誰が?どうやって確定するの?相続人の確定方法を実務目線で解説

相続においては相続人がだれになるのかという問題は重要なものです。

Expert
相続関係が複雑な場合はもちろん、当事者間で合意ができているような場合でも、不動産移転登記や銀行の名義変更などでは法律で相続人とされている人を除いて手続きをすることができません。法律で相続人とされる人は誰なのかは必ず知っておきましょう。

このページでは相続人がだれか?ということと、その確定の方法についてお伝えします。

相続人の確定が必要な理由

さらりとお話ししたのですが、当事者間で相続人が決まっているような場合でも、法律でだれが相続人になるのかを確定する必要がある理由について知りましょう。

例1:不動産の移転登記

たとえば、Aさんが亡くなり、妻Bさんと同居する子であるCさんと同居していない子Dさんが相続人だとします。

この場合、妻Bさんと同居している子Cさんがそのまま自宅に住み続けることで合意をしているような場合には、わざわざ相続人がだれなのか…ということを考える必要はないとも思われます。

しかし、Aさん名義になっている不動産をCさんの名義に移そうとする場合には、法定相続人全員がきちんとサインしている遺産分割協議書を提出しなければなりません。

法定相続人である子Dさんは「もう相続しないから」と言っていても、遺産分割協議書にはサインをしなければならないのです。

Expert
相続人全員できちんと遺産分割協議を行って協議書にしたことを証明するために、相続による移転登記をする際には戸籍謄本も必要になるので、相続人が抜けているような場合にはわかってしまいます。

例2:銀行口座の相続

被相続人が死亡したことを銀行が知ると、銀行口座からお金をおろすことができなくなります。

相続人が銀行口座からお金をおろすためには、相続に関する手続きをする必要があります。

例えば三菱UFJ銀行については、共同相続する際には

  • 三菱UFJ銀行所定の「相続届」
  • 戸籍謄本
  • 法定相続人全員の印鑑証明書
  • 通帳

が必要とされています。(参照:http://www.bk.mufg.jp/tsukau/tetsuduki/sozoku/shorui.html)

上記の例に沿っていうならば、不動産についてはCさんが相続して、預金はDさんが相続する、といった場合にはDさんは相続人であるので当然になのですが、銀行預金を相続しないと決めたCさんも手続きに参加する必要があるのです。

Expert
法定相続人がだれなのかということを把握しておくことはその他の手続きにも必ず必要になります。

相続人は誰

では法定相続人は誰か?ということについておさらいをしておきましょう。

Expert
相続人がだれになるのかは、民法という法律の「相続」という章に記載がされています。

配偶者

配偶者は、民法890条の規定により、常に相続人になります。

(配偶者の相続権)
第890条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第887条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。

配偶者とは、夫の場合は妻・妻の場合は夫、ようは結婚している夫婦の一方です。

Expert
配偶者になるためには法律の規定に従った婚姻関係にある必要があります。内縁の夫や妻は、最高裁判所が判例で配偶者とはならないと判断されていますので注意が必要です。

民法887条1項の規定により、被相続人の子は相続人になります。

第887条 被相続人の子は、相続人となる。

民法上の子といえるためには親子関係が必要であり、親子関係があれば戸籍に届け出をしていなくても相続権があります。

ですので婚姻関係にある子は当然ですが、婚姻関係にない子が認定されていれば法定相続人になりますので当然に相続人になりますし、認知されていない子は認知の訴えなどに勝利すれば子法律上子として認定されることになります。

親・兄弟

親・兄弟は子が居ない場合に相続人になります。

第889条 次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
Expert
条文の言い回しは難しいのですが、子が居ない場合にはまず親が相続人になります、子がいなくて親も居ない場合には兄弟姉妹が相続人になります、と規定しています。

相続は基本的に親から子に向けて順番に財産が引き継がれていくことを想定しており、親や兄弟姉妹が相続することは例外的な場合であるという考えであることを把握しましょう。

