勢いの止まらない外貨建て保険。メリットやデメリットは?

銀行や証券会社で販売される保険の9割近くを外貨建て保険が占めるというのをご存知でしょうか。長引く低金利で円建て保険では利回りを確保できない中で、比較的高い利回りをとりやすい外貨建て保険に人気が集まっているのです。

しかし、為替などのリスクもあるので十分中身を理解しておく必要があります。今回は、外貨建て保険の仕組みやメリット・デメリットを詳しく解説していきます。

外貨建て保険とは

国内の主要な生命保険会社の2018年4~9月期の決算が発表されました。売上高に相当する保険料等収入は16グループのうち12社が増収を確保。主に銀行窓口で扱う外貨建て保険の販売が明暗を分けています。

外貨建て保険は、契約者から支払われた保険料を生命保険会社が外貨で運用します。その運用されたお金が保険金、解約返戻金として返ってきます。つまり、保険料の支払い、受取りなどが外貨ベースで行われる保険です。

保険は、万が一の時のために加入するものですが、外貨建て保険は貯蓄目的で加入する人もいます。外貨建てで運用される外貨は、米ドル・ユーロ・豪ドルがメインになります。

販売されているのは、「ドル建て終身保険」や「ドル建て個人年金保険」、「ドル建て養老保険」など、貯蓄性が高い保険です。いずれも仕組みは円建てと同じです。それぞれの保険の仕組みを解説します。

支払保険料は変動

外貨建て保険は月ごと(年ごと)に支払う保険料は、外貨建てベースになるので為替の影響を受けます。例えば1米ドル=100円の時に月額200ドルの保険に加入したとします。この場合、円換算で月額20,000円の保険料を支払うことになります。

その後円安が進み1米ドル=110円になると、毎月22,000円の払い込みが必要になります。一方、円高が進み1米ドル=90円になった場合は18,000円で済みます.

外貨ベースの保険は保証

外貨建て保険の保険金、保険料、解約返戻金、予定利率などは外貨ベースで決まっていて、その金額は保証されています。つまり、外貨ベースで見ると、安全性が高くて貯蓄性が高い魅力的な保険です。

しかし、日本円で考えると為替リスクを負うので、元本が保証されているわけではありません。保険金の支払いや解約返戻金を受け取る時は、為替の変動により支払う金額、受け取る金額が異なるのです。

つまり円ベースで見ると保険金や解約返戻金の額が保証されていないので、得することもあれば損することもあります。また、月払いで払う場合は、為替レートにより高くなったり安くなったりするので、月々の支払いも一定しません。

このように外貨建てでは非常に魅力が高い保険ですが、円ベースに換算した時に利率や保険金はどうなるのかということも考慮しておく必要があります。外貨建て保険は安全性の高い貯蓄商品というよりは、資産運用の一部として考えるようにしましょう。

外貨建て保険に適している人

外貨建て保険が適しているのは以下のような人です。

①為替変動リスクがあり、元本が保証されていないものの資産運用をしたい人

為替のリスクがあり、元本保証ではありませんが、国内よりも高利回りが期待できます。また、外貨ベースでは保証されているケースが多いので、外貨資産を持つことに抵抗がない人にもおすすめです。

②株式や投資信託ほどリスクを取りたくない人

運用の自由度を考えると、株や投資信託などを個別に取引した方がいいと考えられます。いつでも売買できますし、市場で時価がわかります。

ただ、長期的に考えると売買が増えると手数料などのコストもかかりますし、最低保証というのはありません。ある程度の保証と利回りを取りたい人は外貨建て保険にしましょう。

外貨建て保険の種類

まずは、外貨建て保険の種類から見ていきましょう。

外貨建て終身保険|死亡後の資金、老後のゆとり資金

終身保険は保障が一生続くもので、被保険者(生命保険に加入している人)が死亡または高度障害になった場合に保険金が支払われます 。外貨建て終身保険では、積立金を外貨で運用しているので、保険金や解約返戻金を受け取る時は為替レートの影響を受けます。

外貨建て一時払い終身保険|老後のゆとり資金、相続対策

保険加入時に一括で保険料を支払うタイプの外貨建て終身保険です。加入時と保険金、解約返戻金支払い時の為替レートにより損益が影響します。生命保険というよりは、外貨による資産運用といえます。ただ、保険なので、相続税における死亡保険金の非課税枠(500万円 × 法定相続人数)を活用できるため、法定相続人が多い時には特に有効になります。

外貨建て個人年金保険|老後のゆとり資金

個人年金保険は、国民年金や厚生年金などの公的年金を補てんする目的で加入する私的年金の一つです。個人年金保険は契約時に定めた60歳や65歳などの年齢から一定期間(5~10年)、もしくは生涯にわたって毎年一定額の年金が受け取れる貯蓄型の保険です。外貨建て個人年金保険は、年金を受け取る時の為替レートにより、円で受け取れる金額が増減します。

