フリーランス一年目のための確定申告方法

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フリーランスで生計を立てていく場合、給与から税金が天引きされる会社員と違って、税金もすべて自分で処理し、確定申告をしなくてはなりません。フリーランスのなかには、経理処理を後回しにしていたら、確定申告のときに困ってしまったという方もいるのではないでしょうか。今回は、フリーランス一年目の人が知っておくべき税金の基礎知識や節税対策を説明いたします。

確定申告と税金の関係

フリーランスの収入というのは、税務上は事業所得となり、所得税や住民税の対象です。また、一定以上の売上に達すると、消費税が発生する場合もあります。フリーランスが支払うべき税金は、次のとおりです。

・所得税
・住民税
・国民保険税
・国民年金保険料
・個人事業税
・消費税

所得税

所得税は、年間の所得金額に応じて課税される税金です。1年間の所得合計が38万円を超えると、確定申告をして所得税額を算出し、国に納税する義務が生じます。収入とは異なりますので、混同してしまわないように注意しましょう。

「収入」と「所得」の違い・・・税務上の所得は、収入とは異なります。収入とは売上金額で、年間1,000万円の売上があれば1,000万円すべてが収入となります。一方で、所得とは収入より必要な経費を差し引いた額です。例えば、年収1,000万円を稼ぐフリーランスのライターが、ある仕事を手がけるときに、資料の購入費用や遠方への取材に100万円を使ったとします。この場合、1,000万円-100万円=900万円が所得になります。

住民税

住民税は、所得税の確定申告書を基に計算されますので、住民税の確定申告はありません。ただし、住民税と所得税では基礎控除や扶養控除等の金額に違いがあるため、所得税の確定申告を要しない人でも住民税の確定申告が必要となる場合がありますので注意してください。

住民税の計算方法は、所得割(一律10%)+均等割(世帯割)となっていますが、年間の所得が一定金額を下回るときは、減額されたり、全額免除になる場合もあります。その基準は自治体によって異なりますので、自身の管轄の市役所・区役所のホームページなどで確認をとってみましょう。

国民健康保険税

会社員を辞めて、フリーランスとして新たに活動する際には、国民健康保険に新しく加入する必要があります。各市区町村の窓口で手続きが可能で、保険料の金額や納付方法は、各市区町村によって異なります。基本的には、世帯割に扶養家族の人数や収入の状況に応じて加算されるため、住民税よりも高額を納めることになります。それらの金額を、一括前納、または期ごとに納めることになります。収めた金額は、確定申告のときに控除されます。

国民年金

国民健康保険と同様に、こちらも新たにフリーランスになって活動する場合は国民年金に加入する必要があります。日本年金機構の国民年金に加入すると第1号被保険者となり、国民年金保険料額は、一定の保険料額に、前年度の物価や賃金変動率を考慮した保険料改定率を掛けて算出されます。保険料の支払いは月々です。やむを得ない事情払えない場合は、保険料免除や納付猶予制度があります。手続きを行わないまま滞納すると、後々受け取れる年金の金額に影響しますので、注意が必要です。こちらも確定申告の時に控除されます。

個人事業税

個人事業税とは、公道整備などの公共事業や社会福祉なども含めた公共サービスの財源となる税金で、事業所の所在地として申請をしている都道府県に納めます。年間の所得合計金額が290万円(事業所得の基礎控除)を超えたときに3~5%の税率で課税されますが、税率は業種によって異なりますので、まずは自身の事業がどの業種にあたるのかを確認しましょう。ほとんどの業種は5%の税率です。住民税と同じで、確定申告を行っていると、対象者には納付書が自動的に送られてきます。

消費税

消費税の納税義務は、原則として2年前の年間の課税売上高が1,000万円を超える場合に発生します。今後売上高が1000万円をこえることが予測される場合は、現在納税義務者でなくとも、課税の仕組みを理解しておくとよいでしょう。

青色確定申告と白色確定申告の違い

簡単に言うと、白色申告は簡単な帳簿づけで大丈夫ですが、青色申告に適用される特典が適用されません。白色申告は、個人事業を始めたばっかりの人や、所得が少ない方が選択する傾向にあります。青色申告は、白色申告よりも難しい帳簿づけをする必要がありますが、特別控除により節税効果が期待でき、他にもいくつかの特典が用意されています。

個人事業を開業して、特に何も申請をしなければ白色申告の扱いになります。青色申告するには、事前に税務署へ申請書をだしておく必要があります。所得が高くなるほど青色申告による節税のメリットが大きくなります。一年目の人は、まずは確定申告に慣れて確実にこなせれば及第点だと思います。無理に難しい青色確定申告を行わずとも良いでしょう。

