企業年金とは?途中で退職した場合は?企業年金給付を受けるためにすべきことをわかりやすく解説!

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将来の老後の資金作りとして、「企業年金」を活用している方も多くいらっしゃると思います。

企業年金には、厚生年金基金や2017年に始まった個人型の確定拠出年金のiDeCoなど様々な年金制度があります。

しかし、いざ企業年金の支給を受けられる年齢になったけど、どのように年金の支給手続きをすればいいのか、企業年金を活用していたけど途中で退職してしまった場合は、積み立ててきた資金は0円になってしまうのでないかなど不安な点も多々あるでしょう。

今回は、企業年金とは一体どんな制度なのか、年金の受取り方や退職してしまった場合の手続き方法を分かりやすく解説していきます。

1.企業年金とは

まずは、企業年金の基礎について説明していきます。

企業年金は、加入者の意思で積み立てていく年金である

皆さん、年金と聞くと、年金は65歳になってから国から支給されるものというイメージを持たれている方が多いのではないでしょうか?

実は、年金は国からだけではなく、勤めている会社からも老後の資金作りとして、加入者の意思で積み立てていく年金制度を提供しています。この会社から提供されている年金制度を、企業年金といいます。企業年金は、国から支給される公的年金を補う役目をしていて、強制ではなく任意の年金制度になります。

企業年金は大きく分けると2種類ある!

企業年金は、大きく「確定給付型」「確定拠出型」の2つに分かれてます。

確定給付型

確定給付型の代表的なものとして、

  • 厚生年金基金
  • 確定給付企業年金

があります。

確定給付型は、あらかじめ将来支給される年金額が決まっているのが特徴の年金制度です。

厚生年金基金

厚生年金基金は、国に代わって老齢厚生年金の給付の一部を支給し、さらに会社ごとに独自に年金を加算して支給します。

厚生年金基金を設立する条件として加入者数1,000人以上(総合設立は5,000人以上)となっているので、会社の規模的には中小企業から大企業で取り扱っているものとなります。

厚生年金基金の掛金は、会社と従業員の折半となり、従業員が支払う掛金は、社会保険料控除の対象となります。

しかし、厚生年金基金は、平成25年に厚生年金基金制度の法改正が行われ、平成26年4月以降は新たに設立することができなくなってしまいました。この影響で、解散する厚生年金基金が現状増えています。

厚生年金基金が解散した際には、基金から事前に通知書が送付されます。

送付された通知書には、積み立ててきた資金を、60年以降に年金として受け取るのか、一時金として今受け取るのかを、加入者が選択する形になっています。

厚生年金基金に加入して、解散まで積み立ててきた期間が短期間であれば、おそらく積立金も少額となるので一時金として受け取っても問題ないでしょう。

積立金が多額となっている人は、もし今の生活にゆとりがあるのであれば、60歳以降に年金として受け取り、少しでも老後の資金一部として置いておくのもいいでしょう。

確定給付企業年金

確定給付企業年金は、確定給付企業年金法という法律に基づいて作られた企業年金制度です。

確定給付企業年金は、「規約型」「基金型」の2種類となります。

規約型

規約型は、従業員の同意を得て、会社が生命保険会社や信託銀行などの外部機関に、年金資産の管理・運用、そして年金給付を委託する形態となります。

基金型

基金型は、規約型と同様に従業員の同意を得て、別法人格を持った基金を新たに設立して、その新たな基金が年金資産の管理・運用、そして年金給付を行う形態となります。

確定給付企業年金の加入者数は300人以上と厚生年金基金よりも少人数で設立することができます。

確定給付企業年金の掛金は、基本は会社が負担してくれます。もし、従業員の同意を得ていれば、1/2を超えない範囲で従業員が掛金を支払うことも可能です。この場合、従業員が支払う掛金は、生命保険料控除の対象となります。

確定拠出型

確定拠出型は、掛金を支払う従業員が拠出・運用するので、将来支給される年金額が決まっていません。運用結果によって支給される年金額が決まる年金制度です。

確定拠出型の代表的なものとして、

  • 確定拠出年金(企業型DC)
  • 確定拠出年金(個人型iDeCo)

があります。

確定拠出年金(企業型DC)

確定拠出年金(企業型DC)は、会社員の方が加入できる企業年金制度の1つです。自営業の方、専業主婦の方、そして公務員の方は加入することができません。

確定拠出年金(企業型DC)は、会社が掛金を負担してくれます。会社負担分の掛金に、規約で定められていれば、従業員がさらに上乗せして掛金を拠出する(マッチング拠出)ことも可能です。

確定拠出年金(企業型DC)は、会社が確定拠出年金のシステムを導入していれば加入することができますが、そもそも勤めている会社が確定拠出年金のシステムを導入していなければ、加入できないので注意しましょう。

掛金の上限額は、

  • 他の企業年金がない場合→月額55,000円
  • 他の企業年金がある場合→月額27,500円

会社が負担してくれる掛金を、従業員が自ら年金資産の運用を行います。従業員は、いくつかある金融商品の中からどの方法で運用させるのかを決めます。

もちろん、年金資産の運用がうまくいけば、将来受け取る企業年金を増やすことが可能ですが、運用がうまくいかなければ、資産を減らしてしまうデメリットも存在しています。

確定拠出年金(個人型iDeCo)

確定拠出年金(個人型iDeCo)は、最近TVCMでも耳にする機会が増えてきている方も多いのではないでしょうか?

