台風や地震で住宅が被災した場合の税金優遇制度について 理解しよう!

自然災害により住宅や家財などに損害を受けた場合の対応

大きな自然災害が不幸にも皆様の近くで起きてしまった場合には、皆様が住んでいる家や家の中のものが壊れてしまい、損害が発生する可能性が少なからずあると思います。

またそれらを修理しようとすると、大変な金額がかかってしまうこともあります。

少しでも負担を減らしたいと誰でも思います。

ここでご紹介するのは、災害損失を税務上の費用とすることにより、個人の所得税を軽減する方法です。

この方法を使うためには確定申告書を2月中旬から3月中旬に提出する必要があることにご留意ください。

大きな災害があった時には、しばらくすると、復興支援を目的とした補助金が出てくるかと思います。

設備修理等に必要なお金を直接援助してもらうにはこの補助金の利用がよいのでしょうが、この記事では紹介を割愛させて頂きます。

なお、修理するのにかかった費用だったり、元々の資産の価額がいくらで、災害後に見積もりをとったら同じ資産がいくら といったことの記録をしっかりとっていくことが大切です。

「災害減免法」に定める所得税の軽減・免除による方法

まず最初にご紹介するのは、「災害減免法」です。

災害のあった年分の所得金額が1,000万円以下で、災害によって受けた住宅又は家財の損害額がその時価の1/2以上である場合に所得税が軽減・免除されます。

住宅または家財のみが対象となります。

具体的には、所得金額が500万円以下の場合は全額免除、500万円超750万円以下の場合は1/2の軽減、750万円超1,000万円以下の場合は1/4の軽減となります。

なお、損失の繰越控除はできず、翌年以降の所得税額には影響を及ぼしません。

対象となる損失

以下の損失は対象となります。

  • 震災により被害を受けた住宅又は家財
  • 風水害により被害を受けた住宅又は家財
  • 落雷により被害を受けた住宅又は家財
  • 火災により被害を受けた住宅又は家財
  • その他上記に類する災害により被害を受けた住宅又は家財

対象となる資産とならない資産

対象となる資産は住宅又は家財ということでした。

ここで、住宅とは、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族が常時起居する住宅をいいます。

ここで、この住宅は必ずしも生活の本拠であることは要しないこととされています。

したがって、例えば、2以上の住宅に自己又は自己と生計を一にする親族が常時起居しているときは、そのいずれもが災害減免法による税金の軽減免除の対象となる住宅となります。

また、常時起居している住宅に附属する倉庫、物置等の附属建物は、住宅に含まれます。

※「自己と生計を一にする親族」とは、自分がお金を渡して、そのお金で生活している親族のことを言います。

わかりやすい例で言いますと、親から仕送りを受けて下宿生活をしている子供は、親の立場から見ると、自己と生計を一にする親族に該当します。

次に家財を見てみましょう。

家財とは、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族の日常生活に通常必要な家具、什器、衣服、書籍その他の家庭用動産をいいます。

雑損控除の対象となる資産は、居住者又はその者と生計を一にする一定の親族の有する資産のうち、生活に通常必要でない資産及び被災事業用資産を除くすべての資産とされていることから、上記の「住宅又は家財」は、すべて雑損控除の対象となる資産に含まれます。

逆に対象にならない資産は以下のようなものが挙げられます。

  • 田んぼや畑で育てている農作物
  • 自分が居住のために借りている賃貸用のアパート
  • 貴金属類や書画、骨董、美術工芸品等で1個または1組の価格が30万円を超えるようなもの

添付書類

確定申告時に確定申告書に添付して提出する資料は以下のとおりです。

  • 損失額の明細書

「所得税法」に定める雑損控除による方法

生活に通常必要な資産について損害を受けた場合、「差引損失額(損害額ー保険金等により補填される額)-所得金額の1/10」と「差引損失額のうち災害関連支出(滅失した住宅、家財を除去するための費用等)-5万円」のうち多い額の所得控除を受けることができます。

上記にあるように、生活に通常必要な資産のみに対象が限定されています。

損失は翌年以降3年間繰り越すこともできます。

対象となる損失とならない損失

対象となる損失は以下のようなものになります。

  • 震災、冷害などの自然災害
  • 火災、火薬類爆発など人為災害
  • 害虫などの生物被害
  • 豪雪の場合における雪下し費用等
  • 盗難、横領

逆に対象とならない資産には以下のようなものがあります。

  • 詐欺
  • 恐喝
  • 紛失

対象となる資産とならない資産

生活に通常必要な資産で本人又は生計を一にする合計所得金額が38万円以下の親族が所有することが必要という条件を満たした上で、対象となる資産は以下のようなものがあります。

  • 書画、骨とう、貴金属等(30万円以下)
  • 住宅
  • 家財、衣類、家具
  • 車両

※車両は専ら通勤に使用しているなど、車両の保有目的、使用状況等を総合的に勘案して、生活に通常必要な資産と認められるものに限ります。

普段の通勤は電車で、週末は車でお出かけという方も多いかと思います。

こういう場合の車は雑損控除の対象にならないってことですね。

さて、ここまで、あえて触れませんでしたが、現金はどうなるんだろうと疑問に思いませんでしたか?

