2017年末頃から2018年の確定申告シーズンにビットコインでたくさん利益を出した方の確定申告について話題になりました。
これから2019年の確定申告シーズンに入っていくにあたり、ビットコインに関する税金はどう取り扱うんだっけと気になる方もいらっしゃるかと思います。
そういった方のために、以下にビットコインに関する税金についてまとめてみましたので、お読み頂けますと幸いです。
ビットコインを売買したときの税金について
投資目的で保有するビットコインを売却する
昨年非常にメディア等で話題になったため、投資目的で取引所に口座を開設し、ビットコインを保有している方もいらっしゃるかと思います。
ビットコインを売却する場合は税金はどうなるのかを見てみましょう。
所得税の取扱い
所得税法における所得は、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得の10種類に分類されます。
ビットコインを取引所や販売所で売却した場合に、上記の10種類の所得のいずれかに該当するかということについては、国税庁が以下のように回答しています。(国税庁タックスアンサーNo.1524)
ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。
このビットコインを使用することにより生じる損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、雑所得として区分されます。
したがって、個人が投資目的で保有するビットコインを取引所や販売所で売却した場合には、事業または事業に付随して行う取引ではないことから事業所得には該当しません。
雑所得となります。
ビットコインの売却による利益または損失は以下のように計算します。
ビットコインの売却金額ービットコインの取得価額=売却益(マイナスの場合は売却損)
具体例を見てみましょう。
2018年5月に1BTCを購入しました。
そして、2018年10月に1BTCを売却しました。
2018年5月のレートが1BTC = 60万円、2018年10月のレートが1BTC=80万円でした。
この時、売却損益 = 雑所得の金額は、80万円 - 60万円 = 20万円 と計算されます。
ここで、ビットコインを1度しか購入していなければ計算は単純ですが、仮にビットコインを複数回にわたって購入した場合に、取得価額はどのように計算したらいいかという疑問が生じます。
この問いに対しては、国税庁個人課税課より2017年12月1日に「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」として公表されています。
これによると、仮想通貨の取得価額は以下のように計算するとしています。
結果として、売却により利益が出た場合は雑所得に該当することとなります。
会社員の方で1か所からのみ給与の支払いを受けており、年末調整が完了している場合には、給与所得及び退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下であれば、確定申告が不要になります。
消費税の取扱い
消費税の課税対象とは原則として、以下の4つの要件について全てを満たすものとされています。
- 国内における取引であること
- 事業者が事業として行うものであること
- 対価を得て行われるものであること
- 資産の譲渡及び貸付ならびに役務の提供であること
会社員の方が行うビットコイン売買は、事業者が事業として行うものには該当しません。
そのため、消費税の課税対象となりません。
投資目的で保有するビットコインを売買した場合、その所得・損失は他の所得と相殺できるか
さきほど述べましたが、ビットコインの売買は、所得税法上、原則として雑所得になります。
所得税法においては、10種類の所得のうち、損失が発生した場合に、他の所得と相殺ができる所得を不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得の4つに限定しています。
ビットコインの売買は限定されている4つの所得に該当しない雑所得ですので、他の所得と損失を相殺することはできません。
ビットコインを保有・使用したときの税金について
賞与をビットコインで受け取ったときはどうなる?
