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人生100年時代!最近よくこのワードを耳にします。日本の平均寿命は、男女ともに右肩上がりとなっており、ますます今後高齢化社会に拍車がかかっていくと予想されています。
人間はやはり歳をとると、自分で起き上がったり、トイレに行ったり、さらには1人で歩くのが困難になったりと、誰かに介護されないと生きていけない状態になってしまいます。
今回は改めて、将来の介護に備えて、現在の日本の介護保険制度について詳しく見ていきましょう。
1 .人生において誰にでも訪れる、避けることができない介護
皆さんの周りには、介護を受けている方はいらっしゃいますか?
おばあちゃんやおじいちゃんが介護を受けていたり、老人ホームにいたりと介護は皆さんの身近にあるものです。
人は生まれると歳をとっていき、1人で日常生活ができない状態になってしまいます。これは嫌でも避けられないものなのです。
そして介護は、介護をする側と介護をしてもらう側に分かれます。まずは両親や祖父母を介護をする側、そして歳をとり、次はご自身が介護をしてもらう側となります。
どうしても介護は、しんどい、大変、お金がかかるなどマイナスイメージが強くなってしまいます。
事前に、将来訪れる「介護」に備えて、日本には介護に関してどんな制度があるのか、どんな人が利用できるのかなどを知っておくことは、介護に対するマイナスイメージを和らげる1つの方法となります。
高齢化社会の日本、決して介護をマイナスイメージとは思わず、日本国民全ての人が支えあって生きていく世の中を、皆さんで作って行かなければなりません。
次は、「介護保険制度」について説明していきます。
2 .介護保険制度とは
ここでは、まずはじめにどのようにして介護保険制度が誕生したのか、そして介護保険制度の仕組みについて見ていきましょう。
介護保険制度を導入するために作られた法律が、介護保険法!
1997年の12月に、介護保険制度を導入するために、「介護保険法」という法律が制定されました。そして、2000年に介護保険法は、施行されました。
介護保険法には3つに理念があり、この3つの理念を実現することが目的となっています。
- 自立支援
- 利用者本位
- 社会保険方式
1.自立支援
介護という言葉を聞くと、高齢者の方の側にいて身の回りのお世話をするというイメージがありますよね?
もちろん、介護は歩くの困難であれば横で支えながら歩いたり、お風呂に入れない場合は入れたり、車いすを押したりと身の回りのお世話をします。
しかし、介護保険法は、ただ高齢者の方の身の回りのお世話をするだけではなく、高齢者の方の「自立」を支援することが目的となっています。
2.利用者本位
介護をする方の判断で、病院に連れて行ったり、介護施設を選んだりするのはもちろん間違いではありません。
しかし、介護される方にも、選ぶ権利があります。「こういう医療サービスを受けたい!」「福祉サービスを受けてみたい!」など様々です。
介護保険法では、介護される方の選択、主張により、色んな保健・医療・福祉サービスを受けることができるシステムを作り上げることを目標としています。
3.社会保険方式
介護保険給付と負担を明確にする方法です。
介護保険法は、3年ごとに改正されている
2000年に施行された介護保険法は、3年ごとに改正されています。平成30年4月にも改正されました。
大きな改正ポイントは、介護サービスの自己負担割合の変更、保険料が収入に応じて変わり、5つのポイントが改正されました。
介護保険制度は、現在の日本の状況を考慮して作られた制度
昔の日本は、高齢者よりも若者が多く、日本の人口年齢をピラミッドに例えると、下に多くの若者、そして上にいくにつれて高齢者が少ないという形になっていました。
しかし、今の日本は高齢化社会がすごいスピードで深刻化してきていて、ピラミッドは、昔多かった若者が少なくなり、上にいくにつれて高齢者が多くなっている、逆ピラミッド状態になっています。
その原因として、核家族の増加、少子化問題が挙げれます。さらに、昔は20代で結婚するのが当たり前、30代で結婚するのは遅いと言われてきましたが、今では、30代で結婚が主流になってきており、40代で結婚というのも珍しくなくなってきています。結婚年齢が遅くなる=子どもを作る時間・タイミングがどうしても少なくなってしまうデメリットがあります。
さらに今問題になってきているのが、未婚率の上昇です。こういった問題がいくつか重なっていて、少子化問題がますます深刻化します。
高齢者の方が増えているのにも関わらず、子どもが減っていっている、すなわち介護する家族も高齢化している状況となっていおり、介護をすることが困難な状況になってしまっています。
介護保険制度は、介護をする家族の負担を軽減するため、そして介護する方、介護される方両者が安心・安全に日々生活が送れるよう、社会全体で支えていこうという思いから作られた制度となります。
介護保険はいつでも加入できるの?
