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中小企業や個人事業主の日々の決済方法として、現金払いや銀行振込、カード払いなどがありますが、今回紹介します「法人カード」も大変便利な支払い手段として現在広く使われております。
法人カードは使い方やその形態がクレジットカードとほぼ同じで、1度作成し実際に使っていけば特に何も難しいところはなく、自然と日常の決済手段となっていくことでしょう。
また、特に小規模な企業や個人事業主、フリーランスの場合、後ほどお話しします様々な恩恵により支払い以外の面においても非常に重宝するカードです。
そこでこれから、法人カードについての基礎的な知識やカードを使うメリットなどをお話ししていきます。
*様々な法人カードを見てみたい方はこちら:
「法人カード6種類を比較紹介。チェックポイントを押さえ目的や予算にあった法人カードを選ぼう!」
*法人ガソリンカードのことを知りたい方はこちら:
「法人ガソリンカードのメリットとは?クレジット機能なしとあり、どちらがいいの?」
法人カードとは?(個人事業主でも作れます!)
法人カードの基本的な特徴
法人カードとは、企業や個人事業主などが使うクレジットカードのことで、物品の購入や交通費・公共料金の支払い等に使うことができます。
法人カードは、一般的に従業員数が20人以上向けのカードを「コーポレートカード」、それ以下のものを「ビジネスカード」と呼んでいます。ただし厳密に両者の分け方があるものではなく、またその機能においても目立った違いがあるわけではありません。
基本的な性質としましては、利用限度額があることや後述します申込み審査・付帯サービスなどがあり、通常のクレジットカードの特徴と重なる部分も多く、一部存在する法人カードならではのポイントを押さえておけば、その新規作成や利用について特段の難しさはありません。
「年会費」
年会費は無料のカードから数万円程度のものまで各種存在します。一般的には年会費が高いほどカードの利用限度額や付帯サービスが充実している傾向があります。
また初年度は無料で、次年度以降は既定の利用額以上の場合に無料となるなど、カードによっていろいろな取り決めがあります。
「カードの付与」
カードの付与は会社に対してではなくそのカードを使う「個人」に対して行われます。また、カード表面の下の方にありますローマ字による名義表示は、会社名とそのカードを使う個人名の両方記載されています。
「引き落とし口座」
カードの引き落とし口座は「法人口座」(会社決済型)を設定します。個人事業主の方でしたら「個人口座」(個人決済型)を引き落とし先に設定が可能です。
「社員・家族カード」
法人カードは複数人の社員がいる場合、「社員カード」として複数のカードを作ることが可能です。個人事業主におきましては、「家族カード」として複数のカードが作れます。
実際の利用の場面において
「サイン(署名)」
サインについては個人名で行います。これは先ほどのカードの付与の話と関連し、付与が個人に行われることからサインもその個人が行うこととなっているためです。
社員カードを複数作成しそれぞれ別の社員が利用すれば、その社員が自分の名前をサインすることになります。また社長であれば社長本人の名前をサインします。
「ショッピング枠とキャッシング枠」
法人カードはショッピングでの利用は当然できるにしても、通常の一般個人が使うような「キャッシング」を認めなかったり、認めたとしてもその利用限度額が低く抑えられている場合があります。
ただし海外利用分のキャッシング枠を一定規模で認める法人カードは多いです。
一方、個人決済型の法人カードですと国内キャッシング枠を割と前向きに認める傾向があります。
「支払い・金利」
利用代金の支払いについては、翌月1回払い、分割払い、リボ払いなどカード会社によって数種類用意されています。
金利は、分割払い・リボ払いにおいては注意すべきところで、各法人カードの利用条件をしっかり確認する必要があります。ちなみに海外キャッシング利用における返済金利が若干高め(18%以上)の傾向にあります。
各種付属サービス
「ETCカード、電子マネー機能」
追加カードとしてETCカードを持つことができたり、iDやWAONなどの電子マネーが利用できる法人カードがあります。
「各種保険や補償サービス」
国内・海外への旅行・出張時における傷害保険サービスやショッピングでの補償サービスが付帯しています。
旅行傷害保険では3,000万円~1億円程度の補償額、またショッピング補償では数百万円~500万円程度となっている法人カードが多いです。
その他に紛失や盗難によるカードの不正利用に対する負担補償などがあります。
「付帯サービス」
通常のクレジットカードにもあるような「付帯サービス」が法人カードにも存在します。詳しくは後ほどお話ししますが、法人カードの付帯サービスは非常にバラエティ豊かで旺盛なのが特徴で、ぜひとも活用したいところです。
法人カードのメリット・デメリット