代襲相続

誰が相続人になるのかについては、代襲相続という概念も把握しておきましょう。

Aさんには子B・C・Dさんが居ます。
子Bさんはすでに亡くなっており、子BさんにはE・Fという子が居ます。

相続人は相続開始時(=被相続人が死亡した時)に生存していなければならないので、子はC・Dのみとなり、死亡しているBは相続人にはなりません。

ただ相続は親から子へ順番に財産が受け継がれるということになりますので、Bが生存していれば、AからBへ受け継がれ、BからE・Fへと受け継がれることになるのに、Bが先に死亡したことでE・Fに何らの財産の承継がないのも不自然ですね。

そこで、E・FはAの相続にあたって相続人になることができるようになっており、このような場合の相続のことを「代襲相続」と呼んでいます。

民法では887条2項で次のように規定しています。

被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。

代襲が発生する原因としては、相続開始以前の死亡・後述する民法891条の規定により相続人になれなかった場合(相続欠格)があります。

相続人ではなくなってしまう事例

法律上相続人とされている場合でも、一定の場合には相続人ではなくなってしまう制度があります。

Expert
後述しますが、相続財産欲しさに親を殺すようなことをする場合に、相続させることを認める必要がないことは想像できますね。

「相続欠格」と「廃除」という制度があるので確認しておきましょう。

相続欠格

相続欠格とは、法律で定めた事情がある場合には、法律上当然に相続人ではなくなる制度をいいます。

相続欠格は民法891条に規定があります。

次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

1号は、故意に被相続人を死亡させたり、死亡させたりしようとした相続人をいいます。

2号は、被相続人が殺害されたことを知っていて、告発や告訴をしなかった相続人をいいます。

3号・4号は、詐欺や脅迫という手段を使って被相続人に遺言をさせたり、変更させた相続人をいいます。

5号は、被相続人の遺言書を偽造などした相続人をいいます。

このような事情がある場合には、当然に相続人になることはできません。

廃除

上記のような事情がなかったとしても、生前の状況からみると相続させるとするのが相当ではない場合があります。

そのような場合には、当事者にどのような事情があるのかを審査して、相続人から外すことを認めています。

その制度のことを廃除と呼んでいます。

民法892条は次のように規定をしています。

遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

相続人に

  • 被相続人を虐待していた
  • 被相続人に重大な侮辱を与えた
  • 相続人にその他の著しい非行があった

このような事情があった場合には

家庭裁判所に対して、相続人として廃除したください、と請求をすることができます。

Expert
実際に廃除が認められるケースはそんなに多くありません。家業を継がなかった・親が決めた相手と結婚をしなかった、といったケースでは廃除は否定されています。

実際に廃除が認められるのは

  • 被相続人の財産を盗んでいたり、他人に相当ではない金額で販売したような場合
  • 賭博を繰り返して借金をつくって親に肩代わりあせた
  • 暴力団や極端な反社会団体への加入・異性問題を繰り返して親に迷惑をかけた
  • 重大な犯罪行為を行って有罪判決を受けた

などで極めて限定的に考えられていることに注意をしておきましょう。

Expert
相続欠格の場合には、行った行為が相続人から外すべきと即判断できるほどに悪質なので、法律上当然に相続人から外されるのですが、廃除の場合には家庭裁判所に請求をして審理をしてもらうことで相続人から外すことができる点に注意しましょう。

相続の順位

相続人がだれか?ということとは直接関係ないのですが、相続人がだれかによって相続分が変わってくるので、一緒に把握しておきましょう。

第一順位の相続

第一順位の相続は、配偶者と子がいる場合です。

配偶者には1/2・子に1/2の相続分となります。

子が複数居る場合には頭数で割ることになります。

子が3人居る場合には、1/2の相続分を3人で割るので、1/6づつとなります。

第二順位の相続

子が居ない場合には、配偶者と親の相続になります。

配偶者に2/3・親に1/3の相続分となります。

親が二人とも健在の場合には、二人で相続することになるので、1/6づつになります。

第三順位の相続

子がおらず、親も居ない場合には、配偶者と兄弟姉妹の相続になります。

配偶者に3/4・兄弟姉妹に1/4の相続分となります。

Expert
夫婦に子供がいない場合の相続はこの形になることが多いです。妻と兄弟姉妹と考えると、そんなに普段から密接に接点を持っているわけではないので争いになる場合もよくあります。遺言書を書いておく典型的な場面であることをここでご紹介したついでに知っておいてください。

相続人の確定はどのように行うか

では、不動産登記変更や銀行預金の引き出しなどのために、相続人の確定をどのように行うのでしょうか。

Expert
筆者は法律事務所の事務職員として、行政書士として相続に関わった事がありますので、その時に行った事をそのままお伝えします!

