株式市場で存在感を増すCTAとは?ヘッジファンドについて詳しく知ろう!

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「日経平均株価が500円以上動く日は背後にCTAがいる」といわれています。今回は、株式市場に大きな影響を及ぼすCTAについて解説していきます。

CTA はヘッジファンドの一種です。トレンドフォローのシステムを採用していて、先物市場において大きな存在感を示しています。まずは、ヘッジファンドの定義から見ていきましょう。

ヘッジファンドとは

日本株における外国人投資家の比率は以下のようになります。

出典:日本経済新聞

保有割合では3割程度に過ぎないものの、売買代金では6割。現物株市場に影響の大きい先物市場においては7~8割程度を占めます。

外国人投資家といっても、年金や政府系ファンドなどの長期投資家もいます。しかし、頻繁に取引するわけではないので、日々の売買においてはヘッジファンドなどの短期で取引を繰りかえす投資家の影響が大きくなります。

その中で、存在感を表すのがCTA(商品投資顧問)と呼ばれる先物専門業者です。日経平均が500円動くときは背後に海外勢、特にCTAがいるといわれています。まずは、CTAが属するヘッジファンドとは、どういうものなのかを見ていきましょう。

ヘッジファンドの定義

通常の投資信託は公募形式で、幅広く一般に募集されますが、ヘッジファンドは私募形式で限られた人しか出資できません。

ヘッジファンドとは、先物などのデリバティブを用いて、市場が上がっても下がっても利益を追求するファンドのことです。本来のヘッジの意味は「リスク回避」を表し、相場が下がった時の資産の目減りを避けるという意味でした。しかし、現在のヘッジファンドは下げ相場でも利益を追求する運用に変わってきています。

ヘッジファンドの特徴を見ていきましょう。

投資家が限定される

ヘッジファンドは私募ファンドなので、一般の投資家は購入することができません。私募形式で機関投資家や一部の富裕層のみの限られた人しか投資できないのです。 そもそも私募ファンドは2名以上50名未満の人を相手方として勧誘することを意味しています。ですから、ホームページやマスコミを利用した宣伝活動も行われていないのです。

高額の投資額

通常、最低投資金額は100万ドル(約1億円)であり、普通の投資信託と比べるとはるかにハードルが高くなります。

運用担当者も出資

普通の投資信託は、投資家から集めた資金をファンドマネージャーと呼ばれる専門家が運用します。一方、ヘッジファンドでは、運用担当者も自分の資金を投資していることが一般的です。

運用手法の多様性

通常の投資信託では、上げ相場でないと利益が出ませんが、ヘッジファンドはデリバティブを活用することにより、上げ相場・下げ相場両方で利益を出すことが可能です。運用の自由度が高いというのもヘッジファンドの大きな特徴になっています。

成功報酬

ヘッジファンドでは、投資する際の固定手数料が2%、成功報酬が運用益の20%となっているのが通常です。運用担当者が自分で資金を出していると共に、高い成功報酬もモチベーションの維持につながっています。

レバレッジ

レバレッジとは、資金を借りることによって、自己資本の数倍~数十倍もの取引をすることです。 レバレッジをかければ大きな利益が狙える反面、思惑が外れた場合に大きな損失が出るリスクがあります。

ヘッジファンドの分類

ヘッジファンドは、主に次の8つに分類されます。

株式ロング&ショート

ヘッジファンドの代表的な戦略です。株式のロング(買い持ち)とショート(売り持ち)のポジションを同時に取る伝統的な手法。ファンダメンタル(企業の業績や利益)を分析し、割安と判断した銘柄を買い、割高と判断した銘柄を同時に売って、株価が修正された時点でポジションを解消して利益を得ます。

相場が大きく動いても売りと買いを組み合わせているので、一方の損失をもう一方でカバーすることができます。 ヘッジファンドというと相場をかく乱させるという見方が多いものの、実はロング&ショートが3分の1を占めており最大の割合です。ロング&ショートは市場に中立の立場なので、相場のかく乱要因にはなりません。

マルチストラテジー

マルチストラテジーは、リラティブ・バリューやグローバル・マクロなど複数の戦略を一つのファンドにしたものです。大型ファンドが採用する戦略で広くリスク分散ができるため、機関投資家の利用が多くなっています。

CTA(商品投資顧問)

マネージドフューチャーズともいわれ、株式市場が大きく動いた時には CTAの影響があるといわれています。世界中のあらゆる先物、原油や穀物などの商品先物はもちろんのこと、株価指数や為替相場でも取引を行っています。具体的な手法は、後ほど詳しく解説します。

