相続時精算課税制度とは?メリット・デメリットを簡単にわかりやすく解説!

将来の遺産相続について対策を考えている人の中には、相続時精算課税制度という制度について調べている方も多いでしょう。

この記事では、相続時精算課税制度とはどのような制度なのかについて解説します。

制度を利用するメリットやデメリットについて具体的に説明していますから、ぜひ参考にしてみてください。

相続時精算課税制度とは何か?仕組みを簡単にわかりやすく解説!

相続時精算課税制度とは、ごく簡単にいうと「事前に届け出をしておくと、2500万円までの贈与税の納税を、将来の相続発生時まで待ってもらえる」というルールのことです。

この説明でもやや複雑な感じがありますので、そもそも「贈与税とはどのような場合にかかるか」から説明しましょう。

贈与税は、年間で110万円の金額を超える財産を贈与するときにかかる税金です。

贈与する財産が110万円を超える場合には、毎年税金を計算して税務署に申告しなくてはなりません。

例えば、1月に50万円・3月に30万円・10月に40万円というように現金を贈与したとしましょう。

合計で120万円を贈与していますから、贈与税の申告が必要となります。

具体的には、贈与額合計120万円から贈与税の基礎控除額110万円を差し引きし、残った金額に対して贈与税率をかけて贈与税の金額を計算します。

この場合、10万円×贈与税率10%=1万円の贈与税が発生することになります(贈与税の税率は、贈与する財産の金額が大きくなるほど高くなり、最大55%にもなります)

相続時精算課税制度を利用した場合

このとき、相続時精算課税制度を利用すると、贈与税の納税をしなくてもOKとしてもらえるというわけです。

ただし、相続時精算課税制度はあくまでも「納税を相続発生まで待ってもらえる」という制度ですから、税金を納めなくてよくなるわけではありません。

相続時精算課税制度を選択した場合、具体的にどのような形で納税を行うことになるのかを次の項目で説明しましょう。

相続時精算課税制度を選択した場合の具体例

例えば、1億円の財産を所有している人がいたとしましょう。

そのまま1億円を所有したままこの人が亡くなったとすると、その1億円に対して相続税が課税されることになります。

この人が「自分が財産をたくさん持っていても運用できないから、息子に一部を分け与えて有効活用してもらおう」と考えて、財産の一部を贈与したとします。

このとき、生前贈与として子供に2500万円を贈与したとすると、通常は贈与税が発生してしまいます(年間110万円を超える金額を贈与すると、贈与税が発生します)

2500万円を贈与した場合の贈与税は、およそ800万円にもなりますから、実際に子供にわた説金額は1700万円ほどということになり、本来の目的を達することが難しくなってしまうでしょう。

このとき、相続時精算課税制度を選択した場合には、2500万円までは贈与税を負担することなく贈与を行うことができますから、2500万円まるまるを子供に渡すことが可能となるのです。

その後に相続が発生したとすると…

ここまで見るととてもお得な制度なようですが、実際はそうでもありません。

上で見た財産を所有していた人が亡くなってしまったときには、生前贈与した2500万円と、残っている7500万円を合算して、相続税を計算することになるからです。

相続時精算課税制度は「贈与税の納税を免除してもらえる制度」ではなく、「贈与税の納税を、将来の相続発生時まで待ってもらえる制度」にすぎないことを理解しておく必要があるでしょう。

もっとも、上の例で生前贈与をした息子が非常に有能な人で、現金2500万円が手元にあればそれを運用して財産を増やすことができるというケースであれば、相続時精算課税制度を使うことにもメリットがあるといえます。

相続時精算課税制度のそもそもの意味

そもそも相続時精算課税制度というのは、「財産をたくさん持っているけれど、それを社会にとって有効な形(例えば事業を興すなど)で還元することが難しい高齢者が多い」という状態を問題視して設計されている制度です。

将来的に相続が発生すればこうした問題は解消される可能性が高いですが、平均寿命がどんどん延びている情勢から考えて、若い人への財産の移転がされにくくなることは避けられません。

相続時精算課税制度は、こうした問題を解消するために、「財産を持っている人に、生前贈与を積極的に行わせること」を目的とした制度なのです。

非課税で贈与できた分は将来的に相続税の納税という形で負担しなくてはなりませんから、トータルで見たときの税負担という意味では同じであることは理解しておきましょう。

相続時精算課税制度の利用条件

相続時精算課税制度の基本的な仕組みは上で見た通りですが、実際にこの制度を利用する際には条件があります。

財産を渡す人と、もらう人それぞれに条件がありますから、分けてみていきましょう。

①財産を渡す人の利用条件

60歳以上の父母または祖父母であることが必要です。

1月1日現在で60歳に達していない人や、財産を受け取る人と親子や祖父と孫の関係にない人は利用することはできません。

なお、年齢の要件は従来は「65歳以上」となっていましたが、2015年以降は「60歳以上」でOKという扱いに変更されました。

この年齢条件の判定は「その年の1月1日現在での年齢」で判断されますので、「今年60歳になる人」ではなく、「今年61歳になる人」が利用できる制度であることに注意を要します。