メリット
メリットが豊富にあるのも法人カードの特徴です。単に経費の支払いといった役割だけでなく、様々な利点が存在します。
「利用限度額」
利用限度額が最大で数百万円レベルと高いのが特徴です。
例えば、「三井住友ビジネスゴールドカードfor Owners」という個人事業主向けの法人カードですと最大で300万円、「三井住友ビジネスプラチナカード」は20名以下の従業員規模が想定されたカードとして最大500万円の限度額となっています。
また、利用状況や支払い実績等を総合的に判断し、限度額をカード会員個別で定め、基本的な最大限度額を設けていない法人カードも存在しています(アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードなど)。
「支払いを遅らせ手元の資金を充実させる」
これは上手に活かすことができれば会社にとっては貴重な資金回転手段となります。
ただし、分割払いやリボ払いは金利負担が発生してきますので、そのことも考慮した計画的な金銭管理が重要となってきます。
出典:(株)オリエントコーポレーション
「明確な支出管理」
現金払いを無くしカード払いに一本化することで、決済履歴を全てデータで管理できるようになり、キャッシュフローの明確化、経費と私費の区別、確定申告の簡素化などを行うことができます。
「社員の経費利用をチェック」
社員カードを複数作成し決済を社員カードに限定すれば、社員ごとの日頃のお金の使い方を把握することができたり、利用限度額によって想定外の出費をある程度防ぐことができるようになります。
「ポイントが貯まる」
ポイントプログラムを設定しているカードも多くあります。例えば、「楽天ビジネスカード」においては、楽天会員になること及び「楽天プレミアムカード」を所有することで、100円の利用につき5ポイントを獲得することが可能で、そのポイントは楽天市場や各種楽天サービスで使うことができます。
また、オリコカードが運営するポイントプログラム「暮らスマイル」では、利用するごとにポイント還元率が上昇しどんどんお得となっていくポイントシステムを採用しています。
出典:(株)オリエントコーポレーション
支払いの一部がポイントとして戻ってきますので、例えば月500万円の出費で、ポイント還元率が1%だった場合、毎月5万円分のポイントバックになり、年間ですと60万円分にもなりますのでその経済効果はあなどれません。
デメリット
「法人カードはショッピングでの利用がメイン」
上記でもお話ししましたが、法人カードはショッピング枠の提供がメインであり、キャッシングができないカードや利用限度額が低いものがありますので、カード取得の申し込みにおいては事前に確認することが必要となります。
「社員カードの管理」
法人カードは社員カードを複数作成し社員に使わせることができますが、いくら利用限度額や利用履歴があったとしても、社員による無駄な出費を完全に抑えることは、カード利用者である社員の人格やモラルにかかってきます。
また、適切なカード管理も必要となり、暗証番号の紛失・流出などを防ぐ取組や、業務終了後のカードの厳格な保管方法などをしっかり決めておくことが大切です。
「複数のカード作成による出費の増加」
社員カードやオプションのETCカードを複数作成すればその枚数分費用がかさんでしまうことになるので、作成や利用にあたっては相応な予算措置が必要となってきます。
「個人用クレジットカードと法人カードを分けて使う面倒」
業務経費の出費は法人カードで統一すればいいのですが、特に個人事業主の場合、支出対象を仕事で使うのかプライベートで利用するのかをいちいち区別しなければならず、その都度法人カードと通常のクレジットカードを使い分ける手間がかかることになってきます。
法人カードから得られる各種サービスや特典
法人カードは、基本的に通常の個人が使うクレジットカードの上位版という性質であることから、その付帯サービスや各種特典が非常に優れているのがポイントです。
海外旅行における空港ラウンジサービスのようなものから、仕事に直接役立つビジネスサポート的なサービスまであり、付帯サービスを業務の一部で利用することも考えられてきます。
様々な付帯サービス
ここでは、法人カードにおける付帯サービスの例を取り上げてみます。
- 主要空港ラウンジの利用が無料、又は追加で同行者1人まで無料
- 一流ホテルの優待宿泊
- 指定のデパートやオンラインショッピングサイトでの優待割引
- 会員以外の扶養家族への海外補償サービス
- ゴルフ場の予約代行・優待利用
- 24時間受け付けのコンシェルジュサービス(ホテル予約、航空券チケット予約、空港への荷物の配達等)
- 医師への健康相談(三井住友など)
- 福利厚生サービス「ベネフィット・ステーション」(オリコ)
- 法人カード所有者限定ポイント特典、他のサービスを優遇(楽天) など
「業務に特化した付帯サービス」
- カーレンタル(三井住友など)
- 会計ソフトの提供、割引等(オリコ、JCBなど)