将来の介護が不安だし、今からでも介護保険に加入しておきたいなと思っている方もいらっしゃるでしょう。
しかし、残念ながら誰でも介護保険に加入できるわけではないのです。
介護保険は、40歳になった方全員が加入しないといけません。40歳になったけど、まだまだ元気だし加入するのはまだ先にしようという事はできません。40歳になれば、必ず介護保険に加入しなければなりません。
逆に、35歳だけど介護保険に加入しておこうと思っても加入できません。40歳になるまで後5年待たなければなりません。
介護保険の運営主体は、市町村!
日本には地震保険という損害保険があり、地震保険の運営主体は「国」となっています。一方、今回紹介している介護保険の運営主体は、「市町村」となります。
介護保険の加入者は、2区分に分類される
介護保険に加入できるのは、40歳からでしたよね?介護保険の加入者は年齢によって2区分に分類されます。
第1号被保険者
第2号被保険者
3 .介護保険の保険料について
介護保険の保険料は、第1号被保険者と第2号被保険者で異なります。ここでは、介護保険の保険料や支払方法について解説していきます。
第1号被保険者の場合
第1号被保険者は65歳以上の方が対象となります。65歳以上ということは、年金をもらっているということになります。
保険料
介護保険の運営主体は各市町村となっているため、保険料(基準額や保険料率)は各市町村によって異なります。
支払方法
支払方法は2パターンあり、
- 市町村から送付される「納税通知書」を使用して支払う
- もらう年金から介護保険料分を天引きしてもらう(特別徴収)
1か2の方法を選択して、支払います。
1の納税通知書を使用して支払う場合は、どうしても支払いを忘れてしまう可能性が出てくるので、2の年金から介護保険料分を天引きしてもらう方法の方が支払い漏れは防げるでしょう。
第2号被保険者の場合
第2被保険者の場合はさらに、
- 国民健康保険以外の医療保険に加入している場合
- 国民健康保険に加入している場合
1と2で保険料や支払方法が異なります。
1.国民健康保険以外の医療保険に加入している場合
第2号被保険者で、国民健康保険以外の医療保険(協会けんぽや共済組合など)に加入している場合、保険料の支払は、会社と被保険者(従業員)の折半になります。
そして、厚生労働省が、1人1人の介護保険料率を設定します。
保険料の計算方法は、
- 毎月もらう給料=標準報酬月額×介護保険料率
- 年に1、2回もらう賞与(ボーナス)=標準報酬賞与×介護保険料率
となります。
支払方法は、医療保険と一緒に給与から天引きという形になります。
2.国民健康保険に加入している場合
第2号被保険者で国民健康保険に加入している場合の保険料は、「所得割」「資産割」「被保険者均等割」「世帯別平等割」の4つの中から、市町村が組み合わせを決めて年間の保険料を決定します。
決定した年間の保険料を、各家庭の世帯主が、国民健康保険に支払う形となります。
介護保険の保険料は、まずは第1号被保険者と第2号被保険者、そしてさらに、第2号被保険者の中でも、国民健康保険に加入しているかしていないかで異なるため、ご自身がどれに当てはまるのか確認しましょう。
4 .介護保険制度は誰でも利用できるの?
次にお伝えするのが、介護保険制度は誰でも利用できるのかという点です。結論からいうと、介護保険制度は誰でも利用できるものではありません。条件を満たす必要があります。
第1号被保険者
第1号被保険者は、要介護者、または要支援者と認定されると介護保険制度を利用することができます。
第2号被保険者
第2号被保険者も第1号被保険者と同様、要介護者、または要支援者と認定されるという条件ですが、認定される理由に指定があり、特定疾病(初老期認知症や末期がんなど)によって要介護者、または要支援者と認定された場合のみ、介護保険制度を利用することができます。
介護保険制度を利用するために、まず「要介護認定」を受けよう
要介護認定を受けるためには、まずお住まいの市町村の役所に行って、要介護認定の申請を行います。認定結果は、約30日ほどかかるのでお急ぎの方は、余裕を持って申請しましょう。
要介護認定の申請を行い、認定されると「介護保険被保険者証」が発行されます。
認定は、要支援1~2と要介護1~要介護5までの7段階に分けられます。要介護認定の場合、基本は6ヶ月ごとに見直しが入ります。
要支援1
要支援1は、日常生活はほぼ問題なく1人で行うことができる状態で、症状が悪くならないように、家事や買い物など一部の支援を受けることができます。支給限度額は月額50,030円となります。
要支援2
要支援2は、要支援1よりも日常生活を1人で行うのは少し困難で、介助が必要となる状態です。支給限度額は月額104,730円です。
要介護1
要介護は、要支援よりも日常生活は困難な状態です。要介護1は要介護の中で最も症状が軽いレベルとなります。
1人で立ち上がったり歩いたりするのに不安定さがあります。支給限度額は、月額166,920円です。
要介護2
要介護2は、日常生活は困難で、物忘れが見られる状態です。支給限度額は、月額196,160円です。
要介護3
要介護3は、食事や入浴さえも1人でできない状態です。家族だけで介護するのは、非常に大変な状況です。支給限度額は、月額269,310円です。
要介護4
要介護4は、要介護3の状態に加えて、トイレも誰かの介護がないと1人でできない状態です。支給限度額は、月額308,060円です。
要介護5
要介護5は、話すことも難しく寝たきりなってしまっている状態です。支給限度額は、月額360,650円です。
介護サービス料の自己負担割合は最大3割!