外貨建て一時払個人年金保険|資産運用

保険加入時に一括で保険料を支払う外貨建て個人年金保険です。加入時や、年金受取時の為替レートの影響を強く受けます。保険というよりは、外貨による資産運用に近いといえます。

外貨建て養老保険|資産運用

養老保険は、保険期間内に死亡または高度障害になった場合には死亡保険金が支払われ、満期まで生存していた場合には死亡保険金と同額の満期保険金が支払われる保険です。保険金や解約返戻金を受け取る時は、為替レートにより円ベースで受け取れる金額は変わります。

外貨建て一時払い養老保険|資産運用

保険料を一括で払う外貨建て養老保険です。加入時と保険金、解約返戻金支払い時の為替レートにより、円ベースでの損益は変わります。外貨建て一時払終身保険同様、生命保険というよりは、外貨による資産運用といえます。

それでは、外貨建て保険のメリットを見ていきましょう。

外貨建て保険のメリット

外貨建て保険のメリットは、主に次の3つです。

①金利が高いので、円建てよりも貯蓄性が高い

②予定利率が高いため、保険料が安い

③為替変動で利益がでる可能性がある。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

金利が高いので、円建てよりも貯蓄性が高い

アメリカの10年債利回りは2.8%、オーストラリアは2.4%など日本の0.044%と比較すると高利回りです。金利差でいうと2%以上もの差があります。市場金利が高いと、保険会社が契約者に約束する運用利回りである予定利率も上がるので、貯蓄性が高まります。

予定利率が高いため、保険料が安い

契約時に設定する死亡保険金額などが同じ場合、予定利率が高い保険は、低い保険に比べて毎月支払う保険料が安く済みます。予定利率が保険料を計算する要素の一つだからです。

保険会社の収入と支出は以下のようになっています。

収入=保険料総額 + 運用収益

支出=保険金総額 + 保険会社の経費

保険料総額(契約者が支払う保険料 )は、保険会社が運用でどれぐらい増やしたかという運用収益と、いくらの保険金が支払われたか(保険金総額)、どの程度の経費がかかったかによって決まることがわかります。

保険会社はこれらをあらかじめ予測して「予定利率(運用利回り)」、性別や年齢別の「予定死亡率」、「予定事業費率(保険料が保険金額に対する諸経費の割合)」を設定します。

契約者が支払う保険料はこの三つの「予定基礎率」に基づいて計算されます。

生命保険には様々な種類がありますが、貯蓄性が高いと言われる「終身死亡保険」、「個人年金保険」などは予定利率の水準によって、どの程度お金が増えるかが決まります。

予定利率が低いとせっかく貯蓄のつもりで加入したのにほとんどお金は増えなかったり、場合によっては元本割れを起こしたりしてしまいます。

為替変動で利益がでる可能性がある。

満期時に契約している時よりも円安になっていれば受取額が増加します。例えば、保険金が10万米ドルの場合、1ドル=100円ですと1,000万円の受け取りになりますが、1ドル=120円なら1,200万円になります。このように、運用益が見込めるのも外貨建て保険のメリットになります。

分散投資ができる

外貨建て保険を持つことによって、分散投資を行うことができます。特に保有資産が多い方は日本円だけで持ち続けることはリスクになります。日本の景気が悪化し、円の価値が下がった時(円安)に保有資産の価値は下がってしまうからです。

外貨建て保険のデメリット

続いてデメリットについても見ていきましょう。

為替手数料がかかる

円とドルを両替する際に支払わなければいけない手数料を「為替手数料」といいます。円で保険料を支払うときや、保険金や解約返戻金を受け取る時に負担する必要があります。

円高になると受取金が減る

メリットとは逆に円高になっていくようであれば、外貨建て保険を持っていても価値は上がらず、保険金や解約返戻金が元本割れをしてしまう恐れがあります。満期のあるタイプに加入する場合は、満期後もドルで保有することができるかなどを事前に確認する必要があります。

外貨建て保険の入り方

外貨建て保険は為替変動リスクがあるので、一時払いなど保険料を最初にまとめて払ってしまった場合は、加入時の為替レートの影響を強く受けてしまいます。その後円高に進むと大幅な損失をなる恐れがあります。そのようなリスクを軽減させる方法として、「ドルコスト平均法」があります。

ドルコスト平均法とは

ドルコスト平均法とは値動きのある金融商品を購入する場合に、毎月(定期的に)一定の金額を購入することにより、取得単価を平均化させることです。価格が安い時にはたくさん購入し、価格が高い時は少量しか購入しないため、平均的な取得額が分散されるという仕組みになっています。その結果、安い平均取得価額で投資できるというメリットがあります。