- 海外用wifi、携帯電話レンタル(セゾン・アメリカンエキスプレスなど)
- 業務研修・会議室の提供サービス(アメリカンエキスプレス)
- 経済誌の割引購読(アメリカンエキスプレス)
- VISAビジネスオファー(ホテルとビジネスツールの利用)(オリコ、楽天など)
- MASTERビジネスアシスト(オリコ) など
カードランクの大まかな分類と仕様内容
法人カードは通常のクレジットカードと同様、サービス内容が異なるいくつかのランクに分けられています。
その名称や提供内容は各カード会社によりますが、付帯サービスの内容、年会費、補償サービスの限度範囲などにカードごとの違いが発生してきます。
ここでは付帯内容に限らず、カードの分類と大まかなサービス内容の違いを紹介します。
「一般カード」
- 年会費が無料か極めて安い(数千円程度)
- ショッピング利用限度額はカードにより各種多彩、必ずしも冷遇されているわけではない
- キャッシング枠は0~30万円程度
- 国内主要空港ラウンジ無料
- ショッピング補償100~300万円
- 旅行傷害保険 補償額3,000~5,000万円
- 各カード会社共通の付帯サービスを備える
「ゴールドカード」
- 年会費が1~3万円程度
- ショッピング利用限度額は最大300万円前後
- キャッシングは0~50万円程度
- ショッピング補償300万円前後
- 国内主要空港ラウンジ無料(又は本人と同伴者1名まで無料)
- 旅行傷害保険 補償額5,000万円~1億円
- 一般的な付帯サービス他、独自サービスが多い
「プラチナカード」
- 年会費が3万円前後~
- ショッピング利用限度額は最大500万円前後か限度なし(会員の利用状況・返済実績による)
- キャッシングは最大100万円程度
- ショッピング補償300万円~
- 国内主要空港ラウンジ無料(又は本人と同伴者1名まで無料)
- 旅行傷害保険 補償額5,000万円~1億円
- 一般的な付帯サービス他、独自サービスが多い
法人カード取得における審査について
重要なポイント
法人カード作成において避けて通れない「審査」についてです。
まず、法人カード特有の審査内容と言えば「固定電話回線」があるかどうかです。またある程度の「黒字内容の決算資料」もチェックの対象となっています。
固定電話があるかどうかは、その法人が存在することの証明の1つとして法人カードの審査では非常に重要なポイントとなっています。
また決算については、特に損失が出ている場合に審査上かなりのマイナスポイントとなることは想像に難くありません。
通常、キャッシング契約や住宅ローンなどの審査において、その審査内容が公開されることはまずないのですが、三井住友カードのウェブサイトには上記のことが書かれており、かなり信憑性が高い内容です。
ただ決算や事業実績については、「決算書不要、登記簿不要」と宣伝している法人カードがあることや、開業間もない個人事業主であっても、通常のクレジットカードを所有しその返済実績が良好であれば審査に通りやすい場合もあります。
従って、赤字でなければ事業の運営年月や売上状況が決定的な要素とはならない傾向があります。
出典:三井住友カード(株)
全体的には「法人」としての評価と「個人」としての評価を中心に考え、その両方が優良であればベストですが、事業での赤字や法人・個人問わず返済実績の面で望ましくない履歴が皆無なことが大切です。
審査に必要な書類例
- 法人名義の口座(個人事業主なら個人口座もOK)
- 登記簿謄本
- 代表者の本人確認書類
- 固定電話回線(番号)
- 印鑑登録証明書
- 開業届 など
また、申請はウェブサイト上から申請することが可能なカード会社がほとんどで、電話回線の確認のための連絡がくる可能性はありますが、非常にスムーズに申請を行うことができます。
まとめ
法人カードについては、一部の事柄以外では個人で使うクレジットカードと大体の性質に代わりが無く、その内容を容易に理解することができると思います。
以下に法人カードの特徴についてまとめておきます。
- 法人カードとは業務上の決済で使うクレジットカード
- カードはそれを使う「個人」に付与される
- 引き落とし口座は法人口座(個人事業主は個人口座でも可能)
- 社員カード・家族カードとして複数のカードを作成することができる
- ETCカードや電子マネー機能等が追加できる
- ショッピングの利用が前提、キャッシングの機能は低い(付かない場合もあり)
- ショッピングの利用限度額は通常のクレジットカードより高い
- 様々な「付帯サービス」がある
- カード申込み審査には「固定電話」の有無が重要
また、法人カードのデメリットにあります「社員のカード利用実態の把握」やカード本体の管理の仕方が、カード入手後に必須となってくる部分です。
法人カードの利便性だけでなくこういった側面にも注意しカードの取得を検討することが大切です。
*6種類の法人カードを紹介しています:
*法人ガソリンカードとは?: