相続でもめるケースはどんなとき?よくある原因や理由・具体的な解決策を紹介!

この記事では、遺産相続をめぐってもめる・トラブルとなってしまうケースでよくみられる事例を紹介します。

親の生前は仲の良かった兄弟同士が、相続をきっかけにいがみ合うようになる…なんてことは絶対に避けたいことですね。

どのようなケースでトラブルが生じることが多いのかを知っておくと、実際に相続が発生した際の対処法を考える際に役立ちますから、ぜひ参考にしてみてください。

相続でもめることが多いケース一覧

遺産相続でもめてしまい、トラブルに発展するケースとしては、次のような場合があります。

  • 遺言が不公平な内容になっている場合
  • 遺産が分割しにくい不動産である場合
  • 認知された非嫡出子がいる場合
  • 相続に会社の事業承継がからむ場合
  • 介護に参加した親族とそうでない親族がいる場合

以下、それぞれの項目について順番に見ていきましょう。

遺言が不公平な内容になっている場合

第一には、亡くなった人が生前に作成した遺言が、相続人にとって不公平な内容になっている場合です。

遺言が不公平な状況には、大きく分けて次の2つのケースが考えられます。

  • ①同じ相続順位の人どうしで、異なる遺産分割割合が設定されている場合
  • ②法定相続人(親族)以外の人が相続人に指定されている場合

①同じ相続順位の人どうしで、異なる遺産分割割合が設定されている場合

①は、例えば長男・次男・三男が相続人となる場合に、長男には遺産の半分、次男と三男には4分の1ずつといったように遺産分割がされるケースです。

法律上、同じ相続順位の人は同じ遺産分割割合というルールになっているのですが、遺言の内容は法律よりも優先されますから、このような状況が生じる場合があります。

法律上の相続順位は、以下のように決まっています。

  • 第1順位:亡くなった人の子供
  • 第2順位:亡くなった人の父母
  • 第3順位:亡くなった人の兄弟姉妹

なお、亡くなった人の配偶者(妻または夫)は、上の各順位の人と常に共同して相続人となります。

例えば、遺族が配偶者と子供である場合には配偶者・子供の2名が相続人となりますし、遺族が配偶者・父母である場合には、配偶者・父・母の3名が相続人となります。

日本人は土地や不動産の形で財産を残す人が多い

こうした状況が生じる理由としては、日本では土地や建物といった不動産の形で財産を残す人が多いことが挙げられます。

不動産は性質上分割するのが難しい財産(分割してしまうと財産的な価値が下がってしまう財産)ですから、経済的な事情を優先させるのであれば1人の人が1つの物件を相続するのがのぞましいといえます。

その一方で、同じ相続順位の人は法律上は同じ遺産分割割合というルールになっていますから、少ない割合を定められた相続人としては不満が残るケースが多いでしょう。

実際の解決方法としては、分割しにくい不動産は相続人のうちの1人(例えば長男)が相続し、その他の人(次男や三男)には不動産を相続した人が現金を譲渡するといった形がとられることが多いです。

こうした不動産相続の方法を代償分割といいますが、不動産の分割方法としてはほかの方法もありますから、後でくわしく解説します。

不動産が相続財産である場合の分割方法

②法定相続人(親族)以外の人が相続人に指定されている場合

遺言によって相続トラブルが生じてしまうケースの2つ目として、法定相続人(親族のこと)以外の人が相続人に指定されているケースがあります。

例えば、亡くなった人に愛人がいて、その人に遺産の一部を分け与えるとなっている場合や、慈善団体に遺産の一部を寄付するとなっているような場合です。

法律上の配偶者でない人や、親族とは何の関係もない慈善団体に、遺言によって遺産を相続させることを遺贈と呼びます。

当然ながら、遺贈は法定相続人の遺産相続分を少なくする結果を招きますから、取り分の少なくなった親族が不満を持つことは自然な感情といえるでしょう。

遺族の立場で取れる対抗策は?

遺族の側から考えられる対抗策としては、第一にその遺言が真正なもの(法律上の要件をきちんと満たしているのか)であるかを確認することがあります。

相続発生後に遺言が見つかった場合には、速やかに家庭裁判所に対して「検認」の申し立てをして、内容をチェックしてもらいましょう。

(遺言を破棄するなどの行為をしてしまうと、相続をする権利そのものを失う可能性がありますから絶対にしてはいけません)

遺言が真正なものである場合には、次の項目で見る「遺留分の請求」を検討することになります。

相続割合がいちじるしく不公平な場合、遺留分の請求を検討する

遺族であるあなたが遺産相続の権利を著しく制限されてしまったような場合には、「遺留分減殺請求」という法的手続きを選択することが考えられます。

(これは上で見た①・②のケースいずれでも対処法として選択できる方法です)

遺留分減殺請求とは、ごく簡単にいうと「遺言によって、親族が最低限相続できる権利を侵害されているので、遺産分割の権利の一部を分けてほしい」と請求することです。

なお、請求する相手は遺言によって相続人に指定されている人になります。

遺留分減殺請求は裁判所を介した法的手続きによって行うのが原則ですが、相手方との話し合いで解決しても問題ありません。

遺留分減殺請求によってどのぐらいの相続分を主張できるか?