保険は数十年と長期で運用を行うものです。ですから、ドルコスト平均法で買付単価を平均化していくことをおすすめします。そのために、「月払い」など定期的に保険料を支払うようにしましょう。

それでは、ドルコスト平均法の具体例を見てみましょう。

毎月100ドルずつ保険料を支払うとします。

1か月目2か月目3か月目4か月目5か月目平均
保険料(ドル)100100100100100100
為替レート(1ドル)125118130120115121.6
支払金額(円)12,50011,80013,00012,00011,50012,160

為替が115円から130円まで上下に変動したとすると平均為替レートは1ドル=121.6円になります。支払金額は12,500円から13,000円まで変動していますが、平均支払金額は12,160円となっていますので、平均化されているのが分かると思います。

中途解約リスクがある

外貨建て保険では、契約時に手数料が引かれ、為替手数料もかかります。ですから、手数料分マイナスの状態から運用を開始するので、短期で解約すると元本割れを起こすリスクがあります。また、中途解約では金利上昇にも注意が必要です。

外貨建て保険は外債で運用されるため、金利が上昇すると債券価格は下がり、金利が低下すると債券価格が値上がりするという関係があります。ですから、中途契約に応じて保険会社が債券を売ると売却損益が発生します。

そのため、外貨建て保険には「市場価格調整(MVA)」という条件がついています。MVAは債券の売却損を解約返戻金で調整する仕組みです。つまり、満期まで持たない場合の金利リスクを中途解約者が負うのです。

MVAの影響は満期までの期間が長いほど大きくなります。例えば、金利が1%上昇した場合、債券の値下がり率は満期まで5年なら5%、10年なら10%でその分だけ解約返戻金が減額されます。

海外の金利低下局面では契約者に有利ですが、金利上昇局面では負担が大きくなります。特に、米長期金利は上昇傾向にあるので、米ドルベースの保険は満期までお金を動かせなくなるリスクが大きくなっています 。

金融機関の窓口販売への影響

2018年4~9月期に銀行や証券会社の窓口で販売した外貨建て保険の販売額は前年同期比34%増の1兆9,500億円と2兆円に迫る規模になりました。

窓口販売での一時払い保険の販売額の9割近くを占めています。一時払い保険とは、一括で保険料を払う終身保険のことです。月払いや年払いに比べて保険料を安くすることができます。

人気の背景にあるのは、国内の低金利の継続です。円建て保険では利回りを確保できないことから商品の販売停止が相次ぎました。そんな中、比較的高い利回りが期待できる外貨建て保険に人気が集まっているのです。

生命保険会社の決算も外貨建て保険の販売に左右されています。いち早く外貨建て保険の商品数を増やしてきた第一生命ホールディング(証券コード:8750)は、銀行窓販向けの商品を扱う第一フロンティア生命保険が43%増の9,141億円と大幅に貢献。円建て保険の販売額は18%減の2,800億円と引き続き低調でした。

苦情の増加

外貨建て保険の販売増加に伴い苦情も増えています。「預金と思って契約したら外貨建て保険に入っていた」というケースもあるようです。銀行や証券会社の窓口販売では、手数料が高い外貨建て保険は営業サイドにとっても魅力です。

円建て保険よりもリスクが高いことをきちんと説明しているのかがポイントになるでしょう。ましてや、預金とは全く異なります。金融庁は保険会社に顧客へ商品説明を徹底するよう注意喚起しています。

富国生命保険など「顧客へのリスク説明には、相当なノウハウや準備が必要」として、外貨建て保険を取り扱っていない保険会社もあります。

もちろん、為替差益も目指せ、分散効果もあることから資産運用の一部として外貨建て保険を検討するのはいいことです。きちんと自分の目的とリスクを見定めてから、外貨建て保険の購入をするようにしましょう。

まとめ

今回は外貨建て保険について見てきました。金融機関の窓口の9割以上を占めて非常に販売が伸びています。ただし国内の保険のように貯蓄性が高いというよりは、外貨で運用する資産運用と捉えるべきです。

外貨建てでは元本や利回りが保証されているなど、金融商品としてみたら魅力ですが、貯蓄として考えればリスクが高い保険です。また、手数料や途中解約のMVAなど様々なコストがかかる恐れもあります。

短期的な利益を目指すのではなく、長期的な資産運用として考えるようにしましょう。死亡保険が付いた老後資金のための資産運用と考えれば魅力は高まります。ご自分の目的に合わせて外貨建て保険を利用するようにしましょう。

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一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト、デリバティブディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴は20年以上。現在は、日経225先物を中心に現物株・FX・CFDなど幅広い商品に投資しています。保有資格:証券外務員1種

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