個人年金は必要?フリーランスの老後対策

独立一年生のフリーランスが特に心配なのが、お金のこと。各種手当や退職金のないフリーランスは、長期的な視点で今後のお金周りの計画を立てなければいけません。

中でも、しっかりと知識をつけて考えなければいけないのが、年金対策です。会社員と違い、会社に任せていればいいようにしてくれる・・・なんてことはフリーランスにはありません。年金の仕組みや種類をちゃんと把握し、自分自身で老後の対策を考えなければいけません。老後になってから「年金これだけしかもらえないの!?」なんてことになったら困りますよね。

そこで、今回はフリーランスになりたての初心者の方にもわかりやすく、フリーランスの年金に関する知識を解説していきます。今後の資金計画の参考にしてくださいね。

 

フリーランスの年金基礎知識

会社員時代は、「厚生年金」に加入していたはずです。会社に所属していれば基本的に強制で加入することになるので、独立するまで自分がどのくらい保険料払っていたか知らない・・・という人もいるかもしれませんね。フリーランスになった今は、年金の制度を正しく理解して、保険料と支給金額を把握する必要があります。

国民年金は、20歳になったら誰もが強制的に加入しなければならない制度です。20~60歳の間の40年間、全期間分の年金保険料を全額支払うと、65歳から満額の老齢基礎年金が支給されます。

保険料の支払い金額ですが、平成30年は月額16,340円となっています。年金保険料は収入に関わらず一定額です。年間にすると約19万6,000円ですから、駆け出しのフリーランスにとっては大きな金額です。ちなみに、国民年金の保険料は、前納すると少し安くなります。半年・1年分・2年分の範囲で前納が可能で、最もお得になるのは2年分の前納です。平成30年では、2年間の前納で15,650円が割引になります。1年前納だと4,110円なので、2年の方がかなりお得です。

会社員の場合は、この国民年金に上乗せする形で、厚生年金にも強制加入となります。場合によっては、さらに企業年金というものにも加入することになります。保険料が高いと、支払い時の負担に大きくなるかもしれませんが、65歳以上になったときの年金支給額がその分高くなります。逆に言うと、国民年金しか入らないフリーランスの人は、会社員よりも老後にもらえる給付金の額が少ないのです。

このほか厚生年金との違いとしては、配偶者の扱い方です。厚生年金の場合、配偶者が扶養に入っていると「第3号被保険者」として、配偶者分の保険料を支払わなくても年金を積み立てることができます。しかし、国民年金にこのような制度はありません。フリーランスの場合、配偶者のぶんも2人分保険料を支払わなければいけないのです。これから独立を考えている既婚者は、注意してください。

このような制度から、フリーランスで働いていく人は老後の生活費を年金だけに頼らず、何かしらの対策をとる人が多くなっています。老後までに貯金を貯めるか、何らかの制度を利用する人が多いようです。

 

フリーランスが老後にもらえる年金の額は?

それでは、国民健康保険しか入っていないフリーランスの場合、65歳以上になったとき、一体いくらの年金がもらえるのでしょうか。

平成29年度の老齢基礎年金の満額を調べてみると、779,300円となっています。月額に換算すると、約64,942円!これはちょっと、持ち家を持っていたとしても苦しい生活になる金額ですよね。

しかも、月65,000円という支給額は、満額支払った場合の金額です。支払いが厳しくて免除をうけた方など、支払いの総額が期間が少ない場合には、支給額はこれよりも少なくなるのです。平成28年度の調査によれば、年金の平均支給額は5万5,464円となっています。また、女性の方が平均的に支給額が少ない傾向にあり、3万円台の人も14%いる結果となっています。

厚生年金と比べると、どのくらいの差がある金額なのでしょうか。同調査によれば、厚生年金の平均支給額は、147,927円となっています。国民年金と比べると、約3倍の差がつく結果となりました・・・。

ただし、厚生年金の場合は加入期間や収入によって支給額が決まります。そのため男女の収穫差が如実に反映されており、男性の平均支給額が166,863円に対して、女性は102,708円となっています。

厚生省が公開しているモデルケースでは、年収約43万円で40年間働いた夫と、専業主婦の妻に支給される年金額は、夫婦2人に対し月221,277円となっています。家族がいる方はこちらも参考にしてください。

参考:厚生労働省/平成28年度厚生年金保険・国民年金事業の概況

 

国民年金と厚生年金の支給額に大きさがあることがよくわかりました。平均支給額5万5,000円では、ちょっと老後の生活が心配になってしまいます・・・。

そのため、フリーランスで働く人の中には、国民年金以外の方法で老後の生活費対策をとる人が多くなっています。次章では、その方法について解説します。

 