具体的にどのぐらいの割合の遺産を「遺留分」として主張することができるか?ですが、法律上は以下のようなルールがあります。

  • 遺留分請求者が配偶者や子供:遺産全体の2分の1
  • 遺留分請求者が父母や祖父母:遺産全体の3分の1

例えば、「1億円の遺産をすべて愛人に相続させる」という遺言があった場合、配偶者や子供からは「2分の1に当たる5000万円を遺留分として請求する」ということが可能になります。

遺留分請求者が父母のみである場合には、3分の1に当たる3333万円を請求することが可能です。

なお、遺留分請求者が配偶者と父母である場合には、遺留分請求割合は3分の1ではなく、2分の1となりますから注意しておきましょう。

遺産が分割しにくい不動産である場合

遺産がすべて現預金の形で残されている場合には、「長男には2分の1・次男にも2分の1」というように、わかりやすく遺産を分割することが可能です。

一方で、遺産が不動産のように「分割しにくい財産=分割してしまうと経済的な価値が減ってしまう財産」で残されている場合には、遺産分割でもめてしまう可能性も高くなります。

上でも見たように、日本では不動産の形で財産形成をする人が伝統的に多いですから、不動産をめぐる遺産分割でトラブルになってしまう事例を知っておくことは重要といえます。

実際には、不動産をめぐる遺産分割では、以下のような方法で解決を図ることが多いです。

  • ①現物分割による遺産分割
  • ②代償分割による遺産分割
  • ③換価分割による遺産分割
  • ④共有による遺産分割

それぞれの分割方法の意味について順番に見ていきましょう。

①現物分割による遺産分割

現物分割による遺産分割は、不動産を分割することなく、それぞれの物件1つにつき1人の相続人を決める方法です。

例えば、土地がA・B・Cとある場合に、「土地Aは長男・土地Bは次男・土地Cは三男」というように分割する方法をいいます。

現物分割では相続財産それぞれの財産的な価値を下げることなく分割することが可能になりますから、トラブルなく分割できるのなら、もっとも望ましい遺産分割のかたちといえるでしょう。

とはいえ、それぞれの物件の評価額が等しいというケースは普通はないでしょうから、何らかの形で相続人どうしの間で調整を行うのが一般的です。

(それが次の項目で見る代償分割や換価分割です)

②代償分割による遺産分割

代償分割とは、現物分割との合わせ技として使われることの多い分割方法です。

例えば、相続人が長男・次男の2名で、1億円の価値がある土地Aと、3000万円の価値しかない土地Bが相続財産であるとしましょう。

この場合、長男が土地A、次男が土地Bというように現物で遺産分割したとすると、不公平が生じてしまいます。

そこで、価値の高い土地Aを相続した長男から、価格の差を現金でうめるといった形で調整を行うのが代償分割です。

上のケースでは、相続財産の総額は1億3000万円(土地A1億円+土地B3000万円)ですから、長男・次男がそれぞれ6500万円(1億3000万円÷2=6500万円です)の価値がある財産を相続できれば公平といえます。

そのため、1億円の土地Aを相続した長男から、3000万円の土地Bを相続した次男に対して、3500万円を現金などで支払えば、公平な遺産分割割合とできるでしょう。

ただし、このような形で代償分割を行うためには、価値の高い不動産を相続する人が多くの現金を保有していることが条件となります。

③換価分割による遺産分割

換価分割も不動産分割の方法としてよく利用されます。

換価分割とは、ごく簡単にいえば相続財産である不動産を売却してしまって、その代金をみんなで割合で分け合うという方法のことです。

例えば、相続財産が1億円の土地1件のみという場合に、その土地を売却して現金化し、相続人である長男と次男がそれぞれ5000万円ずつ相続するといった方法を言います。

換価分割を利用すれば相続人どうしの不公平感は解消できる可能性が高いですが、不動産の売却は通常時間がかかるのに加えて、不動産仲介業者に対する手数料支払いなども発生してしまうデメリットがあります。