現金は、一般的に、生活に通常必要な資産に該当することから、その損失額は雑損控除の対象となる資産に該当します。

逆に対象とならない資産には以下のようなものが挙げられます。

  • 書画、骨とう、貴金属等(30万円超)
  • 別荘・ゴルフ会員権・リゾート会員権等
  • 棚卸資産
  • 事業用固定資産・繰延資産
  • 山林

差引損失額

冒頭に書いた差引損失額は具体的には以下のように計算します。

(直前の時価ー直後の時価)+災害関連支出ー保険金等

又は

[(取得価額ー減価償却費累積相当額)-直後の時価]+災害関連支出ー保険金等

となります。ここで、減価償却費累積相当額とは、資産の耐用年数を1.5倍した年数に基づいた旧定額法の償却率により計算したものになります。

減価償却という概念は簿記の勉強をしていないと理解は難しいかもしれません。

経年劣化の度合いを金額で表現しているといったイメージになります。

さて、「直前の時価」という言葉もよくわかりませんよね。

時価というのは、売ったらいくらになるのか、ということなので、「直前の時価」は、災害発生直前に仮に売ったらいくらになったかということになります。

といっても、偶々売ろうとして見積を取っていればわかりませんが、普通はわからないと思います。

このような場合には、その資産と同一の新品資産を購入すると仮定した場合の取得価額(再取得価額)から、その時までの減価償却の額の合計額を控除した額を直前の時価とすることができます。

また、災害関連支出というよくわからない言葉が出てきました。

保険金というのもふわっとした言葉でわかったような、わかってないような感じですよね。

ということで、これらについて、以下で解説します。

災害関連支出

災害関連支出は次のようなものをいいます。

  • 災害により滅失又は損壊した住宅や家財などの取り壊し又は除去するための費用
  • 被災資産を使用できるようにするために、その災害がやんだ日の翌日から1年を経過する日までの支出

この支出の具体例は以下のようなものが挙げられます。

  1. 災害により生じた土砂その他の障害物を除去するための支出
  2. 現状回復のための支出(被災資産の損失の金額に相当する部分を除きます。)
  3. 損壊防止のための支出

保険金とは

先ほど計算式を見ましたように、雑損控除の計算における損失の金額は、保険金、損害保証金等により補填される部分の金額がある場合は、その金額を差し引いた金額とされています。

具体的には、次のような保険金や損害賠償金などです。

  • 損害保険契約又は火災保険契約に基づき被災者が支払を受ける保険金、共済金、見舞金
  • 資産の損害の補てんを目的とする任意の互助組織から支払を受ける災害見舞金
  • 資産の損失により支払を受ける損害賠償金

適用に必要な添付書類

確定申告時に確定申告書に以下の書類を添付する必要があります。

  • 災害関連の支出に関しては領収書
  • 火災は消防署が発行する被害額届出用の証明書
  • 盗難は警察が発行する被害額届出用の証明書
  • 災害時のやむを得ない支出については領収書