相続人の確定は戸籍謄本によって行う

相続人の確定作業をおこなう主な目的は、不動産登記の名義変更や銀行預金の引き出しのためにおこないます。

そこでは申請書と一緒に戸籍謄本の提出を求めてくるので、戸籍謄本等の記載によって行います。

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実務的には「相続人であること」を証明するというよりかは、「他に相続人は居ない」といういうことを証明すると考えてください。そのため被相続人・相続人の生まれてから現在に至るまでのすべての戸籍を取り寄せるのが基本です。

戸籍に関する書類としては次のような種類があります。

戸籍謄本(戸籍事項全部証明書)

ある人の現在の戸籍に関する記録をしています。

長い間実務的には戸籍謄本という言い方をしているのですが、実際には戸籍事項全部証明書という書類を取り寄せます。

除籍謄本

たとえば、大阪に戸籍があった人が東京に戸籍を移したような場合には、大阪にあった戸籍を閉じることになります。

この閉じた戸籍に関する記録を見ることができるのが除籍謄本になります。

Expert
妻しか相続人がいないような場合に、被相続人に兄弟が居ないかを調べるには、被相続人の出生を確認すれば良いだけではなく、被相続人の親の間に他に子がいないことを証明するようなことがあるので、除籍謄本を取り寄せることは一般的です。

改製原戸籍謄本

戸籍に関する法律である戸籍法はたびたび改正されています。

その改正によって、戸籍が新しくなるので、改正前の戸籍をたどる作業が必要になります。

Expert
時期については昭和32年と平成6年の戸籍法の改正で改製原戸籍が作成されていますので、この時期をまたぐ戸籍については改製原戸籍の取得が必要になります。専門家では「はらこせき」という呼び方をしています。

戸籍の集め方

これらの戸籍をどのようにして集めるかというと、基本的には直近の戸籍から順番にたどっていく形になります。

たとえばAさんが亡くなって妻Bさんと子Cさんが相続人のケースを想定します。

Aさんの最後の戸籍が東京都千代田区にあったとしましょう。

千代田区では平成12年から戸籍をコンピューター管理をしているので、まず同じ戸籍の住所の改製原戸籍を取得することになります。

改正原戸籍を取得すると、AさんがBさんと婚姻をして新たな戸籍を作る前のAさんの両親の戸籍から転入してきたことが記載されています。

ですのでAさんの両親の除籍謄本の取り寄せをします。

Expert
ここまでさかのぼるのは、AさんがBさんと結婚する前に他に結婚をしていたり、子を認知していないので、子として相続人になるのがCさんだけだという確定をするためです。

Aさんの両親の戸籍にさかのぼれば、Aさんの出生に関する記載があれば相続人は確定することになるといえます。

Expert
非常にシンプルな例をお伝えしましたが、実際にはコンピューター化前の戸籍で、古い戸籍を取り寄せなければならないような場合には、住所が読めなくて請求が難しいような場合もあります。そのような場合には相続の専門家に相談することをお勧めします。

戸籍に関する書類は、かく市区町村の市民課といった戸籍を取り扱っている部署に申請をします。

取得については、申請書と費用の支払い(自治体ごとによって異なる)が必要になります。

郵送で申請する場合には、費用の支払いは定額小為替と返信用封筒を同封して送付します。

Expert
比較的単純な事例でも2週間程度、複雑なものになると3ヶ月くらいはかかるような場合もあるので、時間のかかる作業だと思っておきましょう。

まとめ

このページでは、相続人をどうして確認しなければならないか、相続人がだれなのか、どうやって相続人を確定するのか、といったことについてお伝えしてきました。

相続は、法定相続人全員を巻き込まなければならない手続きなので、だれが相続人かは重要になります。

誰が相続人になるのか、どうやって調べるのかを知っておきましょう。

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法律・マーケティング・マネー系の記事の執筆をしているライターです
【経歴】
・司法試験受験生
・法律事務所・司法書士事務所パラリーガル
・行政書士・FP資格取得
・WEBマーケティング(リスティング広告・SEO)
などを経験

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