ビットコインで給与支給される場合の留意点について考えてみましょう。
ここで、この会社は現物支給に係る労働協約を締結しているとします。
所得税法においては、給与や賞与の支払いについて源泉徴収制度が採用されています。
給与や賞与等の源泉徴収制度の対象となる所得の支払者が、その支払いの際に所得の金額に応じた所定の方法により所得税額を計算します。
次に、その所得の支払額から計算された源泉所得税額を控除した上で、従業員等に支払います。
そして、支払者が控除した源泉所得税を国へ納付する制度を源泉徴収制度といいます。
賞与をビットコインで受け取る場合ですが、会社が従業員へ賞与を支給する際に賞与金額に応じた源泉所得税額を控除し、国へ当該税額を納付することになります。
その際、源泉所得税額の計算は、賞与金額を円貨換算した金額に基づき計算されます。
そのため、賞与として支給される通貨が日本円ではなく仮想通貨であるビットコインであったとしても、雇用契約によって決められた賞与金額が日本円の単位であれば、日本円で支給された場合と源泉所得税額は変わらないため税務的に異なる点はありません。
しかし、雇用契約によって決められた賞与金額がビットコインの単位であれば、支給時におけるビットコインの円貨換算レートが変動することから、円貨換算後の賞与金額は異なることとなります。
例えば、賞与金額が2BTCと決められていた場合を考えてみましょう。
ビットコインの交換レートが1BTC=50万円であれば、100万円が賞与金額となります。
これに対して、ビットコインの交換レートが1BTC=100万円であれば、200万円が賞与金額となります。
このように、所得税額の計算において対象となる円貨換算の賞与金額が変動することから、控除される源泉所得税額も変動することになり、税務的に異なる結果が生じます。
さらに、ビットコインの単位で賞与金額が決められている場合、ビットコイン交換レートの変動によっては、年間の給与所得にも大きな影響を与えることになります。
そのため、年間給与所得金額が大きく変動する可能性があり、年間給与所得金額が円貨換算で一定の金額を超える場合には注意が必要です。
今まで受けられていた配偶者特別控除や住宅借入金等特別控除等の所得金額に制限がある各種控除等が受けられなくなる可能性があります。
個人事業者がビットコインでの売上計上や経費支払いの記帳はどうなる?
具体例を見てみます。
売上120,000円の代金として0.2BTCを受領し、0.2BTCを現金(円貨)に換金せず、0.1BTCは備品45,000円の購入の支払いに充て、残り0.1BTCを現金(円貨)に換金した例を見てみます。
なお、ビットコイン交換レートは以下のようだったとします。
- 売上代金受領時は、600,000円/BTCでした。
- 備品購入・換金時は、455,000円/BTCでした。
この場合の仕訳例は以下のようになります。
仮想通貨勘定 120,000円 / 売上 120,000円
備品費 45,000円 / 仮想通貨勘定 120,000円
現金 45,000円/
仮想通貨換算損 30,000円/
となります。
このような円単位による仕訳を記帳することにより、他の円建ての取引と同様に利益と所得を算出することができるようになります。
消費税の計算においても、円建ての取引と同じように計算ができます。
売上代金をビットコインで受け取った場合の領収書の記載と印紙は?
日常生活で、領収書は日々目にします。
印紙税法では領収書は、「売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書」とされています。
売上代金として金銭や有価証券を受け取った場合に発行する領収書には、原則として印紙の貼付が必要です。
しかし、記載金額が5万円未満の場合には印紙の貼付が不要です。
また、慈善や学術などの営業以外が目的の行為に係る領収書の場合には、印紙の貼付は不要です。
そして、クレジットカード払い時に実際の金銭等の受領が行われないため領収書のクレジット払いであることを明示することにより印紙は不要になります。
ここで、ビットコインは、現在の日本の法律では、支払手段と定義され、金銭でも有価証券でもありません。
そのため、ビットコインでの支払いを受けた際の領収書は、金銭や有価証券を受け取った場合に発行する領収書には該当せず、現行の印紙税法によれば、印紙の貼付は不要になります。
治験の謝礼としてビットコインを取得した場合どうなるか?
所得税の取扱い
所得税法における所得は、一定期間において納税者が稼得した経済的利益であるとされています。
そのため、治験による謝礼についても、経済的利益を稼得したものとして、課税の対象となります。
そして、事業として反復継続的に行うような場合ではなく、空いた時間で、たまたま治験に参加したことによって謝礼を受け取った場合には、雑所得となります。
この雑所得の金額は、総収入金額から必要経費を差し引いた残額(利益)となります。
そのため、謝礼の金額そのものが経済的利益として課税の対象とされるわけではなく、謝礼の金額から治験を受けるための必要経費を差し引いた残額が経済的利益として課税されます。
ここでいう必要経費は、例えば治験を受ける病院までの往復の交通費が該当します。
謝礼としてビットコインを取得する場合を考えてみましょう。
取得したビットコインの時価(取得時のビットコイン交換レートに基づく円貨換算額)が総収入金額となります。
結果として、総収入の金額から必要経費を差し引いた金額が雑所得の金額となります。
消費税の取扱い
たまたま治験を受けてビットコインを取得しただけにすぎない場合は、事業者が事業として行うものには該当しませんので、消費税の課税対象にはなりません。
ビットコインで海外の賃貸用不動産を購入した場合はどうなる?