災害減免法と雑損控除の違い

災害時の所得税の減免は、ご説明したように、災害減免法と雑損控除の特例制度があり、いずれか有利な方法を選択して所得税の全部または一部を軽減することができます。

雑損控除は所得金額の10%以上の損失があれば適用できます。

そして、所得制限はありません。

また、当年での控除未済の損失額があれば翌年以降繰り越しできます。

一方、災害減免法は住宅又は家財の半分以上の損失がなければ適用できません。

所得制限が設けられています。

そして、当年限りの制度です。

国税庁の説明書「暮らしの税情報」によると、損害額が100万円の場合は災害減免法を適用した方が有利になるそうです。

また、200万円、300万円の場合は雑損控除を受けた方が有利になるそうです。

家が壊れて100万円の負担のみというケースは少ないのではないかと思います。

ですので、基本的には雑損控除を使用するということを覚えて頂ければと思います。

その他留意点

地方税の雑損控除と災害減免条例

地方税には、所得税と同様の雑損控除と地方税独自の災害減免条例が設けられています。

個人住民税の雑損控除は所得税と控除額の計算方法に違いはありません。

しかし、所得税と個人住民税とでは基礎控除や扶養控除額が異なるため雑損控除額も一致せず、税率も異なるため所得税の減免税額とは一致しません。

災害減免条例は、各市町村が災害などの特別の事情があるときには個々に条例を定めて住民税を免除するものになります。

災害減免条例による減免は、天災のほか貧困、その他特別の事情がある場合が対象となっています。

災害減免法よりも対象者が広くなっています。

そして、災害以外の特殊事情についても市町村が自主的な判断で救済措置を講ずることができます。

震災特例法

東日本大震災では、阪神淡路大震災以来となる二度目の震災特例法が制定されました。

この特例法では、災害減免法、雑損控除や事業所得の災害損失を前年分で申告することができます。

また、被災者向け優良賃貸住宅の割増償却、被災事業用資産の代替資産等の特別償却などもできます。

そして、東日本大震災以後は、損失の繰越控除の期間が3年間から5年間に延長、震災関連寄付金の限度額が拡充されました。

また、復興特別区域に係る特例として、被災者等を雇用した場合の税額控除、事業用の機械の即時償却又は税額控除、事業用の建物・構築物の割増償却または税額控除、復興居住区域での被災者向け優良賃貸住宅建設の割増償却または税額控除などが創設されました。

1つの具体例として、「住宅借入金等特別控除等の適用期間に係る特例」を挙げてみましょう。

住宅借入金等特別控除の適用を受けていた家屋が、大震災により滅失等し居住の用に供することができなくなった場合です。

平成24年分以後の各年の12月31日において住宅借入金等を有するときは、その家屋について残りの適用期間について引き続き住宅借入金等特別控除の適用を受けることができます。

消費税法-特定非常災害時の対応

免税事業者や簡易課税適用事業者が、通常の時に、一般課税方式を採用して設備投資に伴う消費税の税額を還付を受けるためには、課税方式の変更の届出を、原則、前課税期間末までに行う必要があります。

ここで、免税事業者とは、消費税申告をして納付をしないくてもよい事業者のことを指します。

簡易課税事業者とは、消費税の計算のために売上のみを集計し、仕入は業種により決まった売上の割合ということにして、消費税を簡便的に計算する事業者のことを指します。

しかし、災害等の予期せぬ事態で、設備投資の必要に迫られ、それに伴う多額の消費税の支払いから、課税方式を変更したい場合は、届出書の提出時期等について柔軟な対応が認められています。

さらに、特定非常災害に伴い、課税方式の変更を行う場合は、更に弾力的な措置が講じられています。

ここで、特定非常災害とは、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律が適用される大規模な非常災害となります。

この特定非常災害に認定されたものとしては、直近で言えば平成30年7月豪雨が挙げられます。

東日本大震災も対象でした。

課税方式の変更手続について、消費税法上は、所轄税務署長の承認が得られれば、前課税期間末という期限を過ぎて提出した場合でも認められます。

一方、特定非常災害に係る特例では、所轄税務署長の承認は不要で、届出書の提出をもって課税方式の変更が認められます。

また、所轄税務署の承認を得て課税方式の変更を行った場合には、調整対象固定資産や高額特定資産の仕入等により適用される、いわゆる3年縛りが、特定非常災害の特例においては適用されません。

例を見てみましょう。

平成30年1月1日~平成30年12月31日の課税期間に、簡易課税を適用していたとします。

そして、特定非常災害により、緊急な設備投資等を行う場合、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」の提出で、当該期間について一般課税での申告を行うことができます。

ただし、提出するその届出書の「参考事項」欄等に「特定非常災害の被災事業者」である旨の記載が必要です。

さらに、一般課税を適用した当該期間に高額特定資産の取得を行った場合、本来であれば32年12月末日まで、課税事業者として一般課税での申告が義務づけられます、

しかし、基準期間における課税売上高の要件を満たせば(前々年の課税売上高が5,000万円以下であること)、特定の利用により翌課税期間から簡易課税を選択することができます。

寄附金・義援金

個人が、震災等に関して募金団体に義援金等を寄附する場合には、その義援金が最終的に国、地方公共団体に拠出されるものである場合には、「国等に対する寄附金」として、寄附金控除の対象となる寄附金に該当します。

具体的には、その義援金等が最終的に国、地方公共団体に拠出されるものであることが、新聞報道、募金要綱、募金趣意書などで明らかにされており、そのことが税務署において確認されたときには、その義援金等は「国等に対する寄附金」に該当するものとして取り扱われます。

まとめ

最後までお読み頂きましてありがとうございました。

台風や地震で住宅が被災した場合に、その住宅を元通りにしようとしますが、それには多額の費用が掛かります。

その費用負担を減らす主な2つ、雑損控除と災害減免法について、詳細に解説させて頂きました。

そして、その中で、損失額が小さい時は災害減免法、災害が大きくなるにつれて、雑損控除適用の方が有利になるといったことも触れました。

また、最後にその他留意事項について、地方税のこと、震災特例法のこと、特定非常災害時についての消費税の取扱い、寄附金・義援金等に解説させて頂きました。

この記事が何かの役に立ちますと幸いです。

なしお
なしお
95 views

公認会計士・税理士として、会計事務所で10年間働いています。専門家として税金の仕組みをわかりやすく解説します。

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。