イベントドリブン

イベントドリブンは、企業の M & A(企業の合併や買収)などイベントが起きる際に株価のミスプライスを収益機会にする戦略です。例えば、 M & A の場合は、それが実際に成立した時に合併比率の理論値に収斂すると見て、売り買い両方のポジションを取ります。そして、適正価格になった時にポジションを解消して利益を得るのです。

フィックスト・インカム

フィクスト・インカムは、ヘッジファンドの戦略の一つである裁定取引(アービトラージ)の一種で、金利型の資産に特化しています。債券や金利先物で利幅が乖離する割高な銘柄を売り割安なものを買います。しかし、金利はなかなか理論価格以上に乖離するということが少ないので、多額の資産で仕掛ける必要があります。

グローバル・マクロ

グローバル・マクロは、世界経済の見通しを基に、世界中の株式やコモディティなど多数の現物や先物のポジションを取ります。米著名投資家ジョージソロス氏のクオンタムファンドが有名です。投資分散のために多数の商品に投資していますが、必ずしもが分散が効いているわけではないので、見通しがくると大きな損失が生じます。

レラティブ・バリュー

レラティブ・バリューは、株式や転換社債など似通った商品で割高なものを売り、割安なもの買います。アービトラージ戦略と似ていますが、アービトラージはミスプライスに注目するのに対し、レラティブ・バリューは価格が収束するとの考え方に基づいています。

ディストレス戦略

ディストレス戦略は、破産しそうな企業や国の株式・不動産などの資産や債券を安く買って、価格が回復した時に利益を得る手法です。

それでは、戦略別の運用残高を見てみましょう。

 

出典 日興リサーチセンター

このように、株式ロング・ショートが35%、マルチストラテジーが15.4%と合計で半分以上を占めています。マーケットに大きな影響を与えるCTA(マネージドフューチャーズ)は11.1%と4番目になっています。それでは、CTAの詳細な手法を見ていきましょう。

CTAとは

CTAは、”Commodity Trading Advisor”の略で、日本語では「商品投資顧問業者」と呼ばれます。「商品」と名前がついていますが、運用先は原油や貴金属、穀物などのコモディティ(商品先物)だけでなく、株式や債券、通貨、金利などの先物も取引しています。

また、世界中に分散投資をしていて、流動性が高い(取引が多い)市場ならどこにでも参加します。多いファンドでは数百の市場に投資しているといわれます。

なぜ、これほど多くの市場で取引をするのでしょうか。それはCTAがメイン戦略としてトレンドフォロー戦略をとっているからです。まずは、トレンドフォローについて解説します。

トレンドフォローとは

トレンドフォローとは、相場の流れについていく戦略です。具体的には過去数ヶ月や数年の高値や安値を付けた時に市場に参加し、相場の流れが反転するまでポジションを持ち続けます。つまり、数ヶ月や数年ごとに起きる大きな値動きを利用しようとするものです。

例えば、日本株でいえばアベノミクス相場は大きなトレンド相場でした。

出典:楽天証券

2008年のリーマンショックで日経平均株価は大きく下落し、その後8,000円から1万円前後でのもみ合いが長い間続いていました。しかし2012年12月に第2次安倍政権が始まりアベノミクス相場が開始すると、大幅な上昇が始まり、3年後の2015年には2万円を超えるまで上昇しました。

CTAというと下げ相場の主役みたいに語られますが、実は上げ相場、下げ相場関係なくマーケットが動けば参加します。ですから、上げ相場では上昇の一端を担っているのです。

CTAでは、金融工学や統計学をベースにコンピュータでプログラムを組んでいます。トレンドの始まりと終わりを見極める手法の開発に多くの時間を割いているのです。

トレンドフォローは大きな利益を狙うことができます。しかし、次の二つの理由から実際に運用するのは困難を伴います。

第一の理由は、大きなトレンドというのはなかなか起こらないということです。通常トレンドフォロー戦略は勝ちトレードよりも負けトレードになる確率が高くなります。トレンドを作る確率は約30%。残りの70%はもみ合いのボックス相場といわれています。トレンドフォローで仕掛けても損失になることが多いのです。

第二の理由はトレンド反転の見極めが難しいということです。つまり利確をどこでするかということです。トレンドが継続している間はいいのですが、特に上昇相場においてはたびたび大幅な下落が起こります。数ヶ月かけて上昇してきた相場がわずか数週間で元に戻るということも起こるのです。

そのためトレンドフォローでは特に第一の理由より、市場を分散させる必要があります。多くの市場を取引していれば、トレンドができる市場を見つける可能性は高くなります。また、市場の分散と同じく、システムの分散も必要になります。一つの種類だけではなく、4種類か5種類のシステムで取引する必要があります。