白色確定申告のメリット・デメリット

個人事業を開業して、特に申請を出さなければ白色申告の扱いになります。白色申告には、青色申告に用意されているような特典はありませんが、単式簿記での記帳でいい、確定申告で提出する書類の分量が少ないなどのメリットがあります。

メリット

  • 事前申請の必要なし
  • 帳簿づけが簡単
  • 確定申告の提出書類が少し少なくなる

デメリット・・・青色申告に適用される特別控除がない

白色申告のメリット・デメリット

青色申告は、所得が多くなるほど節税効果が高くなります。逆に言えば、所得があまり多くない人にとってはあんまりメリットはないと言えるでしょう。節税するほどの所得もない。複式簿記による帳簿付けが面倒。というような場合には白色申告。節税したいしちょっと頑張って帳簿付けをしよう。という場合には、青色申告がおすすめです。

ちなみに青色申告は事前に、所得税の青色申告承認申請書を提出する必要がありますが、一度提出すれば、それ以降毎年申請書を出す必要はありません

メリット

  • 青色申告者への特典があります。主に以下の3つ

1 青色申告特別控除。最高65万円。
2 赤字が繰り越せる。3年間まで。
3 家族への給与が必要経費にできる

デメリット

  • 事前申請の必要があります。ただし一度だけ。
  • 帳簿づけがめんどくさい。ただし、ソフトなどで楽をすることができる。
  • 確定申告の提出書類が少し多くなる。

白色申告と青色申告の節税効果の違い

多くのフリーランスの個人事業主が、節税目的で青色申告を選択します。青色申告で65万円控除を受けるための申請を期限内に出して、複式簿記により正しい方法で帳簿付けをして青色申告をすれば、最高65万円の特別控除を受けることができます。例えば、同じ金額の収入・経費だったとして、白色申告の場合と青色申告(65万円控除)の場合の所得税額を比べてみましょう。

まず、所得税の計算式は、収入 − 必要経費 − 各種控除 = 課税所得金額
課税所得金額 × 税率 − 課税控除額 = 所得税額となります。

年間収入600万円 必要経費250万円 その他控除10万円 基礎控除38万円の場合

白色申告の場合の計算例

600万 − 250万 − 10万 − 38万 = 302万(課税所得金額)
302万 × 10%= 302,000
302,000 − 97,500 = 204,500(所得税額)

青色申告(65万円控除)の場合の計算例

600万 − 250万 − 10万 − 38万 − 65万 = 237万(課税所得金額)
237万 × 10%= 237,000
237,000 − 97,500 = 139,500(所得税額)

この例では、白色申告の場合に納める所得税額は204,500円、青色申告の場合に納める所得税額は139,500円となりました。結果として今回の例では、青色申告であれば所得税が65,000円の節税になるということです。このように、一定の収入が見込めるフリーランスや個人事業主は節税のために青色申告を選択した方がお得なのです。

サラリーマンが副業で確定申告をするときの注意点

サラリーマンが副業をする時は、確定申告が必要ですが、副業収入の所得金額が20万円以下の場合は例外的に不要となります。細かい条件などについて詳しく解説します。

税務署は国の機関で、税収は財源の一部ですが、わずかな税金のために税務署の事務コストを費やすとかえって財源の収支はマイナスです。よって、コスト削減のため、次の条件を全て満たす所得金額が20万円以下のサラリーマンについては確定申告を不要としています。

また、所得とは収入から経費を引いた金額のことですね。いろいろなものを経費とできれば、その分節税することができます。勤務先で立替払いをした営業交通費などは、経費と認められると精算できます。しかし、所得金額の経費は勤務先で精算できる経費とは性質が異なります。そこで、確定申告や住民税の申告に必要な経費について解説します。

勤務先で精算できる旅費や研修費用などは収入を得る目的で使用されます。事業に関連する費用なので、経費として認められます。その点については、副業での経費も同様です。しかし、経費かどうかを決めるのは本人で、判断するのは基本的に税務署です。具体的には、副業サラリーマンが確定申告をし、税務署がチェックをするという2段構えです。

仕事仲間同士の新年会費用を経費に落とす、と仮定します。まずは副業サラリーマンが事業に関連する費用として、所得金額から差し引いて税務署へ申告します。後日、税務調査でこの新年会費は本当に事業に関連するかどうかを調査します。しかし、実際に税務調査で経費が事業に関連するかどうかをチェックするとなると、税務署の事務コストが膨大となり、現実的ではありません。そのため、給与所得については実額の計算の代わりに、年収に応じて経費の概算額を計算する給与所得控除が存在します。

主な経費

副業に直結するセミナー代や研修費用など明らかに事業と関連する費用は簡単に経費に落とせます。問題なのは事業用とプライベート用に区分できない費用です。そこで、具体例を見てみましょう。