確定拠出年金(個人型iDeCo)は、2017年に開始された年金制度で比較的新しい制度になります。

確定拠出年金(企業型DC)は、自営業の方や専業主婦の方は加入することができませんが、確定拠出年金(個人型iDeCo)は、自営業の方でも主婦の方でも加入することが可能です。

確定拠出年金(個人型iDeCo)は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満の方であれば、誰でも加入できます。

掛金の上限額は、

  • 自営業の方→月額68,000円
  • 専業主婦の方→月額23,000円
  • 公務員の方→月額12,000円
  • 会社員の方→月額12,000円~23,000円

となります。

自営業の方は、国民年金基金と合算して月額68,000円となります。

会社員の方は、確定拠出年金や他の企業年金がない場合は月額23,000円、企業年金がある場合は月額12,000円、または月額20,000円となります。

掛金はご自身で全て負担する形になります。他にも金融機関、運用商品の選択も本人で行わなければなりません。

確定拠出年金は、加入者が支払った掛金は、小規模企業共済等掛金控除の対象となります。

そして、確定拠出年金の魅力は、運用中に発生した利息や分配金、売却益などの利益は、非課税となります。

2. 企業年金と退職金の関係性

企業年金と退職金。

どちらも、一般的には、60歳以降に支給される資金です。そして、企業年金も退職金も、第二の人生、すなわち老後の資金に充てることができます。

しかし、企業年金と退職金は似ているように思えますが、異なる要素を持っています。

会社が倒産してしまったら?

勤めている会社が、定年まで存続しているとは限りません。

勤めている間に、経営困難など何らかの理由で倒産してしまう可能性があります。

もし、倒産してしまうと、社内積立で退職金の準備をしている場合、退職金が一切出ないという最悪な事態に巻き込まれる可能性が出てきます。せっかく定年まで後5年、20年以上勤務しているのに、倒産が理由で、退職金が出ないのは困りますよね?

一方、企業年金の場合は、社内でなく社外(信託銀行や保険会社等)で積み立てているので、会社が倒産してしまった場合でも、保全されています。

将来支給される額の変動は?

退職金の場合、支給される額というのは、入社当時の社内規定で決められています。

企業年金の場合は、定年まで資産を運用させるので、定年になった時には、資産が増えている可能性もあれば、減っている可能性もあります。

3.企業年金を受けるための手続きとは

ここからがは、実際に定年退職となり、積み立てていた企業年金を受給するための手続き方法について詳しく見てきましょう。

厚生年金基金の場合

厚生年金基金に加入している方で定年退職を迎えた場合、基金によって年金金額や受給資格が異なるため、加入していた基金に確認を行う必要があります。

年金の受給を申請する際には、退職時に会社からもらえる「厚生年金基金加入証明証」が必要となるので、失くさないように保管しておきましょう。

確定給付企業年金の場合

確定給付企業年金には、「基金型」と「規約型」の2パターンがありましたよね?

基金型の場合は、加入していた基金に確認をし、年金の支給手続きを行いましょう。

一方、規約型の場合は、勤めている会社に確認をする必要があります。確定給付企業年金でも、基金型と規約型で、確認先が異なるので注意しましょう!

確定拠出年金の場合

確定拠出年金の年金の受取り方は、3つあります。

  1. 年金として受け取る
  2. 一時金として受け取る
  3. 年金と一時金を組み合わせて受け取る

年金として受け取った場合は「雑所得」、一時金として受け取った場合は「退職所得」として税金が発生します。

雑所得の計算方法

雑所得は、

収入金額-公的年金等控除額

で計算できます。

公的年金等控除額は、年金を受け取る方の年齢、年金額によって異なります。

退職所得の計算方法

退職所得は、

(収入金額-退職所得控除額)×1/2

で計算できます。

退職所得控除額は勤続年数によって異なります。

  • 20年以下→40万円×勤続年数(80万円に達していない場合は80万円となります)
  • 20年以上→800万円+70万円×(勤続年数-20年)

積立金額によっては、雑所得として年金を受け取った方が税金が安くなる、すなわち受け取る年金が多くなる場合もありますし、退職所得として一時金で受け取った方が、受け取る年金が多くなる場合もあります。

