

自然環境問題と発展途上国のインフラ開発

高度な工業化と安定した生産能力をを達成した先進国のうち、アメリカ、日本、ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、カナダはG7(先進7カ国)と呼ばれます。

その他の先進国には、オランダ、スイス、ノルウェー、韓国、台湾、オーストラリア、などいくつかの国が主要な先進国として挙げられます。

先進国とは科学技術が先行的に発展していて、生活・教育・健康・インフラ等の整備が水準よりも高いこと国のことになります。同時に政治的にも安定し、経済力が高いという意味もあります。多くの先進国で需要がなくなってしまった建設関連業はこれからの活路として海外の開発途上国での需要に向けて活躍を始めます。

開発途上国

開発途上にある国は、アジア、アフリカ、オセアニア、北アメリカなどの、開発が比較的遅れている多くの国のことをいいます。中には経済的、政治的、宗教的な理由により、絶望的な貧困状態にある国もあります。

中国やロシアは政治大国、軍事大国ではありますが、民主主義的な意味ではまだ遅れています。工業化、科学技術の視点からも先進国ほど進んではいません。同様に、中東諸国についても経済的に裕福ではありますが、国民の生活レベルは基準以下になってしまいます。

ここ数年、日本でははロシアやサウジアラビアと提携してエネルギー関連のインフラ建設に取り組む企業も増えてきています。

アジアのインフラ需要

アジア太平洋地域の開発途上国の、2030年までのインフラ需要は200兆円を超えると言われており、年間でも15兆円以上にはなるだろうと予測されています。

アジアの電力、交通・運輸、通信、水・衛生分野におけるインフラに建設関連企業の多くがそのはるかに高い需要に対して、すでに動き始めています。

とくにここ10年の間には、アジア諸国でのインフラ開発は著しく拡大しており、高い経済成長を目指した、貧困問題、国民の生活レベルの向上に力を入れる動きが、世界的な規模で強まっているとのことです。

H28年 建設業活動実態調査の結果 国土交通省

H28年 建設活動実態調査 国土交通省

今後の建設関連株の将来

深刻な自然環境問題

先進国がこれまでに進展させ、一旦需要を解決させたインフラ建設は、人々に便利で豊かな生活だけでなく、自然環境破壊という弊害をもたらしてしまいました。地球という生命体の存続の危機を危ぶむほど、その被害は深刻なものとなってきています。

核廃棄物処理の問題、原子力発電所の危険性、工場の廃棄物による水質汚染、排ガスによる大気汚染、ゴミ問題、森林伐採、生態系の破壊など、今後緊急で取り組まなければならない深刻な問題を、山のように作り上げてしまったのです。

新日鉄住金 プラスチックリサイクル

自治体から回収したプラスチックを鋼材に活用

新日鉄住金 数字で見る容器包装プラスチック

多くのインフラ設備により、私達は安定したレベルの高い暮らしができるようになりましたが、その代償に払ったものはあまりにも大きいと言えるのではないでしょうか?最近では先進国の大手企業の中には、リサイクルや環境活動に力をいれているところも多いようです。

先進国のリーダーシップ

 

Expert

大規模な開発が、ともすると自然環境を大幅に破壊してしまうことを知っている先進国に住む私達は、それを発展途上国に対して全く同じことを繰り返していくつもりなのでしょうか?そうすることで、地球はどうなってしまうでしょうか?

先進国における巨大なインフラによる弊害を、決して繰り返してはいけないのです。これからインフラ関連の企業に必要なことは、その認識があるかないかではないでしょうか?

 

住友重機工業 環境活動

広い集めたどんぐりを緑化活動として活用

住友重機工業 どんぐりの森

 

企業というものは売り上げになればそれでいいのでしょうか?

そうではありません。私達先進国は、開発途上国の反面教師として、同じ過ち繰り返さないようなモデルとなることができるのです。そうしながら、発展途上国の抱える、貧困という問題にも手を貸していくことが理想ではないでしょうか?

自然と共存していくための、次世代に向けた新しい巨大インフラ建設の提案ができるのは、かつてインフラによる弊害を経験したものにしかできないことです。そこで、日本を始めとする、大手ゼネコン、建機、鋼材等のすべての建設関連企業では、どこの企業がそのリーダーシップ性を発揮できるのでしょうか?

そこが今後の建設、建機、鋼材株に求めらるもっとも重要な要素だと言えるのです。そして、そのような企業こそが例えインフラの需要のない時代においても、自らの生きて行く道を見出し、生き残っていく企業なのではないでしょうか?

 

まとめ

2020年オリンピックの到来に急き立てられて、株価の銘柄も何がいいのかと日にちが経つにつれ焦ってしまうような気もします。建設関連業界の情報を集めながら、自分の将来のためにも、より的確な選択をしたいですね。これからのインフラ建設においての成長課題は、地球という視野でインフラ開発取り組むことができるかどうかだと思います。

自然環境、再資源利用、再生エネルギーという次世代の必要不可欠なテーマに、どれだけ応えることができるのが、銘柄選びの判断の基準になるでしょう。銘柄探しの場合は、その企業のCSR情報に目を通すことをおススメしたいと思います。CSR情報とは、その企業が地域や自然環境に対してどのような取り組みをしているのかが具体的にみることができるものです。

人々の役に立ちながらも自然環境を考慮できる、そんな新しい時代にふさわしい建設関連株で大きな利益を得たいものです。

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