このように市場の分散やシステムの分散を行うとすれば、多額の資金が必要になります。個人で取引するよりもCTAの優秀なプロトレーダーに資金を預けた方が有利になるのです。

このようにCTAのメインプログラムはトレンドフォローですが、それ以外にも次の3つの戦略があります。

カウンタートレード

カウンタートレードとは、市場にトレンドがないボックス相場の時に、トレンドフォローとは逆の戦略を使って儲けるスタイルをいいます。安値圏で買い、高値圏で売りを行います。もみ合い相場で利益をとることができますが、損切りが遅れるとトレンドを形成し、大きな損失を被る可能性があります。トレンドフォローとは逆に勝率は高いものの、小さな利益を積み上げ上げていく投資スタイルです 。

スウィングトレード

スイングトレードは、基本的にトレンドフォローと同じです。違うのは、ターゲットにする市場の動きが短期である点です。スイングトレードに適しているのは、数か月はなくせいぜい3日か4日というところです。スイングトレーダーは上下どちらか一方向への大幅な短期的な価格変動を予想するのです。

デイトレード

デイトレードとは取引スタイルではなく、極めて短期間に行う取引全般をいいます。狭義の意味としては、市場が開いたら仕掛け、市場が引ける前に手じまうトレーダーを指します。買い持ちや売りのポジションを持つポジショントレード、瞬間的な値幅を取るスキャルピング、あるいはアービトラージという三つの取引スタイルがあります。かつては取引所のフロアに立つトレーダーだけが使った特殊な取引スタイルでしたが、インターネットの普及により、パソコンでもスキャルピングはできるようになりました。スキャルパーは市場に流動性をもたらしています。

CTAの株式市場への影響力

CTAは日本の株式市場にも大きな影響を与えています。日経225先物やTOPIXの8~9割が外国人投資家と言われています。例えば、日経225先物の手口は以下のようになります(2018年12月6日)

出典:楽天証券

このように上位には外資系証券会社が並んでいます。もちろん、証券会社は注文を通しているだけなので、どのような投資家が背後にいるのか正確なことはわかりませんが、次のようにいわれています。

上位は裁定業者が占めている可能性が高い

ABNアムロやソシエテジェネラルなどは大変多くの枚数を売買していますが、あまり偏りがありません。これらは裁定取引を行っている可能性が高いと見られています。

裁定取引とは、割高な証券を売り、割安な証券を買う取引です。例えば、以下のような取引があります。

 

①日経225先物と現物株

②日経225先物ラージと日経225先物ミニ

③日経225先物とTOPIX先物

 

③はNTトレードといって、厳密には裁定取引ではないのですが、裁定取引の一種と考えられます。厳密な裁定取引とは、理論価格が一緒の商品通しの取引を指します。①と②は日経平均株価を原資産とするので理論価格は同じになります。

裁定取引は売りと買いを同時に同じ金額で行うので、市場に対して中立です。ですから、日経平均を大きく動かすことは少ないと考えられます。

一方、CTAが利用している証券会社として有名なのでクレディスイスです。この日は日経平均株価が400円以上下落しましたが、クレディスイス証券は2694枚の売りを行っています(買い手口は上位に現れず)。

このように、日経平均株価が大きく動いたときはクレディスイスの手口がでていることがあるのでチェックしてみてください。

CTAは日本株単体で見ていない

これまで見てきたように、CTAは多くのマーケットに投資をしています。ニューヨーク株式市場と日本株式市場の連動性が高まったり、中国の上海市場と日本株の連動性が高まったりしている背景には、 CTA への影響も大きいと考えられます。アメリカ株を売ると同時に日本株も売ってくるのです。

先物市場においてアジアで流動性があるのは日本だけです。ですから中国株のヘッジ売りとしても日本株が利用されることがあります。このように現在の先物は海外要因に大きな影響を受けています。その先物の動向が現物株にも影響を及ぼしているのです。

まとめ

今回はヘッジファンドの中でも、日本株式市場に大きな影響を及ぼしているCTAについて見てきました。トレンドフォローの戦略を取るので、相場が動き出すとCTAのプログラムが稼働し、さらにトレンドを加速させます。

CTAの取引は完全にプログラム化されており、24時間休みなくコンピュータが取引をしているので、感情というものはありません。それが相場のボラティリティー(変動率)を高めているといわれています。

今後は AI(人工知能)の発達などで、さらにシステム売買の比率は上がっていくでしょう。一説には、先物の80%以上はシステムトレードであるといわれています。この流れは加速することはあれ後退することはないでしょう。これからもCTAの存在は高まっていくでしょう。

 

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