年金の受け取り方で、引かれる税金額が変わってくるので、受け取り方法は慎重に選びましょう。

4 .途中で退職してしまった場合の企業年金の取扱い

最後に、途中で退職してしまった場合の確定拠出年金などの企業年金がどうなってしまうのか、退職時の企業年金の取扱いについて解説していきます。

厚生年金基金の退職時の取扱い

厚生年金基金に加入している方の退職後の厚生年金基金の取扱いとして、

  1. 脱退一時金として受け取る
  2. 企業年金連合会に移管する

の2パターンがあります。

1.脱退一時金として受け取る

脱退一時金として厚生年金基金を受け取る場合、「退職所得」として扱われます。

脱退一時金として受け取ろうと思っても厚生年金基金の加入期間が2、3年と短期間であれば、脱退一時金がそもそも発生しない可能性もあるので事前に確認しておきましょう。

2.企業年金連合会に移管する

企業年金連合会に移管する方法を選択した場合は、将来65歳に受け取る年金に上乗せされて支給されます。

もし、転職先の会社で厚生年金基金の取扱いがあれば、移管することも可能です。

確定給付企業年金の退職時の取扱い

確定給付企業年金の退職後の取扱いは、厚生年金基金の退職後の取扱いとほぼ同様です。

異なる点としましては、確定給付企業年金の場合、入社して3年以内に退職すると、一時金の支給はされないとされています。

確定拠出年金の退職時の取扱い

次に、確定拠出年金の退職後の取扱いです。

確定拠出年金の退職後の取扱いは、利用者、退職後の形態によってことなります。

転職先が確定拠出年金を導入している場合

まずは、転職先の会社が、確定拠出年金を導入しているパターンです。

転職先で確定拠出年金を導入している場合は、以前の会社で積み立てた確定拠出年金を転職先確定拠出年金に移管することが可能です。転職先の会社で、移管手続きを必ず行いましょう。

転職先で確定拠出年金を導入していない場合

転職先で確定拠出年金を導入していない場合は、確定拠出年金は移管することはできません。

しかし、確定拠出年金の企業型に移管することができないのであって、個人型(iDeCo)に移管することは可能となります。

転職先で確定拠出年金を導入していなければ、確定拠出年金の個人型(iDeCo)の切り替え手続きを行って、老後資金確保のために、積み立てを続けましょう。

退職後、自営業やフリーランスに転職した場合

退職後、自営業やフリーランスに転職された場合、当然企業型の確定拠出年金には加入できません。

自営業やフリーランスに転職された方は、確定拠出年金の個人型(iDeCo)に移管することが可能です。

これは、転職先で確定拠出年金を導入していない場合と同じですね。

移管手続きを行わなかった場合はどうなるの?

退職後、6ヶ月以内に移管手続き。を行わないと、国民年金基金連合会に「自動移管」されます。

確定拠出年金が自動移管されてしまうと、

  • 資産運用の指示が一切できない
  • 運用していた資産を自動的に売却・現金化されてしまう
  • 確定拠出年金の受給開始年齢が遅れる可能性が出てくる
  • 手数料が取られてしまう   など

様々なデメリットがでてきます。

もし、資産を自動的に売却・現金化されてしまうと、タイミングが悪ければ、損失が出る可能性があります。

そして、自動移管されてしまうと、色んな手数料を取られます。

まずは、自動移管時に、特定運営管理機関への移管手数料として3,240円、国民年金基金連合会への事務手数料として1,029円徴収されます。

そして、自動移管後、特定運営管理機関に資金が移管され、4ヶ月経過してもまだ移管手続きがされていない場合には、特定運営管理機関手数料として毎月51円、年金資金から徴収されてしまいます。

転職先に確定拠出年金が導入されていて、特定運営管理機関から確定拠出年金に移管する場合にも、特定運営管理機関からの移管手数料として1,080円徴収されます。

このように、退職後、6ヶ月以内に移管手続きを怠ってしまうと、多額の手数料がかかってしまい、特定運営管理機関に預けらている資金は、どんどん減っていってしまいます。

確定拠出年金の自動移管は、デメリットでしかありません。メリットはありません。確定拠出年金に加入していて、会社を退職する際には、退職後6ヶ月以内に必ず、移管手続きを行いましょう。

 

5 .まとめ

企業年金といえど、会社によって様々な年金制度が用意されています。

せっかく老後の資金作りとして、企業年金に加入し、毎月コツコツ積み立てていても、途中退職時の手続きを忘れたり、定年退職時の年金の支給手続きに誤りがあると、手数料や税金を多く取られて資金が少なくなってしまう可能性があります。

資産を守ることができるのは、あなたご自身です。

上手に企業年金制度を利用し、ゆとりのある、楽しい老後を送りましょう!

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