知っておきたい老後の年金対策

フリーランスならいずれかは考えておきたい、国民年金以外の年金対策について解説します。年金は、労働力のある若いうちから早めに備えることが大事です。各制度の内容や利点を理解し、検討してみてください。

 

付加年金

国民年金の通常の保険料に、月額400円をプラスして支払います。老齢基礎年金にプラスして、年額200円×加入月数分支給額がアップします。

フリーランスとして独立してから30年間年金を支払うときのことを考えてみましょう。納付月数は360カ月となりますので、200円×360カ月=7,200円が毎年の支給金に加算されます。月額にすると6,000円です。決して大きくはない金額ですが、掛け金の月400円は、年金を受け取り出してから2年で元がとれるといわれています。老後の長い年金制度を考えると、おすすめの制度といえますね。

また、付加年金は全額所得控除となるので、節税にもなります。

付加金額が400円と小さいため、駆け出しのフリーランスにも利用しやすい手段です。

 

国民年金基金

国民年金基金は、掛け金が年齢と性別によってきめられています。1口を基本として、掛け金の上限68,000円の中で、口数を増減することで掛け金を調整できる仕組みです。

一口目は、終身年金(一生涯に受け取ることができる年金)のA型(加入者が亡くなっても15年以内なら遺族に年金が払われる)と、B型(保証期間なし)から選択します。二口目は、受取期間が5・10・15と決まっている確定年金のⅠ~Ⅴ型から選び、支給開始年齢を60歳にすることもできます。簡単にいってしまえば、掛け金は月68,000円を上限に自分で設定して、受け取り方を「終身・15年・10年・5年」から選べる仕組みということです。

国民年金基金のデメリットとして、一度加入したら任意で抜けることができない仕組みになっていることがあげられます。支払いが苦しくなった場合は掛け金を減らすなど、ある程度の調整をすることはできますが、加入を決める場合は先々の見通しが立ってからがいいでしょう。

付与年金と同様に、国民年金基金も全額所得に控除となります。

ちなみに、付与年金と国民年金基金は両方加入することはできません。現在の収入や希望する支給金額によってどちらかを選んで加入しましょう。

 

確定拠出年金

確定拠出年金とは、個人で一定の掛け金を設定して、自分で年金を運用していく制度です。

例えば、毎月の掛け金を1万円と設定した場合、その範囲内で投資信託や預金商品で利益を出しながら運用していきます。国の制度ではなく、銀行や企業の出している商品を利用するのです。そのため、どの商品をいくら分利用するかは自分次第、ということになります。例えば、掛け金1万円の中からA社の商品5,000円、B社の商品を3,000円分、C社の商品を2,000円分といった形での運用も可能です。商品の内容を見て運用成果の高い商品を選ばなければいけませんので、そこは知識が必要ですね。

 

老齢給付金は、60歳から受け取ることができます。公的な年金は65歳(今後引き上がる可能性大)から支給開始ですので、その空白期間を埋めるにも適しています。支給期間は5~20年の間で、自分で設定します。

受け取り方も3パターンから選ぶことができます。

  • 一時金としてまとまった額を受け取る
  • 年金として毎月定額を受け取る
  • 一時金と年金合わせて受け取る

自分のライフプランに合わせて受け取れるのは、嬉しい制度ですね。

掛け金の上限は月68,000円ですが、これは付加年金や国民年金基金との合算になります。掛け金は全額所得控除となるので、節税効果が大きいことが特徴です。

また、加入手数料や口座管理料などの諸費用は、加入者の負担となります。さらに、基本的に任意の途中解約はできません。

また、確定拠出年金には加入資格が細かく設定されています。一部をご紹介すると、以下のようなものがあります。

  • 日本国内に居住している20歳~60歳の人
  • 国民年金を一部でも免除されている人は加入できない
  • 勤務先で厚生年金基金や石炭鉱業年金に加入している人は利用できない

確定拠出年金は、制度スタート以降、利用者が右肩上がりに増えています。国の年金制度に対しての不安から、個人事業主だけでなく会社員でも加入者を増やしているようです。

節税効果も高く、魅力的な制度に見えますが、運用リスクは個人で負わなければいけません。利用する際は商品知識を身に付け、注意深く行う必要があります。

 

小規模企業共済

小規模企業共済とは、小規模な個人事業主や法人や、退職したり事業を廃止した場合に、それまで積み立てた掛け金に応じた給付金を受け取れるものです。「経営者にも退職金を!」のコンセプトを元に、中小機構が提供している制度ですので、年金というよりも「経営者や個人事業主のための退職金制度」だと考えてください。

小規模企業共済では、掛け金に応じて最大で120%相当の給付金が戻ってきます。また、掛け金は全額所得控除になりますので、貯金のつもりで利用しながら経費にできる、というのがメリットと考えてください。