2017年までの介護サービス料の自己負担割合は最大2割でしたが、2018年の介護保険法の改正で、自己負担割合が最大3割となってしまいました。
- 年金収入 340万円以上→3割
- 年金収入 280万円以上→2割
- 年金収入 280万円未満→1割
介護サービスを受けるにあたってのケアプラン作成費は利用者の負担はありません。しかし、食事や施設での居住費は、全額自己負担となるので注意しましょう。
5.介護保険制度ってどんなサービスがあるの?
最後に、介護保険制度にはどんなサービスがあるのか見ていきます。
介護保険制度で受けられるサービスは大きく分けて3種類!
介護保険制度には大きく分けて3種類のサービスがあります。
- 居宅サービス
- 施設サービス
- 地域密着型サービス
それぞれどんなサービスを受けられるのか説明していきます。
1.居宅サービス
まずは、居宅サービスです。居宅サービスは、自宅で介助や介護を受けることができたり、デイサービスセンターなどを訪問し、介護サービスです。
自宅で介助や介護を受けるサービスは、介護福祉士や訪問看護員が自宅まで訪問してくれて、日常生活の手助けをしてくれます。これを、「訪問介護」といいます。
「デイサービス」「デイケア」は、施設の送迎者でデイサービスセンターや病院などに行き、リハビリやリクエーションの提供を受けることができるサービスです。
2.施設サービス
施設サービスは、「介護老人保健施設」「特別養護老人ホーム」「介護療養型医療施設」の3つを指します。
介護老人保健施設
介護老人保健施設は、要介護と認定された高齢者に対してリハビリなどを行い、自宅で生活ができるように支援する施設となります。
入居できるのは、要介護1~要介護5まで要介護と認定された方全員です。ただ、施設によれば、満室の可能性もあるのでその場合は、空室が出るまで待たなければなりません。
施設の利用料は、大体9~20万円で設定されていて、入居期間は原則3ヶ月となります。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは、介護老人保健施設よりも状態が重い方になります。要介護3~要介護5に認定された方が対象で、介護や生活支援を受けることができるのが特徴です。
入居期間には制限がありません。しかし、入居期間に制限がないため、なかなか空きが出ないので、介護老人保健施設よりも待期期間が大幅に長くなる恐れがあります。
施設の利用料は、大体8~13万円で設定されています。
介護療養型医療施設
介護療養型医療施設は、介護療養型医療施設や特別養護老人ホームよりも、より重度の要介護者が対象となります。
介護療養型医療施設を利用できる方は、原則は65歳以上の「要介護1」と1番重い認定を受けた高齢者です。
介護療養型医療施設は、主に医療法人が運営しているのが特徴で、管理体制が充実しています。
しかし、残念ながら介護療養型医療施設は、2018年3月に廃止されました。
3.地域密着型サービス
最後に、地域密着型サービスです。
地域密着型サービスは、市町村から指定された事業者が提供するサービスとなります。
地域密着型サービスは、2006年からスタートした介護サービスの1つで、24時間体制で介護職員が巡回してくれたり柔軟かつ迅速にサービスを受けることができるのが特徴です。
よく街中で介護施設の名前がある車を見かけませんか?まさにこれにが、地域密着型サービスの1つになります。
6 .まとめ
将来の親の介護、そしてご自身の介護と介護に対して、色んな不安を抱えている方もたくさんいらっしゃるでしょう。
しかし、日本には様々な介護サービスが提供されています。介護が必要になった時には、サポート体制もご自身で選べるようになっています。
昔、介護と聞くと介護=老人ホームというイメージですが、今では自宅で介護サービスを受けることが可能になり、自宅の近くにも介護施設ができますます利用しやすくなっていっています。
将来今よりもさらに良い方向に介護保険が改定されて、高齢者の方が住みやすい環境が整ってくれるといいですね。