②財産をもらう人の利用条件

財産をもらう側の人の利用条件は、贈与される1月1日現在のタイミングで20歳以上であることです。

こちらの年齢要件も「財産をもらう年に20歳になる人」ではなく、「財産をもらう年に21歳になる人」である必要があることに注意を要します。

なお、そもそも「相続時精算課税制度を利用するかどうか」を決めるのは、財産をもらう側の人です。

相続時精算課税制度を利用することに決めた場合には、税務署に対して「相続時精算課税制度選択届出書」という書類を提出しなくてはなりません。

その際には、財産をもらう人・渡す人双方の親族関係が証明できる戸籍謄本や住民票が必要になります。

相続時精算課税制度でメリットを受けられる人

相続時精算課税制度の基本的な仕組みと利用条件について理解できたところで、「実際にどういう人が相続時精算課税制度を利用するメリットがあって、どういう人がデメリットがあるのか?」ということについてみていきましょう。

結論から言うと、所有財産の金額が3600万円前後である人は、相続時精算課税制度を使うことによるメリットが大きいといえるでしょう。

相続税には「基礎控除」というものがあり、例えば相続人が1人である場合には遺産総額3600万円までは相続税がかからないためです。

例えば、自分の財産として3600万円があるけれど、息子が独立して仕事を始めたので、事業資金として2000万円渡したいと考えたとしましょう。

通常、2000万円の財産を息子に譲渡しようとした場合には、585万円ほどの贈与税が発生してしまいます。

相続時精算課税制度を使った場合にはどうなるか

このとき、相続時精算課税制度を使えば非課税で贈与をすることが可能になります。

その後に贈与者の相続が発生したときには、生前に贈与された2000万円を遺産にプラスして相続税を計算することになりますが、上でも見たように相続税には基礎控除がありますから、相続税の負担額は0円となります。

相続税の負担がそもそも発生しない人であれば、生前贈与の形で財産をわたしても、相続によってわたしても、いずれも相手に渡せる金額は同じというわけですね。

(所有財産の金額が3600万円前後の人であれば、生前贈与をした場合にも、将来的に発生する相続税の負担を考慮する必要がないのです)

こういったケースでは、相続時精算課税制度を使うことのメリットが大きいといえるでしょう。

相続時精算課税制度を利用するその他のメリット

その他、相続時精算課税制度を利用するメリットとしては次のようなことが挙げられます。

  • ①財産の移転を早期に行えるため、相続争いを避けられる
  • ②不動産投資による相続税対策に使える

以下、順番に見ていきましょう。

①財産の移転を早期に行えるため、相続争いを避けられる

相続時精算課税制度を使わない場合には、財産の分配は将来の相続発生まで待たないといけないことになります。

相続時精算課税制度を使うと、財産の移転を非課税で行うことができますから、早いタイミングで親族に財産を渡してしまいたいという場合にはメリットがあるでしょう。

また、贈与者が生きているうちに財産の分配を行っておくことは、遺産相続をめぐる遺族同士のトラブル回避に役立つ可能性もあります。

②不動産を贈与する場合、相続税対策に使える

相続時精算課税制度を使って贈与する財産は、現金に限らず不動産などでも問題ありません(ただし、上限額は2500万円ですが)

不動産を賃貸に出すなどして不動産投資をしている場合には、贈与者がその不動産を所有し続ける限り、どんどん収益(インカムゲイン:賃貸収入による収益)が加算されていきます。

そうなると将来の相続発生時には不動産の財産的な価値がそのインカムゲインの部分だけ増えることになるでしょう。

親族に不動産を贈与しておくと、その不動産から発生する収益はその親族固有の財産となりますから、相続税課税の対象にならないというメリットがあります。

キャピタルゲイン分の節税

不動産に対する相続税の計算は、相続が発生したタイミングでの不動産の評価額をもとに計算されます。

そのため、現在所有している不動産が将来的には値上がりする可能性が高いという場合には、相続時精算課税制度を使って贈与しておくことがメリットになるでしょう。

相続時精算課税制度では、将来的に相続が発生した際に、生前贈与した財産も相続財産に合算して相続税を計算しますが、その合算額は贈与時の時価だからです。

値上がりした分については贈与を受けた人の固有の利益ということになり、その分の相続税は負担しなくてOKとなるわけです。

相続時精算課税制度のデメリット

次に、相続時精算課税制度を利用するデメリットについても見ておきましょう。

相続時精算課税度を使うことのデメリットとしては、次のようなことが挙げられます。

    • いったん相続時精算課税制度を選ぶと後から変更ができないこと
    • 利用できなくなる相続税対策の方法(小規模宅地等の特例)がある
    • 手続き方法が複雑
    • 不動産登記の費用が高くなる