積立金は、月1,000円~70,000円(500円刻み)で自由に設定することができます。駆け出しフリーランスでお金のない人でも、自分の収入に見合った掛け金を設定できますので、使いやすい制度となっています。

加入のさいの注意点は、元本割れリスクが大きい事です。掛金納付月数が240カ月(20年)未満であるときは、給付金がそれまで払いこんだ納付金より低くなってしまう可能性が高いと明記されています。長期的な支払いが可能かどうか、よく検討してから加入するようにしてください。

また、廃業時に戻ってきた給付金は課税対象になります。ただし、「退職所得」に対する課税になりますので、「事業所得」対する税率よりは低くなります。現役中に事業所得を支払うよりかはお得になり、かつ納税を先送りに出来るものと考えてください。

事業主に嬉しい制度としてもう一点、「契約者貸付制度」が存在します。加入者に対して、それまでに積み立てた掛け金の範囲から、資金を借りることが可能です。

 

一番おすすめなのは?­­­­­

4つの制度を紹介してきましたが、フリーランスの場合はどれを利用するのが特になるのでしょうか。

よく、比較対象としてあげられるのは、国民年金基金と確定拠出年金です。この2つは、それぞれ並列して加入することも可能ですが、掛け金の上限は合わせて68,000円となります。そのため、どのくらいの月にどのくらいの掛け金を支払うか、老後にどのくらいのリターンがほしいかで、利用する制度を決める必要あります。

検討するには、それぞれの制度の特徴を理解する必要あります。簡単に言えば、国民年金基金はローリスク・ローリターン、確定拠出年金はハイリスク・ハイリターンの制度です。国民年金基金は毎月の手数料もかからず、元本保証がされています。毎月一定額をかけ続けて、かけたぶんの給付金を手堅く受け取りたい方は、国民年金基金がおすすめです。確定拠出年金は、積極的に自分で運用していく商品です。「資産運用」ととらえほうがいいでしょう。所得控除が受けられるだけではなく、運用益も非課税となるので、節税効果が大きいことも特徴です。

ですので、絶対に損をしたくない方は国民年金基金、しっかり節税しつつ給付金を増やしたい方は確定拠出年金を利用するのがいいでしょう。

 

民間の年金保険はどう?

他の選択肢として、民間の個人年金保険があげられます。医療保険や生命保険と同様に、設定した期間内に保険料を支払うことで、契約時に定めた年齢から給付金が受け取れる貯蓄型の保険です。支払い期間を自分で設定するものが多いですが、中には終身型の保険もあります。また、加入者が契約期間中に亡くなった場合は、払い済みの保険料は遺族に支払われることになります。

メリットとしては、貯金が苦手な人でも強制的にお金を貯めやすいと言われています。解約のハードルが高いので、一度加入したら貯めざるを得ない状況になるわけですね。また、掛け金は国の制度を同様に所得控除にすることもできます。

ただし、加入をおすすめするかというと、そうとも言いきれません。最も大きな理由としては、現在は金利が低く、保険を利用するうまみがあまりないことです。支払った保険料に対して戻ってくる金額のことを「返戻率」といいます。民間個人年金の返戻率を見てみると、だいたい2~3%、とても好条件のものでも5%ほどです。銀行の定期預金よりは良い値に見えますが、預金と違って途中解約が非常にしづらいお金です。払込期間によっては、元本割れするリスクが非常に大きいためです。貯金であれば、老後資金だけでなく住宅の購入や子供の教育費など、まとまたお金が必要なタイミングはいくらでもあります。そう考えると、低い金利で動かせない大きなお金があるのは、使い勝手がよくありません。契約する前によくよく考える必要があります。

また、「インフレに弱い」というのも大きなデメリットのひとつです。定額保険は金利固定なので、物価がどんなにあがろうが戻ってくる保険料に影響はありません。モノの値段が1.5倍になっても、戻ってくるお金が定額なのは、ちょっと割に合わない気がしますよね。

貯金が苦手な人であれば利用するのも選択肢のひとつですが、途中解約による元本割れのリスクと、長期的な払い込みが本当に可能かどうか、よく考慮しなければいけません。

 

まとめ

フリーランスの年金対策について解説してきました。

厚生年金で給付金が幾分か高い会社員と違って、フリーランスは何も対策せずにいると老後の生活が苦しくなってしまう可能性が高いです。今後の超高齢化社会のことを考えれば、国民年金の給付にのみに頼るのは不安も大きいところです。

何歳まで働くのか、老後にどのような生活を送りたいかなど、長期的なライフプランを早くから立てて、対策をとりましょう。

コメントを残す