所得税の取扱い
ビットコインは法律上、支払い手段として取り扱われます。
不動産の購入代金にビットコインを充てる場合は、支払手段として使用したことになります。
所得税法においては、この支払手段としてビットコインの譲渡があったものとみなされます。
これは、所得税法において資産の譲渡とは、「有償無償を問わず、所有資産を移転させる一切の行為」とされています。
通常の売買のほか、交換、競売、公売、対物弁済、財産分与、収容、法人に対する現物出資なども含まれるためです。
そのため、代金の支払いを行った時点でビットコインを譲渡したことになることから、ビットコインの購入時よりも支払い時のレートが高い場合には、譲渡による利益があると認識され課税所得が生じることになります。
逆にビットコインの購入時よりも支払い時のレートが低い場合には、譲渡による損失が生じたことになります。
なお、前述しましたように、ビットコインの譲渡による利益または損失については、原則として雑所得に該当することになります。
ここで、米国の不動産をビットコインで購入する場合を考えてみましょう。
日本円と米ドル、そしてビットコインと2種法定通貨と1種の仮想通貨が登場することになります。
この場合、どの交換レートを用いるかが重要となります。
ビットコインを外貨建の取引に使用した場合には、まず当該外貨とビットコインの交換レートにて換算することになります。
その後、使用したビットコインを円との交換レートで計算し、最終的には円貨換算にて取引金額を算出します。
具体例を見てみましょう。
不動産の購入金額は800,000ドルでした。
米ドルとビットコインの交換レートは、1BTC=8,000ドル でした。
また日本円とビットコインの交換レートは、1BTC=1,000,000円でした。
この場合、不動産購入時は以下のように考えます。
まず、米ドルとビットコインの交換レートで使用金額を換算します。
800,000ドル ÷ 8,000ドル = 100BTC
次に日本円とビットコインの交換レートで使用金額を換算します。
100BTC×1,000,000円 = 100,000,000円
上記の計算により、米国の不動産を購入するために100BTCを譲渡したことになりますので、仮に1BTC = 800,000円でビットコインを取得した場合には、20,000,000円の譲渡益が発生することなります。
また、不動産購入時の円貨換算金額である100,000,000円が、賃貸用不動産の取得価額となります。
消費税の取扱い
ここで、個人が海外の不動産を購入した場合を考えてみましょう。
国内における取引には該当しませんので、消費税の課税対象とはなりません。
ビットコインを贈与・相続したときの税金について
ビットコインの相続税評価額はどうなる?
親がビットコインの取引をしていた等の事情からビットコインを相続することはあり得ます。
以下ではビットコインを相続税ではどのように評価するかを見ていきましょう。
相続等により取得した財産の価額(価値)がいくらになるのか、相続税法では第22条で以下のように定義されています。
また、その時価の具体的な内容は、相続や贈与の際の評価額の算定方法を規定する財産評価基本通達によることとされています。
しかし、ビットコインについては、この記事の作成時点で、財産評価基本通達に評価方法が明示されていません。
財産評価基本通達において、個別の評価方法を定めていない財産については、同通達の5に「この通達に評価方法の定めのない財産の価額は、この通達に定める評価方法に準じて評価する」と定められています。
つまり、よく似た財産の規定を参考に評価してください、ということです。
例えば、ビットコインを通貨として捉えた場合、外貨建預金と同様に評価することが考えられます。
外貨建預金であれば、「亡くなった日における納税者の取引金融機関が公表する対顧客直物電信買相場(いわゆるTTB)又はこれに準ずる相場」により評価することとなります。
贈与税についても、同じく贈与した日の合理的に説明できる価格を使って評価することになると思われます。
まとめ
ここまでお読み頂きましてありがとうございます。
ビットコインについては、所得税法上、原則として雑所得として扱われるということをまずは押さえて頂けますと幸いです。
また、相続税の申告におけるビットコインの相続税評価額は、円への換算レートになると考えられるということを書かせて頂きました。
何かの参考になりますと幸いです。