以下、順番に解説します。

いったん相続時精算課税制度を選ぶと後から変更ができないこと

相続時精算課税制度は、一度選択したら撤回することができません。

(なお、相続時精算課税制度は、税務署に選択届書を提出するという形で選択の意思表示をします)

相続時精算課税制度を利用するということは、通常の暦年課税による贈与税計算の仕方を放棄するという意味でもあります。

暦年課税の贈与税計算では、年間110万円の贈与までは非課税ですから、もし相続発生までの期間が長くある場合には、暦年課税によってコツコツ財産を分配していくほうが相続税対策になるケースもあるでしょう。

相続対策として相続時精算課税制度を利用する場合には、将来的な相続発生まで見越して慎重に判断をする必要がありますから、不安がある方は専門知識を持った税理士に相談したうえで利用を検討してみると良いでしょう。

なお、相続時精算課税制度は1人1人の親族について設定するものです。

なので、例えば父親からもらう財産については相続時精算課税制度を選択するけれど、母親からもらう財産については相続時精算課税制度ではなくて暦年課税の形を選択するということは問題ありません。

利用できなくなる相続税対策の方法(小規模宅地等の特例)がある

相続財産に宅地として使っている土地がある場合には、「小規模宅地等の特例」という非常に節税効果の高いルールを適用してもらうことができます。

詳細な説明はここではしませんが、おおまかにいうと、宅地は相続税評価額を8割引き(1億円の土地なら2000万円として評価)してもらえるとうもので、相続税の負担額を大幅に下げてもらえる制度です。

一方で、相続時精算課税制度によって、この土地を生前贈与している場合には、この特例を利用することができなくなります。

手続き方法が複雑

相続時精算課税制度を利用する際には、税務署に対して「相続時精算課税制度選択届出書」を提出する必要があります。

また、その後にさらに贈与を受けた場合には、その都度贈与税の申告をしなければなりません。

暦年課税による贈与の場合は年間の贈与額が110万円を超えない場合には申告が必要ありませんから、この点で負担が大きくなるといえるでしょう。

また、将来的に相続が発生した時の相続税申告についても、計算がやや複雑になる点もデメリットです。

不動産登記の費用が高くなる(登録免許税)

相続を原因とする不動産登記の場合、登録免許税は0.4%ですが、生前贈与された不動産を登記する場合には、2.0%の登録免許税を負担しなくてはなりません。

また、生前贈与の場合には不動産取得税という税金も別途必要になりますから、贈与を行うタイミングでの出費が大きくなってしまう可能性があります。

相続時精算課税制度を使ったほうが良い人とそうでない人

まとめると、遺産の総額が相続税の基礎控除の範囲内(3600万円前後)の方であれば、相続時精算課税制度を使えば早期に親族に対して財産を分配することが可能になりますから、メリットが大きいでしょう。

一方で、財産のほとんどが不動産であるという方や、財産の金額が非常に大きいという方の場合には相続時精算課税制度以外の相続税対策を選択したほうが節税メリットが大きいことが多いといえます。

相続時精算課税制度というのは数ある相続税対策の1つにすぎませんから、他の方法と比較検討したうえで最終的に採用する相続税対策を決定するのがのぞましいです。

まとめ

今回は、将来の相続に備える際に利用されることの多い相続時精算課税制度の仕組みについて、具体的なメリットやデメリットも含めて解説いたしました。

本文でも見た通り、相続時精算課税制度は「税金を安くするための方法」ではなく、「税金の負担額は基本的に変わらないけれど、早めに財産を親族に渡しておきたい場合に役立つ方法」ということがいえます。

相続時精算課税制度の他にも、相続税対策の方法はたくさんありますから、相続対策を検討している方は、専門の税理士に相談してみることをおすすめします。

あなたの具体的な状況に合わせて、長期的な視野から相続税対策の方法を提案してもらうことができますから、家族に多くの財産を残すことが可能になりますよ。

吉田ライター
吉田ライター
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