・パソコン類

副業にパソコンは欠かせません。副業専用の場合は事業割合は100%で、購入費用が10万円未満なら全額経費に落とせます。しかし、事業用とプライベート用が兼用の場合、事業割合の算定は複雑になります。判断に迷う場合はビジネス仲間の事例や専門家の見解を聞くことをおすすめします。

・自動車関連費用

ガソリン代、車の購入費用、月極駐車場代、コインパーキング代、高速道路代などが該当します。事業用とプライベート用に区分できない費用は一般的に使用頻度で事業割合を算定する場合が多いです。使用頻度には走行距離や一ヶ月のうちの使用日数などが用いられます。もちろん、コインパーキング代や高速代のうち明らかに事業用と分かる場合は全額経費に落とせます。

・自宅関連費用

家賃、電気代、電話代などの通信費が該当します。一般的には事業用に使用した部屋の面積で事業割合を算定します。ただ、副業専用のスマートフォンを使用している場合は、明らかに事業用と判断できるため、その通信費は全額経費に落とせます。

副業が赤字になった場合

赤字の金額が他の所得と相殺されるためには事業所得と認められる必要があります。しかし、認められるには、継続して収入を得る副業として他者から認知されているなど事業所得のハードルは結構高いです。

所得税は可処分所得に対する税金です。確定申告をすれば給与所得など他の所得と相殺できるため、所得税の一部が還付されます。しかし、副業が小遣い稼ぎ程度の場合、生活とは関係ないとみなされ、雑所得と判断されます。この場合赤字でも可処分所得とは無関係となり、他の所得と相殺できません。

ただし、不動産投資での赤字は不動産所得となるため、確実に他の所得と相殺できます。不動産所得の範囲は、賃貸物件の家賃や月極駐車場などの収入です。紛らわしいのですが、コインパーキングの収入は含まれません。事業所得か雑所得のどちらかになります。

控除をうまく活用しよう

配偶者控除や扶養控除、医療費控除など基本的な控除は知っていても、そのほかの所得控除は意外と知らないという方も多いのではないでしょうか。所得控除は全部で14種類あります。それぞれの控除ごとに適用できる条件は異なります。自分が使える所得控除を把握すれば、税金がもっと安くなるかもしれません。

・基礎控除・・・基礎控除は適用を受ける要件がなく、誰でも使うことができる所得控除です。控除できる金額は一律38万円。その年の所得が38万円以下の人は、基礎控除を引くことで所得がゼロになるため税金を払う必要がありません。申告も不要となります。

・医療費控除・・・病気やケガで医療費が多くかかった場合に適用を受けることができるのが、医療費控除です。原則、年間に支払った医療費が10万円以上であれば医療費控除の適用を受けることができます。

・寄付金控除・・・代表的なのは、ふるさと納税で、節税ができる上に、納税をした自治体の特産物等ももらえる素晴らしい制度です。「ふるさと納税」という言葉から自治体に税金を納めると思っている方も多いと思いますが、実はふるさと納税は寄附金控除の対象になる支出なのです。控除できる金額は寄付をした金額から2,000円を引いた額で、寄付金の全額ではありません。さらに一定の限度額がもうけられております。

・生命保険料控除、地震保険料控除・・・これらは、通常会社の年末調整で処理してもらえますが、提出を忘れてしまうと、年末調整で処理してもらえません。そんなときでも、還付申告をすれば、生命保険料控除の適用を受けることができます。生命保険に加入していることを会社に知られたくないときも、還付申告で対応すればバレることはありません。

・配偶者控除、扶養控除・・・年末調整が終わってから家族が増えたというときは、還付申告をしてしっかりと節税しましょう。合計所得金額が1,000万円以下で、結婚した妻の所得が38万円以下であれば配偶者控除の適用を受けることができます。もちろん、夫の所得が38万円以下で妻がしっかり稼いでいる場合は、妻が配偶者控除の適用を受けることができます。

また、配偶者以外の扶養家族が増えた場合は、扶養控除の適用を受けることができる場合があります。75歳以上の親を扶養しているなど、特定扶養親族がいる場合は48万円の扶養控除を受けることができます。同居をしていれば、控除できる金額が58万円になります。

・社会保険料控除・・・健康保険や公的年金の保険料を支払った場合、社会保険料控除の対象になります。社会保険料控除は、支払った年金の全額が控除できます。自分の分だけでなく、配偶者や子ども、親など、生計を一にする扶養親族の保険料を払った場合もその金額が控除の対象となります。

 

確定申告期間は、毎年2月16日~3月15日で、この期間内であれば、税務署の窓口が休みの土日や時間外でも申告書を提出することができます。忙しくて税務署へ行く時間が取れないという場合は、郵送やインターネット申告という方法もあります。スムーズに申告ができるよう今から、準備をしておきましょう。

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