換価分割は相続人間の公平を重要視した分割方法といえますが、いわば「みんな公平だけれど、みんな損をする」という状況になりがちであることにも注意が必要でしょう。

④共有による遺産分割

上で見た①~③のいずれの方法も選択できない場合には、共有によって遺産相続を完了してしまうということも考えられます。

共有とは、その名の通り「1つの物件をみんなで所有する」という形です(分割をしない形)

共有者となる人たちは、1つの不動産に対して割合で権利を持ち合うという形になります(兄は2分の1、弟は2分の1といった形です)

共有による不動産分割のデメリット

共有を使えば一見公平なようですが、将来的に不動産を処分したり、賃貸に出したりといった重要な判断をする際に、法律行為を共同で行わなければならないというデメリットがあります。

また、その後にさらに長男や次男が死亡したという場合には、共有持ち分をさらにその子供たちが分け合って相続することになりますから、法律関係が極めて複雑になってしまう可能性もあります。

法律関係が複雑になることは、その不動産を収益化したり、売却したりといった判断をしたいときに、すべての人に連絡をして多数決をとって…と複雑な手続きを踏む必要があるということを意味します。

共有による遺産分割は、どうしても遺産分割協議がまとまらない場合の、最後の手段として考えておくのが良いでしょう。

認知された非嫡出子がいる場合

相続でもめるケースの3つ目として、相続をきっかけとして非嫡出子(いわゆる隠し子)の存在が明らかになるケースが考えられます。

法律上の婚姻関係以外の男女の関係から生まれた子のことを非嫡出子、婚姻関係から生まれた子のことを嫡出子といった区別しますが、遺産分割の権利についてはまったく同じ扱いが認められている点に注意を要します。

以前には「非嫡出子の相続分は、嫡出子の2分の1だけ」という法律があったのですが、法の下の平等を定める憲法に反するルールであるとして、現在は削除されています。

相続に当たって非嫡出子の存在が明らかになった場合には、その人も交えて遺産分割協議を進めていくことになるのです。

なお、非嫡出子の場合には、亡くなった人が生前にその子を認知しているかどうかも問題です。

もし認知がされていないケースでは、非嫡出子の側から認知の訴えなどの形で強制的に認知を求めることもあります。

相続に会社の事業承継がからむ場合

亡くなった人が会社のオーナー経営者であったような場合には、その会社の経営を誰が引き継ぐのかという問題も生じます。

会社の経営権を実際に握るためには、その会社が発行している株式の過半数を所持していることが必要になります。

亡くなった人がオーナー経営者として会社の株式の多くを所有していた場合には、当然ながらその株式は遺産として相続財産に含めることになります。

そのため、誰が株式の相続人となるかは、相続後の会社の経営権が誰に帰属するかをめぐるトラブルに発展する可能性があるのです。

亡くなった人が生前に後継者を遺言で定めておくのが理想

理想的には亡くなった人が生前に遺言で次の経営者を決めておくことがのぞましいですが、そうでない場合には、遺産分割協議によって株式の相続人を決めなくてはなりません。

株式の相続人となった人は多かれ少なかれ会社の経営に関与せざるを得ませんから、慎重な判断が必要になるケースといえるでしょう。

なお、会社の後継者となる人が事業を継続する場合、相続した株式に関する相続税は実質的に免除してもらえるというルールがあります(事業承継税制といいます)

相続に会社の事業承継が絡む場合には、専門知識を持った税理士などの専門家に相談してみることをおすすめします。

介護に参加した親族とそうでない親族がいる場合

親の介護を誰が担当するか?は今も昔も難しい問題ですが、これが相続をめぐるトラブルとなってしまうこともあります。

具体的には、親の介護に協力していた人と、そうではなかった人の相続割合がまったくの平等でよいのかということが問題になるでしょう。

法律では「寄与分(きよぶん)」というルールがあり、亡くなった人の生前に財産管理などを行っていた人に多くの遺産分割割合を認めるという規定がありますが、介護に関してはこのルールが適用されることはあまりありません。

(寄与分は、親が経営していた会社を長男は手伝っていたが、次男は手伝わなかったというようなケースで使われる方法です)

介護をしてくれた親族とそうでない親族とで遺産分割の割合に差を設けたいという場合には、やはり亡くなった人が生前に遺言を残していることがもっとも現実的な解決策となります。

その際、上で見た他の遺族の遺留分を侵害しないように注意が必要となります。

まとめ

今回は、遺産相続に当たってもめる・トラブルになることの多い具体的なケースを解説いたしました。

遺産相続に関するトラブルは、財産所有者が生前に遺言を作成しておくとともに、相続発生後には遺族間の遺産分割協議を適切に行うことが解決に役立ちます。

遺言作成や遺産分割協議については専門知識を持った弁護士や司法書士などの法律家がアドバイスをしてくれますから、お悩みの方は相談してみると良いでしょう。

コメントを残す